でえれえ、やっちもねえ (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 132
感想 : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041113196

作品紹介・あらすじ

明治十九年、コレラの大流行で父と母、兄弟を失った貧しい少女ノリ。施設に引き取られた彼女は、そこで出会った少年・小平と結婚の約束をする。
だが、激動の時代の中、生活のため、ノリは娼妓となり、小平は日清戦争に出征することに。
ある日、兵役の最中のはずの小平と突然再会し、契りを交わすが、それは小平の姿をした別の「何か」だった。
そして生まれた異形の赤子は、その狼のような容貌を利用され、ニセの予言神に祭り上げられる。
しかし、やがて赤子は本当に予言を伝えはじめ、夢とも幻ともつかぬ怪異がノリの周囲に現れだす。(「でえれえ、やっちもねえ」)
妖しく、切なく、恐ろしい。江戸、明治、大正、昭和、4つの時代を舞台に『ぼっけえ、きょうてえ』の恐怖が令和に蘇る。

感想・レビュー・書評

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  •  じっとりとした

    陰惨な暗さがあります

    どれも 悪夢のような

    暗く哀しい話です



    怖さは ぼっけえ~のほうが

    どぎつい怖さがありましたね

    完成度も 高いです

    でも これはこれで

    やっぱり独特の 気持ち悪さは

    さすが 岩井先生だな と



    「穴掘酒」の男の手紙が

    女をはめる気まんまんで

    気持ち悪くって 

    ぞわぞわしました

  •  帯には「『ぼっけえ、きょうてえ』待ち望まれた正統後継作!」と書かれている。
     日本ホラー大賞を受賞した「ぼっけえ、きょうてえ」(1999《平成11》年)はあまりにも陰惨な物語が強烈な作品と思っているが、世間でもホラーの名作として評価されているらしい。同年に刊行された同名の短編集は、作者の故郷である岡山県の田舎の風情を背景にした、今思うとやはり傑出した本であった。
     作者の岩井志麻子さん、その後いろいろ本を書いたようだが、私は未読。アマゾンのレビューを見るとさほど評価が高いとは言いきれない。
     そこに、本書。巻末に「本書は、角川ホラー文庫のための書き下ろしです」と明記されている。令和3年6月発行。出たばっかりである。やはり4編から成る短編集。
     しかし、結論を言うと、あまり良くない。やはり『ぼっけえ、きょうてえ』からは数段劣ると思った。
     前にも感じたのだが、この作家、文章が上手くない。赤川次郎以降ときどき見かける「全部改行」というライトな書き方とは違い、ある程度センテンスをまとめて「意味段落」としているが、どの段落も文庫本にして3行ほどと決まっており、すこぶるヘンテコな箇所で改行し、次の段落に移行するのが、全然論理的でない。話題の連鎖もスムーズでないから、意外と読みにくい。悪文である。
     それでも、『ぼっけえ、きょうてえ』と同様に、岡山県の片田舎の、明治から昭和初期にかけての風俗描写は興味を惹くものがあるし、情趣を覚える。作者は1965年生まれだから、祖父母の世代あたりの風景や人間模様を描いている。岡山県の資料をよく調べているようだが、祖父母や親戚から話を聞いた体験も生かされているのだろうか。
     最初の「穴掘酒」が、グロい描写もあって最もホラー小説らしいものだった。ラストがちょっと気に入らないが、これはまあまあ良かった。
     が、つづく「でえれえ、やっちもねえ」「大彗星愈々接近」は恐怖を主眼としていないのでホラーとは言えない、一種のファンタジーである。「でえれえ。やっちもねえ」の中で1箇所書かれている、明治期の岡山県を襲ったコレラを巡る人々のパニックは、『ぼっけえ、きょうてえ』所収の「密告函」でも描かれていたが、近所の者がコレラに感染していると密告し疎外し合う様子が、現在のコロナ禍を彷彿させて面白い。
     最後の「カユ・アピアピ」は普通小説のような進行で、うら寂しいような人生の哀歓があり、途中登場人物の心理も巧く書かれたところがあって、なかなか良いと思った。そう思って読んでいると、最後にいきなりホラー小説になるという風変わりな構成に驚いた。
     まあ、やはり、文章が下手なのはいただけない。文章が下手であっても小説としては素晴らしい、という、散文の世界ならではの例外的な事象も文学史上ないことはなく、『ぼっけえ、きょうてえ』も割とそうだったのだが、本書ではどうもふるわなかった。

