聖女ヴィクトリアの考察 アウレスタ神殿物語 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041115251

作品紹介・あらすじ

8人の聖女を頂点とし、世界に秩序と安寧をもたらす宗教組織「アウレスタ神殿」。
霊や魔力を目視出来る少女・ヴィクトリアは、先代聖女の予言によって聖女のひとりに選ばれた。しかし、その能力を疑われ、「無能」の烙印と共に追放処分を言い渡される。
そんな彼女の前に現れたのは、辺境の騎士・アドラス。
「“俺が皇帝の実子ではない”と、君に証明してもらいたい」と依頼され、ヴィクトリアは彼と共に神殿から逃亡することに。
アドラスの故郷へ向かい、彼の出生の秘密を確かめようとするが、陰謀渦巻く帝位継承争いに巻き込まれ……。
王妃が遺した一通の手紙と、二十年前に死んだ皇子の謎。ヴィクトリアが見抜く、「消された皇子」の真実とは。
鈍感聖女と破天荒騎士の、異世界ファンタジー×ミステリー!

感想・レビュー・書評

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  • 見えざるものを視る力を持つ聖女ヴィクトリア。しかし、能力を疑われて追放を言い渡されてしまう。そこに現れた騎士アドラス。彼は自分の出生を「視る力」で明らかにしてほしいと依頼する。真実への道は、陰謀渦巻く帝位継承争いへと繋がっていて─。

    殺されたはずの皇子。皇帝妃が遺した手紙が綴る事実。アドラスは生存していた皇子なのか。旅の中で明らかになっていく真実。上質なファンタジーの世界観、キャラたちのかけ合いを楽しみながら、隠された真相とそこに絡みつく人間心理とドラマが味わえる。料理描写が美味しそうなファンタジーは面白い説を推したい。

    「私はこれから、真実を明かします。だけど、真実は決して正義ではありません」
    人には見えないものが視える、その力が認められている立場だからこそ、ヴィクトリアは真実を歪みなく伝える責任がある。彼女は先入観で目を曇らせることは許されない。それが残酷な真実であろうとも。その言葉の重みが胸に響く。

    波乱を呼ぶ真実と、秩序をもたらす嘘と、価値観を揺さぶられる。これはきっとどちらも正しくて、間違っているのかもしれない。ただ、嘘はいつかほつれて顕わになるのは確か。あの人が最後に言い残したセリフはいろいろ考えさせられるね。

    最後に好きな部分を引用しておきます。

    「先入観は、人の目を曇らせます。強い信念や感情は、時として見えるものを歪ませます。人は自分の信じたいものだけを見て、理解できないものや都合の悪い事実は、排斥しようとしてしまうんです。だから、『この人に限ってありえない』という考えはとても危険だと思います」

    「人を呪わば穴二つ。ただし、墓穴に落とす相手を誤るな、というのが呪術師の鉄則だ。無差別に呪いを振りまいては、自分自身が災厄となってしまうからな」

  • ファンタジーの世界を舞台にした、ライトミステリーといった感じ。

    さらっと読めるが個人的にはイマイチ。
    シリーズ化されそうな感じではある。

  • 後味よくスッキリ読み終えました。
    このスッキリ感は主要キャラ達の性格の良さによるところもあるのかな? みな好感のもてるキャラ達で、次の活躍を期待してしまいます。ぜひ続編を書いて欲しい!
    ミステリーxファンタジーらしいですが、ほぼファンタジーなので、がっつりミステリーを読みたい人には向いてないと思います。しかし、ファンタジーとしては面白い!
    続編が出る事を期待して星4個!

  • ヴィーが劇的に運命を切り開く力を持たず、愚直に一歩ずつ進んでいく。アドラスはおおらかで良い人で、ヴィーも真面目な良い子で楽しく読めました。恋愛要素はふわっと香るくらい。

  • とても読みやすく面白かったです。
    聖女ヴィクトリアも 他の聖女たちから認められない存在
    辺境の騎士アドラスも 周りからインチキくさく思われる存在
    ヴィクトリアが謎を解き進んでいくと いろんなことが起こる。
    最後には 昔王子を殺し損ねた呪術師ザザヤさんまで出てくる。
    冒頭 イラストとメモで登場人物紹介していたが
    あれは便利
    これ誰だっけ? に役立ちます。
    20年前に殺された王子の謎を解くファンタジー
    この作家 春間タツキさん 他にもっとこんな小説書いてないかしら?
    と探したくなります。

  • デス・ループの作家さんだったので期待してたけど、期待通りとても面白かった!
    もう少しヴィーが視る力を発揮するところも見たかった気もするけど、多角的に見る洞察力も彼女の能力の一つなのでしょう。
    手紙の謎解きも楽しかったし、繰り返し示される真実が必ずしも正義や救済ではないと言うテーマもとても好みだった。誠実な物語です。
    キャラクターもそれぞれ魅力的なので、続きがあるならもっと読みたい〜!読ませてくれ!

  • 物見の聖女ヴィクトリアの活躍がちょっと思った方向とは違ったけど、アドラスが本当に皇子なのか違うのか、ストーリーとしては面白かったのでおおむね満足。
    ヴィクトリアもアドラスもキャラが好感をもてる感じで好き。恋愛面は今回はほぼ無かったので続くのであれば何かあれば嬉しいところ。
    ただせっかく幽霊が見えるという特性をもったヒロインで「物見の聖女」というしっかりめの設定もあるヴィクトリアが、ほぼほぼその能力関係ない純粋な推理力・観察力で勝負していたのが勿体なかった。アドラスの母の霊に直接答えを出させるのは面白くないけど、もう少しその設定が生かせる展開運びを期待していたので序盤以降ほぼ幽霊関係なかったのは非常に残念。
    でも他者に見えない物を視る力を認められ、それを真実として口にする立場にある者の責任。一度でも偽ればその力は価値を無くす。この教えは深いなと思った。時には優しい嘘も必要だけど、ヴィクトリアの立場としてはそれは許されない。一度でも疑われたら誰にも信じてもらえなくなっちゃうもんなぁ。
    二巻も出てるようなので楽しみ。次はもう少し能力で活躍してほしい。

  • ジャンルとしては、ミステリーです。主人公が、死者の霊を見たり声を聞いたりできる異能持ちなのに、謎解き自体にはあまり活用されないのが意外でしたが、面白かったです。
    真実を明らかにすることで、不幸になる人が増えるかもしれないけど、「他人と違うものが見えるからこそ、見えたものに嘘をついてはいけない(ついたら二度と信用されなくなる)」という師匠の教えが、きちんと主人公の芯になっているところに好感が持てました。(反発する聖女達の言うこともわからないではないですが)

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50268617

  • 意外と面白かった!聖女さまの能力がショボい!みたいなところがあるけど、そのショボさをカバーする“先生”からの教えが聖女を聖女たらんとするところがただのチートよりよほど説得力があった。

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著者プロフィール

東京都出身。医師。2020年、焦田シューマイ名義で『結婚初夜のデスループ 脳筋令嬢は何度死んでもめげません』(双葉社)でデビュー。同年、「無能聖女ヴィクトリア」で第6回角川文庫キャラクター小説大賞〈奨励賞〉を受賞。

「2022年 『聖女ヴィクトリアの逡巡 アウレスタ神殿物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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