了巷説百物語

  • KADOKAWA (2024年6月19日発売)
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本 ・本 (1152ページ) / ISBN・EAN: 9784041117200

作品紹介・あらすじ

〈憑き物落とし〉中禪寺洲齋。
〈化け物遣い〉御行の又市。
〈洞観屋〉稲荷藤兵衛。
彼らが対峙し絡み合う、過去最大の大仕掛けの結末は――?
文学賞3冠を果たした〈巷説百物語〉シリーズ堂々完結!

下総国に暮らす狐狩りの名人・稲荷藤兵衛には、裏の渡世がある。
凡ての嘘を見破り旧悪醜聞を暴き出すことから〈洞観屋〉と呼ばれていた。
ある日、藤兵衛に依頼が持ち込まれる。老中首座・水野忠邦による大改革を妨害する者ども炙り出してくれというのだ。
敵は、妖物を操り衆生を惑わし、人心を恣にする者たち――。
依頼を引き受け江戸に出た藤兵衛は、化け物遣い一味と遭遇する。
やがて武蔵晴明神社の陰陽師・中禪寺洲齋と出会い、とある商家の憑き物落としに立ち会うこととなるが――。

感想・レビュー・書評

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    ☆ 文句なし。★5以上!! ☆
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    ★なんか幾ら付けても足りんわ!!

    嗚呼、これでシリーズ完結かぁ。
    寂しいなぁ。
    おもしろかったよ。
    京極さん、ありがとう。
    でも、ちょこちょことは書いて欲しいな。
    こんな大作でなくてもいいから、「前」と「巷説」の間の小品とか、「巷説」と「続」の間、「続」と「後」の間、「西」の追加とか。短いのでもいいから。

    今作はシリーズ最長の長編。1149ページって重っ!
    よくもこんな厚いの製本できたなぁ。笑うわ。
    お値段四千円。税込みで四千四百円。
    こんな高い本買ったのは生まれて初めてだ。
    でも今まで全部単行本で集めてるし、どうせ今回もカバー裏になんかあるだろうとふんでいたし。おもったとおりだったし。
    本屋もこんなの売れんだろうと見越したのかな。
    三軒まわって、一軒目の小さな本屋には当然置いてなく、二軒目の中程度のとこにもなく、ここには絶対あるはずと見込んだ大きな三軒目でやっと見つけた。四冊だけ。

    主人公は初登場の稲荷(とうか)藤兵衛。
    狐獲りの猟師にして、嘘を見破る洞観屋という副業をもつ男。
    この男の視点で物語は進みます。
    いやはや勢揃いですね。
    読み終わった方みなさん仰ってますが、シリーズを最初から読み返したくなってしまいウズウズします。
    登場人物だけでなく過去のお話しも関わってくるので、過去作を未読の方は戸惑うかもしれません。
    というか買うな!
    過去作読まずにこれを読むと魅力半減どころじゃないから。
    最低でも「巷説百物語」「続巷説百物語」「西巷説百物語」と、京極堂の活躍する百鬼夜行シリーズのどれかは必読です。
    京極堂こと中禅寺秋彦の曽祖父にあたる中禪寺州齋(じゅうさい)も登場するからです。
    できれば私のように、百鬼夜行シリーズと巷説百物語シリーズ全作に加えて江戸怪談シリーズ三部作の「嗤う伊右衛門」「覘き小平次」「数えずの井戸」を全て読んでから手を付けて欲しいとこです。

    そりゃあおもしろくって、せっかくだからじっくりじわじわ嚙んで含めて沁み込ませるように読んでやろうと思ってたのに、中盤以降は手が止まらなくなってしまった。
    久々に朝日を拝むまで読んでしまった。

    でもなぁ。稲荷藤兵衛目線かぁ。そして中禪寺州齋か。
    又市が、そして百介が、なかなか出てこんのよ。
    申し訳程度に最後にちょろっと。
    いや、又市はしっかり暗躍してるし、百介は相変わらずウロチョロしてるんだけど、それは話としてそう聞こえてくるだけで、登場は最後の最後までないんだよね。
    そこが不満っちゃぁ不満。
    もっともっと又市のあの語りが聞きたかったし、百介の語りも思いも味わいたかった。

