検事の信義 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 780
感想 : 69
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041115428

作品紹介・あらすじ

検事・佐方貞人は、介護していた母親を殺害した罪で逮捕された息子の裁判を担当することになった。事件発生から逮捕まで「空白の2時間」があることに不審を抱いた佐方は、独自に動きはじめるが……。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の代名詞作品である佐方貞人シリーズ4作目。『罪はまっとうに裁かれなければならない』ザ・モットーである検事時代の4話短編集。

    中山七里の御子柴礼司シリーズ4作品連読からの柚月裕子の佐方貞人シリーズ作品。贅沢とリーガルが過ぎる。

    検事作品としては3作品目。
    彼の愚直に真実を追い求める姿は、色褪せない。
    そして、上司の筒井、事務官の増田と言った味のある登場人物も見どころの1つであろう。

    そして何よりも本作中「正義を質す」では、柚月裕子ファンとしては興奮の思わぬ人物が登場する。

    中山七里の作品でもあったが、著者が他作で命を授けた人物が、作品を跨いで登場した時の感動たるや否や、わや、ありがたや。

    がしかし、私はやっぱり弁護士・佐方貞人が1番好きだ。最後の証人は未だ感動の名作である。

    ちなみに本筋と関係は無いが、佐方シリーズを読むと無性に煙草が吸いたくなる。過去、超ヘビー&チェーンスモーカーだった私も今日で禁煙4年9日目。

    佐方シリーズ同様、私の禁煙・禁酒も末長く続きますように。

  • 『検事の死命』に次ぐ〈佐方貞人シリーズ〉第4弾!
    4話から構成されており、今回もヤメ検になる前の検事時代の物語でした。

    ***
    第一話 裁きを望む
    →亡くなった実業家の書斎で起こった高級腕時計窃盗事件。前作『検事の死命』において裁判で闘った井原弁護士も登場し・・・!!
    第二話 恨みを刻む
    →覚せい剤取締法違反に係る事件として起訴した被疑事実に潜むからくりは・・・!?
    第三話 正義を質す
    →年末年始に帰省する際、司法修習生時代の同期・木浦に会うこととなった佐方。気の置けない仲間と共に美味しい料理や酒を満喫するはずだったのだが・・・。
    第四話 信義を守る
    →認知症の母親を殺害した息子。動機は介護による疲弊とのこと。そんな中、遺体発見から、犯人身柄確保までの“空白の時間”に疑問を持った佐方が辿り着いた真相とは・・・!?
    ***

    『検事の本懐』『検事の死命』ほどのスリルはなかったものの、各話とも考えさせられる結末には、いつも通り読み応えがあり、《罪をまっとうに裁くこと》を信念に、どんな壁にも立ち向かう佐方は素敵だなぁ♪と尊敬する一方で、彼のひたむきさが検事としての命取りになるのでは!と作中の事務官・増田と共に心配している自分がいました。

    なお余談になりますが、本書は著者の『孤狼の血』シリーズに描かれている人物も登場します(私は未読ですが。。。笑)

    佐方貞人が好きなので、次回作も楽しみです(* ゚∀゚)

  • シリーズ第4弾!
    ぶれへんな〜
    相変わらず、佐方さん、愚直に真実を追い求める。
    それが、検察機構を揺るがすことになっても!
    「検事の責務は、罪をまっとうに裁かせることだと思います」って言いきるだけの事はある!立場とか組織の事情なんな関係ない!
    こういう態度が、日頃、色々、辛い目に会ってる一般の勤め人の1人としては、何か憧れてしまう〜
    出来んからね。なかなか(−_−;)
    思ってはいても!
    私なんか、ぶれまくりで…グラグラやし…(^◇^;)
    今回も楽しませて頂きました〜

    他の人の感想読んでると「狐狼の血」の面子が出ていると!
    読んでないのに!ポチッ(^^;; (購入ボタン…)

  • 今月に入り佐方シリーズ第2作〜第4作となる本作までを読み終えました。

    本作「検事の信義」はシリーズ第3作を読み終えた時点では未購入でしたが、思わずポチッとしちゃいました。

    正直な感想を述べると前作までと比較するとなぜか少し物足りなさを感じ、純粋な評価としては☆4つ。

    なのに☆5つの評価をつけたのは...ドハマリした「孤狼の血」シリーズの日岡をはじめとする主要登場人物が本作でちょこっと顔を出したからに違いありません。

    いやぁ、まさかまさかのサプライズ、友情出演枠って感じですかねー。

    愚直、これ以外に表現する言葉を知りません。

    そんな佐方貞人の物語。

    続編を楽しみに。




    説明
    内容紹介
    孤高の検事の気概と執念を描いた、心ふるわすリーガル・ミステリー!

