水槽の中 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041118993

作品紹介・あらすじ

高校二年生の春を迎えた遥は、同じクラスになった考古学部の地味め男子・アルトのことが気になり始める。恋とは言い切れない気持ちを持てあましているうちに、アルトは他の女の子との距離を縮めて……

感想・レビュー・書評

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  •  通学路に桜並木、教室から海が見える学校‥。なんて素晴らしい地理的シチュエーションなんでしょう。もうこれだけで青春です。
     内容は、高2女子・井上遥の視点で描く、男女4人の友情を軸にした一年間の物語になっています。

     中堅学年ともいう高2(中2もそう)は、適度に学校に慣れ、受験も迫ってない時期。部活も先輩と後輩に挟まれ、立ち位置が難しい‥。意外に問題が起こるのも2年生、と知った風にいう人もいます。

     でもこの学校、とっても平和なんです。更に、登場する男女4人も基本的に皆いい子ばかり。この設定、物語としてのハードル超高くない?
     さて、どう展開するのか! と読んでいきますが、大きな事件も起きず‥。そうか、青春小説か、だよね‥という感じです、はい。

     しかしです。著者が、何気ないこの一年間の日常を愛おしむように綴り、読み手に懐かしさや切なさを呼び起こすんです。自分の若かりし頃と重ねてしまいます。これを退屈と受け取るか、共感するかは読み手次第でしょうね。
     刺々しさ、ドロドロ感は全くなく、その世代特有の感覚と内面がよく描かれていると思います。一冊のアルバムを見ているようです。青春を切り取った一枚一枚の写真は、見事に鮮やかな色をしています。それも、どぎつい色ではなく、優しいパステル調の明るさです。ザ・青春讃歌!の一冊でした。

  • これはとても楽しく読めた。

    高2になった始業式から始まる、遥とマーリン、バンちゃんとアルト、4人の一年。
    いじめもスクールカーストもない、むしろ動画配信が発覚して処分を受けそうになったクラスメイトを全員で慮るようなクラスが描かれ、今の世の中にはあり得ないかも知れないが、読むのがしんどくなるような内容の本もある中で、こういう物語に出会うと心が安らぐ。

    クラス分け、部活紹介、憧れの先輩、学食、帰り道でのお喋り、期末テスト、夏休みの海の家、文化祭の準備、就学旅行での告白、球技大会、卒業式…。
    川西さんの動画配信発覚以外は特別なことは何も起こらないが、かつて通り過ぎてきたことばかりの描写に大昔の高校2年生の頃を思い出した。
    思えば、男子ばかりのクラス(私の高校は男3:女1の割合だった)の1年生でもなく、もちろん受験のための授業ばかりの3年生でもなく、2年生の時が一番楽しかったもんな。
    『陸上とは違う何かがしたいと思っていたのに、何もできなかった』という遥に『違う何かしてたじゃん』と返すマーリンだったが、全く同感。
    志望校目指して勉強したり、友達とダラダラしたり、まあ、色々悩みはあったと思うが、待ち受ける未来に対しておしなべて希望のほうが勝っていた時代が懐かしい。

    そんな中、学校をサボって行った水族館をきっかけに、川西さんの事件を経て大きくなっていく、遥の中に芽生えたアルトに対する微妙な想い。
    これもまた、高校の頃ってこんな感じだったなあと思い返す。
    じれったいような、自分の気持ちを持て余すような気持ちが丁寧に描かれていて、とても好い。
    花火大会でのこともありがちで、分かっていてもお互いちゃんとした対応が取れないんだよね。
    雪の中、海が見えるベンチでの会話がとても切なかった。

  • 桜並木の坂道を上がると正門が見える。
    海辺の町の、海の見える高校で、同じクラスの遥とマーリン、バンちゃんとアルトの4人の一年間を綴った物語。
    バンちゃんとアルトは、考古学部員の男子。
    派手な子や目立つ子もいるけれど、いじめのない良いクラスメートたちに囲まれて、何か特別なことがあるわけでもないけれど、読んでいて何故かわくわくしてくる。
    これが青春ていうやつかなぁ。

    高ニのあの頃の初々しい思い出の数々。
    大人の恋愛の一歩手前のような、切なくて胸がキュンとなった恋も、かけがえのない友情も、何もかもがぎゅっと詰め込まれていて、記憶の断片として、いつまでもいつまでも大事にしておきたい。
    ひかりに反射してきらめく水槽をイメージさせるような「水槽の中」というタイトルが本当に素敵です。

  • 特別なことがなくても、特別は作られる。

    この小説を読んでいると、自分自身が高校生だった時のことや気持ちが、本当に鮮明に浮かび上がってきて、驚いた。

    遥やアルト、マーリン、バンちゃん。
    毎日毎日、同じようなことを話して、笑って、また明日って言い合っていたなぁ。
    そんな中でも、微妙な関係性の変化があったり。

    大人にとっては、卒業アルバム読み直すような感覚の一冊だった。ある意味、描写がすごい!