    治平よ。事触れの治平さんよ。
    カッコイイなぁ~。

    「その」
    その童は薬があれば治るのかと、突然に治平が問うた。
    「治ります。時は掛かりますが」
    「そうかい」
    治平は背を丸めた。
    「事触れの。あんた何をする気だ」
    何もしねえよと治平は不機嫌そうに言った。

    おおお。こんなのボイルドじゃねえか。ハードなボイルドじゃねえの。大江戸ハードボイルドかよ爺さん。
    痺れるなぁ。そこで背を丸めるんじゃねえよ。
    柄にもねえじゃないか。
    (´;ω;`)ウゥゥ

    おぎんさん強いな~。さすがは小右衛門仕込み。
    右近さんもめちゃ強いな。最初誰かと思ったけど、あの続巷説の北林藩の。さすがだな~。
    小右衛門は相変わらず化け物じみてるし。
    一文字屋の狸も。林蔵も。文作も。柳次も。お龍も。玉泉坊も。徳次郎も。
    そして初登場の猿猴(ましら)の源助。おまえ有能すぎるわ。

    七福連って。ちょっとアレだな~って思ったけど、七福神に見立てる必要もないだろうって思ったけど、まあいいさ。

    稲荷藤兵衛の嘘を見切るときの動作と掛け声もどうかと思ったけど、まあいいさ。

    おもしろかったから!
    おもしろかったから!!
    おもしろかったから!!!

    やっぱ、この人の書きっぷりも好きなんだよね~。
    例えばさ

    州齋はーー。
    顎を引き、腕を組んで、
    笑った。

    そうそう。これ。この書き方。もったいのつけ方。
    だって普通であれば、一行で済む話よ。
    印象付けるよな~。
    そして余計なものはなにも足さない。
    どんなふうに笑ったのか書かないから、わざと書いてないから、逆に想像して印象に残るんよな~。
    ここで逆にゴテゴテと書かれたら興醒めだけど、そこが上手いんだよな~。

    でも困った。
    先に書いたように、シリーズ全部読み直したい衝動に既に駆られている。
    どうやら取り憑かれてしまったようだ。
    図書館から借りている本があって期限内に返さなきゃいけないのに、そんなの放っぽって巷説百物語シリーズを頭っから読み返したい!!
    嗚呼、困った困ったな~\(^o^)/♪

    • ultraman719さん
      土瓶さん

      確かにそう!
      寒々となんか絶対しないですよね!
      暑苦しいというか、何というか…
      でも、何かある!っていう根拠のない確信が!

      っ...
      土瓶さん

      確かにそう!
      寒々となんか絶対しないですよね!
      暑苦しいというか、何というか…
      でも、何かある!っていう根拠のない確信が!

      ってパターンで読んでしまいます(^◇^;)
      2024/07/23
    • megmilk999さん
      土瓶さんの5!期待が高まります!
      土瓶さんの5!期待が高まります!
      2024/07/28
    • 土瓶さん
      メグミルクさん。
      高めて読んでください。
      オールスターです!!
      メグミルクさん。
      高めて読んでください。
      オールスターです!!
      2024/07/28
  • 『巷説百物語シリーズ』七作目にして完結編。

    下総国に暮らす狐狩りの名人・稲荷藤兵衛は、凡ての嘘を見破る〈洞観屋〉としても知る人には知られる存在です。
    ある日、藤兵衛に老中首座・水野忠邦による大改革を妨害する者達を炙り出してほしいとの依頼が持ち込まれますが・・。

    やっっっと読み終わりました~・・というか、ついに読み終わってしまいました(寂)。
    ・・にしても、マジで分厚すぎるでしょ!
    京極さんの長編モノはほぼ読破してきて、そのヴォリュームに関しては慣れている私ですが、それでも本書の物理的な迫力には圧倒されちゃいましたね。
    漬物石レベルの重さ(物理)と格闘しつつも、まさにシリーズの集大成ともいえる圧巻の読み応えで、結果本の重さなぞどうでもよくなってくる面白さでございました。
    (ただ、気が付いたら腕がこわばっているという・・笑)

