さえづちの眼 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.45
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本棚登録 : 869
感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041117361

作品紹介・あらすじ

長編『ばくうどの悪夢』も絶好調! 書き下ろし中篇「さえづちの眼」を含む3篇が収録された、比嘉姉妹シリーズ初の中篇集。

◆あの日の光は今も
1981年に大阪府東区巴杵町で2人の少年がUFOを目撃した、巴杵池(はぎねいけ)事件。
母とともに小さな旅館を営む昌輝は、かつてUFOを目撃した少年のうちの一人だった。
事件も遠い記憶になり始めたころ、湯水と名乗るライターが事件の記事を書きたいと旅館を訪ねてくる。
昌輝は湯水と宿泊客であるゆかりに向けて、あの日何が起こったかを語り始めるが――。

◆母と
真琴のもとにず助けを求めにやってきた杏という少女。
彼女が暮らす民間の更生施設・鎌田ハウスに「ナニカ」が入り込み、乗っ取られ、結果的に住人たちがおかしくなってしまったらしい。
杏を救うために真琴と野崎は、埼玉県にある鎌田ハウスへと向かう。

◆さえづちの眼
郊外にある名家・架守家で起こった一人娘の失踪事件。
「神隠し」から数十年後、架守の家では不幸な出来事が続いていた。
何かの呪いではないかと疑った当主は、霊能者の比嘉琴子に助けを求めるが――。

感想・レビュー・書評

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  •  今回は中編ということで比較的するすると読ませてもらいました。

     タイトルの『さえづちの眼』は民俗学込で楽しかったです。こういう話は大好物♪

  • サクッと三篇の一冊。

    母と子、そこに怪異を絡ませ比嘉姉妹の活躍をサクッと堪能できた三篇。

    表題作は旧家 架守家にまつわる不穏な出来事からスタート。
    雰囲気といい読みやすさといい好みな世界観。

    でも一本モノにめっぽう弱い自分には一番想像がきつかった。

    ずるずる…這い回る実況中継描写に鳥肌が止まらない。
    そこに登場した冷静沈着、クール琴子に安堵の涙。
    おまじないをアレンジするところも現代風で良い感じ。

    一番あり得そうな神信仰と心の闇の哀しいコラボ怪異だった。 

    まだまだ姉妹の、琴子の活躍が見たい…後ろ髪をずるずると引かれる思い。

  • 比嘉姉妹シリーズ 短編3話

    とても読みやすいホラー小説
    3話収録されていますが
    興味深かったのが2話目の「あの日の光は今も」
    ずうのめ人形に出てきた
    歩く呪い製造機、最恐の辻村ゆかりが登場します
    時系列は何時ごろなんだろう?
    ネタバレです









    おそらくゆかりの考察が事件の真相で
    あの池には何かいる方がいい、とゆかりが言葉にしてしまったがために呪いとなり
    そっちが真実になってしまった?ってことかな?
    かなり迷惑なお人です

  • 【収録作品】あの日の光は今も/母と/さえづちの眼

    「あの日の光は今も」は真琴と野崎、「母と」は湯水、「さえづちの眼」は琴子が登場。

  • 怖くて不思議で面白かった!
    短編集で一気読み!

  • 積んでいた澤村伊智の「さえづちの瞳」を読んだ。
    「ぼぎわんが来る」の比嘉姉妹シリーズの最新刊。中編が3編で構成されている。

    澤村伊智、私はホラー作家のなかでも安心して読める作家さんはこの人ぐらいだ。あとは小野不由美とか。
    ジャパニーズ・ホラーは性差別が下地になっていることが多くて辟易していた。
    なんか澤村伊智は作風というか物語の構造が横溝正史に近いと思う。
    今回収録されていた表題の「さえづちの眼」はまさにそう。
    これはそのまま家父長制への批判だ。女性が人格ある人間として認められず、家のためにその家長の子どもを産むことしか許されない。もしくはそうあることしか望まれない。
    そう扱われたことが事件の発端となっている。
    そして、これは横溝正史の作品にも言えることだ。「犬神家の一族」「八ツ墓村」「悪魔が来りて笛を吹く」などなど。
    その家の家長や家長になる予定の男たちの横暴さや弱者を踏みつける振る舞い、家父長制からはみ出したものへの苛烈な風当たり。
    それらの被害を受ける立場の人間が事件を引き起こす。
    すべての元凶は家父長制や天皇制、血統主義への批判から成り立っている。これは横溝正史の家庭環境が作ったものかもしれないという言及がNHKの「深読み読書会」というシリーズでされていた。
    澤村伊智も横溝正史も強固な家父長制のもとに成り立った家庭というものがどれだけ息苦しく、地獄を引き起こし得るか。
    家庭、家族というものは安心や安らぎとは程遠い場所になることを作品内で明確に書いている。

