葦の浮船 新装版 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2021年6月15日発売)
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本 ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784041116029

作品紹介・あらすじ

小関と折戸は同じ大学に勤める助教授同士。業績もなく風采の上らない小関に対し、折戸は秀才型で女性からも人気。
性格は対照的だが不思議とウマが合った。折戸は妻子ある身で通信教育で教える人妻と不倫関係に陥る。
やがて、出世に目がくらんだ折戸は、相手を面倒に思うようになるが……。
大学内の派閥争いを軸に男女の愛憎を描いた、松本清張の傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 物語よりも、場面場面に清張のエロさが沸き立ってくる。そのエロさは、明らかにかつてモテなかった男の描く陰湿なエロさで、カラッとしたものがない。大変扇情的。

  • 松本清張氏の小説、初めて読んだ。
    昭和な香りが、いいかんじ。
    もっとスピードのあるイメージだったけど、
    普通に男女のもつれ的な。
    うーん、まぁ時代もあるのかな。

  • 小関は良い奴。
    折戸は、いるよねこういう奴でも因果応報喰らってほしかったなぁ…!!

    近村達子は正しい意味で賢い女性だったが、笠原幸子は恋が絡むと盲目になる性質だった。「分かってはいるけど嫌いになれない」みたいなね。もっとちゃんと旦那さん相手に真摯に向き合えば宜しかったのだ。

    今の時代ならSNSやらなにやらで大炎上して折戸も教授から降りることになっただろうが、当時はうまくもみ消すことができたんだろう。
    とはいえ、今も大学のアカデミアにはこの頃のニオイが残っているよなぁ。

  • 不倫を背景とした学閥の闇に言及した作品。
    呆れるほど善い性格の小関には読んでるこちらがもどかしくなる。
    折戸には天罰を食らわせてほしかったな。

  • 正義は勝つ!の結末じゃなかった。松本清張の作品は最後に悪人たちに天罰が下るものが多いのだけど、これは違って残念。私が松本さんの作品が好きなのは水戸黄門的なラストが待っているからだとこの作品を読んで気づいた。ストリーは実力ある大学助教授の見境ない女性関係から始まる。その男は自分さえよければ良いと思っている最低な男。その男には冴えないけれど善良な同じ助教授の親友がいる。女関係でトラブルがあるとその善良な友人に後始末をさせる。終盤には最低男に社会的破滅かと思う事件が起きた。なのに、なぜ松本さんは彼に天罰を与えなかったの?読後感悪し。

  • 性格も学問の研究スタイルも全く異なる二人の大学助教授の不思議な関係と大学内の悪しき支配秩序を描いた作品。
    東京R大学国史科の折戸助教授は36歳で上代史専攻、小関助教授は34歳、中世史専攻。折戸が独自の発想を生かし業績を上げ、性格も社交的であるのに対し、小関は存在感を示せず風采も上がらない。
    折戸は羽振りがよく女遊びが過ぎ、人妻との不倫関係も持つようになる。一方、小関は自らを鈍才と自覚し、学問研究に秀でる折戸を尊敬し、彼の頼みは何でも聞き入れていた。折戸は、人妻と享楽に耽った後、出世欲にとらわれ次第に相手を面倒に思うようになる。さらにその関係を精算できないうちに、小関に好意を寄せる若い女性を我が物にしようと企む。
    小関は折戸の行為に辟易しながらも彼の「火遊び」の後始末を引き受けてしまう。そればかりか、相手の夫との修羅場に際しても折戸を庇おうとする。
    能力は劣り朴訥だが、どこまでも誠実な小関を巧みに利用し、小関を慕う女性まで横取りしようとする折戸は恩を仇で返す最低の男だ。また、小関は性格はいいがお人好し過ぎる。
    同僚同士がここまで支配・隷従の関係になる設定はすんなり受け入れがたかったが、終盤はスリリングで予期せぬ展開となり、面白かった。
    ただ、小関の信じられないような従順さや諦念がだめ押しのように表現されるラストは、人間、誠実に生きるべしとの教えかもしれないが、現実味にかけ、興醒めてしまった。

  • 大学の助教授である36歳と34歳の同僚。この2人は、研究能力や業績、研究スタイルも性格も女性関係も全く異なる。こうした2人なのに、なぜか大きな摩擦もなく長い旧友関係が続いている。当然のことながら、一方が女性関係で問題を起こし・・・・というストーリー。今も昔も変わらぬ、一種独特な組織である大学、そして考古学の世界。松本清張の1つのモチーフとして取り上げられる組織でもある。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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