隠居すごろく (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.24
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本棚登録 : 756
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041119006

作品紹介・あらすじ

巣鴨で六代続く糸問屋の主人を務めた徳兵衛。還暦を機に引退し、悠々自適な隠居生活を楽しもうとしていたが、孫の千代太が訪れたことで人生第二のすごろくが動き始めた……。心温まる人情時代小説!

感想・レビュー・書評

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  • すでに冒頭何行かで、ハラハラし、笑いもあり、おとぼけもあり、厳しさあり、淋しさあり...。
    最初から最後までずっと面白かった!2、3分でも時間あれば読もう!と思うほど続きが読みたかった!そしてやっぱり最後は、何度もじわじわっと涙が溢れた。

    時代小説は苦手だなあ...と思っていたけれど、西條さんの本を何冊か読んでいるうちに、私の中で江戸ブームがきたー!時代背景が今目の前にある世界ではないので、タイムスリップしてる感がいいのですね!(誰に向かって言ってる)

    そしていつも西條さんの本を読んでていいなあと思うのは江戸の人達の「人情」。
    困っている人を助ける心、助けられてその恩に報いる心、人を許すことが出来る心。現代では難しいことになってしまったけど、こういう心は出来るだけ無くしたくないなあ。

    いやそれより、孫の千代太最高!
    私も孫と石の上にちょこんと座って、ほのぼのとした話したい!(因みにうちの子供達は独身です。)

  • 3ヶ月ほど前に朝日の書評に載っていて、面白そうだったので「読みたい」に入れていた。

    巣鴨で六代続く糸問屋の主人を務めた徳兵衛が還暦を機に引退し、悠々自適な隠居生活に入るところから始まるお話。
    商い一筋で生きてきていざ時間が出来ても何をしたら良いのか無聊をかこつ隠居家に8歳の孫・千代太が遊びに来たことから話が進みだす。

    私は既に徳兵衛より年嵩だがお金もないので隠居などは夢のまた夢。とは言え、会社を辞めたら何もすることがないところは同じで身につまされる。
    孫にいい顔したくても、子供のことが分からずに持て余し、癇癪を起してしまうところなども居心地が悪い。
    そんなことも思いながら読むのだが、話の仕込みとなる前半はすごろくが三歩進んで二歩下がり蘊蓄話で一回休みみたいな感じであまり興が乗らず。

    その後、あれよあれよという間に徳兵衛のところには女子供を中心に17人が出入りすることになるが、これらの食い扶持を得るために組紐の商売や子供たちの芝居を工夫していく段になって、ようやく面白くなってきた。
    組紐を巡って色々な店を回ってリサーチしたりここぞと見込んだ長門屋の主人との丁々発止のやり取りなど、徳兵衛がイキイキとしていく様が微笑ましい。
    実は書評では『商売だけに向き合ってきた徳兵衛の来し方を否定しないのである』というところに惹かれたのだったのだけど、それはこういうことだったのね。
    だけども、ひねた見方をすると、仕事一筋で生きてきた人間は、仕事を辞めても仕事みたいなことでしか楽しみを見出だせないというようにも受け止められ、いささか複雑。
    隠居だからと言って気ままに趣味に生きる暮らしをしなくても、商売しかできない現実だったらそれを活かす暮らしを探せばいいということのようだが、今まであくせく生きてきて、ようやく自分の時間を自由にできるようになっても、今までみたいにしか生きられないとしたら、それもなんだかなぁという気がして…。

    後半になるに従って、徳兵衛の隠居生活の在り様よりも、子どもたちの逞しさのほうがどんどん勝っていき、どちらかと言えば、負うた子(この話では孫だが)に教えられといった人情話になってしまったことが(それはそれで悪い話ではないのだけれど)、私には肩透かしだった。

  • 面白かった!
    時代小説は好みではないのだが、西條奈加さんの本は時々買ってしまう。商人が主人公で舞台となる町が生き生きと描かれており、読んでいて楽しい。
    いつの時代も悩みや厄災は変わらないのだなぁと思う。