    「さえづちの眼」、冴子の失踪自体は母である佳枝が二人で行った狂言であり、それは無理やり結婚させられた冴子を解放するための行動だった。
    でも佳枝も甥の嫁である真央のことを認めようとしない。
    真央自身は子どもが好きで、自分の意思で夫と家族を作ることを考えていた。そんな彼女を見下し、結果として流産を繰り返すぐらい呪っていた。
    自分が批判をしたい事や物に対して、意思を持って迎合(しているように見える)行動をしている人間を愚かだと思う佳枝のような人間はかなり、いる。
    それはそれで別の呪いをかけている。
    澤村伊智の作品はこういうレイヤーの細かいところがある。
    ジャパニーズ・ホラーの作品でフェミニズムや家父長制批判を行うような作家は私は今のところ澤村伊智しか知らない。
    もし他にもいたら教えてほしい。
    今作も大変おもしろかった。やっぱり安心して作家買いできる人がいるのは嬉しい。

  • 中短編集3作を収録
    『母と』は、青少年の更生施設に瑛子と名乗る女が乗り込み、少しずつ生活をおかしくしていく物語。その状況を打開すべく、1人の少女の依頼を受けた真琴&野崎だったが、思いの外手強い相手で……。『ずうのめ人形』と同じく、この作品でもある人物の性別が伏せられたまま物語が進むため、終わった後に「ああ、なるほどね。これは、やられた」としっくり来る感じがある。
    『あの日の光は今も』は、『ずうのめ人形』の前日譚的な物語。SFとミステリー、ホラーを合わせたような一作で、辻村ゆかりも登場。とても後味の悪い話だったのと、メインとなる地名の読み方がわからなくて繰り返し確認してると先に進めなくなるので注意⚠️
    『さえづちの眼』は、1969年に大きな屋敷に勤めていた家政婦の手記から始まる中編小説。その手記によると雨の降る日にその屋敷の娘が失踪してしまったことが書かれている。
    後半では物語の視点が手記から失踪した娘の母親に移されていき、進んでいく。
    手記の中身に大蛇を彷彿させるものが多くあり、読者は「大蛇の祟りかな」と思いながら読み進めていくことだろう。後半では、その屋敷は祟られていそうだということで、比嘉琴子が登場する。琴子の登場でその屋敷にある祟りではなく人為的な仕掛けによって作り出された呪いのようなもの……ということがわかるが、実は本当に祟られていて……?最後の部分を読んだ時、寒気が止まらなかった。
    作品全体を通して描かれているテーマは「母親」の存在についてだと感じた。

  • 比嘉姉妹シリーズ本編のサイドストーリー的な感じもありつつも、 1話1話がまあまあのボリュームでどれも違う雰囲気のため、お得感がある。1話だけ比嘉姉妹関係ない?と思ってると、関わりのある人がいてなるほど。今回はそういうの仕込むのか!と驚くようなミステリ的要素が強い部分もあり、新しい一面も見える。本のタイトルにもなってるさえづちの眼は展開も意外で、こう思わせといてこう、とホラーに落とすところや琴子の存在感など、一番インパクトが大きい。

  • 3編とも導入と中盤はおもしろくてわくわくするんだけど、終盤でしぼんでしまう印象があった。怪異は理不尽なもので、人間の思惑や心情に関係なくふりかかってくる、というのはわかるんですが、物語として唐突な感じがしました(それも理不尽を表現しているのかも、とも思いつつ)。

  • 3つの異なるお話が書かれています。3作とも違う風味で楽しめます。個人的には、「さえづちの眼」が好きです。序盤の家政婦の手記と、その後の架守家の進行状況がわかり易い。
    親なら自分の子供には絶対に幸せに生きていてもらいたいですもの!!その想いはとても強く、時には呪ってしまう程に…
    呪う状況になったことはないけれど、その気持ちはよくわかる。(*。_。)ウンウン
    そして何より本作品は、就寝前に読み終えてしまった私に対し、ホラー小説の役割をきっちり果たされました。寝たら夢に冴子が出てきちゃう…という恐怖心…ジワジワくる〜

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著者プロフィール

1979年、大阪府生まれ。東京都在住。幼少時より怪談/ホラー作品に慣れ親しみ、岡本綺堂を敬愛する。2015年に「ぼぎわんが、来る」(受賞時のタイトルは「ぼぎわん」)で第22回ホラー小説大賞<大賞>を受賞しデビュー。2019年、「学校は死の匂い」(角川ホラー文庫『などらきの首』所収)で、第72回日本推理作家協会賞【短編部門】受賞。他の著作に『ずうのめ人形』『などらきの首』『ひとんち』『予言の島』などがある。巧妙な語り口と物語構成が高く評価されており、新たなホラーブームを巻き起こす旗手として期待されている。

「2023年 『七人怪談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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