    さて、物語は藤兵衛視点で語られていきます。
    依頼を引き受け江戸に出てきた藤兵衛は、助っ人の“猫絵のお玉”、“猿猴の源助”らと共に探っていくうちに〈化け物遣い〉達と出会っていく流れで、『巷説』ファンにはお馴染みのメンバーが次々と登場してくるたびにワクワクしちゃいました。
    おぎん姐さん、治平さん、徳次郎さん、林蔵はん、小右衛門さん等々・・これまで登場した主要キャラが勢揃いの豪華さでございます。
    そんな中、『巷説』メインの双璧、又市と百介が名前は出てくるのにずっと姿を現さないのがまた気になるんですよね。
    とはいえ、姿を見せなくても、裏で動き回って大仕掛けを巡らせている又市の存在感はやはり凄い・・できれば表立っての又さんの活躍を観たかったのですが、彼に代わっての狂言回しとして〈憑き物落とし〉中禪寺洲齋が登場!
    もう“中禪寺”ってだけで、京極ファンはテンション上がっちゃいます。
    終盤での、中禪寺洲齋VSラスボス“女傑”のやり取りは、手に汗握るものがありましたし、『巷説』の過去作すべてが繋がってくるのが明かされる〈憑き物落とし〉っぷりは流石でございました。

    それにしても、今回は 仕掛けが大掛かりだったせいか、バトルが壮絶で人死にが多く出てしまったのが 切なかったですね 。
    特に治平さん・・泣けてくる・・(´;ω;`)ウッ…

    そして、最後の最後に戯作者“菅丘先生”と“八咫烏”をチラっとだけ登場させて幕を閉じるという心憎さが粋ですね~。
    そんな訳で『巷説百物語シリーズ』を読んできて良かった!と思えるような、総まとめに相応しい物語でした。
    (ただ、シリーズを読み始めたのが20年以上前なので、正直過去作の内容はうろ覚え状態でして・・できれば1作目から本書までを通しで読み返したいですね~)

    シリーズは“これで終いの金比羅さん(by林蔵)”なのでしょうけど、今後シレっと外伝的なお話を出して頂いても、こちとら大歓迎でございますよ~。

  • めちゃくそ面白かった、、、
    でも、これで終わり、、寂しい。
    フィジカルに、もう、凶器になりそうというか、
    鈍器?な厚みにはなっているが、
    どっこい、あっという間に引き込まれて、
    ぐわーーっと読んでしまった。
    早よ読みたいけど、早よ終わってほしない
    ああ、悶えたわ、、読み了てもぅた(涙)

    江戸古事記というか、
    アマテラス&トヨウケビメオマージュというか
    ミステリなんで、なんもネタバレしたくないので
    多くは書けない(くっ)
    とにかくおもろい、仕掛けもなにもかも面白いし
    なんちゅうても、今作はアクションがたまらん
    京極本ってやっとうはそんなに記憶にのこらんかった(主観)
    んだが、今作はバトルシーンが良かった。
    相変わらず良え刺さるセリフも多いし、
    なんせ藤兵衛とか又市とかカッコよすぎ
    もっと読みたいのに、、

  • 「機械で製本できなかった!?」京極夏彦氏の最新小説に“珍事” 校了→発売に時間がかかった理由が規格外|よろず〜ニュース(2024.06.20)
    https://yorozoonews.jp/article/15313093

    京極夏彦の<巷説百物語>シリーズ完結巻『了巷説百物語』本日6/19発売! 特装版発売&イベント開催決定。PVも公開中! | 株式会社KADOKAWAのプレスリリース(2024年6月19日)
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000014887.000007006.html

    京極夏彦による妖怪時代小説の金字塔、<巷説百物語>シリーズが堂々の完結!『了巷説百物語』6月19 日発売。カバーデザイン公開&予約スタート | 株式会社KADOKAWAのプレスリリース(2024年3月29日)
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000014521.000007006.html

