- 本 ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041113196
作品紹介・あらすじ
コレラが大流行する明治の岡山で、家族を喪った少女・ノリ。
ある日、日清戦争に出征しているはずの恋人と再会し、契りを交わすが、それは恋人の姿をした別の何かだった。
そしてノリが生んだ異形の赤子は、やがて周囲に人知を超える怪異をもたらしはじめ……(「でえれえ、やっちもねえ」)。
江戸、明治、大正、昭和。異なる時代を舞台に繰り広げられる妖しく陰惨な4つの怪異譚。
あの『ぼっけえ、きょうてえ』の恐怖が蘇る。
感想・レビュー・書評
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じっとりとした
陰惨な暗さがあります
どれも 悪夢のような
暗く哀しい話です
怖さは ぼっけえ~のほうが
どぎつい怖さがありましたね
完成度も 高いです
でも これはこれで
やっぱり独特の 気持ち悪さは
さすが 岩井先生だな と
「穴掘酒」の男の手紙が
女をはめる気まんまんで
気持ち悪くって
ぞわぞわしました詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
幻想的。
岡山弁って、たぶん、岩井先生のおかげで、私の中ではホラーなイメージになってしまっている。
でも、嫌いではなくて、むしろ好き。
以前、夢野久作の感想で、この人を超える作家はいないと書いたけど、岩井先生は近い空気感があって、「いなか、の、じけん」を読んでいるみたい。
読んでいる間だけ、違う世界に行けて楽しかった。 -
『ぼっけぇ、きょうてえ』と同じ世界観で展開される女たちの怖くて怪しい短編集。相変わらず読みやすい。13歳で神隠しに会い、70歳で戻ってきたヨシ婆さんのお話が好きだ。これだけは人間の闇をあまり感じない。ハレー彗星や神隠しとあわせてファンタジックなムードがある。
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妖しく不気味な怖さ。
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帯には「『ぼっけえ、きょうてえ』待ち望まれた正統後継作!」と書かれている。
日本ホラー大賞を受賞した「ぼっけえ、きょうてえ」(1999《平成11》年)はあまりにも陰惨な物語が強烈な作品と思っているが、世間でもホラーの名作として評価されているらしい。同年に刊行された同名の短編集は、作者の故郷である岡山県の田舎の風情を背景にした、今思うとやはり傑出した本であった。
作者の岩井志麻子さん、その後いろいろ本を書いたようだが、私は未読。アマゾンのレビューを見るとさほど評価が高いとは言いきれない。
そこに、本書。巻末に「本書は、角川ホラー文庫のための書き下ろしです」と明記されている。令和3年6月発行。出たばっかりである。やはり4編から成る短編集。
しかし、結論を言うと、あまり良くない。やはり『ぼっけえ、きょうてえ』からは数段劣ると思った。
前にも感じたのだが、この作家、文章が上手くない。赤川次郎以降ときどき見かける「全部改行」というライトな書き方とは違い、ある程度センテンスをまとめて「意味段落」としているが、どの段落も文庫本にして3行ほどと決まっており、すこぶるヘンテコな箇所で改行し、次の段落に移行するのが、全然論理的でない。話題の連鎖もスムーズでないから、意外と読みにくい。悪文である。
それでも、『ぼっけえ、きょうてえ』と同様に、岡山県の片田舎の、明治から昭和初期にかけての風俗描写は興味を惹くものがあるし、情趣を覚える。作者は1965年生まれだから、祖父母の世代あたりの風景や人間模様を描いている。岡山県の資料をよく調べているようだが、祖父母や親戚から話を聞いた体験も生かされているのだろうか。
最初の「穴掘酒」が、グロい描写もあって最もホラー小説らしいものだった。ラストがちょっと気に入らないが、これはまあまあ良かった。