    孫の千代太がとにかく可愛い。
    訳アリの親と子供たちが必死に生きる姿に、御隠居と妻お登勢の夫婦の在り方に…泣けた。

    また、所々にある御隠居の説教は今でも考える値のある教訓のように思った。

  • 巣鴨で六代続く糸問屋の嶋屋。
    そこの主人の徳兵衛は三十三年間の仕事の一筋の生活に終わりを告げて、還暦を機会に隠居することに。

    だが、若い頃から仕事漬けの日々を送ってきた徳兵衛には何一つ趣味がない。
    やることがなくて途方に暮れていた時に、孫の千代太が隠居屋敷へ。

    そこでいろいろと蘊蓄を語る徳兵衛だが、それを勘違いして受け取った孫の千代太。そして千代太は食べるにも困った二人の兄妹を連れてきて……。

    そこから徳兵衛の二枚目の双六が始まった。

    こういう話は大好物。楽しかったし、考えさせられることもあったし、好きだなあ。西條さんの時代小説(*^^*)

  • あ〜、、、いい話だった。読んでよかった。頑固ジジイを変えることができる孫パワーは、リアルだった。
    わたし自身、隠居というには多少早い年齢だけれど、歳をとるのも怖くないと、ほんのちよっぴり思えた。
    女性陣のピリリと辛口なセリフがところどころ非常にナイスでした。

  • ☆5では足りない!文句なしに面白い!
    久しぶりの西條さんの時代物を読んで大満足(^^)

    仕事一筋三十三年、ケチで頑固、趣味無し、癇癪持ち
    そんな徳兵衛が隠居!
    それまでの人生が、すごろくで言うなら上がり…
    二枚目のすごろくが始まった!

    まるでジュマンジの如きすごろくの目( ̄▽ ̄)笑
    笑いあり、事件あり、最後はホロリ…

    やっぱり好き西條奈加!

  • 人の変化、子どもの成長、そういったものがしみじみと心に迫る感じのいい時代小説でした。

    主人公となるのは代々続く糸問屋の主人だった徳兵衛。店を息子に任せ悠々自適にすごそうと考えていたものの、趣味も見つからず暇を持て余す日々。そんな中、徳兵衛の元に孫の千代太が訪れるようになり、徳兵衛の周囲はにわかに騒がしくなっていきます。

    まず徳兵衛の心理の書き方が絶妙。引退を引き留められるかと思いきや、思ったほどの反応は得られず、自分より女将さんのほうが頼られる瞬間に悶々としたり、そんな女将=妻にどこか遠慮がちになったり。

    隠居する徳兵衛のこの年ならではの悲哀、というほど大げさなものではないけど、自尊心と寂しさ、物足りなさ、が色々混ざったなんとも言えない感情が巧みにそして、おかしく描かれます。自分はまだそういう年齢じゃないけど、なんというか妙に刺さった。上の年代ならより深く突き刺さりそう。

    そんな徳兵衛の元に訪れた孫の千代太。心の優しい千代太は捨てられた動物を拾ってきて、徳兵衛に飼ってほしいと頼む。それを徳兵衛が説き伏せたことで、事態はさらに大きくなっていく。

    この小説のもう一人の主人公が千代太。優しくも世間知らずで、幼い言動故に友達を傷つけてしまう。そんな千代太や友人たちを見かね、徳兵衛は渋々ながら子どもたちに力を貸すことに。

    世間知らずで甘えん坊だった千代太の著しい成長。友達を助けたい、そのために何ができるか必死で考え、責任を背負い成長していく姿の爽やかさ。一方で徳兵衛は手を貸しながらも、あるところでは手を引き、子どもたちに自立をうながすよう考えさせる。そのさじ加減も絶妙。