    大沢在昌・京極夏彦・宮部みゆき 公式ホームページ『大極宮』
    https://osawa-office.co.jp/index.html

    【KADOKAWA公式ショップ】了巷説百物語: 本|カドカワストア|オリジナル特典,本,関連グッズ,Blu-Ray/DVD/CD
    https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g322104000664/

    • 土瓶さん
      し、知らなかった。
      絶対欲しい!
      高い!!
      し、知らなかった。
      絶対欲しい!
      高い!!
      2024/06/21
  • <徳>

    この百物語シリーズ本がどれも物凄く厚くて,とてつもなく重い事については今迄何度も触れて来たので直接はもう書かない。でも気にはなる。巷説百物語を全巻積み上げると果たして何cmで何kg位になるのだろう。でもいつも全巻が手元にあるわけでは無いので即実行してみる訳にはゆかない。ええと全部で何冊だっけ。『巷説百物語』『続巷説百物語』『後巷説百物語』『前巷説百物語』『西巷説百物語』『遠巷説百物語』そして『了巷説百物語』全部で7冊かぁ。あ,なんだ,これWikiに載ってんじゃん。あーあ。徒労だった(笑)。

    7冊なら単行本でまあ50cmくらいかな。何気に書いたけど50cmってめっちゃ凄いよ。重さは同じく単行本でまあ7㎏はかるく超えるかな。絶対持って運ぶのは嫌だ。なんなら持ち上げるのもかんべんして欲しい。京極夏彦はんはキットこういう事をやって僕ら読者を困らせる事にいわゆる人生のヨロコビ を感じているのだとしか思えない(笑)。まあ読み応えあって面白いからいいけどね。

    巷説と云えば 南こうせつ という歌手がいるw。僕ら世代のフォークソング的隊大スターだ。かぐや姫という3人組のグループで『神田川』『妹』『赤ちょうちん』などのヒットをはなった。で,この こうせつ という名前は本名らしい。もし漢字で書くとするとするとやはり巷説 かな(笑)。 お前何が言いたいんだっ,って別に 南こうせつってそうだったな と思ったので書いてみただけだよ。ああつまらなくてすまなかった。

    面白い表現を見つけた。京極ハンならではの気づきなのだろう。藤兵衛の言をそのまま引く「八里半と書かれた辻行燈が見えた。後半里で九里 ―― 栗になるという,焼き芋屋の看板文句である」 なるほど面白い。でも僕は実際にこの様な看板なり行燈を見たことは無い。僕はもう立派な前期高齢者だから記憶にまなんとか残っているであろう向こう60年位の間に見たことがない。う-む昔は焼き芋屋って沢山有ったし,今でも屋台の焼き芋屋は時々見かけるのになぁ。今度気を付けて見てみよう。実は「八里半」って書いてあったりして♪

    他にも気になる表現はいっぱいある。文意を書き抜く。「悪行を褒めるものもいれば,善行を蔑(さげす)む者もいる。人は事実を語る顔をして感想を語るから。妬(ねた)む者は善行でも貶め,畏れる者は悪しき行いでも讃える。」藤兵衛(京極はん)のこの言には参った。まさに御意!である。「人は見たいものだけをみて,信じたいものだけを信じる」という事だ!

    「村八分」という言葉が出て来る。ここのところ久しく聞いていなかった言葉だ。火事と葬式以外は一切付き合わないで仲間外れにする,と云う意味だ。昔の村地域社会における差別やいじめの一表現だ。ところが先の新型コロナバウラス禍津 では火事はともかく葬式すらできなかった。葬式に参列しないではなくて,葬式そのものが出せなかったのだ。なんとまあ恐ろしい事よなぁ。そういえば京極ハンは時代小説作品ばかりなので新型コロナバイラス禍津に関しては全く関知せずとも好かったのだな。稀な事よのう。

    洲齋の言に「神は崇めれば護り。崇めずば祟る」がある。この言にて,あがめるという漢字と たたる という漢字がとても似ていることに僕ははじめて気づく。まあどちらも普段使いする言葉では無いが,かんむり部首のつくりが上向きか下向きかが違うだけでこの意味の違いになる。 呪い と 祝い みたいなものか。日本語漢字にはしばしこのような例が見られて僕は驚く。

