怪奇小説集 蜘蛛 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 105
感想 : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041116371

作品紹介・あらすじ

深夜胸をしめつけられるような息苦しさに襲われたルーアンのホテル、真夜中の階段を登っていく何者かの足音が聞こえるリヨンの学生寮、三浦朱門とともにうなだれた人影を見てしまった熱海の旅館――3つの怪現象をつづる「三つの幽霊」。6月の雨の中、夜道を疾走するタクシーで、どこか違和感のある運転手が突然話し始めた奇妙な話とラストに震撼する「蜘蛛」、夫に殺される予知夢におびえる女性を襲う、ある恐ろしい出来事を描く「霧の中の声」など。「人一番怖がりだった」ことで有名な著者が贈る、世にも不思議な、背筋が凍り付く14話の恐怖譚。

感想・レビュー・書評

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  • 怖がりで幽霊を信じていなくてちょっとシタゴコロのある遠藤周作が、「周作恐怖譚」という連載のため実地取材した怪談集。…となっているけれど、一部以外はドキュメンタリー風の怪談小説であって、完全実体験ではないってことでいいんですよね。


    幽霊を信じていない遠藤周作本人が体験した三つの不思議な話。ルーアンの宿屋で感じた重苦しさと生臭さ、誰もいないはずのリヨンの学生寮に出入りする足音、そして熱海の宿で見たのは亡霊なのか?
    三つ目の熱海の経験というのは作家の三浦朱門とともに泊まった宿での出来事であり、三浦朱門も別のエッセイで書いている。高名作家が同時に体験した怪奇現象(?)というのは珍しいようだ。 /『三つの幽霊』
     
    顔反面のびっしりとした赤い痣。それは痣ではなく蜘蛛の卵だという。…ぐええええ(´д`)
    前半にちょっと書かれた、病院でご遺体の手が、自分の手を求めるように動いたというエピソードも怖かった。 /『蜘蛛』

    古道具屋で買ったカメラで撮った自分の顔に浮かび上がる奇妙な黒痣。 /『黒痣』

    最初の話で語られた熱海の宿に改めて取材にいった、というお話。ちょっととぼけた感じ。ラストは、いたのかいなかったのか。 /『私は見た』

    十年前の不審死事件を取材に行った記者は、被害者そっくりの男を見る。 /『月光の男』

    妻に対して安心しきっている夫。だが二人の妻の話をしよう。リヨンで、恋人に夢中になったために子供を殺すシングルマザーの話。
    もう一つは身近に日本の話。結婚した男は暴力夫になった。ある日赤ん坊は夫にそっくりだと気がついて。…いやああああこれは止めて(;´Д`)、本当に実話なの!? /『あなたの妻も』

    怪談は、夏の良き物語だということもある。それを崩してよかったのか。 /『時計は十二時にとまる』

    開けてはいけないといわれた部屋には、硝子瓶に浮かぶ人の目玉のようなものが。そしてその部屋で行われる賭けを覗き見してしまって。
    ==これはラストの言葉を信じていいんだよね。それにしてもたちが悪いけど。 /『針』

    自分がベテラン兵としていじめた初年兵に再会した男。
    ==怖い思いをしたけど、まあ自業自得。 /『初年兵』

    ジプシー女と結婚の約束をしたが、すっぽかした男に現れたのは呪いか。 /『ジプシーの呪』

    気の弱い男。子供が病気でも、後輩に強請られれば金を貸してしまい取り立てることもできない。そんな男の前に現れたのは、過去の罪を思い出させる男だった。
    ==過去の罪はともかく、現在の相手に対してはさすがに気弱すぎ。 /『鉛色の朝』

    予知夢を見るようになった女。夫は真面目だが締め付けが激しく人生に輝きも見えない。そして夫が自分を殺す夢を見るようになる。 /『霧の中の声』

    明るい女学生の書いた文学作品は、かつて文壇から干されてすでに死んだ作家のものと酷似していた。死にながら作品だけ生かせるためにはどうすればよいのだろう。 /『生きていた死者』

    オバケの扮装をした店員たちがお客を楽しませる酒場で、ドラキュラに扮した店員が近づいた客が倒れるようになる。本当にドラキュラなのか。
    ==まあこれはオチが、それはそれで酷いやつだなと。 /『蘇ったドラキュラ』

    T大生だと嘘をついた青年は、黙っていてやるから学生運動家リーダーのふりをしろと脅迫される。
    ==追い詰められた人間の心理。本人はある意味スッキリしたのか? /『ニセ学生』

  • 遠藤周作さんご自身の怪奇体験が面白かった。わりとミーハーなのねと。

  • 半世紀以上前に書かれた本とは思えないくらい楽しめた。
    とにかく、読みやすいという印象。

  • 怪奇といってるけど、怖くない。「ニセ学生」「霧の中の声」はなかなか面白かった。

  • 『共犯者』の巻より怪奇小説というのが似合う話が多かった。
    15編中半分ほどはすでに読んだことがあったけど、それでもやはり面白かった。読みやすいし。
    ゾッとする終わりかたの話もあれば、自業自得じゃんみたいなユーモアのある終わりかたする話も多かった。