    検事・佐方貞人は、亡くなった実業家の書斎から高級腕時計を盗んだ罪で起訴された男の裁判を担当していた。被告人は実業家の非嫡出子で腕時計は形見に貰ったと主張、それを裏付ける証拠も出てきて、佐方は異例の無罪論告をせざるを得なくなってしまう。なぜ被告人は決定的な証拠について黙っていたのか、佐方が辿り着いた驚愕の真相とは(「裁きを望む」)。
    孤高の検事の気概と執念を描いた、心ふるわすリーガル・ミステリー!
    著者について
    ●柚月裕子:1968年、岩手県生まれ。2008年、『臨床真理』で『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞を受賞。16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞を受賞。丁寧な筆致で人間の機微を描きだす、今もっとも注目されるミステリ作家の一人。他の著書に『最後の証人』『検事の死命』『蟻の菜園‐アントガーデン‐』『パレートの誤算』『朽ちないサクラ』『ウツボカズラの甘い息』『あしたの君へ』『慈雨』『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』『盤上の向日葵』などがある。

  • これまでより少し薄味ですか?
    それとも柚月裕子さんの味に慣らされて麻痺してしまったのかも知れません。
    孤狼シリーズの日岡の関わり方が程よい感じです。
    安易に対峙させてしまうと、これまでが台無しになりかねないですから。
    とりあえずは、ここまでなのですね。
    気を長くして待っていますので、柚月裕子先生、また佐方貞人の物語をお願いします。

  • 柚月裕子『検事の信義』角川文庫。

    検事の佐方貞人を主人公にした連作短編4話収録のシリーズ第4弾。

    検事としての正義を貫くために自らの信念を決して曲げず、闘い続ける佐方貞人。いずれの短編もずしりと重い。

    昨今は本当に真っ直ぐに生きることが難しくなったと思う。全うに生きていても余り良いこともなく、苦しいことの方が多いように感じる。良い思いをするのは何時も悪い奴等ばかりなのだが、真っ直ぐに生きることの意味をもう一度考えてみたい。

    『第一話 裁きを望む』。ミステリーとしての面白さと検事も組織という枠組みの中で行動しなければならない普通の人間であることを認識させてくれる快作。佐方貞人が異例の無罪論告をせざるを得なかった窃盗事件の裁判を巡る物語。佐方はもう一度事件を調査し、被告人の無罪を証明する証拠を確認するが、何故か被告人の証言に違和感を覚える。

    『第二話 恨みを刻む』。正義を貫くことの難しさとそれに伴う過酷な試練を描いた短編。昨今、コンプライアンスなどと流行りに乗る組織は得てして、正義を貫くことを善しとしないのだ。覚醒剤取締法違反の罪で送検された男の逮捕の経緯に疑問を抱いた佐方は……

    『第三話 正義を質す』。佐方の正義と組織の正義は永遠に交わることはないのか。佐方は検察仲間の木浦から年末に宮島の旅館への宿泊の誘いを受ける。木浦は付き合っていた女性から婚約を解消されたと言うが、実は佐方を誘わざるを得ない理由があった。何と面白いことに『孤狼の血』『凶犬の眼』に登場した日岡秀一がゲスト出演する。

    『第四話 信義を守る』。やりきれなくなるほど悲しい事件の真相。85歳の認知症を患う母親を殺害した息子の事件に違和感を覚えた佐方。あくまでも真実を追求しようとする佐方……

    定価748円
    ★★★★★

  • 佐方貞人シリーズ第四弾。4つの短編からなるリーガルミステリー。第三話では『孤狼の血』の日岡刑事が登場。本作も十分面白かったが、対決する相手の悪役度がそんなに高くなかったので、星4つ。

  • 佐方貞人シリーズ4作目

    第三話「正義を質す」に、まさかあのシリーズの面々が登場してくるとは!読んでいてニヤリとしてしまいました。
    シリーズを追う毎に上がるハードルを、見事に越えてくれる面白さ。
    佐方貞人氏と柚月裕子氏にリスペクトです。