    さて少し話題は横道に逸れて僕が普段からとても気にしている【いつまでも「マスク」をしている人】の事。今2024年の日本。物を食べたり飲んだりするとき以外はずっとマスクを付けている人が一定の割合で居る。なんならこの夏の35度を超える猛暑でもその手の人達はマスクを外さない。たぶん寝てる時もマスクしてるのだろう。また,一人だけで乗ってる車の運転者でもしっかりマスクしてる人が居る,この人は一体何のためにマスクをしているのだろう。何?それは女性に多くて化粧をしていないから…。うーむ。

    だが男性にもお一人で車中マスクしてる人はいる。そいつも化粧が理由か?(笑)。衛生上の理由ではなくて 貌を見られたくない という理由でマスクをしている人がいる。あんた犯罪者かぁ?(笑) 冗談はともかく,もうこうなると多分その人はマスクが心地よいのでしょうね。しないと不快で気分が悪い!という訳ですな。パンツと一緒(笑)。僕には到底理解できないし,欧米の人達からも理解は到底してもらえないでしょうね。ま,他人に迷惑は掛かってないしその人の自由ですけどね(笑)。

    さて閑話休題。627ページに次の文意の下りが或る。額三は50両を超えるまでは“お恵み”として金を都合してくれる(但し50両を超えた時点でといち の利息の返済義務が生じる!) 件の福ノ屋 から10両借りてそれを使い果たして回らなくなり 追加で借りる時に新たに10両だけを借りるのではなく何故か20両借りてそこからのっけに借りた10両は返して手元に残った10両を回転資金とした。まあ結局借金は20両に増えるのだが。

    これには一体どんな意味があるのだろう。最初この下りを読んだ時はなるほどなぁ と一旦は思ったものの少し読み続け話が進むと 結局50両までは元金は返さなくとも良いし利息も発生しないのだから同じじゃないか!いったいこの借金10両の時に20両借りて10両返す行為のどこに(京極ハンの)意図があるのか僕は分からなかったのだ。

    さてここからは僕の妖しい 【ある暑い夜のゴキブリ撃退物語】 但し不思議もからくりも無くてちょっと怖いだけ(笑)。 夏の暑い夜,我が家一階の台所にこの夏初めてのゴキブリが現れた。割と大きくて昨年見たことある奴らより色が黒い。さてどうするかと考えて階段下の収納スペースを探ってみると『くもフマキラー』という殺虫スプレー缶があった。僕には買った覚えが無いのでたぶん連れが買ったのだろう。蜘蛛用でゴキに効くのかいなーと思いながらも すぐには他の方法を思い付けなかったのでそれを件のゴキに向かって噴射した。

    思いのほか噴射力が強くて逃げ回るGゴキに少し離れた位置から連続噴射! やつは1.5m程は走って逃げたがそこでくたばった。で,そのGゴキの逃走中になんと別の個体がどこからともなく表れた。もしかすると最初の個体を助けに来たのか,というタイミングだった が,そんな訳はないか。なんでも食べるGのやつらは平気で共食いするらしいからなあ。で,そいつにも くもフマキラー をお見舞い。見事粉砕した。

    ダイニングの床には2個の死骸が転がっている。さて二階へ戻って寝る支度をするかと振り向くと もう一匹こいつは今回いちばんでかいBig Gがキッチンの床を堂々とこちらに向かって横切ってくるではないか。すかさずくもフマキラー噴射。こいつは大きいだけあっておよそ2mも逃げ回ったであろうか。でも蜘蛛フマキラーの威力は強烈で見事に撃退。これで3匹を殺害してやった。ちなみにGは一匹見つけると100匹はいると言われているらしい。と云う事はうちには,わぁもう300匹もおるんかい!

