絵の中のモノ語り

  • KADOKAWA (2021年12月24日発売)
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  • 本 ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041118863

作品紹介・あらすじ

身分違いの恋、救いのない終焉。
少女が抱える鉢の中には愛しき人の頭部!?

ルノワール、ミュシャ、ホッパー、クリムトなど
名画に描かれたアイテムをもとに、歴史の謎や闇、社会背景、画家たちの思惑を読み解きます。

サージェント『カーネーション、リリー、リリー、ローズ』×「提灯」
ホッパー『ナイトホークス』×「煙草」
ファレーロ『サバトに赴く魔女たち』×「箒」
カラヴァッジョ『バッカス』×「ワイン」
ウッチェロ『聖ゲオルギウスと竜』×「ドラゴン」
クストーディエフ『マースレニツァ』×「馬そり」
ミュシャ『メディア』×「蛇の腕輪」
ヴ―エ『時の敗北』×「ラッパ」

感想・レビュー・書評

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  • 表紙の絵が凄いぜ。女性が抱えたバジルの大きな鉢の中にはこの女性の恋人の首が入っているのだ。怖い。勿論、中野京子さんは、なぜそんな絵なのかこの絵の説明をしてくれるし、その背景や作者についても的確に語ってくれる。その語り口の巧みなこと!時々入る自己ツッコミも絶妙。絵の中に描かれた生活用品や食べ物、動物、装飾品、シンボル、楽器を取り上げて、その絵の意味に迫っていく。堪能するのは間違いなし。

  • 絵画の解説書ですね。
    解説書と書きましたが、この本は雑誌に連載されていたもので、一作に四ページしかありません。ですから込み入った美術評論には到っていないので、エピソードが主体に成っています。どこからでも読める比較的軽い内容に成っています。
     だからと言って流石に中野京子さん(年齢不詳、北海道生まれ)作家であり、ドイツ文学者、西洋文化史家、翻訳家の多才な叡知で鋭く核心を衝いて語ります。
     中野さんだから出来る本ですね。
     全部で三十二点、全てカラーですから、作品も観賞出来ます。残念ながら単行本サイズなので迫力はもうひとつです。
     手軽に持ち運び出来て、少しの時間で楽しめるのが良いですね。
     この本を切っ掛けにして、美術に親しめるようになれば幸いだと思います。

  • 『怖い絵』シリーズの作者、図書館で『怖い絵』を探していたら、こちらの本が目にとまったので、ひょいと手を伸ばして読んでみた。
    元々は『通販生活』のエッセイだったそうで、『モノ』にこだわった視点での絵の読み解きということらしい。
    後半はモノグラムとかが取り上げられていて、ちょっと無理があるんじゃね。と、そう思うところもあるけれども、著者が楽しんで書いていること、絵を鑑賞していることが伝わるので、楽しんで読むことが出来た。
    一番気に入ったエピソードは、表紙にも使われている絵のそれ、女性がなにやら意味ありげに花瓶というか植木鉢にしだれかかっている。その鉢には髑髏の意匠が施されていて、いわくがありそう……その通り、実は……という話。青々と茂っているバジルがなかなかに恐ろしい。そして、実に物語的だ。
    そう思う。

  • 西洋絵画にまったりと浸かって至福の時を過ごした。
    絵画に描かれている生活用品、食べ物、動物、装飾品など6つの章に分けて特徴が書かれている。中野京子氏の軽妙な文章は読み物としても面白かった。

  • 見て鑑賞して感じる事も必要だが、その歴史や背景も知ると、より深く感じられる。このシリーズはちょこちょこ読みたくなる。

  • éclat 2015年10月号~2021年4月号連載を加筆修正したもの。
    KADOKAWAの『怖い絵』シリーズ編集者さんから「まだ本になっていない作品があったら出したい」とお話があって、このたびの書籍化となったそうです。

    カラヴァッジョが二作品あることで動揺しました。
    (ランブール兄弟も二作品あったのですが)
    最近読んだ二冊の本
    芥川賞受賞作砂川文次さんの『ブラックボックス』は
    一見ふつうの人間が切れると大変なことになるものでした。
    呉座勇一さん『頼朝と義時』も陰謀が渦巻き…
    鎌倉時代だからしかたないのかもしれませんけど。

    カラヴァッジョも、すごくドラマチックな絵画をのこしていて、そして喧嘩っ早く、友人を殺したりしているんですよね…。

    2月になって一週間経っていないのに、こんなことが続くと
    この先どうなってしまうのかな…。
    そう思いながら、この後も殺人事件を扱ったノンフィクションを読む私。

