ことことこーこ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041116234

作品紹介・あらすじ

離婚して老父母の暮らす実家に戻った香子。専業主婦を卒業し、フードコーディネーターとしての新たな人生を歩み出した矢先、母・琴子に認知症の症状が表れはじめる。弟夫婦は頼りにならず、仕事も介護も失敗つづき。琴子の昔の料理ノートにヒントをもらい、ようやく手応えを感じた出張の帰り道、弟から「母さんが見つからない」と連絡があり……。

年とともに変わりゆく親子の関係を、ユーモアと人情たっぷりに描き出す長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 離婚して実家に戻った香子が、認知症の母、琴子のケアをしながら奮闘するストーリー。

    香子がフードコーディネーターとして仕事を始めた頃、母の琴子に認知症の症状が出始める。そんな中、父が急逝。
    香子が仕事で家を空ける日、琴子を弟夫婦に預けるが、琴子は家に帰ろうとして放浪(徘徊)してしまい、香子は自分が面倒を見なければ、と決意する。

    記憶力も根気も体力もなくなってきた琴子だが、香子がフードコーディネーターとしてやっていく上で、琴子が昔書いていた料理ノートが役立ったり、同僚の麻有や、理解ある上司に助けられながら、仕事を続けられる香子は、ある意味ラッキーだと思う。

    ボケたと思っていた琴子が、昔の話をしたり、外向けにはしっかりした応対をしたり、また、子供返りしているように見えるのに、時には、親として香子の心配をしたりする。
    ついさっき言ったことも忘れ、何度も同じ質問をする琴子に、香子は強めの言葉を発しがちだが、麻有は毎回違う答えを言って自分も楽しんだり、子供が琴子と仲良くなって遊んだりする様子は、私たちが認知症の人と向き合うときのヒントになる。
    認知症の人の脳の仕組みは、興味深い。それがわかれば、患者にストレスを与えないような接し方ができると思う。

    そして、家族だけでケアしようとすると、家族の負担が大きく、回らなくなりがちだからこそ、デイケアやショートステイを活用するなど周囲に助けを求めることも大事だと思う。

    琴子が、認知症だった母と重なり、自省もこめて一気読みしてしまったが、将来、認知症になることが避けられないとしたら、香子のようなかわいいボケ方をしたい。

  • 結婚10年目に離婚し、実家に帰った香子。

    フードコーディネーターとして少しずつ仕事を始めた矢先、母の認知症がわかり…。

    認知症になれば、あれよあれよといううちに次々と問題が起きてくる。

    確かに2人だけの生活で仕事もしなければ…と思うと
    すべてがうまく回るわけがない。

    だができない、やれない、無理だわ、というよりもなんだか面白く楽しく描かれているので悲壮感なくサラリと読めた。

  • フードコーディネーターの香子が、認知症の老母琴子を介護していく物語。初出は新聞連載。
    香子の視点からのものだけでなく、認知症となった琴子のそれからのものもあるので、認知症患者のありようを理解する上で参考になるところも多い。また、琴子のような認知症患者には、楽しいことをさせたほうがよいということもよくわかる。

  • 『ことことこーこ』
    一見どういう意味?と思えるこのタイトル。
    琴子と香子という親子の物語。

    離婚して実家に戻った香子は、父親から「母さんがボケた」と聞かされます。まだ72歳。そんなわけないでしょう、と気楽に構えているも、次々と母の琴子は聞いたことを忘れ、どこにしまったかを忘れ、色んなことを忘れていってしまうのです。

    フリーでフードコーディネーターの仕事が入るようになるも、ある日、出張で弟家族の家に琴子を預けたところ、目を離したすきに母親は夫が亡くなったのを忘れ「もう夕方!ご飯の支度をしなければ。家に帰らなくちゃ」と家を出て、迷子(徘徊)になり、警察を巻き込んでの大騒ぎに。

    弟に施設に入居させたらどうだろう、と話を持ち掛けられますが、香子は反対。母さんは私がみるから!と母との二人暮らしを続けます。
    母親を一人にできないから、と自分のしたい仕事が好きなようにできず、介護を一人で抱え込んでいく様子が、とても読んでいてつらかったです。
    母の琴子も、忘れてもあっけらかんとしているのが何だか不自然、と思っていたら、やっぱり色んなことを忘れていく自分に気づき、情けなさと不安を抱えていることが後に分かります。

    フードコーディネートの仕事仲間や弟家族、気の置けない友人など周囲のいろんな人たちが協力してサポートしていく姿も良かった。
    こんな気さくな頼りになる人たちが周りにいたら、介護負担も減るんだろうな、と思います。

    介護はやはり、一人で抱え込んでは八方ふさがりになって行き詰まる、介護は社会皆で少しずつ支えていくものなのかな、と感じました。

  • 電子図書館にて。新聞連載の時、ちょこちょこ読んだことはあって、ずっと読みたいと思ってたんだよな。阿川さんご本人も、これを書きながら介護をされてたそうだ。すごいなー。働きながら介護か。しかし小説内の琴子さんも良いおばあちゃんとして、あんまり怒ったりはしてないもんな。ほんと将来の介護を恐れてはいるけど、こんな風に穏やかに老いてほしいよな。自分自身もだけど。兄弟関係もどうなるんだろうな。今どきこんな認知症について知らない人いるかいなと思いつつ読んだけど、私がそういう業界にいただけで、知らない人は今も知らないのかもな。香子さんがフードコーディネーターだけあって、おいしそうな料理もたくさん出てくる。うちの母も料理上手な方だから、そこも切なかった。料理できなくなってくるのかな。

  • 最後を読んでいるときに涙があふれてきた。
    親との別れが身近に感じられるようになったからだろうか。
    認知症になった母親に対して、どうしてこんなことをするんだろうと思う娘。と同時に親のほうも、どうしてと思い悩み、怖さや不安を感じているということに、改めて思いを寄せた。娘が仕事を優先させたいと思ったり、何で自分だけがと思ったりすることに相づちをうち、子供に戻ったような母親とともに楽しんでみたりすることに、ありのままを受け入れるときがあってもいいのかと思った。
    この本は、私にこれからの親との関係を大切にしていきたいと思わせてくれた1冊になった。

  • 阿川さんの文章って、どこかしらユーモアがあって好きです。この小説の主人公のように認知症の母親または父親を介護されている方々に読んでいただきたい。阿川さんがあとがきで書かれているように、もし本人が過去の記憶を失っても日々を楽しく面白がっているのなら家族も一緒に笑って暮らすことです。そうしないと家族のほうが精神的にまいってしまいます。実は私も介護経験者。
    やはり気持ちが塞ぎがちでした。

  • まさに、母が呆けた!と言える状況になってきた。母はいつまでも母であるが、私を本当にわからなくなる時が来ることを覚悟しなければと思いつつ読みました。色々頑張ろ。

  • ふむ

  • これは本当に大変だし、切なくて悲しいだろうと思うけれど、母を愛おしいと思う瞬間もあることに、羨ましくも感じた。あまりにも突然逝ってしまった母と私には、このような時間はなかった。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

阿川佐和子の作品

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