隠居すごろく (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.17
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本棚登録 : 488
感想 : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041119006

作品紹介・あらすじ

巣鴨で六代続く糸問屋の主人を務めた徳兵衛。還暦を機に引退し、悠々自適な隠居生活を楽しもうとしていたが、孫の千代太が訪れたことで人生第二のすごろくが動き始めた……。心温まる人情時代小説!

感想・レビュー・書評

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  • 3ヶ月ほど前に朝日の書評に載っていて、面白そうだったので「読みたい」に入れていた。

    巣鴨で六代続く糸問屋の主人を務めた徳兵衛が還暦を機に引退し、悠々自適な隠居生活に入るところから始まるお話。
    商い一筋で生きてきていざ時間が出来ても何をしたら良いのか無聊をかこつ隠居家に8歳の孫・千代太が遊びに来たことから話が進みだす。

    私は既に徳兵衛より年嵩だがお金もないので隠居などは夢のまた夢。とは言え、会社を辞めたら何もすることがないところは同じで身につまされる。
    孫にいい顔したくても、子供のことが分からずに持て余し、癇癪を起してしまうところなども居心地が悪い。
    そんなことも思いながら読むのだが、話の仕込みとなる前半はすごろくが三歩進んで二歩下がり蘊蓄話で一回休みみたいな感じであまり興が乗らず。

    その後、あれよあれよという間に徳兵衛のところには女子供を中心に17人が出入りすることになるが、これらの食い扶持を得るために組紐の商売や子供たちの芝居を工夫していく段になって、ようやく面白くなってきた。
    組紐を巡って色々な店を回ってリサーチしたりここぞと見込んだ長門屋の主人との丁々発止のやり取りなど、徳兵衛がイキイキとしていく様が微笑ましい。
    実は書評では『商売だけに向き合ってきた徳兵衛の来し方を否定しないのである』というところに惹かれたのだったのだけど、それはこういうことだったのね。
    だけども、ひねた見方をすると、仕事一筋で生きてきた人間は、仕事を辞めても仕事みたいなことでしか楽しみを見出だせないというようにも受け止められ、いささか複雑。
    隠居だからと言って気ままに趣味に生きる暮らしをしなくても、商売しかできない現実だったらそれを活かす暮らしを探せばいいということのようだが、今まであくせく生きてきて、ようやく自分の時間を自由にできるようになっても、今までみたいにしか生きられないとしたら、それもなんだかなぁという気がして…。

    後半になるに従って、徳兵衛の隠居生活の在り様よりも、子どもたちの逞しさのほうがどんどん勝っていき、どちらかと言えば、負うた子(この話では孫だが)に教えられといった人情話になってしまったことが(それはそれで悪い話ではないのだけれど)、私には肩透かしだった。

  • 巣鴨で六代続く糸問屋の嶋屋。
    そこの主人の徳兵衛は三十三年間の仕事の一筋の生活に終わりを告げて、還暦を機会に隠居することに。

    だが、若い頃から仕事漬けの日々を送ってきた徳兵衛には何一つ趣味がない。
    やることがなくて途方に暮れていた時に、孫の千代太が隠居屋敷へ。

    そこでいろいろと蘊蓄を語る徳兵衛だが、それを勘違いして受け取った孫の千代太。そして千代太は食べるにも困った二人の兄妹を連れてきて……。

    そこから徳兵衛の二枚目の双六が始まった。

    こういう話は大好物。楽しかったし、考えさせられることもあったし、好きだなあ。西條さんの時代小説(*^^*)

  • 面白かった!
    時代小説は好みではないのだが、西條奈加さんの本は時々買ってしまう。商人が主人公で舞台となる町が生き生きと描かれており、読んでいて楽しい。
    いつの時代も悩みや厄災は変わらないのだなぁと思う。

    孫の千代太がとにかく可愛い。
    訳アリの親と子供たちが必死に生きる姿に、御隠居と妻お登勢の夫婦の在り方に…泣けた。

    また、所々にある御隠居の説教は今でも考える値のある教訓のように思った。

  • あ〜、、、いい話だった。読んでよかった。頑固ジジイを変えることができる孫パワーは、リアルだった。
    わたし自身、隠居というには多少早い年齢だけれど、歳をとるのも怖くないと、ほんのちよっぴり思えた。
    女性陣のピリリと辛口なセリフがところどころ非常にナイスでした。

  • ☆5では足りない!文句なしに面白い!
    久しぶりの西條さんの時代物を読んで大満足(^^)

    仕事一筋三十三年、ケチで頑固、趣味無し、癇癪持ち
    そんな徳兵衛が隠居!
    それまでの人生が、すごろくで言うなら上がり…
    二枚目のすごろくが始まった!

