終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#11 (角川スニーカー文庫)
- KADOKAWA (2021年7月30日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041116098
作品紹介・あらすじ
〈最後の獣〉が創り出した少年は、選択を迫られる。今ある幸せを望み外の世界《レグル・エレ》を滅ぼすか、自分が滅ぼされるか――。終末は目前、ティアットは聖剣モウルネンを手に、その答えを問う。
感想・レビュー・書評
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すかもかシリーズ最終巻。
素直に白状すると、読後感はあまり良くありませんでした。
ヘリティエの結界から大賢者とエルク、三地神を助け出し、核として生まれたモーントシャインも殺さずに済み、世界に拒否され消えるはずだったヴィレムも別の世界へ旅立つ事でそれを回避(モーントシャインとネフレンも一緒)。そして最後に、フェオドールが生き返って…と瞬間的には全てがハッピーエンドのように見える。
一方で、大賢者たちの救出は成ったものの、浮遊大陸群が今後墜落することは確定しており、陸の獣群を倒せなければ生き残れない。
「小説が終わった後の話」を考えるとやはり世界の終末は避けられそうもなく、何と言うか語彙力がなくて表現できないのですが、とても複雑な気分になってしまいました。
とは言え元々そういう終末感(?)が売りの物語ですから、そのような意味では最後までらしさを貫けており良かったと思います。
ヴィレムやクトリからティアットたちへ、ティアットたちからアルミタやユーディアへ、生き様というか信念というかそういったものが脈々と受け継がれていく様を見れただけでも読んだ甲斐はあったかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
すかもか最終巻。
あとがきによると続編の予定はまだ無いらしい。
けど続きそう。
次があるとしたらアルミタ世代が中心の話になるのか、はたまたリィエルか、その他か。 -
最終巻なんだけど、最終巻らしくない。らしくないんだけど、終わりに近づく世界の終わりをどのように迎えるか、という点を突き詰めて描いてきた本作のフィナーレを飾るにはある意味相応しいラストだったのではないかと思えてしまう
結界世界での探索。当初の目的は核として囚われた神様達を救い出す。計算が崩れてからの目的は世界の核となった少年を倒す。そうして結界世界と少年を終わらせることでしか、終わりに近づく浮遊大陸群を救うことは出来ない。
これはある意味、本作において幾度も繰り返されてきた流れだね。一方が生き残るために他方を終わらせないといけない
かつて星神に挑んだ人間達や、妖精たちの為に敵となったヴィレムやフェオドールと同じ構図。対立する敵を倒すことでしか生きる道を選び取れない
本作はそういったジレンマとずっと向き合い続けてきた
その中で新たな息吹となったのが新世代とも呼べるアルミタとユーディアだね
彼女たちは先輩達のお陰で、生きる為に自分の意志を無視して戦わなければならないという立場ではなかった。戦うことも戦わないことも自由に選べる立場になった。その状態で決戦に参加した
そうした新たな意識を持つ彼女らが居なければこの決戦はまた別の模様を見せることになっただろうね
また、意外な役割を見せたのがヨーズア
本物の彼は絶望により他を害する存在となってしまったのだけど、この結界世界では絶望していたが為に同じように絶望していたモーントシャインに新たな道を示すことが出来た
そしてモーントシャインが知った新たな道こそ、他を模倣し侵食する事しか出来ない結界世界に新たな意味を教える事になるわけだね
その流れは他にどうしようもない筈だった状況の中に一つの光明を齎すことになるんだよね。全知となったモーントシャインが知らない者にこそ、救いが有る
でも、その光明すらやはり他にどうしようもない、自分達が生き残るために他を終わらせなければならないという構図からは脱していない。その象徴的シーンが翠釘侯との戦闘シーン
でも新たな世代であるユーディアは戦場の希望になりかけたアルミタをアルミタのご飯を食べたいなんて理由で邪魔してしまう。これは今までのどんな勇者たちも妖精兵たちもしてこなかった行為
でも、犠牲を回避するかのようなこの行動が積もり積もって再び新たな道へ繋がっていくんだよね
いや、それにしてもアルミタに触発されたティアットの行動には驚かされたけども
アレって、目標として考えた時に作戦失敗と表現されても仕方ない事態だよね?もっと納得できる道を、というお題目の下にリスキーな道を採ったものだ……
だからこそ、そんな子供たちの無茶を受け止めるようにヴィレムが控えていたシーンには感動しそうになったね
ずっと前に終わりを迎えた筈だったヴィレム、世界の為には終わらないといけないモーントシャイン。この二人が終わらなければ世界が終わってしまう。なら、そもそも世界から出ていけば良い。いや、発想としては納得できるけどそれを実行するって本当に凄い人達だ(笑)
でも、こうして自分達が生きる為に他を滅ぼすという環から脱してみせた流れは秀逸
そうして残された者達が立つのは、近々終わる世界ではなくいずれ終わる世界。いつの日か終わってしまう点はやっぱり変わらない。島はいずれ落ちるし、地上では変わらず<獣>が跋扈している
でも、終わるまでに幾つもの選択ができる。悩むことが出来る。それはかつての先輩達がどうしても出来なかったこと
このエピソードの中で妖精たちにとって大切な家がある68番浮遊島が落ちたのだけど、それが終わりとして描かれていない点は印象的
長らく妖精たちにとって帰る場所として機能していた妖精倉庫。それが無くなってしまえば帰る場所が無くなってしまったと受け取られても可怪しくない
けれど、あの賑やかで幼い妖精たちはその状況を悲観せず、むしろ新しい土地にはしゃぎ回り、更には保護者であるナイグラートの負担を軽減しようとしている
それはきっと秘匿、保護される立場であった妖精たちが成長した瞬間と呼べるのだろうね
遠い世界へ旅立ったモーントシャインは浮遊大陸群に居るエルクに「いつか、きっと、また会おう」と言葉を残した
浮遊大陸群に居るリィエルは高い空へ旅立った誰かへ向けて「まってろよー!」と叫んだ
モーントシャインやヴィレム達の旅の目的を考えたら再び会える可能性なんて万に一つも無いかもしれない。でも、絶対に無いとは言い切れない
それこそ、周囲に多大な迷惑をかけつつも勝手に死んで、だというのに奇跡みたいな偶然を積み重ねて目を覚ました彼のように再び会えるかもしれない
いや、本当に彼の復活には驚かされた。あの別れ方ならいずれ復活するだろうとは予想していたけど、このように綺麗で後腐れなくて、そしてティアットとマルゴから逃げられなくなった彼はようやく安寧の場所を手に入れられたということなのだろうね
また、それと同じように本作にも再び会えないものかと夢想してしまう。一応は『異伝』があるから、そこでこの物語とは再会できる筈なのだけれど
著者プロフィール
枯野瑛の作品