が、つづく「でえれえ、やっちもねえ」「大彗星愈々接近」は恐怖を主眼としていないのでホラーとは言えない、一種のファンタジーである。「でえれえ。やっちもねえ」の中で1箇所書かれている、明治期の岡山県を襲ったコレラを巡る人々のパニックは、『ぼっけえ、きょうてえ』所収の「密告函」でも描かれていたが、近所の者がコレラに感染していると密告し疎外し合う様子が、現在のコロナ禍を彷彿させて面白い。
最後の「カユ・アピアピ」は普通小説のような進行で、うら寂しいような人生の哀歓があり、途中登場人物の心理も巧く書かれたところがあって、なかなか良いと思った。そう思って読んでいると、最後にいきなりホラー小説になるという風変わりな構成に驚いた。
まあ、やはり、文章が下手なのはいただけない。文章が下手であっても小説としては素晴らしい、という、散文の世界ならではの例外的な事象も文学史上ないことはなく、『ぼっけえ、きょうてえ』も割とそうだったのだが、本書ではどうもふるわなかった。 -
岩井志麻子の『ぼっけえ、きょうてえ』は、表題作のみならず、収録4編すべてが傑作揃いの短編集だった。
本書は、その『ぼっけえ、きょうてえ』の「正統後継作」と銘打たれた一冊。
続編というわけではないが、共通項が多い。『ぼっけえ、きょうてえ』同様、昔の岡山を舞台にした土俗的ホラー短編が4編収録されており、タイトルも岡山弁(※注)。
甲斐庄楠音(かいのしょう・ただおと)の手になる怖い絵が装画に用いられている点も共通だ。
《妖しく、切なく、恐ろしい。江戸、明治、大正、昭和、4つの時代を舞台に『ぼっけえ、きょうてえ』の恐怖が令和に蘇る》という惹句も、大いに期待させる。
だが、読んでみると、『ぼっけえ、きょうてえ』のクオリティには及ばない。悪くはないのだが、全体的に一段落ちる。
ただ、4編のうち、表題作「でえれえ、やっちもねえ」はいちばん出来がよいと思った。
明治初期の岡山を襲ったコレラ禍を舞台装置として用いているあたり、読者がコロナ禍と重ね合わせることを想定しているのだろう。
※注/「でえれえ、やっちもねえ」は、「本当に、悪い」の意だと書いてある。が、私は「やっちもねえ」は「馬鹿らしい、しょうもない」というニュアンスだと思っていた(「埒もない」が転じたもの)。「悪い」という意味合いもあるのだろうか?-
こんにちは。私も「馬鹿らしい、しょうもない」の意味だと思います。でも滅多に使わない言葉だから、誰に対して言うかで、全然意味が変わる言葉だとも...こんにちは。私も「馬鹿らしい、しょうもない」の意味だと思います。でも滅多に使わない言葉だから、誰に対して言うかで、全然意味が変わる言葉だとも思います。2021/07/15
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kuma0504さん、こんにちは。
岩井志麻子は岡山出身だから、意味を取り違えることはないでしょうし、あえて意図的にメインでは使われていな...kuma0504さん、こんにちは。
岩井志麻子は岡山出身だから、意味を取り違えることはないでしょうし、あえて意図的にメインでは使われていない用例を選んだのでしょうね。
でも、実際に作品を読んでも、このタイトルの意味は正直ピンときませんでしたw2021/07/15
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読みやすく面白い不思議な世界。
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文庫王国から。今ほど読まなかった頃、”ぼっけえ~”は読んだことがあって、正直、それほどぴんと来なかった記憶のまま今に至る作家。ただ、そのときには『自分の読解力の問題もあるかも』と思い、とりあえず判断を留保していたもの。今回、続編ってこともなって久しぶりに本著者にトライ。結果、やっぱり合わないってことが分かりました。真実を知って背筋がゾッとする、って類の短編集だとは思うんだけど、個人的に、そのスリルが殆ど味わえず。想像の域を出ないというか、だったらもっと読者の想像力に丸投げしてもらった方が、とすら思ってしまった。もし続編が出たとしても、今度はもういい。
著者プロフィール
岩井志麻子の作品





