二本の棘 兵庫県警捜査秘録

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041119457

作品紹介・あらすじ

「兵庫県警には、”棘”が刺さったまま残っているんや。これを絶対に忘れてはならん」。
未解決事件のことを、警察は「棘」として表現することがある。本書の著者が兵庫県警管轄で担当した事件では、「114(グリコ森永事件)」「116(朝日新聞襲撃事件)」の2つが未解決のままであり、その「2本の棘」は今なお心の中で突き刺さり、後悔の念が強い。なぜこの2事件は解決できなかったのか。また、捜査一課長として指揮を執り、執念の末に逮捕に至った「少年A」の捜査の全真相など、昭和中期から平成初期まで、高度経済成長期を経て動乱の時代のなか、様々な凶悪事件を担当した刑事一筋40年、兵庫県警元捜査一課長が初めて明かす事件秘録のすべて。

目次
1章 神戸児童連続殺傷事件
2章 グリコ・森永事件
3章 ノンキャリ刑事の青春  昭和事件簿1
4章 亡き者たちのために  昭和事件簿2
5章 朝日新聞阪神支局襲撃事件 「赤報隊」を追って

感想・レビュー・書評

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  • 前半は操作現場のリアリティを感じる内容だった。皮肉にも警察小説がいかに読者向けに作られるかを実感した。現実には伏線やどんでん返しはそんなに都合よく転がっていないということだ。

  • 元県警察捜査一課の課長さんが
    書かれておられるだけに、
    その「ほんとう」のところが
    そのまま伝わってくる。
    むろんさまざまな「犯罪」のことを
    綴られているのであるが、
    文章もかなり書き慣れておられるようで
    門外漢の者にも
    わかるように言葉を選んで
    おられるのが嬉しい

    それにしても
    凄まじいものだ
    昭和から平成に起きた17の「事件」が
    現場の息吹と共に
    静かに伝わってくる

    それにしても
    日本の警察というところは
    本書の山下征士さんのように
    謹厳実直な方がほとんどなのであろう
    と思わせてもらえる
    好著でした

  • タイトルの「二本の棘」は、未解決で時効を迎えた兵庫を舞台にしたグリコ・森永事件、朝日新聞襲撃事件のこと。
    本書は兵庫県警で捜査一努めた努めた勤めた方によるもの。タイトルから、現場刑事からみた二つの事件の真相のような内容を期待したが少し違った。著者自身がグリコ・森永事件は何度も書籍・メディアで取り上げられ、新しいものはないと書かれていたので、そうなのであろう。
    それでも警察組織がどのようになっているのか、捜査はどのように進むのか、無名の捜査員の方々が何を感じながら捜査にあたっているのかなど、普段知ることがない世界を垣間見えたのはよかった。

  • この本を読んで、1980年から2000年までに起きた重大事件のほとんどが兵庫県を舞台にしていたことを知り驚いた。
    未解決のグリコ・森永事件、朝日新聞阪神支局襲撃事件の他にも2つの広域重要指定事件が発生しており、極めつけは神戸連続児童殺傷事件と日本を揺るがせた記憶に残る事件が多い。
    これらを間近で見て捜査してきた著者の手記を読むと、事件の背景が見えてくる。
    阪神・淡路大震災後、壊滅的な被害を受けた長田区などから多くの住民が須磨ニュータウンに移住し、街全体のストレスが増し、徐々に少年の非行認知件数が増えていたのだ。

    本書を読むまで知らなかったが、実は淳君の遺体が発見される前日にも、別の中学3年生による殺人・死体遺棄事件の捜査中だったという。
    重大事件の裏には原因となる背景が必ずあるのだなとの感慨を持ち、グリコ・森永、朝日の両事件も震災前ではあるが、地域が抱えるストレスが奥底にあったのではないかと感じた。

    少年Aの事件の時の「黒いゴミ袋の男」騒動などを振り返えると、現在に通じる問題が見えてくる。
    保秘を徹底し捜査陣から情報が漏れなくなるとマスコミは暴走し、過熱報道で真偽の怪しいデマに踊らされるのだが、警察にも問題があった。

    つまり児童を対象に発生し徐々にエスカレートしていく連続した事件に、地域住民が不安を募らせ疑心暗鬼になっていく様は容易に想像がつき、警察もいちいちマスコミ報道にコメントしないという姿勢だったため、デマが即座に否定されず、野放しになった側面があった。
    事件の解決にも報道が奇妙な形で関わっていて、遺体に残された紙片の文字を読み間違えて発表したために、かえって犯人のプライドに火をつけ、次なる挑戦状を出すなど、その後の捜査の絞り込みを容易にさせた一面があった。

    「二本の棘」はもちろん、未解決のグリコ・森永と朝日新聞の事件を念頭に置いたものだが、事件が迷宮入りするのにも必ず理由がある。
    警察が組織的に捜査を妨害したり手抜かりをしたというわけではなく、たまたま同時期に警察内部で不祥事が起こっているのだという。
    「組織に不祥事が起きているときに重大な事件が起きると、捜査に支障をきたすことが多い」というのは、グリコ・森永事件直前には兵庫県警では現職警官による不祥事が続発し、阪神支局事件でも公安による「共産党宅盗聴事件」があったのだ。

  • 著者の誠実さが伝わってきます。
    昭和、平成を駆け抜けた「企業戦士」や「職人」からの、令和を生きる我々への大事なメッセージがたくさんありました。暴露的ではなく、著者自身の反省として、警察組織の縦割り、硬直性の課題、組織ならではの弱点も指摘されており、学ぶ点が多いです。

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著者プロフィール

1938年鹿児島県生まれ。鹿児島県立甲南高等学校卒業後、1958年兵庫県警巡査を拝命。捜査三課、捜査一課で刑事畑を歩む。1980年代の未解決事件「グリコ・森永事件」「朝日新聞阪神支局襲撃事件」の捜査を担当。1997年の神戸連続児童殺傷事件では捜査一課長として現場を指揮し、解決に導いた。1998年、伊丹署長を最後に退職。最終職階は警視正。

「2022年 『二本の棘 兵庫県警捜査秘録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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