偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041118764

作品紹介・あらすじ

老老詐欺グループを仕切っていた光代は、メンバーに金を持ち逃げされたうえ、『黙っていてほしければ、一千万円を用意しろ』と書かれた脅迫状を受け取る。要求額を用立てるために危険な橋を渡った帰り道、へらへらした警察官に声をかけられ――。第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作「偽りの春」をはじめ、“落としの狩野”と呼ばれた元刑事の狩野雷太が5人の容疑者と対峙する、心を揺さぶるミステリ短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 街のお巡りさんが大活躍! 緊張感のある中で繰り広げられる犯人とお巡りさんの対決がスゴイ #偽りの春

    交番のおまわりさんが、ほんの少し糸口から犯人の犯罪を暴いていく倒叙ミステリー、全五編からなる短編集。何気ないどうしたんですか?という問いかけから、みるみる犯人を追い詰めていく様は超怖いっ

    コロンボ、古畑任三郎シリーズの倒叙モノのミステリーです。
    これまでの倒叙モノよりも、かなり人情派の話ばかりで、犯人側の描写がとてもよく描かれています。犯人の性格に戦慄したり、思わずほろりときたり、また共感できたりするので、ミステリーでなくとも読み物としても良作だと思いました。

    また文章も丁寧で上手で、短編ながら読みごたえがある内容。ストーリーも工夫をされていて、一癖二癖ある設定や展開になっていますね。

    本作のメインどころは、やはりお巡りさんの鋭い推理でしょう。犯罪者が狡猾にひた隠しにしたい悪行を、するすると見事に解き明かしていきます。犯人もこんな優秀な警察官に出会ってしまって運がなかったですね…

    本作の少し残念な点としては、できればもっとお巡りさんの出番や描写があっても良かったかなと思いました。性格や過去の背景、好きなものや趣味などの情報、犯人を追い込むシーンなど、もうちょっとボリュームがあってもよかったかな。

    今後もシリーズ化できる作品だと思うので、ぜひ期待したいです!

  • 知らなかったのか…?そのお巡りさんからは逃げられない…!
    蝶のように舞い、蜂のように刺す!のらりくらりと笑顔で犯人を追い詰めるお巡りさんはもはや大魔王。その名は狩野雷太。彼が関わる事件が連作短編として描かれる倒叙ミステリ。

    『鎖された赤』
    交番を訪ねた青年・尊。落とした鍵を探しにやってきたのだが、その鍵は少女を監禁している場所の鍵だった!祖父の家で見つけた蔵の鍵。そこから少女への倒錯した愛情への欲求が溢れ出す。途中の日記からホラーを読んでいるような気分に。さらに、のらりくらりとしながらも尊を追い詰めていく狩野も怖い!倒叙ものの探偵で一番怖いって思ったかも。予想以上の闇にゾッとさせられた話だった。

    『偽りの春』
    高齢者詐欺を仕切っていたリーダーの光代。仲間に一千万円を持ち逃げされた上に、黙っていて欲しくば一千万円用意しろという脅迫状まで届く。窃盗で手にしたお金を持ち帰るところで狩野とエンカウント!顔色が悪いから送るよという言葉を断れず、光代はパトカーに乗る──。

    狩野が淡々とにこやかに追い詰めていくのが怖い(二回目)。詐欺からはもう足を洗って、仲良くなった隣の子にランドセルを買ってあげたいという願いを読者は知っているだけに、より感情移入して読んでしまう。読み終わってみると、偽りの春というタイトルも味わい深い。

    『名前のない薔薇』
    泥棒・祥吾に思いを寄せる看護師・理恵。しかし、自分は泥棒だから関わることはできないと断る。それに対して理恵は「泥棒なんだったら、ある家から珍しい薔薇を盗んでみて」と言葉を返すが──。

    自分の気持ちを受け取ってほしいという気持ちが生んだ盗みの種。そこから芽生え、花を咲かせたのは偽りの薔薇だった。泥棒したことで相手まで泥棒にしてしまう皮肉。愛する薔薇への思いがあるからこそ、狩野に揺さぶられる理恵。締め方が粋で、一花咲かせてくれるところが好き。

    『見知らぬ親友』
    美大に通う美穂は同学年の夏希が借りているマンションで同居していた。独りが心細くてという夏希だったが、美穂は見られたくない瞬間を目撃されたことから始まった展開に疲弊していく。貧富の差、秘密を握られて逆らえない状況は、美穂を追い込んでいき──。

    狩野がひたすら執拗に美穂を追い詰めていくのが怖すぎる。読みながら自分まで追い詰められていくようなヒリつきに鳥肌。大魔王の貫禄。倒叙ミステリでこんなに恐怖したのは初めて(三回目)。真実が明らかになることで、美穂と夏希の関係性の歪みも霧が晴れていく。その一方で、友人であり天才と呼ばれる油絵科の一沙が見抜いて描き出したものも恐ろしい。