    実は僕はこのGゴキ事件が起きる前に 二階の自室でGibson J-45を弾きながら『どうしてこんなに悲しんだろう』を拓郎のオリジナルより半音高いD#キーで最後まで歌いきっていた。来週ライブだから。流石にD#だと 歌い終わった後のど左奥手前に少し違和感があったのだがこのGゴキ事件で使った くもフマキラー の噴射を少しくは吸い込んだらしくのどのその左奥手前部分が段々とイガイガして痛くなってきた。最後は大事には至らなかったものの,うがいしたりウイスキーで消毒したりw で大変だったのだ。Gゴキめ只ではくたばらんのう。

    さて,翌朝会社に行く前に死骸の始末をしようと思ったらなんと1匹増えて合計4匹の死骸が台所とダイニングの床に転がっていた。噴霧して床に付着した「くもフマキラー」の上をあとから通ったやつがおっ死んだのだろう。『くもフマキラー』の毒効果持続力恐るべし。ちなみに僕自身蜘蛛は苦手ではあるが決して殺したりはしない。蜘蛛は益虫であってヤモリ同様に家の守り神だとも思っている。ではなんでゴキブリは何にもしないのに見つけたらひどい目にあわすのだろう。差別だろう。Gコキブリハラスメント略して「Gハラ」なのだ。

    さて長い横道から戻って再度閑話休題。遠山左衛門金四郎による本筋の状況説明と講釈(724ページ辺り)を読むと,ようやく一体に誰が何の目的で何をやろうとしているのかの外郭が見えて来る。まあこの内容は現代においても自分の手では何も作れない資本家の搾取行為によって世の中は成り立っていて「金は金のある所にしか集まって来ない,貧乏人はずっと貧乏のままなのだ!」という事の理屈が分かる。だが物語の更にその細部への理解は陰陽師洲齋の説明を待たねばならぬがまあこれで時は少し稼げたw。

    さてここで再箸休め?に話題を変えて。世の中に昔あった【部活の『しごき』】はいつから始まったんだ!僕は中高生時代サッカー部に入っていた。(高校全国大会出場一歩手前の試合で惜敗する位には強いサッカー部だった) 当時監督や先輩たちからそれはひどいしごきを受けた。うさぎ跳びは言うに及ばず「練習」という大義名分に隠れたほとんど拷問に近いモノだった。でも,かくいう僕も先輩格になった時には同じように後輩をしごいた。その後輩も多分年長になった時に新入生をしごいたのだろう。と云う具合に,しごきは順繰りに伝わって輪廻していったものである。

    しかしいつの頃からかその悪しき習慣は途切れて今しごきはもう無いらしい。それはいい事だと思うけど僕のここでのモンダイ提議は「しごきはいったいいつ始まったのだろう?」という事だ。その一番最初にしごきを始めた奴らは先輩からのしごきを受けていない筈なのだ。だって最初に後輩をしごいた奴なのだから。その最初にしごいた奴を見つけ出してあらためてしごかない事にはこのモンダイの根本的解決は無い!みんなで最初にしごいた奴を見つけ出してしごこう。なぁに簡単だ。順番に先輩をたどって訊いてゆけばいいのだ。(笑)

    ところで,僕は巷説百物語シリーズをおそらくは全巻読んでいるがもうこの歳なので中身を詳しく覚えているわけでもない。まあ御行小股潜りの又市はもちろん読み知っている(あまり本人がしゃべっている場面はみたことなくて事実本書でもうんざりするぐらい話には上がるが本人はちっとも登場しないw),陰陽師中禪寺洲齋もどれかの巻に何度かは登場していた記憶がある。

    が,稲荷藤兵衛と言う本巻の主役格はこの『了巷説・・・』以前の今までの物語にも登場していたのだろうか。賢明なる読者諸兄姉様方,厚かましいお願いですが稲荷藤兵衛が既刊のどの巻に登場しているか僕に教えて欲しいものです。

    さてこの本の分厚さと重さについてもう一下り書くとする。これだけ厚いと(なんと1100ページを超えている) 当然読むにも日にちが掛かる。まあ四六時中本を読むだけの生活など出来る筈も無いのでウイークデイの一日に読書に使う時間はまあせいぜい3時間くらい(通勤電車中を含む)。僕の場合読むのに大体1ページに1分掛かるので60分では60ページつまり最大3時間だと180ページ読める計算になる。こりゃ7日もあれば読了出来る計算になる。ところが現実はそうはいかない。