  • 鎌倉だろうか、だろうね。海がいつも身近にあり、そこに集うかけがえのない友人。簡単ではないんだよな、4人が集まってくだらない話にどうでもいい話に、でもなくなるとダメ。花火大会のキスから遥とアルトのギクシャクがあるわけで、あーやっぱり男女は違うのかと思うし、でも友情だけを求めるのは単なる綺麗事かな自分はとも思う。部活をやらないで無駄と思っていた時間を友人が大切な時間で見えないものが見えると言う、桜が綺麗とか思う事から何かが見つかると言い、そういう友達がいて羨ましいな。桜舞い散る場面から始めて桜の蕾で終わる物語

  • 大好きな本だ。

    高校2年生って、ほんとに一番楽しい。
    その1年間の、揺れ動く気持ち。
    初めて芽生えた気持ち。
    キラキラと思い出す恋した瞬間。
    すれ違ってしまうもどかしさ。
    あまずっぱい気持ちをぎゅっと詰め込んである。
    もうあの頃のようにうぶなときめき、うぶなかけひきはできなくて、思い出すと照れくさくなってしまうけれど、とっても大切だったあの時間を思い出すことができる、とても貴重な読書体験だった。

  • 友達でいたい。好きかもしれない。つきあいたい。でも気まずくなるのが怖い。高校生活はあっという間に終わるけど、人生のなかでいちばん凝縮した日々がつまってる。もうあの頃には戻れないけれど、あの頃の色んな気持ちを懐かしく、ほろ苦く思いだした。

  • 2022/04/07
    畑野さんの描く青春系の小説が好きで、文庫化するのを待ってました!
    アルト、マーリン、バンちゃん、遥の4人が送る高校生活が描かれていて、ごくごく普通に4人の高校生、特に遥を中心として物語が進んでいきます。そこには一年の中で大半の人が経験しているであろう高校の行事のことや、恋愛についてのあれやこれやもあったりして「青春」という要素がギュッと豪華に詰め込まれているような感じです。
    あとがきの方も書いてましたが、大体の小説には山場となる出来事があったり、それを軸として物語が展開していく柱となるものがあったりする中、水槽の中では、特にこれといって大きな出来事や中心となる描写は無く、普通に高校生が高校生活を送る様子が描かれていて、逆に一般的なものをここまで読者を引き込むように描くことができるのは凄い…的な内容にとても共感しました。
    この本を読むことで自分の高校時代などを思い出し、理想的な高校生活像として自分を投影しながらこの小説を読むと、もう一度あの頃に戻ったような気分になれると思います。

  • Amazonの紹介より
    友情も恋愛も勉強も将来もすべて。誰にでもある、特別な高校2年生の1年間。
    桜並木に憧れて入学した海の近くの高校で、遥は二年生の春を迎えた。親友のマーリンと過ごす毎日は楽しくて平和で、恋にも満たない気持ちで憧れの先輩を眺めている。ある雨の日、水族館で同じクラスの地味め男子アルトと遭遇するが……。始業式、学食、学園祭、花火、修学旅行、球技大会。放課後に話した、クラスメイトとの他愛ない会話。誰もが大切にずっとしまっておきたい、きらめく一年間の物語。


    高校生活でしか味わえない出来事や友情、はたまた恋愛など、小説としての盛り上がりはありませんでしたが、普通ならではのアオハルが詰まった作品でした。
    単純に本当に良い学校だなと思いました。普通だったら、この展開だとイジメに繋がりかねないのに、クラスメイトのファインプレーといったら、素晴らしいの一言です。

    小説内での輝かしい高校生活、羨ましい限りです。どこか懐かしさもあって、読んでいて爽やかな気持ちになりました。

    小説を多く読んでいるせいか、何か雑味のある展開を期待していた自分がいたのですが、読了後はそんな自分に恥ずかしい限りでした。

    心の清涼剤として、おすすめいたします。
    小説のような学生時代ではありませんでしたが、友達や学校のありがたみを感じた作品でした。
    学生時代に戻って、やり直したいです。

  • スクールカーストではなくて、将来に不安を感じながらも、友達や恋愛などキラキラとしたものが流れていく、限られた時間を感じた。
    高校2年の一年間を切り取った作品。
    季節の移ろいや海が象徴的。

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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞。13年に『海の見える街』、14年に『南部芸能事務所』で吉川英治文学新人賞の候補となる。著書にドラマ化された『感情8号線』、『ふたつの星とタイムマシン』『タイムマシンでは、行けない明日』『消えない月』『神さまを待っている』『大人になったら、』『若葉荘の暮らし』などがある。

「2023年 『トワイライライト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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