麒麟児 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 169
感想 : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041117880

作品紹介・あらすじ

慶応四年三月。鳥羽・伏見の戦いに勝利した官軍は、徳川慶喜追討令を受け、江戸に迫りつつあった。
軍事取扱の勝海舟は、五万の大軍を率いる西郷隆盛との和議交渉に挑むための決死の策を練っていた。
江戸の町を業火で包み、焼き尽くす「焦土戦術」を切り札として。
和議交渉を実現するため、勝は西郷への手紙を山岡鉄太郎と益満休之助に託す。
二人は敵中を突破し西郷に面会し、非戦の条件を持ち帰る。だが徳川方の結論は、降伏条件を「何一つ受け入れない」というものだった。
三月十四日、運命の日、死を覚悟して西郷と対峙する勝。命がけの「秘策」は発動するのか――。
幕末最大の転換点、「江戸無血開城」。命を賭して成し遂げた二人の“麒麟児”の覚悟と決断を描く、著者渾身の歴史長編。

感想・レビュー・書評

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  • 勝海舟と西郷隆盛は、列強諸国に付け込まれないように気を配りながら、何とか日本の位相を転換させるために、フル回転の人生を送ったのだとは思う。小説としては、勝の視点で押し通しているが、西郷があまり印象に残らない。

  • 舞台は幕末の江戸大決戦の前夜から江戸の無血開城がなされるまで。幕末ものの物語が多い中、これだけ短い期間を描いている小説は他にないのではないだろうか。登場人物も勝海舟と西郷隆盛という2人の麒麟児を中心とするだけで、そこまで多くを登場させていない。が、それによって、この江戸無血開城という一連のストーリーにより深みを与えている気がした。また、所々で出てくる過去編も無血開城へ向けた交渉の流れを崩すことなく掘り下げられており、とっても面白かった。
    勝海舟と西郷隆盛という敵同士ながら思考回路が共通している2人だからこそ、江戸の無血開城がなったのだ。ということを納得させられる小説になっている。
    この2人や彼らを取り巻く人物のように現状を理解し問題とその解決策、そして、その次案と言った基本的な物事の解決策、であろう手順の思考をできる人が現代の今の日本にどれだけいるのだろうか。

  • 勝海舟と西郷隆盛。江戸城の無血開城を成し遂げた2人の関係以上のことを知ることが出来て良かったです。もちろん、一部、フィクションの様な話もありますが、私利私欲に走る新政府の人たちや、利権を守ろうとする佐幕の人たちの暗躍。そしてより公正や大局観に持っていこうとする二人の正義のぶつかりあいも良かったです。今の政治や政策も、こうであってほしいと思うばかり。
    たかが理想。されど理想。
    大河ドラマで良い印象のあった徳川慶喜ですが、こちらは暗愚な印象が拭えません。

  • 江戸城無血開城。勝海舟。西郷隆盛。
    その単語だけが教科書に並んでいたのは記憶の奥深くにあった。

    日本が公のもと真の意味での一国家となりうる為に、武力ではなく言葉で闘うことを願った麒麟児。妥協して譲歩を引き出して、寸分の違いでこれまでの努力が水の泡となりうる緊迫した状態での交渉。江戸の市民、街を守る為に、私利私欲なしで政治家としての姿勢を貫こうとした。

    既にこの時から、明治政府は派閥政治をおこなっており、大義名分なんて皆無。やはり明治維新とは虚構なのだと思ってしまった。

    勝海舟。勉強してみよ

  • 慶応四年、鳥羽・伏見の戦いに勝利した官軍は、徳川慶喜追討令を受け、江戸総攻撃を企てます。
    幕府軍事取扱の勝海舟は、官軍を率いる西郷隆盛との和議交渉に挑むため、背水の陣の策を練っていました。
    江戸の町を焼き尽くす「焦土戦術」です。
    和議交渉実現のために、勝は西郷への手紙を山岡鉄太郎と益満休之助に托します。
    二人は敵中を突破、西郷に面会し、非戦の条件を持ち帰ります。
    三月十四日、運命の日、死を覚悟して西郷と対峙する勝と山岡。
    幕末最大の交渉、そして転換点、
    江戸無血開城を成し遂げた二人の“麒麟児”の覚悟と決断を描きます。
    勝海舟の交渉、それを受ける西郷とのやり取りがよく分かります。
    素晴らしい交渉です。

