准教授・高槻彰良の推察7 語りの底に眠るもの (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 53
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041119662

作品紹介・あらすじ

青和大の女子学生が高槻と尚哉の元へ相談に訪れた。
サークルの友達と一緒に、雑居ビルのエレベーターで「異界に行く方法」を試した翌日、うち一人が行方不明になったという。
心当たりを尋ねると、彼女の声は歪み――。(――第一章「違う世界へ行く方法」)

遠山からの依頼で、栃木の山奥へ赴いた高槻と尚哉。
別荘地を作るための工事中らしいのだが、沼を埋め立てようとしたところ、不審な出来事が相次ぎ、困っているという。
しかもその沼には「ヌシ」が棲むという伝承もあるらしく!? (――第二章「沼のヌシ」)

「――先生が全部忘れても、俺が覚えています。約束したでしょう」
実写ドラマ化で話題騒然&人気沸騰!
異界に魅入られた凸凹コンビの民俗学ミステリ、第7弾!

感想・レビュー・書評

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  • 高槻彰良最新刊!
    今回は少しホラーな展開だったなぁ。

    『異世界に行く方法』
    高槻の元に、女子学生が相談に訪れる。10階建てビルのエレベーターで「異世界に行く方法」を試した翌日、一人が行方不明になったという。高槻らは問題のビルに赴き調査をする。

    こんな都市伝説あるのね。
    ここでないどこかに行きたいーー。
    そんな切羽詰まった思いが異世界への扉を開くのか。
    異世界ファンタジーは好きだけど、誰もいないビルで試すとか怖くて無理!笑

    『沼のヌシ』
    遠山からの依頼で、栃木の山奥に赴くことになる。そこでは沼を埋め立て、別荘地とする工事計画があるが、村の老女が「ヌシさまに祟られる」と様々に工事を妨害してくるという。

    ヌシの条件は、同じ場所に大変長く棲み続けていること、とても大きいこと。
    確かに森のヌシ、川のヌシ、色々と昔からいうよね。
    高槻の推理がいつもながらに冴えていた。切ない結末。

    『人魚の肉』
    タイトルから怖いですね。
    都市伝説好きの間で、人魚の肉を使った料理を出すレストランが話題になっているらしい。
    二人が調査でそのレストランに行くと、丁寧な物腰のオーナー自ら席へ案内してくれる。オーナーに「人魚の肉」のことを聞くと、「知らない」という声が歪んで聞こえる…。料理に変わったところはないようだが?

    人魚といえば沙絵さん。
    今回は、沙絵さんが人魚の力を手に入れるきっかけや、これまでのことが少し語られる。いつも明るくしている沙絵さんだけど、不老不死って辛すぎるなぁ…。
    そして時々健ちゃんが話していたあの人登場??(EXでも出ていたようだがこちら未読)

    高槻先生と尚哉はもはや絆が深すぎて入り込めないよね。私のイメージの中の二人は手を繋いでいます笑 

    • 地球っこさん
      マリモさん

      シリーズもののアドバイスありがとうございます♪

      たしかに。
      私は、あんまり観ないけどドラマもリアルタイムじゃなくて、一気にレ...
      マリモさん

      シリーズもののアドバイスありがとうございます♪

      たしかに。
      私は、あんまり観ないけどドラマもリアルタイムじゃなくて、一気にレンタルや配信で観る派だからなぁ。
      唯一、最近の例外は「カムカム」でしたけどね(’-’*)♪

      うわー、どうしようかな。
      とりあえず図書館に予約しました。どの巻も前に何人かおられるので、悶々としながら待っておきます。
      あー、でも完結まで待とうかなぁ、悶々……
      2022/05/17
    • マリモさん
      地球っこさん
      私もどちらかというとまとめ読みの方が好きなんですが、いつのまにか、たくさんの未完のシリーズものに手を出してしまっています。
      こ...
      地球っこさん
      私もどちらかというとまとめ読みの方が好きなんですが、いつのまにか、たくさんの未完のシリーズものに手を出してしまっています。
      このシリーズは、まだ今巻でもクライマックスに近づいてる感じはなく、いつ完結するのか、全然先が見通せないんですよねー。
      ゆっくり楽しみましょう♪
      2022/05/17
    • 地球っこさん
      マリモさん、こんにちは♪

