- 本 ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041113110
作品紹介・あらすじ
昭和のはじめ、瀬戸内海の小島に赴任したばかりの大石先生と、個性豊かな12人の教え子たちによる人情味あふれる物語。戦争のもたらす不幸、貧しい者が常に虐げられることへの怒りを訴えた不朽の名作。
感想・レビュー・書評
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学校の先生っていつまでも覚えてるなぁ。教え子もかわいいんだろうなぁ。
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昭和初期の日本各地に沢山あった心の物語と言って良いだろう。
女学校卒の新米女(おなご)先生と12人の小学生との仲睦まじい学校生活にホッコリしながらも、当時の庶民の生活や雲行きが怪しくなる世相が描かれている。
戦争が拡大するにつれて瀬戸内の小さな村にも、その影響が浸透してくる。
貧困、徴兵、赤狩り、食料不足が当時の日本の隅々までやってきて、悲しみが充満していた様子を大石先生の目線でつぶさに描かれている。
夫も教え子の男の子も戦争に送り出す女性の悲しみはいかばかりだろう。
後半は涙無しには読み進められなかった…
この時代を生きた人々の子孫たる私達が読みついで行きたい作品だった
作中の小豆島弁が物語を一層色濃くした -
読んだことなかった名作。
戦時中の人々の本音が見え隠れするようだった。
戦争下に生まれ育った幼い大吉の、当然のような「戦死=栄誉、羨望」という思考に、人間が教育や環境によっていかようにもなってしまう怖さを感じた。 -
子供が子供のままでいることが出来ない戦争は改めて恐ろしく残酷なものだと思った。
妻として、母として、教師としてこの時代を生きる大石先生の真っ直ぐとした姿に心を打たれた。
戦中、世の中全体が混乱していて生活も苦しい中で、大石先生のように素直に物事を捉え考えることはとても難しいと思う。
戦中における児童たちの暮らしや文化についても知ることが出来た。
子供たちは素直で純粋な分、戦争までもを日常として受け入れていることがただただ悲しい。 -
瀬戸内の岬にある分教場に赴任してきた大石先生と、個性豊かな12人の教え子たちの賑やかな学校生活と、やがて戦争に巻き込まれ散り散りになってしまうそれぞれの運命を追いかけた不朽の名作。
私もこういう小説を読むようになったんだな、としみじみ。
でも新米教師と子どもたちのほっこり成長物語、と思っていたら大間違い。
戦争への怒りと悲しみ、この時代に生まれたことの不条理、女であることの理不尽……胸にずしんと重みを残していくエピソードが次から次に出てくる。選挙権は無い、子守で学校へ通えないことなんて当然、国のために散ることが栄誉、反戦思想を持てば即逮捕、疑問を持つことさえ許されない。これがかつての日本の姿だったんだ。
それでもそんな激動の情勢下で、不況や貧乏にも脅かされることなく、今という時間を駆け回りすくすくと成長する子どもたちの、なんと無垢で力強いことか。
とても良い本を読んだ。一年のせめてこの時期だけでも、こうして75年前のことを知る機会を増やし、自分なりに歴史を考え続けていきたい。 -
泣いた。素晴らしい作品、の一言。
高校生のときに読んでおきたかった。でも今読めて本当に良かった。
平和な時代に生まれてきた僕は、平和な世の中を当たり前と思っていた。
でもこの作品には、そんな当たり前はなかった。
僕たちには、この平和な時代を守り、そして二度と戦争がおこらないようにする義務があると強く感じた。
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罪もない若人の命を奪っていく戦争は次のような時代だった。
国民精神総動員。戦争に身も心も投げ込めと教え、従わされた時代。
男たちにはどうしても逃れることのできない道。
母親たちには戦場で散る命を惜しみ悲しみ止めることもできない。
治安を維持するということは、命な大切さを訴え命を守ることではない時代。
戦争に取られる不安を口にしてもいけない時代。
自分だけではないという理由だけで、発言権を取り上げられていた時代。
学徒は戦争に動員され、女子供は勤労奉仕にでる時代。
航空兵を志す少年はそれだけで英雄となる時代。
花のように散ることが究極の目的とされる時代。
それが栄誉とされる時代。
戦士が名誉である時代。
そういう教育をされる時代。しなければいけない時代。
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こんな時代があっていいものか。いや、良いはずがない。
平和のために自分のできること。それは海外の友達や外国人同僚との交流を更に深め、相手を理解し、相手の文化や風習をリスペクトすること、そして、対話を持って解決策を模索していくことにあると思う。
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小学生の時に読んだ以来、本棚に眠ってるのを出してきました。こんな風に子どもたちに真摯に向き合える先生になりたいなって思った。子どもたちを想うからこその、戦争に対する先生の姿勢。どんな世の中でも、自分の生き方を貫く先生がかっこよかった。いつ読んでも感慨深い名作。
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小学校以来久しぶりに読んだ。
持ってたイメージとは全く違う。
きっと私が年を重ねたからだ。
ただ、戦争はどんな理由があれ、
することではないということは
小学校の時から変わらない。
著者プロフィール
壺井栄の作品