    『サロメの遺言』
    アイスティーに入れた毒が元恋人であるエミリを殺した。彼女が声優を務めたアニメ原作者である高木カギは部屋の証拠隠滅を図る。すべては計画通り。彼は逮捕され、取り調べを受ける。そこで彼が要求したことは、狩野雷太を呼ぶことだった。

    狩野の過去、解かれなかった事件の真相に手がかかる。高木カギの父が遺した女の両腕だけの石膏像「サロメ」。その腕に乗せられたものは何だったのか。取調べで無双してきた大魔王・狩野との戦い。今までの事件は絶望感が支配していたけど、今回の心理戦は熱量がすごくて圧倒された。圧し掛かる罪の重さと秋の匂いがほろ苦いラストだった。

  • 面白い。バレないように言い訳を考えて嘘をつこうとしてる犯人の必死さと、ちょっとした表情の変化だったり口調、態度の変化に気づいてどんどん犯人を追い込んでいく狩野さんとのやりとりにはすごいヒヤヒヤさせられます。
    いつのまにか犯人の方も狩野さんの方もどっちも応援したくなります
    続編?の朝と夕の犯罪も文庫化したら買いたいです

  • 犯人目線で物語が進む。新鮮でとても面白かった。題名のとおり、狩野さんという警察官が出てくるのだが、この人物がなかなか手強い。あまり深く考えていなさそうな語り口であるにも関わらず、上手く話を誘導してくる。犯人目線であるため、「どうかバレないように…」と祈ってしまう自分がいた。

  • 警察官と容疑者の5つの短編小説
    短編と言っても話に繋がりがあります。
    最初は容疑者を中心に話がすすみ、ちょっとした質問や容疑者の行動から解決に導く、古畑任三郎シリーズのような展開で話がすすみます。
    後半は登場人物と警察官の過去が繋がり伏線回収が楽しめます。

  • いや、なんか読んでいるこっちがドキドキしてきますね。基本的に犯人の目線で描かれた短編集で、とくに1つめと2つめのストーリーでは、前半、犯人による犯罪シーンが、後半に狩野(あるいは刑事が)が登場、犯人と対峙するわけですが、言葉巧みに相手をいつの間にか追い込む展開。前半までを読み進めてきた手前、どうしても犯人に感情移入した状態になっていて、狩野への受け答えでヘマをしていないか、犯罪がバレていないか、などとても気になってしまい心拍数が上がります。
    はじめて読んだ作家さんですがほかの作品も気になり検索中。

  • チャラい感じの元刑事だ、今は交番勤務のお巡りさん。
    彼は何故交番勤務で、かつての同僚から刑事復帰の打診を頑なに拒むのか?
    少しの手掛かりから真犯人に迫る彼の過去が最後に明らかになる。

  • 倒叙ミステリーが5作。
    話し方は軽薄、だけど少しの違和感も見逃してくれない。
    このチャラいおまわりさんに目をつけられたが最後、じわじわと追い込まれ逃げ道を失ってしまう。
    その詰め方を見ていると、自業自得なのが分かっていても彼らの肩を持ちたくなる。
    全体的に解決しても釈然としないが、それも悪くない。

  • 犯人視点から描かれる倒叙ミステリー。短編集という位置付けで1つずつ完結した話にはなっているが、全編を通して読むと長編を読んだような満足感が得られる。事件の解決と同時に狩野の為人や背景が明らかになっていくところが面白い。犯人目線で読んでいるので、どこでどのように警察に犯行がバレるのかハラハラしてしまうが、犯人があまりにも警察をなめている印象ではある。
    読みやすく残虐な表現もないので、ミステリー初心者からミステリー好きな人まで幅広い人が楽しめる作品だと思う。

  • おもしろい。
    先日同作者さんの別作品を読んで面白かったので、書店で見かけて購入。
    前作も思ったけど、テンポがよく、且つ無駄なく、且つ濃厚に進む。

    個人的は一番最初の話が
    夢に見そうな世界観の話で印象的だった。
    ありきたりを許さない、
    予想外の展開を予感させるのが楽しい。

    それぞれの短編面白かったんですが、
    狩野さんがなんとなく可哀想な終わり方だったので☆4
    教えてくれたってよかったじゃない…と怒ってみたり。

    スッキリ終わればよかったけど…続編もあるらしいのでそちらに期待!

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著者プロフィール

(ふるた・てん)プロット担当の萩野瑛(はぎの・えい)と執筆担当の鮎川颯(あゆかわ・そう)による作家ユニット。少女小説作家として活躍後、「女王はかえらない」で第13回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、同名義でのデビューを果たす。「小説 野性時代」掲載の「偽りの春」で第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。同作を収録した短編集『偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理』を2019年に刊行した。他の著書に『匿名交叉』(文庫化に際して『彼女は戻らない』に改題)『すみれ屋敷の罪人』がある。

「2021年 『朝と夕の犯罪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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