    一日に3時間読むって言ったってその間にはトイレに行くかもしれんし,くしゃみもする,なんなら僕はほとんどの場合お酒を飲みながら読んでいるので「グビリ」と遣る=読んでいない“間(マ)”もある(なんだそれw)。そして並の本とこの巷説百物語の最大の違いは「重さ」。とても通勤列車の中で読む為に毎日会社までこの重さを持ち歩く気にはならない。なので7日ではとても読了には至らないのだ。

    で,ここでの話のポイントは実は「栞紐」。普通は栞紐を引っ張って読み始めるべきページを開くのだが,段々とページが進んでくるとこの 紐で持ち上げる紙の枚数が多くなってきて重い!僕の場合500ページを読んだあたりから栞紐だけで持ち上がるのはほとんど不可能になった。紐を持つ指の“碑つまみ力”が本の重さに負けるのだ。いったいこの本どんだけ重いんだ。おーいKADOKAWAさんよー,栞紐の太さや材質は大体どの本でも同じだけれど,京極の百物語本だけはもっと太く頑丈にした方がいいぞぉー!

    京極夏彦は独特な漢字を随所に沢山使う。固有名詞に使うのではなくて普通の言い回しで使う。芸が無いが以下羅列してみる。 『為た(:した。と読ませる。たしかに「為した」なしたならば普段から使うなぁ)』, 『慥かに(:たしかに。漢字変換可能第二候補)』, 『識る』(これはもう僕も普段から使ったりし始めたw), 『屎(糞はもちろん知っていたが,この屎は本書で初めてお目に掛かった)』,

    『貌(たいがいは頑なに一種類だけ使う京極だが本作では珍しく「顔」も使っている。まあ使い方の基本に従っているだけだとも言えそうだが)』, 『扠(さて,と読む。これも実はPCでの漢字変換候補にズバリあるんだ)』, 『謂わば(いわば,だ。同じくPCで変換可能)』

    『塵芥(ゴミ,と読ませている)』調べるとどうもゴミという言葉の漢字はあまり使われないのだが書き言葉にはもっぱら塵と芥が単一で用いられるそうだ。でも芥はゴミとは読まないよなー。芥川賞ってゴミの賞だったのか?(笑), 『鏖(みなごろし と読む。普通は「皆殺」でしょうにw)』 なんとこれもPC漢字変換できる。一体どうなっているんだ。こうなると京極ハン,PCで漢字変換しながら「お,これ知らなかった字だ,おもしろい,使おう」なんてやってるんじゃないか,と変に勘繰りたくなる(笑)。

    この本を読んでいてふと思ったのだけど,江戸時代というのはなんと長い時代だったのだろう。昭和は来年2025年で100年(昭和100年)になるが,長かった様に思われる昭和も64年しか続かなかったのだ。その事を考えると江戸時代のおよそ250年というのはこりゃめちゃ長い。人間にとって250年はいかにもいかにも長い時間なのだ。このように長い間同じ政権が続いた国って他にあるのだろうか。王制や帝政ならばもちろんもっと長く続いているのもあろうがそれらは実質の政権を握り司っているわけではないのだ。

    さて本書。 『了』おわり という題名が付いてはいるがこの巷説シリーズが本書で終わるなんて事はどこにもなんにも書いてなどいない。次巻『続了巷説百物語』はキットもっと分厚く重いのだろう大(笑)。で,本書は¥4000なのだがもうその辺が限界だ。エンタメ本が4000円超えるともうそれは学術書か事典みたくなってしまうのであった。やれやれ。

