川のほとりで羽化するぼくら

  • KADOKAWA
3.10
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本棚登録 : 622
感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041115473

作品紹介・あらすじ

仕事を辞め、慣れない育児に奮闘する暁彦は、“ママじゃない”ことに限界を感じていた。そんなとき拠り所になったのが、ある育児ブログだった。育児テクニックをそこから次々取り入れる暁彦だが、妻はそれがつらいと言い……(「わたれない」)。私たちに降りかかる「らしさ」の呪いを断ち切り、先へと進む勇気をくれる珠玉の四篇。

感想・レビュー・書評

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  • 自分達を縛る呪縛を振り払おうとする、川のほとりのぼくら。時代や舞台に変化をつけた短編4編

    「わたれない」
    これは別の短編集で既読
    現状の日本の家族形態から 少しズレた夫婦
    この作品が一番自然体で好き

    「ながれゆく」
    七夕の織姫・彦星からの着想
    織り続ける事、愛する者との年一回の逢瀬。
    前世からの原罪に疑問を持つ
    これは示唆的すぎてよくわからない

    「ゆれながら」
    近未来、あるいはパラレルかな
    病気の蔓延から人工授精が社会的常識となった社会 閉鎖された過去のままの地域
    そこは 川で分たれていた
    これも なんとなくわかるんだけど
    掴みきれなかった

    「ひかるほし」
    ひかる星は、夫の勲章
    それは 夫だけの物なのか
    これは共感度お高めでした
    社会的にはとても認められた夫
    結婚当時から続く傲慢さ
    認知症となった夫への対応に苦慮する年老いた妻
    そして、残る人生に自由を選んだんですね
    舅を思い出しましたね

    彩瀬さんって、ちょっと変わった設定するんだなと。特殊な状況での 普遍みたいなところを書いてくるのかな。

    • ゆーき本さん
      わー!彩瀬まるさんだ!
      好きなんだけど最近の全然読んでないんだよあー。
      「あのひとは蜘蛛を潰せない」ですきになったけど
      ファンタジーな短編集...
      わー!彩瀬まるさんだ!
      好きなんだけど最近の全然読んでないんだよあー。
      「あのひとは蜘蛛を潰せない」ですきになったけど
      ファンタジーな短編集の「くちなし」が一番好きです⟡.·*.
      2024/05/09
  • 橋にまつわる短編集。
    どの話も好きだったが、同作家さんのSFチックな話を初めて読み、着眼点も好きだと感じた。
    最近子供ができ、年中行事や童謡なども調べているため、七夕の話についてもそんな見方があるのか、と興味深く感じた。
    確かに、罰として1年に1回しか会えなくされていたなぁと。

    他の話でも世間から見た男女の役割の差、出産という行為で愛情の大きさが変わるのかなど、考えてしまう部分が多かった。

  • 美しいタイトルと装丁、気になっていた本です。
    違う世界に行ける気がする、川を越えれば。しかし、なかなか渡れないのが現実。先入観、人の見方(世間の目)そんな呪いを断ち切ることができたらどんなに楽かと思う。
    川と橋をモチーフに、ジェンダーレス、男性の育児、神話(過去)、ファンタジー(未来)へと舞台は飛び、ラスト男尊女卑世代の背景(この世代の妻の心理を若い作家さんが表現され凄い)の現代へ戻る。
    「らしさ」に縛られ、解放を求めている登場人物。その解放されたい現状は本人しか気づくことはできない。その心情が伝わり、自分の抱えるものと重なりました。
    しかし、一概に解放されればいいというものではなく、自分の役割があるほうが楽、ということもありますよね、と。そのバランスと自分で選択できるようになりつつある社会について考えた一冊だった。ツーンとした息苦しさが残った。神話、ファンタジーの章は、訴えは響きはするのですが、宙を浮いてるような不思議な感覚。

    ウスバキトンボの北上。ウスバキトンボは北上しすぎて死滅する習性がある。それは自分たちの生きやすい世界が来るのを信じて飛んでいるから。

  • 川が ジェンダーバイアスや

    古い価値観の象徴かな

    それを越えて 変化したいという人々の

    勇気や戸惑いが

    読んでいて とても心地いい



    がんばれ がんばれ

    と本の向こうにも

    自分にも帰ってくるような気がする

  • 世間の柵を飛び越えたい。自分をいつも縛り付けるものを取り払い身軽になりたい。
    川を挟んで、こちらの岸からいつも見ている向こう岸。
    心の中でうごめく羽をそっと静かに鎮めながら、いつかきっと目の前の橋を渡って向こう岸へ行くのだ、と人知れず願っていた。あちらに行けさえすれば、きっと未来は明るいはずだから、と。
    そんな羨ましく思う向こう岸も、ただ行くだけではだめだ。行った先で自分がどのように行動できるのか、それが大事なんだと思った。

