雪が降る (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 104
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041118979

作品紹介・あらすじ

〈母を殺したのは、志村さん、あなたですね〉一通のメールが、男の記憶をよみがえらせる。メールの送り主は、かつて愛した女性の息子だった……(「雪が降る」)。不世出の偉才・藤原伊織による至高の6篇。

感想・レビュー・書評

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  • 「台風」
    「雪が降る」
    「銀の塩」
    「トマト」
    「紅の樹」
    「ダリアの夏」

    短編集

    哀愁と男臭さ溢れる作品が揃っている
    読者によって好き嫌いが分かれそう
    短編集はどこか物足りなさを感じることもあるが
    この短編集は1つ1つが読みごたえがあった

    「雪が降る」が素敵だった
    情景が頭に浮かんだ

    たまにはこういう作品集を読むのも悪くない
    濃いめで苦めなコーヒーが似合う

  • 藤原伊織『雪が降る』角川文庫。

    最早、絶滅危惧種とっなった男らしい男の生き様を描いた6編を収録した短編集。男女平等だとかLGBTだとかまるで権利を勝ち取ることが正義というような輩ばかりの時代にはそぐわない作品である。昔はこれが当たり前ということがどんどん否定されていく生き難い世の中にこそ読むべき短編集だと思う。

    『台風』。深みのある短編。人生は後悔と苦しみの連続なのかも知れない。幸せな思い出はいつの間にか霞んでしまう。台風のある日、会社でかつての部下が起こした傷害事件を切っ掛けに吉井卓也は苦い過去を思い出す。★★★★★

    『雪が降る』。表題作。人生で外れ籤ばかりを引いて来た男の再生の物語。「母を殺したのは、志村さん、あなたですね」という内容の一通のメールが、志村秀明の記憶をよみがえらせる。志村がかつて愛した会社のライバルである高橋の妻。★★★★★

    『銀の塩』。ミステリー色の強い短編。我々、ある程度満ち足りた生活に甘んじている日本人には気付かぬことが多い。バングラデシュから来日したショヘルという青年と共に軽井沢の別荘で休日を過ごす訳ありな中年の島村。★★★★

    『トマト』。奇妙な風合いの寓話めいた短編であるが、文章以上に何かを伝えてくれる。銀座の和光の前で人魚と名乗る女性に声を掛けられた政治家の秘書。★★★★

    『紅の樹』。やくざのヒットマンから足を洗い、全うな生活を送っていた堀江はあることを切っ掛けに再び猛獣に変わる。燃えるような男の生き様を描いた短編。北方謙三かクイネルかという位の絶滅危惧種的な短編。★★★★★

    『ダリアの夏』。かつて野球に挫折した男が一線から姿を消した有名女優の母子と知り合う。栄光と挫折。未来はまだまだ変えられる。★★★★

    本体価格700円
    ★★★★★

  • ハードボイルドの名手として名高い著者だが、私は今作が初読み。全六作品収録の短編集で、どの作品にもグッとくるものがある。ロマンチックで切ない表題作も捨て難いが、運命に翻弄される男の悲哀を描いた「台風」と王道的な任侠小説「紅の樹」が私のお気に入り。飲酒運転に対する前時代的な価値観に違和感を覚えないわけではないが、それを補って余りある魅力が満載。黒川博行氏(著者のご友人)による解説の言葉をお借りするなら、余分な贅肉を削ぎ落としたシャープな文章とそこから滴り落ちるような情感が正にそれ。他の作品も是非とも読まねば。

  • ここ数年のうち一番の後書き。名エッセイの趣がある

  • 2023年6月25日購入。

  • 徹夜麻雀後の仮眠して出勤、タバコの煙だらけのプールバーに女性の淹れるお茶。私はこの頃と今と両方知っているから読めるけど、今の子達が読んだらどう思うのかなというのが一番の印象だった…。表題作は良かったんだけど、どの人もみんな善い人すぎてちょーっと入り込めなかった。文体とか雰囲気は好きなんだけど残念。

  • 美しい

  • 久々に藤原伊織に触れた。本当に上手い。
    登場人物が一様に破滅的な人間。よくネタに尽きないな。

  • 短編6編
    いづれも、鬱屈した過去を持った登場人物。
    心の奥底に、固いしこりを持ちながら、生きる。その生きざまが描かれている。

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著者プロフィール

1948年大阪府生まれ。東京大学仏文科卒。85年「ダックスフントのワープ」ですばる文学賞を受賞。95年「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞、同作品で翌年直木賞を受賞。洗練されたハードボイルドの書き手として多くの読者を惹きつけた。2007年5月17日逝去。

「2023年 『ダナエ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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