  • 佐方貞人シリーズ第4作目(2019年4月単行本、2021年10月文庫本)。久し振りの柚月裕子、やっぱりいいなあ。「盤上の向日葵」以来だが、このシリーズは3年前に1〜3作を読了して柚月裕子のファンになるきっかけになった作品だ。今回は4話の短編集になっているのだが、驚いたことに<第三話 正義を質す>では「狐狼の血」「凶犬の眼」の登場人物が登場していて、思わずその人物像を振り返るためにその本を再読してしまった。
    主人公の検事の佐方貞人の他、上司の筒井義雄副部長、事務官の増田陽二も変わらず佐方の理解者として登場し、佐方を助ける。

    <第一話 裁きを望む>
    32歳の男性が高級腕時計の窃盗と住居侵入の容疑で起訴されたが、事実関係が後から判り無罪となった。米崎地検の刑事部の検事が起訴した案件を公判部の検事、佐方貞人が無罪論告をした珍しいケースだった。
    捜査が不充分だったことは明らかで、被告人が無罪に繋がる重要な事実を忘れていたということも違和感があり、刑事部が起訴したことにも佐方は疑問に思っていた。
    それから次から次へと新事実がわかってくる。そして窃盗罪で起訴され無罪になることが被告人の目的だったことがわかる。二度と同じ日時と場所で起きた同じ行為については処罰されない、即ち「一事不再理」が目的だった。盗んだのは腕時計ではなく遺言状、新旧遺言状のすり替えだった。婚外子である被告人が相続人となっていた無効になっている最初の遺言書を正規のものにするために。完全犯罪の成立だ。しかし佐方は職務強要罪で起訴するつもりでいた。
    そして刑事部が起訴に踏み切った裏には次席検事の本橋荘司が絡んでいたが、佐方の上司、筒井義雄副部長の指示は佐方の思いとは違っていた。
    今回は筒井の懐の大きさを思い知ることになる佐方であった。

    <第二話 恨みを刻む>
    覚醒剤取締法違反で起訴された男の公判を担当することになった佐方は、逮捕のきっかけとなった目撃証人に疑問を持つ。被告人の室田公彦は前科も2回あり、家宅捜査で現行犯逮捕されている。間違いなく有罪であるが、その家宅捜査令状を取る為の目撃証人の証言に虚偽があれば違法逮捕になり、有罪には出来なくなる。
    佐方は増田と地道に聞き込みを行い、逮捕を主導した米崎西署の生活安全課の主任、鴻城巡査部長と目撃証人の武宮美貴が昵懇の仲であり、目撃の日時を自分の都合に合わせて偽らせていたことが判明する。
    そして同時に米崎地検公判部に匿名の内部告発と思われる告発文書 が届いていた。調べると米崎西署の鴻城が勝手に調書を書き換えているという噂があった。そして鴻城の部下の木梨が今回の事件の調書の証言は捏造であるという告発文を地検に送ったということまでわかり、それは木梨の同期の巡査が鴻城のパワハラで自殺していたことが影響していた。
    これを公にして鴻城を起訴に持っていくと検察と県警の関係に影響が出て、佐竹も上司の筒井も協力した米崎東署の南場署長もどうなるかわからず、室田の裁判も負けてしまう。しかし筒井も南場も腹を括っていた。鴻城は起訴されて上司の生活安全課課長の曾根谷治夫は左遷されるのだが……。
    事実の裏の真実にこだわり、罪をまっとうに裁くという信条を貫く佐方の姿は変わらず、上司の筒井もその佐方を認めて決して潰さない結末になるのだが、しかし後に告発の裏に隠された目論みが見えてきた時の筒井の「罪を裁けなくても胸に刻む」という凄みが怖い。これによって佐方のやるせない気持ちを吹っ切らせるのだった。

    <第三話 正義を質す>
    佐方貞人シリーズ2作目の「検事の本懐」で登場した広島地検の佐方の同期の検事の木浦亨や「狐狼の血」「凶犬の眼」の主人公の刑事の日岡秀一、そして広島仁正会会長の綿船幸助(急死)、仁正会理事長の溝口明(後に二代目会長)、仁正会幹事長で溝口派の瀧井銀次(後に仁正会会長代行)、仁正会本部長の笹貫幸太郎(溝口と対立)などが登場して興味倍増。
    仁正会では急死した綿船会長の跡目を巡って内部抗争が勃発しようとしていた。順当なら溝口理事長が継いで問題は起こるはずはなかったが、溝口は恐喝事件で米崎県警に逮捕された。そして佐方が溝口の公判担当検事になった。
    そんな時、広島地検の木浦から年末の帰省時にお誘いの電話があり、久し振りに宮島の旅館に一泊して旧交を温めることになった。
    しかし木浦の目的は別にあった。広島での市民を巻き込むヤクザの抗争を阻止する為に溝口の保釈を認めろというものだった。しかしこれにも裏の事情があった。溝口の保釈を木浦に進言してきたのは広島北署の暴力団係の巡査の日岡秀一だった。

