- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041116234
作品紹介・あらすじ
離婚して老父母の暮らす実家に戻った香子。専業主婦を卒業し、フードコーディネーターとしての新たな人生を歩み出した矢先、母・琴子に認知症の症状が表れはじめる。弟夫婦は頼りにならず、仕事も介護も失敗つづき。琴子の昔の料理ノートにヒントをもらい、ようやく手応えを感じた出張の帰り道、弟から「母さんが見つからない」と連絡があり……。
年とともに変わりゆく親子の関係を、ユーモアと人情たっぷりに描き出す長編小説。
感想・レビュー・書評
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結婚10年目に離婚し、実家に帰った香子。
フードコーディネーターとして少しずつ仕事を始めた矢先、母の認知症がわかり…。
認知症になれば、あれよあれよといううちに次々と問題が起きてくる。
確かに2人だけの生活で仕事もしなければ…と思うと
すべてがうまく回るわけがない。
だができない、やれない、無理だわ、というよりもなんだか面白く楽しく描かれているので悲壮感なくサラリと読めた。
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フードコーディネーターの香子が、認知症の老母琴子を介護していく物語。初出は新聞連載。
香子の視点からのものだけでなく、認知症となった琴子のそれからのものもあるので、認知症患者のありようを理解する上で参考になるところも多い。また、琴子のような認知症患者には、楽しいことをさせたほうがよいということもよくわかる。 -
『ことことこーこ』
一見どういう意味?と思えるこのタイトル。
琴子と香子という親子の物語。
離婚して実家に戻った香子は、父親から「母さんがボケた」と聞かされます。まだ72歳。そんなわけないでしょう、と気楽に構えているも、次々と母の琴子は聞いたことを忘れ、どこにしまったかを忘れ、色んなことを忘れていってしまうのです。
フリーでフードコーディネーターの仕事が入るようになるも、ある日、出張で弟家族の家に琴子を預けたところ、目を離したすきに母親は夫が亡くなったのを忘れ「もう夕方!ご飯の支度をしなければ。家に帰らなくちゃ」と家を出て、迷子(徘徊)になり、警察を巻き込んでの大騒ぎに。
弟に施設に入居させたらどうだろう、と話を持ち掛けられますが、香子は反対。母さんは私がみるから!と母との二人暮らしを続けます。
母親を一人にできないから、と自分のしたい仕事が好きなようにできず、介護を一人で抱え込んでいく様子が、とても読んでいてつらかったです。
母の琴子も、忘れてもあっけらかんとしているのが何だか不自然、と思っていたら、やっぱり色んなことを忘れていく自分に気づき、情けなさと不安を抱えていることが後に分かります。
フードコーディネートの仕事仲間や弟家族、気の置けない友人など周囲のいろんな人たちが協力してサポートしていく姿も良かった。
こんな気さくな頼りになる人たちが周りにいたら、介護負担も減るんだろうな、と思います。
介護はやはり、一人で抱え込んでは八方ふさがりになって行き詰まる、介護は社会皆で少しずつ支えていくものなのかな、と感じました。 -
最後を読んでいるときに涙があふれてきた。
親との別れが身近に感じられるようになったからだろうか。
認知症になった母親に対して、どうしてこんなことをするんだろうと思う娘。と同時に親のほうも、どうしてと思い悩み、怖さや不安を感じているということに、改めて思いを寄せた。娘が仕事を優先させたいと思ったり、何で自分だけがと思ったりすることに相づちをうち、子供に戻ったような母親とともに楽しんでみたりすることに、ありのままを受け入れるときがあってもいいのかと思った。
この本は、私にこれからの親との関係を大切にしていきたいと思わせてくれた1冊になった。
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阿川さんの文章って、どこかしらユーモアがあって好きです。この小説の主人公のように認知症の母親または父親を介護されている方々に読んでいただきたい。阿川さんがあとがきで書かれているように、もし本人が過去の記憶を失っても日々を楽しく面白がっているのなら家族も一緒に笑って暮らすことです。そうしないと家族のほうが精神的にまいってしまいます。実は私も介護経験者。
やはり気持ちが塞ぎがちでした。 -
まさに、母が呆けた!と言える状況になってきた。母はいつまでも母であるが、私を本当にわからなくなる時が来ることを覚悟しなければと思いつつ読みました。色々頑張ろ。
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これは本当に大変だし、切なくて悲しいだろうと思うけれど、母を愛おしいと思う瞬間もあることに、羨ましくも感じた。あまりにも突然逝ってしまった母と私には、このような時間はなかった。
著者プロフィール
阿川佐和子の作品