    まるでジュマンジの如きすごろくの目( ̄▽ ̄)笑
    笑いあり、事件あり、最後はホロリ…

    やっぱり好き西條奈加!

  •  「千両かざり」のときのように、職人たちの世界、技術が詳細に描かれているのが素敵。
    子どもたちの逞しさは「はむ・はたる」を、手習いの様子は「銀杏手ならい」を、などこれまでに読んだ著者さんのいくつかの作品を次々に思い起こさせた。
     今回は理不尽な死人も出ないし、格差社会は毎度心が痛むが、千代太が純粋な気持ちで人々を繋いでいき、徳兵衛が次の世代への道を開いていく、力が湧いてくる作品だった。
     目次の番号がさいころの目になっているのが楽しい。目が増えるたび登場人物も事件も増えていく。
     子どもたちのお芝居、商売仲間や妻との語らい、お寺での落首……名場面がたくさんあり連続ドラマにでもなったらさぞおもしろいだろうと思った。最初から最後まで退屈することなく先へ先へと急いで読んでしまったがまた日を置いてゆっくり読み直したい。

  • 還暦を機に引退し、悠々自適な隠居生活を楽しもうとしていた徳兵衛だが、いざ始めてみると趣味となるものもみつからず、時間を持て余していた。
    そんなところに孫の千代太が訪れたことで人生第二のすごろくが動き始める。
    子供たちの逞しさ、優しさが徳兵衛を変えていく。
    すごろくのアガリ方が良かった。

  • 隠居生活を楽しみに頑張ってきた徳兵衛。
    まるで定年退職を待ちわびた現代人と同様、仕事一途だったがために陥る壁にぶつかる。
    それまでの人生、仕事中毒で人間関係も仕事関係の人ばかり。ご近所の人も知らず、友達もいない。はたと気付けば趣味の一つもない!
    これからどーしたらいいんだ~!と、雄叫びを上げそうな人にオススメです。
    きっと元気が出ますよ。

  • 糸問屋「嶋屋」の6代目主人を引退し、隠居生活を始めた徳兵衛。商いを離れ穏やかな日々を送るはずが、孫の千代太(8歳)がやってきては厄介事を持ち込み、心も体も休まらない。

    徳兵衛は割と頑固ですぐ怒鳴り散らすし、千代太もこうと決めたら折れない上にしつこい。それぞれ心が優しいことはわかるのだけれど、しばらくはどちらにもイマイチ感情移入できずに読んでいたかな。

    でもその後は少しずつふたりの関係がしっくりしてくるし、登場人物も増えて状況もどんどん変化してくるので楽しめた。

    300ページが近くなった頃からは、それまで以上にめまぐるしく展開が動くので目が離せない。

    徳兵衛は千代太と関わるうちに心情や言動に変化が起きて、価値観すら変わってくる。その様子や人との関係にグッときちゃって、涙腺を何度も刺激されてしまった。

    456ページと少し長めの本だけど、その分、徳兵衛たちの歩んできた道が心に沁み渡って読後は胸がいっぱいに。徳兵衛の第二の人生を一緒に体験したような満足感。面白かった。

    余韻に浸っていたら、急に犬のこと思い出した。シロどうなったんだっけ?(笑)

  • 商いの意味
    経世済民の意味
    孫に教えられる

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。他の著書に『御師 弥五郎』『六花落々』『銀杏手ならい』(以上、祥伝社文庫)、『六つの村を越えて髭をなびかせる者』『婿どの相逢席』『首取物語』など多数。

「2023年 『とりどりみどり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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