    先日ノーベル物理学賞を受賞された、米プリンストン大の真鍋淑郎先生のスピーチが印象深い。
    何故日本ではなくアメリカで長年に渡り研究を続けておられるか、という質問に対し
    「私は人生で一度も研究計画書を書いたことがありませんでした。自分の使いたいコンピュータをすべて手に入れ、やりたいことを何でもできました。それが日本に帰りたくない一つの理由です。なぜなら、私は他の人と調和的に生活することができないからです」
    本作を読んでいる時に聞いたこのスピーチがとてもタイムリーに思えた。
    もちろん、ただアメリカへ行けばいい、という訳ではないはずだ。

  • 優しくて穏やかで、ガラス玉みたいにキレイで澄んだ文体だった。落としたらすぐに割れてしまいそうな繊細さ。すきな文体。

    さまざま(本当に”さまざま”)な世界で生きているひとたちが、それぞれなりの形で「羽化」していく物語。

    「ながれゆく」はファンタジーの世界だった。天の川の伝説は由来を知らなくて、こんなにいろんなロマンチックな言い伝えがあるのだなあと感心した。

    いちばん最初の「わたれない」が、いちばん身近な世界というのもあり好みだった。初めて知る名前のトンボのエピソードが印象に残った。


    全体を通して、女性の立場に焦点が置かれているように感じた。
    どんな状況でも、一歩を踏み出すのって大変だし勇気がいる。でもその一歩はとても大きな岐路になる。

    彩瀬まるさんはずっと気になっていた作家さんで、ようやく著書を読んだ。
    ほかの作品も読んでみたくなった。

  • 向こう岸には、希望。彩瀬まる『川のほとりで羽化するぼくら』8月30日(月)発売!|株式会社KADOKAWAのプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000009076.000007006.html

    【小説連載】彩瀬まる「わたれない」|小説 野性時代
    https://yaseijidainote.kadobun.jp/m/mab06b98c2b04

    「川のほとりで羽化するぼくら」 彩瀬 まる[文芸書] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322103000630/

  • ❇︎
    わたれない
    ながれゆく
    ゆれながら
    ひかるほし

    独特な視点からの不思議な話


    『わたれない』が、
    読み馴染みが良かった

  • 4つの短編は、「川」を境にしたあちら側とこちら側がテーマ。タイトルがひらがな5文字という共通項はあるものの、ストーリーはファンタジーやSF風味のものもあり、実に様々。それでもやはり、彩瀬さん独特の生々しさをすごく感じる。息苦しく、悩ましく…そんな現実から抜け出そうとあがく登場人物達。どの話もしっとりしていて、温度を感じる。
    不思議だな、ぬかるみに足を取られたようなままならない展開が続くのに、すうっと清々しい風が吹き抜ける瞬間がある。タイトルの「羽化」に、なるほどと思う。グロさと爽やかさが背中合わせ。そんな凄い技、彩瀬さんしかできない。
    そしてそれぞれの話で、ジェンダーについても、とても考えさせられる。あなたはどう思う?と問われているような。織姫と彦星の話も、これまでとは違う視点から見つめ直すことができた。読み終えて、胸の奥に結晶ができたような…尊い気持ちになれるのだ。

  • こうあるべき、という自分。こうあらねば、という自分。こうありたい、という自分。
    そういうあれこれにがんじがらめにされて生きている私は時々息ができなくなる。
    川は形を変える。色も変える。水の流れを見ていると自分の奥の奥の方に何か動くものを感じる。
    あぁそうだった。私も水のように自由に動けばいいんだ。くびきから逃れ、狭い箱から一歩を踏み出す。
    彩瀬まるは私に教えてくれる。自分で自分を決めつけるなと。
    べき、も、ねば、も、たい、も放り出してしまえ、走りだせ、今は見えないその羽で飛び立て、と。
    川が流れる。自分の中にある水も流れる。あなたはあなたの道を見つけて行け、と背中を押された。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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