滅びの園 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.10
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本棚登録 : 202
感想 : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041112410

作品紹介・あらすじ

ある日、上空に現れた異次元の存在、<未知なるもの>。
それに呼応して、白く有害な不定形生物<プーニー>が出現、無尽蔵に増殖して地球を呑み込もうとする。
少女、相川聖子は、着実に滅亡へと近づく世界を見つめながら、特異体質を活かして人命救助を続けていた。
だが、最大規模の危機に直面し、人々を救うため、最後の賭けに出ることを決意する。
世界の終わりを巡り、いくつもの思いが交錯する。壮大で美しい幻想群像劇。

感想・レビュー・書評

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  • 【解説:池澤春菜】思弁SFの系譜に連なる、新たな名作――『滅びの園』恒川光太郎著【文庫巻末解説】 | カドブン
    https://kadobun.jp/reviews/entry-41591.html

    滅びの園 恒川 光太郎:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322012000508/

  •  ある日突然、上空に表れたい未知の存在。
     
     その日から白いぷにぷにとしたものが地球を吞み込もうとしている。

     その未曾有の危機に立ち向かうもの。逃げるもの。思いがけずにその核になってしまったもの。

     その様々な人間模様がとてもよかったです。

  • 他人の不幸の上に成り立つ幸福は否定されざる得ないものなのか?

    人類に破滅をもたらす物に取り込まれた唯一の人間は夢のような世界で新たな家族と幸せを育みながら暮らす。

    一方、破滅へ向かう人類は起死回生の一手を模索する。

    破滅へ向かう人類の中で耐性を持つ人間達

    其々の立場から生まれる葛藤
    其々の正義の下に物語は進んでいきます。

    個人的には夜市以上スタープレイヤー未満と言ったところでしょうか!

  • 善と悪、希望と絶望、ユートピアとディストピア、喜劇と悲劇……そうした正反対なものは、隣り合い、混ざり合い、ただ単に人の立場で変わってしまうことを思わされた、SF(少し不思議)作品です。

    ブラックな職場と妻とのすれ違いで、心がすり減ったサラリーマンの鈴上誠一。彼はある日、ふと降り立った駅のホームで、現実世界とはどこかズレた世界に迷い込む。居心地のいい世界に徐々に馴染んでいく鈴上。そんな彼の元に、ある日地球からやってきたという男が尋ねてくる。そして男は鈴上に地球の危機的な状況を伝え……

    個人的な読みどころは二つの世界の対比。鈴上が迷い込んだ、穏やかで平和で幸せな、何不自由ない世界と、一方で謎の生物の襲来によって多数の犠牲者が出続ける地球。
    地球での主な語り手となる二人の人生も、それぞれに友人や家族の死であったり、境遇であったりとこの地球だからこその悲劇や波乱に満ちている。一方で鈴上は地球のことを認識しつつも、自分の世界で生き続ける。

    こう書くと、鈴上が怠惰だったり卑怯だったりと思えるけど、話を読んでいくとそうとはなかなか割り切れない。地球の人たちも鈴上も理不尽な事態に陥ったことは変わりなくて、でも決定的に超えられない立場がある。精一杯正しく生きようとしても、それがある人にとっては、悪でしかない。

    第六章は読んでいて、バットマンシリーズの映画『JOKER』をなぜだか思い出しました。本人が悪いわけではないのに、理不尽に転がり落ちていく様子。そして彼の心理の変遷や悟った時の哀しさと可笑しさが、なんとなく身につまされました。

  • すごく良かった。人にはそれぞれ見えている世界があって、良いも悪いも逆になり得て、、という多面性がこのプーニー災害という、現実離れした世界観で描かれているのにまず痺れる。
    そんな設定なのに、野夏旋への世論の反応などは、あり得るなぁ〜と思わせられる現実味があって、そこら辺のディテールも好き。
    突入者となった理剣と舞が突入の日を知って、「ギリギリ桜は見れないね」って話すシーンなど、地球規模の話と日常感が隣合わさっている雰囲気も良かった。

  • 『夜市』で惚れてしまいすぐ2作目として手を出した恒川光太郎作品。一気に読み切ってしまった。ファンタジー?SF?を読むのは久しぶりだったし群像劇とのことで頭が付いていくか不安だったけど全くの杞憂であった。短編も長編も変わらぬ強さでグイグイ読ませてくる。
    誰にとっての救いで、希望で、絶望で、破滅なのか。善悪も正義も個人ごとにその判断は分かれる。
    すでに他の著作も読まれているファンの方には何を当然のことを、と言われそうだが、物事を決断する上で選ばねばならない「何か」に迫られた時の人間の心に生まれる曖昧な滲みや、絶妙な善悪の境界線や表裏の描写がこの作者はやはり卓越しているなと感じる。