    徳兵衛の啖呵やかんしゃくも味があっていい。礼儀の知らない子どもや、子どもを放り出す母親、権力を嵩に着た大人などへの啖呵は小気味よくて、こういう気持ちよさも時代小説ならではだと思います。

    千代太に関わっていく中で、徳兵衛自身にも変化が生じます。自分の中になんとなく生まれていた偏見が正され、儲けとはまた違った商売の楽しみを見いだし、千代太をはじめとした人々の変化や成長に心を動かされるようになる。そして徳兵衛自身の家族の向き合い方の問題にもつながっていきます。

    登場人物がどんどん増えていくのに、それが余計という感じはせず、わいわいがやがやといった楽しさがどんどん膨れていく。そしてかたくなだった徳兵衛の心も徐々にほぐれていく。

    作中で描かれる問題もけっこう現代につながるところがあります。子どもの教育格差や貧困。女性の労働問題。そうしたものを一切合切飲み込み、突き進んでいくのもとても気持ちよかった。

    登場人物みんな、大人も子どもも男性も女性も関係なく、みんなどこか粋で魅力あふれる人物ばかりでした。個人的に徳兵衛の妻のお登勢が好きでした。

    徳兵衛はなぜか決まり悪くて、お登勢に隠れて色々やっているのに、周りの人がお登勢に注進して、徳兵衛の知らないところで差配を振るっているのとかおかしかったし、そんな二人の酸いも甘いも超えた夫婦としての関係性もまたよかったです。

  • 温かいもので心が満たされる素敵なラスト。
    最後の一行までいい…。何とも感慨深く幸せな涙がこぼれてしまいました。

    隠居生活を送る徳兵衛を心配し、孫の千代太が訪ねてきたことから、孤独な隠居生活は一変!
    物語の様相も千代太がやってくるようになってからあれよあれよと様変わりしていく…。
    これは、読めば読むほどに引き込まれます。
    無邪気な子どもの予想外の行動やお願いに、徳兵衛も翻弄されっぱなし。徳兵衛の慌てる姿が何とも微笑ましい。

    徳兵衛が千代太と一緒に多くの人の情にふれ、助け合い成長していく。
    他人の人生に関わり責任の一端を担うとともに、力を合わせ楽しむ心も孫と共有。ともに成長していく様子には目を細めてしまいます。
    「商一筋」だった頃とは違う、これまでにない第二の人生を送り始める徳兵衛。
    幼かった千代太の成長ぶりも眩しい。

    読みながら、千代太と一緒に、また徳兵衛と一緒に人生勉強をしているようにも思えました。実に深い。
    表題の「隠居すごろく」とは上手いこと言うなぁ。
    ラストは感動で胸がいっぱい。
    とても素敵な作品でした。
    .

  • 読書メーターが横向きになってる。ずーっと縦にして書いてて煩わしいと。よきかなよきかなだよ。善人長屋からだが、どの作品も特徴がありしっかり面白い。前回読んだ関超えぬとも色合いが違う。とにかく徳兵衛なんだけど、出だしのサイコロの上がり目だと思った隠居が2回目のサイコロって、そこだけで食いついた。それで思った通り出来事が起きた、まさか寺小屋の様な、新しい商売が始まるなんて。確かに一回の釣りで飽きるとか、逆に身についた商いからアイデアが浮かぶ、いかりや長介の様に怖いけど懐かれたんだよ。線香立ては切ないけど

  • 老舗の主、嶋屋徳兵衛の隠居話。仕事一筋の生活に終止符を打ったは良いけれど待っていたのは味わったことのない孤独感。その時が来れば誰もが感じる孤独感
    優しい孫の登場で色々ありながらだけれども、第二のすごろくに生き甲斐を見つけた徳兵衛は幸せ者です

    勘七、おはち親子と徳兵衛の話や、36年ぶりに「おまえさま」と呼ばれた徳兵衛と妻登勢との話やら目頭がたびたび熱くなりました

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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