青嵐の坂 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041114315

作品紹介・あらすじ

扇野藩は破綻の危機に瀕していた。中老の檜弥八郎が藩政改革に当たるが、改革は失敗。挙げ句、弥八郎は賄賂の疑いで切腹してしまう。残された娘の那美は、偏屈で知られる親戚・矢吹主馬に預けられ……。

感想・レビュー・書評

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  • これはよかった!
    扇野藩シリーズに外れなし!

    破綻寸前の扇野藩。その藩政改革を命じられた檜弥八郎は、改革半ばで卑劣な家老たちの策に嵌められ切腹。
    結果、娘の那美は、親戚の矢吹主馬のもとへ。
    息子の慶之助は、世子のお気に入りだったことから、お咎めなし。
    そして、世子の仲家が家督を継ぐときに側近として戻ってきます。
    慶之助は家老たちに復讐を果たすことができるのか?

    一方、藩政改革には失敗する可能性もあり、そのときの責任を取らせるために主馬を指名。
    慶之助と主馬の関係が深い。

    主馬は藩政改革はなすことができるのか?
    商人対主馬の戦い。
    家老たちの策略。
    主馬と慶之助との関係はどうなる。
    家老たちに復讐を果たすことができるのか?

    といった展開です。

    帯に記載されている台詞
    「武家は利では動かぬ。義で動くものだ。」
    しびれます。
    主馬の生き方、その覚悟。さらに、慶之助のとった策。
    武士の矜持、信念を感じます。

    とってもお勧め!

  • 重く暗い話が最後まで続く。
    藩の改革に強権を使って邁進する中老の父が、重臣たちの奸計に嵌って切腹させられる。恨みに思った息子が復讐を誓って藩に戻ってくる。父と息子は離反していたが、これには秘密があった。また、切腹に伴い妹が遠縁に預けられるが、預け先の主人も中老に薫陶を受けていたが、重臣たちの悪巧みで妹と結婚させられ、重臣たちの意を受け表向きの改革を求められるが反発する。改革をめぐって、藩御用達の商人達も参戦する。
    幾つもの闘いと敵になったり味方になったり、最後は幕府に訴えられて絶対絶命のピンチ。改心した兄が最後のキーとなる。
    複雑に絡み合い過ぎて、先が気になりあっという間に読み進めてしまう。ただ、悲劇的に結末を迎えるので、重い読み味。

  • 藩政改革を行う檜慶之助と檜主馬義兄弟の武士のお話。
    悪い家老と商人を撃破する。領民のため、命をかける。あー葉室作品だな〜と感じる1冊。武士は利では動かず、義にて動く。カッチョいいです。

  • 凶作が続き破綻寸前となっている藩の藩政改革を巡る時代小説。架空の扇野藩を舞台にしたシリーズ4冊目。
    藩の立て直しを命じられた中老檜弥八郎は、あらぬ疑いを賭けられて切腹してしまう。
    その娘那美は、親戚の矢吹主馬のもとへ。主馬は、弥八郎から託された使命を果たそうとする。
    彼の前に、自分こそが父の存念を果たすのだと、弥八郎の息子慶之助が立ちはだかる。
    弥八郎が死の直前に思い浮かべた後継者「あの者」とは誰なのか、という謎とともに、藩政改革はどうなるのか、さらに御用商人も加わり、予断を許さぬ展開となる。
    本書でも、著者の理想を託した「武家は利では動かぬ。義で動くものだ」という主人公の活躍に、時代小説の醍醐味を満喫する。
    書中、主馬が「政を行うということは、いつでも腹を切る覚悟ができているということだ。そうでなければ何もできぬ」と、語る。
    折から自民党総裁選が行われている現代に照らして、ここまでの覚悟を持った政治家は果たしてこの日本にいるだろうかと、愚考してしまう。
    主馬の妻となった那美の言葉も、心に留めておきたい。
    「ひとの真は、たとえいま目の前に見えなくともどこかにあって、そのひとを支えているのだと思います。たとえ、どのように違った道を歩んでもいつの間にか戻ってきてしまうのが、ひとの真ではないでしょうか。いつも自分の心の中のどこかにあるものを信じればよいのだと思います」

  • 藩の財政再建に没頭しながら、御用商人の企みで切腹させられた檜弥八郎の無念を、息子の慶之助が妹の婿の矢吹主馬と果たす壮大な物語だが、武士の心意気が随所に見られ非常に楽しめた.どの世界にも蔓延っている無能な取り巻き連中や悪徳商人をうまく対処して成果を上げるための方策と陣容を、いかに整えるか.この難題を解決する手法が示されていると感じた.慶之助が最後に取った手段は、自分自身を弁えた渾身の策だろうが、命を差し出す勇気は素晴らしいと思う.

  • 文庫本の帯には「武家は利では動かぬ。義で動くものだ。」と書かれてある。
    矢吹主馬と檜慶之助を軸に物語は進んでいくが、結末は哀しい。
    主馬は重荷を背負って藩を救う事が出来るのだろうか、那美には強くなって欲しい。

  • 謀略にはまり切腹した檜弥太郎の息子慶之助と遠縁の主馬が扇野潘の建て直しの為に商人たちと戦う物語、途中まではスピード感もあり面白かったが後半からは展開がつまらなくなった。最後は慶之助も力も亡くなり
    ハッピーエンドでもなかった。ちょっと期待外れのように感じた。

  • 悪い家老と商人と戦う武士の話だ。
    武家は利では動かぬ。義で動くものだ。
    今の政治家に聞かせたい。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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