  • 自分好みの世界観で一気読み、と言いたい面白さだったが、正確には三気読みでした。

    地球外生命体(未知なるもの)が地球に寄生したことで、地上にはプーニーが出現。
    プーニーは牛乳プリンのような謎の生物で、突発的に増殖する。動物が誤って取り込むと、その動物もプーニー化、抵抗値の低い人間だと近づくだけで拒否反応を起こし死に至る。抵抗値の高い人間は国にスカウトされ、プーニー災害の救助活動を行なっていた。

    (未知なるもの)は大きなクラゲのような姿をしており、地球の大気圏上に張り付いているが、異次元の存在であるため物理攻撃は効かない。しかし、人類は研究の末、(未知なるもの)の核近くに取り込まれている人間、鈴上誠一を発見、想念の異界(鈴上の精神世界の様な所)に向けて次元転送砲から「突入者」を送り込み、鈴上の説得を試みる。

    しかし、鈴上は想念の異界で何不自由なく暮らしており、地上で勤めていたブラック企業や夫婦間の問題から解放され、新たな友人、妻、子どもまで授かり幸せな日々を送っていた。

    当然鈴上がそんな幸せを手放す訳もなく対立、そして人類側による世界的な大規模突入作戦が決行される…




    鈴上の説明だけになってしまったが、後のプニ対(プーニー災害対策組織)隊長となる相川聖子や、最初のプーニーコンダクター野夏旋、最後の戦いで活躍する理剣など、魅力的なキャラクターばかり。

    人口の大半が抵抗値11〜80なのに対し、三人は500前後の数値を持ち、アニメ「PSYCHO-PASS」の「常守朱」的な特別感があった。

    それぞれの登場人物に対して、自分だったらどうしてたかなーなどと考えながら読み進めるのは楽しいし、この作品を読んで、自分はソフトSFが好きなのだと理解した。

  • この人にダークな世界を描かせたら、
    逸品だということをすっかり忘れていた。。

    最初は安心して安穏とした気分で読んでいたのだが、段々と暗雲が立ち込めてきて…そして、どんどん暗さに拍車がかかってゆく。
    なんて救いがなく絶望的なのだろう。
    この絶望感の破壊力は半端ない。
    恐怖感や衝撃を淡々と描くことで、冷徹さが増している。

    鈴上は、ただ幸せになりたかっただけだと思うのに。
    彼に希望ある気持ちがあると、現実世界が災厄に見舞われるという、最悪な世界観。

    気持ちがすっかり憂うつになりました。
    胸を太い釘で打ち付けられたかのような、鈍い痛み。
    悪夢を見そうで今夜は怖い。

    やはり恒川光太郎氏は凄い…!

  • ホラーやファンタジーを得意とする著者がSFに挑戦した作品である。『スタープレイヤー』シリーズもSFの要素を孕んだ作品だが、本作はこれまでの恒川作品と一線を画している。

    突如サラリーマンの鈴上は知らない世界で目が覚める。最初は困惑した鈴上だが、そこの住民の温かさや不自由のない生活に安らぎを感じていた。

    一方地球は人類滅亡の危機に瀕していた。「プーニー」と呼ばれる白いぶよぶよした生命体が繁殖し、世界を飲み込んでいった。天には謎の巨大な物体があり、その中心にいたのは鈴上だった。

    人類を救うため選ばれ者が特殊な装置で鈴上とコンタクトを取り、巨大な物体の破壊を嘆願するが、鈴上はそれを拒絶する。

    正義の衝突、トロッコ問題、集団心理、これら現代社会における重要なテーマを恒川節を交えダイナミックに描いている。

    正義の実行の先にあるものとは。是非ご自身の目で確かめていただきたいです。

  • いや面白すぎん?一気読みしてしまって、頭が痛いです。
    恒川さんの作品は「夜市」を読んですごい好きで。評価の良かったこの本を次に選択しました。
    めちゃくちゃ面白い。パワハラに合っていたサラリーマン誠一が想念の世界に行き、人と触れ合い家族を作り再生していく。一方で現実世界ではプーニーが侵食し、人が死に、崩壊していく。それぞれの立場でそれぞれの家族とか想いが描かれており、読了後はなんとも言えない感情が残った。
    プーニー抵抗値の高い人物、セーコさん、野夏旋、理剣、みんな魅力的な人でかっこよかった。
    誠一も結局のところ被害者で、向こうの世界で幸せに暮らしていて、でもその事で現実世界は崩壊してきて、誠一はラスト、プーニーで家族を失った看護師に殺されるけど、誠一は誠一なりの幸せを求めただけなのに(現実世界に戻ってきてからの態度は良くないと思うけど。笑)、ただそれだけで殺されるって…「滅び」の理由って身近にあるけど、ただ気づけないだけなのかもしれないなって感じました。

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、『夜市』で日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。同作で直木賞候補に。14年、『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。著書に『雷の季節の終わりに』『秋の牢獄』『南の子供が夜いくところ』『竜が最後に帰る場所』『南の子供が夜いくところ 』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『異神千夜』『無貌の神』などがある。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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