迷路の花嫁 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 113
感想 : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041118436

作品紹介・あらすじ

かけ出しの小説家松原浩三は、ふとしたことからとてつもない恐ろしい事件に巻き込まれていった。暗い夜の町を散策していた彼は、偶然行き会った若い女の異常な様子に不審を抱き、後を追いかけた。だが、通りがかりの警官と共に、女が消えた路地へ踏み込んだ彼は戦慄した! 軒灯にヤモリが這うクモの巣だらけの無気味な家、そして縁側からまっ赤な猫の足跡が続き、血の海と化した座敷には、無数の切り傷から鮮血をしたたらす全裸の女の死体が……。横溝正史の傑作長編推理小説。

感想・レビュー・書評

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  • 駆け出しの小説家・松原浩三は、通りかかった霊媒の家から飛び出してきたという女に不審を抱き、警官たちとともに家へと踏み込む。そこには無数の傷を負った女の死体が──!金田一耕助はこの謎を解けるのか?!

    とは言っても、金田一はほぼ登場しない。凄惨な殺人の謎も留め置かれたままお預けを食らう。しかし、それにもちゃんと意味があって、終盤は唸るばかり。事件に首を突っ込む浩三が見せる奇妙で正義感あふれる行動の謎。それに従って浮き彫りになる霊媒の大家・建部多門の邪悪さ。この対決が実に面白い。

    入り組んだ人間関係はまさに迷路。複雑で悪辣な迷路の奥に囚われた花嫁たちを見つけ出し、そこから始まる新しいドラマが事件を解決へと導いていく。ミステリというよりは、解説にもある通りにサスペンス・ロマンがしっくりくる。痛快でほろ苦く、味わい深い作品。復刊して読めたのはうれしいね。

    それにしても、表紙や事件現場で猫アピールがすごいのに、まったく関係なく終わってしまったのは残念。まあ、表紙の猫が可愛いなあで買って、面白い作品と出会えたからいいとしようかな(笑)

  • 久しぶりの金田一シリーズ。狂気の表情を浮かべる猫の表紙。これは冒頭の惨劇のシーン。
    ダ・ヴィンチ別冊のムック「金田一耕介the Complete」も合わせて読みながら横溝世界を堪能しました。時代設定としては戦後10年、出版も同じくらいの時期のせいか「戦災」跡の描写が生々しく、今読むと別世界のように感じられると共に非常にリアルな情景です。
    今回は金田一はほとんど登場せず、複雑な仕掛けを解くというより、苦境に陥った人々を掬い上げる男の活躍を描くサスペンス比重が高い。共感してほしい、かまってほしいとか
    、すぐに心折れたとかが多い今と違って、弱音を吐かないとかなんとしてもやり抜くとか昭和の理不尽なまでのメンタルの強さが魅力的に映ります。もはやこんなところも異世界
    と感じてしまう今の自分のひ弱さがショック。優しさが滲み出るシーンも多く、金田一シリーズの中でも特に印象深い作品でした。

  • 悪逆非道な心霊術の大家に復讐する物語。推理要素は少なく、主役であるはずの金田一耕助も脇役扱い。金田一耕助が脇役扱いの作品も珍しいから、これはこれでよいのではと感じた。

  • 金田一耕助の物語としては異色だろう。
    彼はあくまで添え物的な立場だし、推理がメインかというとそうでもない。
    金田一耕助ものらしい凄惨な殺人事件も起きるが、中盤は寧ろ殺人事件の話の影がなくなるほど。
    これは資産持ちの小説家の男性による、ある霊媒師に食い物にされていた女性たちの救済の物語だった。
    この男が段々と羽をむしられるように丸裸になっていく終盤はすかっとできた。
    女性たちも一部を除いて、いい相手と出会えて救われたのもよかった。

    ただそんな彼女たちを救った英雄の末路が……
    最初は信用ならないなこいつと思いながら読んでいたのに、最後は「おい、おまえ消えるのか!?」と動揺する羽目になってしまった。
    まあ、金田一耕助ものだと、この立場の人は大抵こうなるので、逃れられない運命だったのかもしれない。

  • めちゃくちゃ面白かった。今までの殺人事件の謎を解いていく話というよりも、最低非道な人間にやり返すというか痛い目をドンドン見させていくというスカッとするような物語だった。いつしか、殺人事件の犯人を見つけるよりも、最低非道な人間が落ち目になっていく様子をドキドキしながら折っていた。ただ最後はハッピーエンドなんだろうけど、物悲しいもので涙が出た。もちろん奇怪な犯人を追い詰めるのも楽しいのだけど、今回みたいな敵討ちのようなスカッとする話も気分変えというか良かった。

  • 横溝作品としては物足りなさでいっぱいです。
    序盤の殺人事件がセンセーショナルだからワクワクしたのに、事件の推理というよりは、その背景にある宗教絡みの男女問題が中心の人情モノといった感じです…

  • 「ミステリ」を期待したおすすめにはならないけど、物語としてはすごく面白かった

  • 04/24/2022

  • 女王蜂に引き続き、「相手を見つめるだけで男女の御祈祷()に引きずり込めるオヂサン」が出てきたことだけ面白かった。男も女も応援したいひとがいなさすぎて誰がどうなろうが結構どうでもいいかな…と思ってしまった。ナツメさんの良さってなに?顔?なよなよして頬を赤らめてうつむき、でもヤることはヤる女って感じで一番苦手だった。

  • いつもの最後でのトリック証良しです

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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