ふしぎな話 小池真理子怪奇譚傑作選 (角川ホラー文庫)

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  • 本 ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041115220

作品紹介・あらすじ

日常の中にふと忍び込む死の影、狂おしいほどの恋に潜む崩壊の予感、暗闇に浮かび上がる真っ白な肌……。著者が紡ぐ美しくも恐ろしい世界を、エッセイから小説まで見渡して厳選した、これまでにない傑作選。

感想・レビュー・書評

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  • 至福のひととき、の一冊。

    怪奇譚傑作選とあって、さすがのうっとりするほどの粒ぞろい。
    エッセイから始まる構成も良い。まるで静かで幻想的な世界への招待状だ。

    いざなわれた数々の怪奇譚は静けさをベースにしっとりと読ませてくれるのがたまらない。

    物語の中に流れている現の時間に違和感なく溶け込んでいるかのような不思議な時間。

    それが時に哀しみを携えながら、自然と自分の時間に沁み入ってくる感覚は至福のひととき。
    これに尽きる。

    著者あとがきもまた読ませてくれる。

    なるほど。「律子慕情」がふと、小池さんの心に遊びに来たに違いない。

  • 怪奇と幻想は一つになるのだなぁと読みながら思っていました。

    あの世とこの世の幽世を隔てるのは何なのだろうなぁとも。

    ですが、ここで読んだ懐かしい光景は怖いというよりも郷愁を呼ぶものでしたね。

    こういう作品は大好きです。

  • 新潮社2005年10月闇夜の国から二人で舟を出す:霊の話、青春と読書2014年8月号(No.457) 死者と生者をつなぐ糸、河出書房新社1997年8月命日:現世と異界—その往復、集英社1998年1月律子慕情:恋慕、花車、慕情、祥伝社2001年4月午後のロマネスク:ふしぎな話、夏の雨、年始客、旅路、声、小説新潮1995年8月号水無月の墓、新潮社2004年6月夜は満ちる:やまざくら、の3つのエッセイと10の短編を2021年11月角川ホラー文庫刊。見える人の家系の小池さんの話が興味深い。ただ、同じような話が続く。それでも、やまざくらのラストには、はっとさせられた。

  • おどろおどろしいホラーではなく、日常にそっと寄り添う幽霊譚でした。
    哀愁漂う感じもあり、
    恋慕と慕情の律子物語が善き。

  • 角川ホラー文庫だったので、手に取りましたが、怖い要素は少な目でした。
    短編集だからと目次から摘まんで読んでみたら、時系列でつながっているお話もあったので、順に読む方が分かりやすいです。

    死者の想いと触れ合う物語たち。読んでいて、死者と生者の境界線の揺らぎを感じ取れました。読み終わった後は、古い友人と再会した時のような、嬉しさ、寂しさと懐かしさが綺麗に混ざったような気持になりました。これがノスタルジーでしょうか。

    ---13編の中から何個かあらすじと感想---

    『死者と生者をつなぐ糸』
    あらすじ:私は14年ほど前、いるはずのない場所で、母の形をした何かとすれ違う。
    こういう奇妙な体験がいくつもある。昨年、母が死んだ。もう現世にはいないが、
    「母」の見た目を保った何かとすれ違うかもしれない。(中身は多分母ではない)

    感想:理解不能な領域に踏み込もうとしているなーって感じがした。14年前、すれ違った「母」は、本当に何だったんだろう、、。


    『現実と異界』
    あらすじ:母は、空想好きの可愛らしい人。母から日常的に怪異譚を聞かされて育った私。これは本当に怖い!という話を聞くと、母はあっさりした口調で、死者を恐れていない様子。母は、日常の一つとして死者と交流している。
    私は、母の影響もあってか幽霊話などが好きだった。作家になった私は、ホラー小説を書いている。

    感想:
    (一部要約)母から聞かされた怪談話は、死者と生者が一体化し、妙に現実的。特に理由もなく、ふらっと現世に顔を出す死者というのは、美しい情景だ①。いくら震えあがるような怖い話であっても、読み手の美意識をくすぐるような情景が潜んでいなければならない②。

    ①「ふらっと現世に顔を出す死者というのは、美しい情景だ」個人的には美しさというより神秘的という感覚に近いものを感じた。
    ②「いくら震えあがるような怖い話であっても、読み手の美意識をくすぐるような情景が潜んでいなければならない。」他の話を何個か読んでから「現実と異界」を読んだので、確かにどのお話も一貫してその情景が感じられたなあと思った。