  • 絵を観る楽しさをたくさん教えてくださっていつもありがとうございます。

  • ある月刊誌のエッセイをまとめたもの。絵に描かれているモノに焦点を当てている。

    西洋の男性って、割れ顎(俗な言い方ならケツ顎)が多いのだろうか。スチュアート「スケートをする人」、カラヴァッジオ「バッカス」が割れ顎。
    ホッパー「ナイトホークス」に「昨夜はどこにいたの。」「そんな昔は忘れた」という有名な台詞が。何に出てきた台詞かが分からなくて、調べると『カサブランカ』だった。「君の瞳に乾杯」しかすぐには出てこない。チャンドラーの「長いお別れ」の文章も登場。
    「ポンパドゥール夫人の肖像」で有名なモーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール。ラ・トゥールと聞いて「いかさま師」が出てきたが別のラ・トゥール。作風が全く違うもんな。
    ルーベンス「キリスト昇架」降架も対の絵としてあり。足を釘1本で留めていることから身をよじり、動きが生まれる。凄いなあ。
    ファレーロ「サバトに赴く魔女たち」魔女の肌の質感が艶めかしい。
    バーン・ジョーンズ「「愛」に導かれる巡礼」のホタテ貝。ヴィーナスはシャコ貝から生まれたと思っていたよ。(ボッティチェリの「ヴィーナス誕生」)
    カラヴァッジオ「バッカス」私にとって、この絵は幼い頃から慣れ親しんでいた絵。家にある美術百科事典に掲載されていたからだ。カラヴァッジオはファーストネームがミケランジェロっていうどうでもいいことに注目してしまう。ブドウの葉、イチジクの葉が装飾的で美しい。
    ベラスケス「セビーリャの水売り」この絵には背筋がゾクっとした。ベラスケス作品は有名なものは見たつもりだった。この絵は印象に残っていなかったのだろうか。しかしこの作品も傑作だと思う。宮廷画家として有名なベラスケスだが、王族ではない人々を描く絵の方が私には印象に残る、と思っていたのだが。あ、でも子どもを描いた絵もいいんだよなぁ。矛盾する気持ちを持つ。
    ハント「イザベラとバジルの鉢」この絵を見てミレイ「オフィーリア」を思い出した。あまりしっかり自分の中で区分できているわけではないが、ラファエル前派を区別しているということか。物語の絵を描くことが流行していたのだろうか。この絵は「デカメロン」の一話。イザベラは身分違いの恋人が兄たちに殺され、その遺体の首を切り、鉢に埋めその鉢でバジルを育てる。イザベラの鉢への執着を不審に思った兄たちは鉢を割り、犯罪の発覚を恐れて逃亡。鉢を奪われたイザベラはショックで死亡、という話。首、切断って…
    ジェラール「プシュケとアモル」ルーブル展で実際に見た絵。家の美術百科事典にもあり、お気に入りの絵。この絵の神話も読んでいたので、そうか、エロース(ギリシャ神話ではこちらの名前)がこういう感じで大人になれば違和感がないのか、と思った。陶器のような肌っていうのはこんな感じなんだな、と思える。
    クリムト「パラス・アテナ」甲冑のベロだしがメドゥーサとは。マヤの神みたいだ。
    ミュシャ「メディア」子どもの頃読んだ、「アルゴー船物語」を思い出す。平幹二朗も芝居で「メディア」を演じていたように思うが、サラ・ベルナールと同じようなストーリーにしているのだろうか。以前大阪でミュシャのマンホールを見つけながら歩いたことがあったが、美術館にも行けばよかった。
    カラヴァッジオ「女占い師」 雰囲気がジョルジュ・ラ・トゥールの「いかさま師」に似ている。確かラ・トゥールにも「女占い師」という絵があった。このテーマ多いみたいだ。

    ざーっと書いてみたが、やはり中野京子さんの文章は新しい視点を与えてくれる。

  • 絵のページを見ながら解説を読むと中野さんの口調が思い出されて、まるで直接話を聞いているような感覚がした。

  • 絵の中の物から絵画を深く知ることができた。思慮深いお話しが面白い。

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著者プロフィール

早稲田大学、明治大学、洗足学園大学で非常勤講師。専攻は19世紀ドイツ文学、オペラ、バロック美術。日本ペンクラブ会員。著書に『情熱の女流「昆虫画家」——メーリアン』(講談社)、『恋に死す』(清流出版社)、『かくも罪深きオペラ』『紙幣は語る』(洋泉社)、『オペラで楽しむ名作文学』(さえら書房)など。訳書に『巨匠のデッサンシリーズ——ゴヤ』(岩崎美術社)、『訴えてやる!——ドイツ隣人間訴訟戦争』(未来社)など。

「2003年 『オペラの18世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中野京子の作品

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