  • 勝海舟を主人公に江戸城無血開城を成し遂げた彼と西郷との会談に焦点を当て、その後の成り行きを描いた歴史小説。
    うん、えっと有名なエピソードであり、その困難さと偉業はよくわかるのだけど、小説としてここだけを取り出すのは、ちょっと難しかったなあと思った。
    なんと言うか、幕末のそれまでの色んなことがあって初めてその場の困難さと、それ故の感動が起こるのだと思うのだよね。
    それを端折ってしまうのは、さすがに無理がある。
    それこそ長い長い物語の果ての感動が欲しい所だ。
    とは言え、江戸無血開城後の細々した出来事にはあまり知らなかったこともあり、興味を持って読み進められた。
    まあ、作者には一度幕末を腰を据えて描いてほしいと思う。

  • 勝海舟と西郷隆盛にスポットを当てた冲方丁の歴史小説。冲方丁が好む主題としては「継承」があるが、本作では二つの継承が掲げられている。一つは江戸という大都市の継承、ひいては日本という国の継承である。

    現代の日本を語る上で、江戸城の無血開城は一つの大きなターニングポイントと言えるだろう。仮に首都を巻き込んだ市街戦を行った場合のダメージは筆舌に尽くしがたい。その結末は理解した上で、ヒリヒリとした交渉劇を描く筆力は流石である。

    もう一つの継承は西郷隆盛の記憶を継承することであろう。西南戦争で散った西郷であるが、軍歌『抜刀隊』で「古今無雙の英雄」と評される、紛うことなき英雄である。朝敵となって尚ここまでの人気を誇るのは西郷だけではないだろうか。

    その人気の下地こそが西郷の「記憶」であろう。西郷隆盛という傑物の記憶が継承されなくなった時こそ、彼が単なる朝敵となるわけで、だからこそ勝は現代よりも強い危機感で西郷の足跡を残そうとしたのだな、ということが分かるラストになっている。

  • 勝海舟、西郷隆盛。
    この2人がこの時代の日本にいてくれたおかげで、どれだけの命が救われたのか。
    人間1人の思慮で、こうまで歴史が変わるものなのか。
    なんとなく知っていた歴史の一部分を、まるでその時に居合わせたように感じられた。

    様々な思惑が絡み合う中、広く世界を、日本を見た勝安房守。
    生き方、考え方、知識、見解、さらに口調までもがとんでもなくかっこよく見えた。

    現代の日本は、勝海舟が尽力した理想の形とは違っているかもしれない。
    あの時の、新政府のように私利私欲にまみれた人たちが蔓延って、貧富の差が広がり、諸外国の侵入を簡単に許してしまうかもしれない。

    けどそうであってはならない。
    この時代に失われた、たくさんの命の上で今の日本がある。
    自分がまず一歩、何かしなければ。
    そんな勇気をもらえた一冊だった。

    勝海舟が西郷隆盛を思う場面は、思わず涙が出た。
    紛れもなく良書!

  • 時代の寵児、西郷隆盛と勝海舟。
    幕府と新政府。
    戦争か和平。
    焼け野原か無血開城。

    二人の天才たちによる尋常ならざる駆け引きをうまく描いたとても良い歴史小説だと思います!


  • 内容は「江戸城無血開城」での勝海舟と西郷隆盛の交渉を頂点とする江戸末期と明治維新の両雄の活躍を描いている。堅すぎて躍動感に欠ける。冲方丁さんの本らしくない。

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著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』でスニーカー大賞金賞を受賞してデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞受賞。09年に刊行した『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞を受賞。2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞受賞。他の著作に、『テスタメントシュピーゲル』『もらい泣き』など多数。

「2021年 『麒麟児』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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