    広島高検では最大の懸案を抱えていた。広島高検の八百坂一志公安部長が検察の裏金問題をテレビで告発するという情報である。八百坂は何かと問題ある検事で暴力団との癒着が噂されていた。検察としてはどんな手段を使っても八百坂の動きを封じたかった。そしてその確実な方法は本人を牢屋にぶち込むことだった。
    そんな情報を日岡がどこから得ていたのか、日岡は木浦に溝口の保釈と引き換えに八百坂逮捕案件を教えるというものだった。八百坂逮捕案件の情報を握っているのは、仁正会幹事長の瀧井銀次だと言う。日岡は広島市民を巻き込む大規模な抗争勃発を避けるために仁正会の内部分裂だけはどうしても避けなければならないと木浦に訴える。県警幹部は逆に内部分裂を煽っていたので、日岡は検事である木浦に直接交渉に出たのだった。木浦は次席検事の上杉義徳に報告すると木浦と同期の佐方に溝口の保釈を促すように指示されたのだ。
    溝口は後に戻ってくる保釈金の1億円は全額慈善団体に寄付する意向だと言う。佐方は毎年自分のボーナスの一部を児童施設に寄付している。このことは木浦は知っている。堅物の佐方と言えども市民を抗争から守るためと言う大義の上に、泣きどころを突かれ保釈を許容するのだった。

    <第四話 信義を守る>
    米崎地検刑事部から公判部の佐方に上がってきた起訴案件の中に気になるところがあった。刑事部の検事は任官12年目の検事で40歳の矢口史郎、事件は介護に疲れた55歳の男が85歳の認知症の母親を殺害したというもので、犯人は道塚昌平、自供している。殺害動機は全てが嫌になったからと答えている。殺害した遺体を山林に隠し、逃亡のために殺害現場を離れ2時間後に確保されている。しかしその距離は5キロしかなかった。佐方はその距離に2時間もかかっていることが気になったのだ。
    そしてその2時間の謎を佐方と増田で調べて行くうちに全く違う側面が見えて来る。殺害したのは事実でも状況は全く違っていた。殺人の事実と真実は違っていた。
    矢口の作成した公判引継書には求刑懲役10年、求刑理由は殺害動機は自分勝手で、殺害後逃亡すら企てたとなっていた。
    それを任官5年目の公判部検事が任官12年目の刑事部検事に異議を唱えようとしているのだ。しかし佐方をよくわかっている上司の筒井副部長は再調査を許可する。
    昌平の母親への献身的な行動、辞めた勤務先での昌平への好意的な評価、どれも供述内容と正反対だった。まるで自ら罪を重くして刑務所に入りたいように思える供述だ。
    そして空白の2時間の謎がわかる。教会に行って神父に罪を告白し、そして山林に戻り母親の元へ行くつもりでいた。昌平はクリスチャンだった。キリスト教では自殺は許されない。神父は自首を促す。昌平はステージⅣの胃がんの宣告を受けていた。そうであれば刑務所の中で静かに死を迎えよう、出来るだけ長く刑務所に収監されるよう罪を重くしてもらおうと嘘の供述をした。
    佐方は懲役2年、執行猶予5年を求刑する。検察が執行猶予を求める前代未聞の求刑だ。自分の信義を守る佐方、検察の立場、組織の権威を守ろうとする矢口、そして死を望んでいた被告人の道塚昌平。しかし罪はまっとうに裁かれた。佐方貞人という検事がこれからも存在していくことを許す検察組織であってほしいと思うのだが…。

  • 色々な心理や事情があるなか 気になる事を追究し、真実にたどり着く。信頼できる上司も良いです。
    涙もろく 4話の昌平さんの母親に伝えたい言葉に泣かされました。
    佐方シリーズ一気読み 短編で空いた時間に読むことができました。

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著者プロフィール

1968年、岩手県生まれ。2008年、『臨床真理』で『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞を受賞。16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞を受賞。丁寧な筆致で人間の機微を描きだす、今もっとも注目されるミステリ作家の一人。他の著書に『最後の証人』『検事の本懐』『検事の死命』『検事の信義』『蟻の菜園‐アントガーデン‐』『パレートの誤算』『朽ちないサクラ』『ウツボカズラの甘い息』『あしたの君へ』『慈雨』『盤上の向日葵』などがある。

「2022年 『チョウセンアサガオの咲く夏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚月裕子の作品

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