- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041114193
作品紹介・あらすじ
現記念館の閉館まであと半年と少し。大学卒業後の進路も見えてくる中で、百花は一成のもとで和紙の仕事をしたいと強く心に思う。記念館存続のためにも活動を続ける百花だったが、予想外の事態が起きて……。
感想・レビュー・書評
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今回は、かなりディープな和紙の世界。
サークル遠足で紙の産地、東秩父と小川町を訪れたり、正月の「楮かしき」に参加したり。和紙がどのように人の手で作り出されてきたのか。百花は卒業後の進路も考える中で、和紙の仕事をしたいと思うが─。
私は昔少しだけ書道をしていたから、墨の匂いも、和紙の手触りも恋しくなった。
閉館に向けて、ワークショップで活気づけていくはずが、ラストはコロナで取りやめという悲しい事態に。
よく覚えていないのだけど、これは時代設定がきっちり令和元年頃と決まっていたのかな?
私は今なお続くコロナ騒動にうんざりしているので、現実逃避として本を読んでて、テーマがコロナでもないのに話の中でコロナが出てきたらちょっと興醒めになってしまう。
でもまぁ、時代の空気感はあるから、その時代を描くなら特別な出来事も避けては通れないよね。。昭和初期のあたりからは戦争で、1980年代後半はバブリーで、2011年設定の話だと震災みたいに。
ほしおさんの他のシリーズも読んでいるのだけど、今後同じようなことになるのかしら。お菓子番シリーズだと、zoomで連句とか…?タイトルの"お菓子番"はどうするんや。
「はーい、今月のお菓子でーす」「えー、美味しそー、食べたつもりパクっ」(エア)
…うーん、漂う残念感。
そう考えると、今を舞台にするシリーズものというのは難しいのね。時代物のシリーズみたいに、大火や政変といった出来事があらかじめわかっていて最初から組み込むなんてことはできないんだなぁ。
百花には和紙の世界を追究して欲しかったけれど、これからどうなってしまうのか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シリーズの5作目。
第一話 ぴっかり千両
第二話 墨流しと民藝
第三話 春霞の小箱
ふじさき記念館も残すところ半年ほどで閉館する。
そんな中、百花は夏休みにサークル遠足として東秩父へ和紙の紙漉き体験へと出かける。
古い町並みや趣きある鄙びた雰囲気を存分に楽しみながらも滲み出る歴史の厚み、時の流れの儚さを思い貴重な体験をする。
体験して得るものは、価値があり何ものにも代え難い貴重なものとして残るだろう。
この中で、「西本願寺本三十六人家集」を知る。
三十六歌仙の和歌を集めた装飾写本であり国宝だと。
歌を読み学ぶためのものであり、美しい筆跡を味わう。
初めて知り得ることが多くて勉強になる。
墨流し、これは水と墨と風だけで作り出す。
人間には作り出せない世界であり、一回だけの形。
いろいろな体験をすることにより、ふじさき記念館でのワークショップに活かすことができ、閉館へと向けて準備も順調に進んでいくのだが、年が明けてから世の中の雰囲気が変わってきつつあった。
2月まではなんとかワークショップもできたが、3月にはとうとう中止となる。
そして、先の見通しのないまま、閉館セレモニーもなく、記念館の最終日を静かに終えるのだった。
ラストが、寂しいのだが今回もものづくりをしている人たちの姿、ものに宿った手の跡に心惹かれる。
伝え続けることの難しさもあるが、けっして無くしてはならないものだと気づかせてくれた。
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シリーズ5冊目。今年3月に出た本でようやくここで追いついた。
第一話はほとんど「小川町和紙体験学習センター」と「東秩父村和紙の里」の紹介みたいな章。ネットで写真も見ながら読む。
サークルの遠足の中でメンバーのキャラは知れてくるが、二作目に出てきた美濃の紙漉きの二番煎じみたいで、お話としては物足りない。
和紙の里で漉いた葉書が後日届いて、皆でああだこうだ言うものと思っていたが、それもなく。
第二話は料紙、染め紙と墨流しの話。こちらも「西本願寺本三十六人家集」など調べながら読むが、ここらの知識を深めたくてこの本を読んでいるわけではないのでねぇ。
第三話は大学祭があって、閉館の準備をして、お正月に飯田に行って、楮かしぎに、記念館の最後のワークショップに硯の石紋と、駆け足でなんだか忙しい。
2つの話には『ものづくりをしている人の姿、ものに宿った手の跡に心惹かれる』とか『身体を使うとき、心は自分を超えてはるか遠いところまで広がっていく』など、いい感じのことが書いてあると思うのだけど、物語としてそれが深まらず。
そして終わりには新型コロナウイルスが登場して、あの時はあんな風に何かの区切りを迎えた人も多かっただろうしその無念な感じはよく分かるのだが、このお話にわざわざこの話題を入れるかなぁ。
これからの話の展開に思うところがあるのか、この先どういう話になっていくのだろうか…。 -
シリーズ5作目。
記念館の閉館まで、あと半年。
何とか記念館の事業を続ける為に、ワークショップに力を入れる百花と一成の様子を中心に、大学3年生となった百花の学生生活もこれまでより多めに描かれている。
今作ではがっつり三日月堂も出て来るし、三日月堂でも出て来た楮の話も再び登場。
日本各地に残る紙の歴史を描いている良作なのだが、今作はとにかく登場人物が多く、半年の物語を短いピッチで書いているので、これまでのような百花や一成の記念館や紙に対する思いの深さが伝わって来ず、かなり残念。
以前の百花の興味から、紙で「こんなことが出来る、あんなことも出来る」って言うのが楽しかった。
これまでいろいろ生み出して来たから、ネタ切れなのかもしれないけれど、今回初めて出て来た「墨流し」のパートだけは良かった。
「習字」ではなく、「書道」を学んできた身には墨のすることの大事さを描いてくれたのは嬉しかった。
何故、今作でこんなに書き急ぐのだろうと思ったら、ラストで新型コロナの影響が・・・
今後どうなってしまうのだろうか??? -
いつも通り。
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ここにもコロナが。
何年後かに読んだら、「そんなことがあったねえ」と話せるのだろうか。 -
東秩父村の和紙の里に行ったことがあるので、思い出しながら楽しく読み始めた。百花の成長を感じ、閉館からどのような進展がと思いきやのラスト。読者にも伝わる悔しさと不安。
著者プロフィール
ほしおさなえの作品






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