    『恋慕』
    あらすじ:私の叔父が死んだ。
    叔父は亡くなる前、行き先を告げずに家を出て音信不通だったが、死ぬ前日、私に大好き、かわいいと電話をかけてきた。次の日、自殺で死んだ。
    アメリカで映画俳優の夢破れ、実家に居候し始めた叔父。叔父は父よりはるかに美男子。叔父は酒におぼれてだらしない男だった。私と同様、母も叔父に惹かれているらしい。私は叔父を大人の男性として意識するが、叔父が好きなのは私の母。しかも母が父と結婚する前から。そんな三角関係で揺れる私。それなのに叔父は、私をお嫁さんにしたいと冗談を言ってくる。思わせぶりなのか本気なのかつかめない。
    そして突然の死。何で死んでしまったんだろう。ある夜、叔父が化けて出て、慈しみの念を感じた。私を見たあと、母のところへ向かう、叔父。絡まった感情が伝わってくる。叔父は、名残惜し気に夏の空へ消えていった。

    感想:いるよね、叔父さんみたいなどんな年代の女性も惹きつける人。
    顔は整ってて、だらしないところが、母性本能くすぐりそう。
    私(主人公)の叔父さんへの感情は恋でも愛でもない。ファンとか推しが近いのかな。叔父さんも思わせぶりな言動ばかりして、ホストと女の子みたい。

  • 律子さん連作は、あれ?これどこかで?と思いながら読んでいたが、著者自身があとがきで書いているように、『神よ憐れみたまえ』の原型と言えるね。

    どれもよく出来ていると思うけれど、『恋慕』『年始客』『やまざくら』あたりが特に◎。

  •  2021年刊、文庫オリジナルのホラー短編アンソロジー。2001年から2017年に発表された作品が収められている。
     冒頭の3編はエッセイである。著者の母親が霊感の強い人だったそうで、著者自身も幾らか霊感があり、何度も霊を見る体験があるとのこと。なるほど、それで幽霊の出てくる物語を多く書いてきたのかと納得。
     続く「恋慕」「花車」「慕情」は『律子慕情』なる単行本に収録された連作で、主人公律子の霊体験を、幼女時代からの成長に伴って描いている。この3編が、とても良い。一般的にこれは「ホラー小説」なのか?という疑問もあり、「恐怖をメインとした小説」という定義からは外れ、普通小説としての滋味を持って物語が進む末に、最後に故人の幽霊が出現する。その故人は主人公にとって親しい人々で、遺恨を遺して死んだわけでもないから「うらめしや」ではなく、生者への優しい愛惜を持って立ち現れるのだから、ほとんど怖くない。怖いホラー小説ではないが、怪異小説と呼ぶなら当てはまる。しかしそれよりも普通小説として「良い作品」だと思う。読んだことはないが、小池さんは恋愛小説を多く書いてきた作家なので、さすが、恋愛体験の細かな機微を巧みに描いている。
     掌編小説も何編か入っているが、ちょっとしたスケッチといったところか。小池さんは川端康成の『掌の小説』を愛読しているそうだ。
     ホラー小説らしく恐ろしい物語を紡いでいる時も、作者の文体は淡々としていていたずらに情動に揺れることは無い。特に文学的に優れた表現は見当たらないが、改行が多すぎることも無く、地味ながら却ってホラーの味わいを際立たせて効果的である。その点、こんにちの他のホラー作家の作品よりもぐっと優れている。
     普通小説の味わいを持ち、ふつうに優れた短編小説の入った、良い作品集だった。
     

  • 小池さんのホラー系は好きでだいたい読んでる。既読でも短編集が出たら読みたくなる。この本も全部既読かなと思ったらエッセイは未読で嬉しかった。著者は小さい頃から不思議な怖い体験がある事を知る。そして著者の母親が霊感がある人だということも。だから小池さんのホラーはリアリティーがあったりするんだと納得。登場する霊が哀しい、寂しい感情をまとっているのも特徴かな。

  • 図書館。
    すごくよくある話なのに、小池真理子のホラーはすごく美しい。
    不倫や不貞を描いていても、なぜか小池真理子ならそれがとても美しい。

  • 昭和観漂う不思議で寂しい話。怖くはないか不思議で妖艶。あとがきを読んで合点がいった。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小池真理子の作品

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