  • 岩井志麻子の『ぼっけえ、きょうてえ』は、表題作のみならず、収録4編すべてが傑作揃いの短編集だった。

    本書は、その『ぼっけえ、きょうてえ』の「正統後継作」と銘打たれた一冊。
    続編というわけではないが、共通項が多い。『ぼっけえ、きょうてえ』同様、昔の岡山を舞台にした土俗的ホラー短編が4編収録されており、タイトルも岡山弁(※注)。
    甲斐庄楠音(かいのしょう・ただおと)の手になる怖い絵が装画に用いられている点も共通だ。

    《妖しく、切なく、恐ろしい。江戸、明治、大正、昭和、4つの時代を舞台に『ぼっけえ、きょうてえ』の恐怖が令和に蘇る》という惹句も、大いに期待させる。

    だが、読んでみると、『ぼっけえ、きょうてえ』のクオリティには及ばない。悪くはないのだが、全体的に一段落ちる。

    ただ、4編のうち、表題作「でえれえ、やっちもねえ」はいちばん出来がよいと思った。

    明治初期の岡山を襲ったコレラ禍を舞台装置として用いているあたり、読者がコロナ禍と重ね合わせることを想定しているのだろう。

    ※注/「でえれえ、やっちもねえ」は、「本当に、悪い」の意だと書いてある。が、私は「やっちもねえ」は「馬鹿らしい、しょうもない」というニュアンスだと思っていた(「埒もない」が転じたもの)。「悪い」という意味合いもあるのだろうか?

    • kuma0504さん
      こんにちは。私も「馬鹿らしい、しょうもない」の意味だと思います。でも滅多に使わない言葉だから、誰に対して言うかで、全然意味が変わる言葉だとも...
      こんにちは。私も「馬鹿らしい、しょうもない」の意味だと思います。でも滅多に使わない言葉だから、誰に対して言うかで、全然意味が変わる言葉だとも思います。
      2021/07/15
    • 前原政之さん
      kuma0504さん、こんにちは。
      岩井志麻子は岡山出身だから、意味を取り違えることはないでしょうし、あえて意図的にメインでは使われていな...
      kuma0504さん、こんにちは。
      岩井志麻子は岡山出身だから、意味を取り違えることはないでしょうし、あえて意図的にメインでは使われていない用例を選んだのでしょうね。
      でも、実際に作品を読んでも、このタイトルの意味は正直ピンときませんでしたw
      2021/07/15
  • ある男のせいで獄中に放り込まれてしまった女。しかし、女は男を恨むことなく、慕い続け牢の中で男に向けた書をしたため続けていた。やがて、恩赦のおかげで出所できた女は、同じように男に向けて手紙を書き続ける。男を想う一途な心を込めながら……。

    ***

    前回絶賛した、「ぼっけえ、きょうてえ」の正式な後継作とされる「でえれえ、やっちもねえ」をさっそく読んでみた。第一話目は腐った花の香りをかぐようなくらくらした気持ちになりながら読んだ。
    ただ、前作は全編がなんとも言い難い妖艶な雰囲気を常に湛えていたのと比べて、こちらはなんとなく生々しい。

    前回は幽霊の様なものが登場人物の前に現れて、惑わし、狂わせ、翻弄していたものだが、今回はその様子は鳴りを潜めていた。

    うっそりとした、静かで不気味で怖い。いつの間にか寄り添っている、恐ろしいものに鳥肌が立つ、という雰囲気はいくらか希釈されており、前回のままの様子が好きであるという方にはちょっと物足りないかも。
    前回の毒性ありありの作品は現代だと何か問題でもあるのだろうか?いやまさか。

    出てくる女性たちも不幸であるのだが、前作よりは幾分か恵まれており、良い生活を送ったりしていた。
    全てが最初から破綻しているという雰囲気の話が一つしかなかったのは残念かも。