  • この一冊がこれまでの巷説シリーズを大河ロマンにしました。それは、ロシアの大文豪も真っ青になるくらいの、あるいは顔を赤らめるくらいの、大河小説です。
    これまでの主人公の活躍を描かずに、彼の動きを伝えてくる。ずっと読者の思いを募らせる。たいしたテクニックです。この騙りに乗せられながら読む楽しさが読んでいる間、ずっと続きます。
    今回は活劇が多い印象です。しかも、映像が浮かんでくる。むしろ、自分がカメラマンになって映像を撮っているような気分。京極夏彦さん、映画監督にチャレンジするのだろうか、と思うほどの活劇描写。黒澤明監督の映像の美しさを彷彿とさせるものでした。
    陰陽師が「世の中には」とか「この世には」とか話し始めると、この一言が誘う世界に引き込まれていく、抜け出せなくなる。
    おぎんさんはいつでも妖艶な美しさ。そして、強い。おぎんさんの出番にはいつも惚れ惚れします。
    そして、登場する大河ロマンの仕掛け役。その人が着る鮫小紋。白っぽい鮫小紋。この場面で鮫小紋を着せるセンスの良さにうっとりしました。
    そして、いつまでも動き続ける八咫烏、又一。妙に落ち着いた大団円とせず、物語は生き続けるのですね。これまでのシリーズが、一冊で完結しているように見せて、大河ロマンの一部であったように、すべての物語は、一部始終でありながら、一部分でもあるのだと感じ入りました。

  • シリーズ完結編。

    【収録作品】
    戌亥乃章 於菊蟲
    申酉乃章 柳婆
    午未乃章 累
    辰巳乃章 葛乃葉或は福神ながし
    寅卯乃章 手洗鬼
    子丑乃章 野宿火
    空亡乃章 百物語

    水野忠邦と彼を操る相手に又市が仕掛け、それに巻き込まれた中禪寺洲齋や稲荷藤兵衛を初めとする面々の働きを描く。
    ……人が多すぎるし、時間も長いので、登場人物一覧が欲しい……
    ともかくやたらに人が死ぬ。敵も味方もその命の軽さにめまいがする。

    それにしても、1149ページの大部の作品なので、読んでも読んでも終わらない。面白いのだけれども。

  • 〈憑き物落とし〉中禪寺洲齋。
    〈化け物遣い〉御行の又市。
    〈洞観屋〉稲荷藤兵衛。
    嘘を見抜く洞観屋藤兵衛の側から見た又市や洲齋の物語をからめながら、老中首座・水野忠邦による改革とその黒幕となっている金貸しによる改革の真の目的が語られます。
    複数の事件が相互にからまりながら、クライマックスへと突き進む1100頁を超えるオールスター総出演の物語を一気に読ませてもらいました。
    このシリーズには『巷説』『前』『続』『後』『西』『遠』『了』があって、又市側の視点から描かれたそれぞれの事件が本作ではどのように藤兵衛の目に映るのかという読み方もとても興味深いです。
    膨大な物語を破綻なくまとめる。やはり、京極氏は天才でした。

    竹蔵

  • 「どんな絵を描いているのか」とは作中で、登場人物がたびたび繰り返してきた言葉だけれど、京極夏彦という人はいったいどんな絵を持ってこのシリーズを描いていたのか。壮大な絵というなら、このシリーズが壮大な絵だったなあと読み終えて思う。

    これまでのシリーズで活躍した人物たちのオールキャスト。それが収まるところに収まっていくように感じるのだから、見事というほかない。
    しかも新しい主人公も魅力的だし。そもそも爺が主人公で魅力的ってこと自体が、すごい。
    加えて巷説シリーズに中禅寺が加わったらどうなるかというファンの夢にまで応えようっていうのだから恐れ入り谷の鬼子母神とでも言うほかない。

    強いて、強いて寂しい点をあげるとすれば、又市と百介の姿を拝めないこと。名前だけはこれでもかというくらい出てくるのだけれど、その姿は描かれない。
    仕方のないことだと思うけれど、寂しいことに変わりはない。

    ああ、しかしこれはまたシリーズすべてを読み返すことになりそうだなあ…。
    今度は刊行順ではなくて、年代順に読んでみようか。

  •  これは現代資本主義社会へのアンチテーゼ……としても読めるのかも知れない……。

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著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく・なつひこ):一九六三年北海道生まれ。九四年『姑獲鳥の夏』でデビュー。同作を含む〈百鬼夜行〉シリーズで人気を博す。九六年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞。その後も泉鏡花文学賞、山本周五郎賞、直木三十五賞、柴田錬三郎賞、吉川英治文学賞を受賞。〈巷説百物語〉シリーズ、〈豆腐小僧〉シリーズなど著書多数。

「2025年 『東海道綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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