    『蜘蛛』、『あなたの妻も』、『初年兵』、『霧の中の声』あたりが特に良かった。

  • おもしろい!!!ユーモアとおぞましさがミックスされていて読み応えがある。冷や汗をかきながら読んでいたけど、共感できる部分があるからこそ、ヒヤヒヤしてしまう。「あなたの妻も」「初年兵」がすき

  • ・遠藤周作「怪奇小説集 蜘蛛」(角川文庫)別の文庫で出てゐたものの改題再発である。私は遠藤周作の長編は読んでゐるのだが、短編は読んだ記憶がない。たぶん読んでゐないと思ふ。かういふ書名の書が出てゐたのは知つてゐたつもりだが、これまで読んだことはなかつた……と思つてゐたのだが、巻頭の「三つの幽霊」を読みながら、これはどこかで読んだことがあると思つてゐた。こちらのまちがひかどうか。これ以降の作品は読んだ記憶はなささうであつた。朝宮運河の「解説」には、「中でも巻頭に置かれた『三つの幽霊』は周作怪談の代表作として、くり返しアンソロジーに採られてきた折り紙付きの逸品だ。」(365頁)とある。これからすると、既に忘れてしまつてゐても、もしかするとどこかで読んだかもしれないと思ふ。さうで なければ読んだ気がするなどと思ふはずがない。これも周作の怪談だと言はれればその通りかもしれないのだが……。
    ・その「三つの幽霊」、3つとも誰か、あるいは何かゐるらしいといふ内容である。最初のは、第二次大戦の終はりに、問題の宿屋の近くで、空襲を受けて多くの労働者が死んだ、その犠牲者の気配が夜中にしたらしいといふのである。それは「何か太い手で胸をしめつけられていく感じ」(15頁)であつたらしく、「巷間の怪談や体験談に出てくる幽霊出現時の息苦しさはあながちツクリものでは ないように思う」(15頁) と感じたとほどであつたが、「ぼく」にはそれが信じられず、労働者の死と、「あの生ぬるい空気や部屋の息苦しさは空き地から流れる気流のせいで、この二つが偶然重なったため」(17頁)だと考へたのであつた。2つ目のは、寮の四階に誰かゐるらしいといふのだが、こちらは原因不明であつた。最後のは、役者の別荘だつたといふのがポイントかもしれない。とにかく最初と最後にはちょっと原因らしきものがある。こ れは怪談集成であるらしい。なぜ幽霊が出るかの説明は必要であらう。世紀末あたりの怪奇小説は大体それを説明してある。これもそれにならつたか、西洋風の怪談話なのであらう。だからおもしろくない。いや、さうでなくともおもしろくない話しかもしれない。もしかしたら、かういふのが戦後しばらくした頃(?)の怪奇小説であつたのかもしれないと思ふ。あるいは、遠藤の基本は所謂純文学 の作家であつたといふことか。私には「紙付きの逸品だ。」といふのが分からない。しかし、かういふのではない「蜘蛛」や「黒痣」 はおもしろかつた。「蜘蛛」はある怪談会の同席した男とタクシーに乗つた時の話である。それは「気味の悪い男」(57頁)だつ た。男が下りた後には1匹の蜘蛛がといふのだが、そのタクシー内でなされた話があるから蜘蛛が出てくるし、怪奇小説的にもなる。 実際、かういふ男に出会へば気味が悪いだらうと思ふ。「黒痣」は中古カメラの話である。そのカメラで自分を撮ると顔に黒い痣が出 るといふのである。フランスにあつた全く無名の会社の製品らしい。そのカメラの元の持ち主はメルラン、「娘はメルランさんの顔があまり変わっているんでこわかったというんです。」(71頁)これに対して主人公は「『アザですか』と叫んだ。」(同前)といふのである。どうしてかうなつたのかは書いてない。しかし、なぜかこはいのである。かういふのも昔の怪談にありさうである。個人的には、このあたりをアンソロジーに載せる方が良いのではと思つてしまふ。「初年兵」は落語に似たやうなのがあつたと思つてしまつた。そんなわけで、私にとつて遠藤周作は長編作家であつたと言つて良ささうである。作家の息抜き、手慰みであつたかどうか。

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著者プロフィール

一九二三年東京生まれ。慶応大学仏文科卒業。リヨン大学に留学。一九五五年『白い人』で第三十三回芥川賞を受賞。一九六六年『沈黙』で第二回谷崎潤一郎賞受賞他、数多くの文学賞を受賞。主な著書に『沈黙』『海と毒薬』『恋愛とは何か』『ぐうたら生活入門』『宿敵』等多数。

「2022年 『怪奇小説集 恐怖の窓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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