日本アパッチ族 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 65
感想 : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041119433

作品紹介・あらすじ

戦後大阪に出没した、「アパッチ」。屑鉄泥棒から鉄を食う怪物「食鉄人種」に変貌した彼らは、やがて大阪の街から飛び出して、日本全国に広がり仲間を増やし、やがて日本政治をゆさぶるまでになっていく――。小松左京の処女長編にして最高傑作の呼び声高い記念碑的作品!

感想・レビュー・書評

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  • まず表紙絵に度肝を抜かれた。
    鉄色のアパッチ人みたいなのが腰かけた洋便器からパチンコ玉みたいなもの(鉄)が流れて・・・印象は気持ち悪い。けれども読み進むとそれが思いもかけない展開でだんだん面白くなってくるのだ。

    警察に失業罪(働かざる者食うべからずの社会か)という変な追放罪で広大な囲い地に放り出された主人公。そこは瓦礫累々の廃墟、人っ子一人いない。犬に食われそうになったりいろいろあって、もう野垂れ死にかと思いきや、アパッチ族という食鉄人(鉄を主食とする)に助けられ、仲間に入るところから始まるのであった。まあね、初めて鉄を食べるところの描写は、いい気持ちしないんだけど。

    それからの奇想天外のお話というより、現代社会機構の矛盾を突く運びにつれて、辛辣になってくるのが古びていないテーマなのだ。国家権力、マスコミの仕組み、民主主義の煩雑さ、裏社会、底辺の人々の抜け目なさ等々、筆運びはユーモアに富んだ掛け合いで、なかなかのもの。

    鉄がらみで、鉄の成分とか、鉄鋼業界とか、微に入り細を穿つ説明もわたしには半分しかわからなかったが、『日本沈没』より『復活の日』より前にかかれた初長編ということ、並び称される作品だと思う。

  • 「人間的な喜びや悲しみや生活を失うことが、どんなにつらいことか、きみにはもうわからないんだ。そして、その価値を、あらためて悟った人は、断固として、アパッチ化することを拒否するようになるだろう。人間は豊かさといろんなたのしみに満ちた、いまの生活を、けっして、けっして捨てやしない」


    「人間が大事にしがみついとるもんなんて、ー考えてみたらあっても無うてもかまへんもんやないか。青空や、小鳥や、女の髪のにおいや、赤まんまの花やー恋やヘチマいうても、そんなもんにしがみついて、いったい戦争が起こるのを防げたか?変革の一つもなしとげられたか?どっちつかずの、今あるみみっちい幸福に必死になってしがみつこうとする連中は、現状がひっくりかえったら、それといっしょにほろびるだけや」


    「歴史は、一度くわえられた残虐行為が、くわえてほうは忘れていても、くわえられたほうはいつまでもおぼえていて、やがてはなんらかの形の復讐を行わずにはいられないことを教えている。」

  • 最近、何故かあちこちで見かけると思ったら、文庫本が再版されたのですね。
    小松左京のデビュー作。若い頃はSFが大好きで、小松左京も良く読んだけど、この本は初読(のはず)です。
    「本書が無ければ『日本沈没』は生まれなかった!?」の帯が示す様に、確かに色々と『日本沈没』を思い起こさせるところがあります(と言いつつ、読んだのは30年以上前なので怪しげなものですが)。危機的状況の中で旧弊にしがみつこうとするもの、私利私欲に走る者達と、個人レベルで英雄的に活動する人々。そういうパターンが多い気がします。
    しかし危機的状況一つにしても政治や経済、軍事、文化などいろんな面で見せて行き、リアリティーを(嘘か誠か判りませんが)積み上げて行く手法は見事ですね。時折混ぜる大阪的哄笑も効いてます。
    やや古さは感じさせるものの、今でも十分読み応えのある作品でした。

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著者プロフィール

1931年大阪市生まれ。京都大学文学部卒。61年「地には平和を」で第1回空想科学小説コンテスト努力賞。73年刊行の『日本沈没』が大ベストセラーとなり第27回日本推理作家協会賞を受賞。85年『首都消失』で第6回日本SF大賞受賞。2011年逝去。

「2022年 『小松左京“21世紀”セレクション3 継ぐのは誰か?/ヴォミーサ 【技術革新~さらに彼方の明日】編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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