    第一話目と同じ流れで、男に執着する情念、怖いがしかし美しい。という流れだったらなぁと失礼ながら思わずにはいられなかった。

    特に毛色が違ったのは「大彗星愈々接近」という話。煽情的なほとんどなく、今までにない話だった。怖いというよりは、ユーモラスで面白い。
    これはこれで乙なのだけれど、作品の雰囲気に中てられる気満々だったので、些か驚いた。

    同作者の既読作品は「楽園」であったので、こういう煽情的かつ猟奇的な話を書く人なのだと思っていたので本当に面食らった。

    ただ、第一話目は本当に素晴らしかった。ほかの作品も面白いのだけれど、これだけが飛びぬけて面白い。
    異様ではあるが、静かだった女の情念がぱっと一瞬燃え上がり、相手の男も一緒に燃やさんとする。
    憎悪にも似た愛情がぼうぼうと燃えていて、ぞっとした。
    岩井志麻子さんのこの手の話が大好きになってしまったので、これからもこういう話を続々読みたい。

  • 文庫王国から。今ほど読まなかった頃、”ぼっけえ~”は読んだことがあって、正直、それほどぴんと来なかった記憶のまま今に至る作家。ただ、そのときには『自分の読解力の問題もあるかも』と思い、とりあえず判断を留保していたもの。今回、続編ってこともなって久しぶりに本著者にトライ。結果、やっぱり合わないってことが分かりました。真実を知って背筋がゾッとする、って類の短編集だとは思うんだけど、個人的に、そのスリルが殆ど味わえず。想像の域を出ないというか、だったらもっと読者の想像力に丸投げしてもらった方が、とすら思ってしまった。もし続編が出たとしても、今度はもういい。

  • なにげにコミカルだったり、SFぽくもあったり、投げっぱなしのラストだったり

  • 岩井志麻子の明治から昭和初期を舞台にした貧困と土俗の信仰、迷信、伝説が入り交じった郷愁的で恐ろしい作品群、つまり「岡山モノ」の起源にして頂点「ぼっけぇ、きょうてぇ」の正統な続編ということで期待した一冊。
    結果からすると「ぼっけぇ、きょうてぇ」の続編と名乗るには少々足りないながらも「穴堀酒」のようなトリッキーな作品や「大彗星…」のようにファンタジックな作品もあり岩井志麻子の作品の中でもふわっとした入門編といった感じである。
    しかしながらやはり物足りない。もっと濃厚な岡山の闇を描いてきた作者の作品にしてはとにかく薄く広いのである。
    とにかく物足りない一冊。

  • 「穴堀酒」がよかった。
    書簡体小説って面白いですよ。

    全体の話の面白さは「ぼっけえきょうてえ」には及ばないが、作り出されている雰囲気はこちらも抜群に良い。
    よくもこれだけ不快な空気を作れるものである。

    他にも岡山舞台の作品を書いてそうなのでまた読んでみたい

  • 「ぼっけえ、きょうてえ」の正統派後継作ということです。直接の関係はないのだけれど、テイストはまさしくこれだなあ。どれもこれもがとことん嫌な話(褒めています)。実際になさそうでありそうで、あったら嫌だなあという印象。怖いというよりはじわじわと沁みとおるような不快感と妖しさ満載の酩酊感が独特な魅力です。薄い本なのだけれど、これ一冊でお腹一杯。
    一番ありそうな話で嫌だと思ったのが「穴掘酒」。一見一番普通っぽい話だというところが、逆にとんでもなく嫌でした。
    表題作「でえれえ、やっちもねえ」にもやられました。意外な幕切れと最後の一言に唖然。

  • 「ぼっけえ、きょうてえ」の続編らしかったが、どんな内容だったか思い出せず。それはそれとして面白かった。

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著者プロフィール

1964年、岡山県生まれ。99年に「ぼっけえ、きょうてえ」で日本ホラー小説大賞を受賞。また、同作を収録した短編集により山本周五郎賞も射止める。他に『岡山女』『魔羅節』『チャイ・コイ』(婦人公論文芸賞)、『自由恋愛』(島清恋愛文学賞)など著書多数。

「2021年 『でえれえ、やっちもねえ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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