後宮の検屍女官 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 672
感想 : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041112403

作品紹介・あらすじ

「死王が生まれた」大光帝国の後宮は大騒ぎになっていた。
謀殺されたと噂される妃嬪の棺の中で赤子の遺体が見つかったのだ。
皇后の命を受け、騒動の沈静化に乗り出した美貌の宦官・延明(えんめい)の目にとまったのは、
幽鬼騒ぎにも動じずに居眠りしてばかりの侍女・桃花(とうか)。
花のように愛らしい顔立ちでありながら、出世や野心とは無縁のぐうたら女官。
多くの女官を籠絡してきた延明にもなびきそうにない。
そんな桃花が唯一覚醒するのは、遺体を前にしたとき。彼女には、検屍術の心得があるのだ――。
後宮にうずまく数々の疑惑と謎を検屍術で解き明かす、中華後宮検屍ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 妃嬪の女官・桃花が、実は検屍官の家の出で、普段はいねむりばかりしているぐうたらだが、後宮に起こった連続死をその見事な検屍術で解き明かしてしまう。桃花は魑魅魍魎の住む後宮で、いつもいねむりをして夢の世界に生きている。皇后の命で事態の解決を取り仕切る美貌の宦官・延明が、この桃花に目をつけて検屍をさせる。桃花は女性として全く延明になびかないのだが、心に屈託を抱える延明の取り澄ました仮面を剥がして逆に変えていってしまうのが面白い。しかし、延命と関わることで桃花もきっと変わっていくのに違いない。おっと、ミステリーの部分でもなかなか面白いと思うよ。中華ものだね。

  • 中華後宮の小説を読むのは初めてでした。

    学生の頃、中国の処刑の話を習った時に感じた後味の悪さを思い出しました。主人公の境遇もですが、宦官・延明の過去、賄賂の横行している後宮内、桃花くらい出世や野心と無縁でないとやっていけないと思います。

    後宮内で次々に起こる事件に、検屍で挑む桃花。検屍に対する桃花の覚醒度合いのギャップと、検屍だけでなく周囲に対する観察眼も素晴らしいです。

    少しずつ近づいていく延明との距離感もよかったです。

  • 久しぶりにこの手の小説で面白いと思いました。

    ミステリとしても秀逸であり、歴史もよく学んでいる。

    こうした作品はキャラクターに引きずられてしまう傾向がありますが、読みごたえがありましたね。

    これからの活躍が楽しみな作家が出てきました♪

  • 亡くなった妃嬪の棺に、赤子の遺体が現れた。
    幽鬼が徘徊しているという噂で、後宮の者たちは恐れおののく。

    第6回角川文庫キャラクター小説大賞受賞作。

    現在の寵妃の侍女・姫桃花。
    空閨をかこつ皇后の宦官・孫延明。

    対立する陣営に仕える者同士の、奇妙な協力関係。

    後宮での上昇志向がゼロで、延明の色気にも惑わされない。
    桃花のキャラクターが、たのしかった。

    検死の知識、医学的素養が一般的でない時代だからこその、ストーリー。

  • キャラ設定もトリックも借り物の作品です。

    キャラ設定は大人気作品「薬屋のひとりごと」から。
    後宮という狭い世界が舞台なので多少は似てしまうのは仕方がないにしても、
    ・主人公は不本意ながら後宮に来て寵妃の侍女になる
    ・普段はやる気がない変人だが医学知識豊富で検屍が絡むとやる気を出す
    ・あだ名は老猫(薬屋主人公の名前は猫猫)
    ・捜査の相棒は美貌の宦官
    と、ここまで似てるのはちょっとどうかと…?

    そして、全4話のうち2話は「宋の検屍官」という20年以上前に刊行された乱歩賞作家作品と酷似したトリックを使われています。
    宋時代に書かれた洗冤集録を題材に書かれている作品なので、同じ資料を参考にしたのなら似ても仕方がないのかも知れませんが、ここまで似るか?というところ。
    妊婦の死因が髪で隠された頭部に打ち込まれた熱した釘であることと、撲殺された被害者が実は毒殺だったという2話です。
    ミステリーの肝であるトリック部分を他作品からの拝借で済ませてしまうのはどうなんでしょうか。残り2話もなにかから引用したのでは?と思ってしまいます。

    新人のデビュー作、受賞作品であるのなら仕方がないのかな?と思う部分もありますが、
    何年も前に既にデビューしていて何冊も出している人が、大賞&読者賞W受賞という華々しい謳い文句で刊行されていてこれですか。
    ご本人の作家としての良心と矜持を疑いますし、編集者の見る目のなさにもガッカリと致します。

    文章の丸写しでなければ盗作とは呼べないといっても、心証は最悪ですよね。

  • 中華後宮ミステリー。
    検屍女官の桃花と宦官延明が活躍する。
    桃花は普段はぐうたらなのに検屍する時は覚醒し、事件を解決していく。
    とても読みやすくて次巻も読んでみたいと思った。

  • 後宮もので検死官。
    しかも出世に全く興味おない女官がその検死官という意外性。
    魑魅魍魎、呪いが蔓延っていてもおかしくないそんな後宮で(実際そんな噂で後宮内は混沌と化している)本格推理ものと称してもおかしくない骨太ミステリという。
    これも意外。
    この意外性が目新しく、ミステリとしても本当に謎解きが楽しい話で非常に面白かった。
    謎解きのために、女官も、そして彼女の相方というべき宦官も体を張る羽目にはなるが。
    二人そろって融通が利かないんだよなあ。
    そこが愛すべきところでもある。

    感覚としては後宮版『科捜研の女』として読んだ。
    謎解きのための調査が本当に本格的なのである。
    また一度解決したかに思えた事件も後の再調査で話がひっくり返ることも。
    大どんでん返しとまでは言わないが、わくわくできる展開である。
    連続ドラマのように次々起きる事件を解決していく検死官と宦官のコンビの活躍が本当に(不謹慎ながら)楽しい作品だった。
    そんな中でも着実に距離が縮まっていく二人の関係も。
    特に彼女の考え方が無実の罪で宦官にされた彼の心の救いになった点は大きい。
    彼女は自分の信念に真っ直ぐ進んでいるだけではあるけれども、ゆえに宦官という身分に捕らわれていないところが救いになっている。
    だから最初はお役目のためとはいえ、あれだけ女性を転がしてきた彼が容易に彼女に転がるという。
    終盤の彼は寧ろヒロインのようにも思えた。
    彼女の方が逞しいしなあ。

    ミステリとしてもキャラものとしても本当に面白い作品だったので、これは是非シリーズ化してほしい作品。
    そんなに後宮で殺人事件は起きて欲しくないが、でも面白かったからなあ。
    続刊、お待ちしております。

  • 大光帝国の後宮は騒ぎに揺れていた。謀殺されたと噂される妃嬪の棺から赤子の遺体が見つかったのだ。
    皇后の命で騒動の沈静化に乗り出した美貌の宦官・延明の目にとまったのは、幽鬼騒ぎにも動じず居眠りしてばかりの侍女・桃花。彼女には検死の心得があった。
    検屍の手捌きもさることながら、宦官への差別や苦しみへのフォーカスも独特。次作も読もう。

  • 後宮を揺さぶる怪談。
    謀殺された妃嬪が死後に赤子を産み落とし、赤子が死王となって復讐のために夜な夜な後宮を這い回るという。
    皇后の命で噂の沈静化に呼ばれた宦官の延明は夜警の途中、不審な死を遂げた宮女と遭遇。
    夜警に駆り出されていた女官、桃花の慧眼に、延明は彼女に助言を求めるようになるが。

    過去に冤罪で心身共に傷を負った延明と尊敬する検屍官の祖父を失った桃花。
    皇后と寵姫の権力争いの中、後宮内での不審な死の真相を探っていく。
    妃嬪の機嫌で待遇が大きく変わる緊張感、表立って動けないもどかしさ。
    グロテスクなシーンも多く、軽いラブストーリーと思って読み始めたら、ドロドロで悲壮な展開。
    ぐうたら女官の桃花だけど、のんびりな空気はほぼないし。
    これから延明の立場も変化しそうだし、桃花もどうなっていくのか、気になるけど続きを読むのに覚悟がいるなあ。

  • 他の後宮を舞台にした小説にも宦官は出て来たが、今作は一際苦しみが深い。
    学生の頃に授業中に聞いた話で、古代中国の刑で宦官にするというものがあり、その方法があまりに恐ろしく震え上がったのを思い出した。
    それが冤罪でその刑を課されるなんてあまりにも酷い。
    舞台として後宮よりも平安が好きなのは、この宦官という存在が、こんな酷い制度があったということがしんど過ぎるので、ファンタジーの世界にまで持ち込みたくないというのが大きい。
    だから、後宮ものは手放しで楽しめないのだ。
    今作も話自体は良かったが、人の世の苦しみが重かった。

    ところで、20年くらい前に「平安の検屍官」「宋の検屍官」という本を読んだことがあるが、検屍官というジャンルがあるのだろうか。
    あれを読んだ当時はいかにもオッサンが書いた描写が入っているなあと感じたが、こちらの本は作者が女性というのもありマイルドで読みやすかった。

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著者プロフィール

福島県在住。「ようこそ仙界! 鳥界山白絵巻」で第13回角川ビーンズ小説大賞〈読者賞〉を受賞してデビュー。「後宮の検屍妃」で第6回角川文庫キャラクター小説大賞〈大賞〉〈読者賞〉をダブル受賞。

「2023年 『後宮の検屍女官5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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