      EX読みましたよー
      最初“あの人”は、林原くんかと思ったのですが、山路という係長でした。
      まだ名前しかでてきてな...
      マリモさん、こんにちは♪

      EX読みましたよー
      最初“あの人”は、林原くんかと思ったのですが、山路という係長でした。
      まだ名前しかでてきてないのですけどね。

      でも、なんと、この異捜の2人、別シリーズ「憧れの作家は人間じゃありませんでした」に登場してるみたいなんです。
      それを知った今、そちらで山路係長を確認するか、ああ迷ってます。

      でもなんか、すでに別シリーズに登場してたとは、妄想で盛り上がった気持ちが、ちょっと下がってしまいました……笑
      2022/05/28
  • 短編3話からなります。

    伝承と併せて目の前の出来事の謎を解くことは今までと変わらないですが、悲しい出来事と怪異が同時に描かれている事で切なさが増します。

    自分自身は必修科目が多かったからそもそも合間の時間を過ごすことに困る経験がなく、所謂大学特有の戸惑いは少なかった方なのかなぁと、1話目を読んで感じました。

    2話目は人生の先輩の遠山さんが再度登場。尚哉の置かれている状況を理解しつつ、見守っている感じがとてもよかったです。

    3話目はサエさん登場。グロテスクな内容ではありますが、サエさん自身のことも語られ一区切りな感じでした。また、2人を助けて欲しいです。

    物語でしっかり季節も進んでいるので尚哉の成長と変化が読んでいて楽しいです。

  • シリーズ7の一冊。

    今回はせつなさが印象に残った巻だった。

    第一章「違う世界へ行く方法」は大学生が抱える自分の居場所作り、ままならない現実との怪異の絡め方が胸を打つ。

    第二章「沼のヌシ」の民俗学は興味深く読みながらも、せつなさが、随所での言葉がしんみり沁み渡る。

    遠山さんとアキラ先生の生き方の対比をじっくり考える尚哉。
    彼はどんな道を選ぶのかな。

    夜空の瞳の出没頻度が増えてきたのが不安。

    アキラ先生も尚哉もほんと、どこにも行かないで欲しい。

    良いな〜、大切な人達との約束を守るって。

    約束、まだまだいっぱい増やして欲しい。

  • 2022年3月角川文庫刊。書き下ろし。シリーズ7作目。通算8作目。違う世界へ行く方法、沼のヌシ、人魚の肉、の3つの連作短編。不死身の紗絵さんの登場が興味深く面白かった。まだまだ続きそうな予感…。

  • 悲しい出来事と「怪異」の相性が良い。そのプラットフォームに、「真実の怪異」が絡む展開。これからどうなっていくのか。「真実の怪異」に関する物語が発するメッセージはなんなのか。今後の展開に期待したい。

  • 民俗学ミステリ第七弾。今回も中短編3作が収録されている。エレベーターで異世界に行く方法、沼に棲むヌシの伝説、そして──人魚の肉。思わぬ再会も挟みつつ、高槻たちのドラマも深まっていく。

    『違う世界へ行く方法』
    高槻の授業で紹介された「異世界に行く方法」を試した友人が消えてしまった。1年生の倉本絵里奈からの依頼に、高槻たちはその儀式をおこなったビルへと向かう。エレベーターを順番通りに動かして辿り着いた場所とは──。

    車やエレベーターという内と外が区切られるもの、さらに移動中という不安定さが生み出す恐怖。タクシーは後ろの席にお客さんが乗るというのも怖さの一因かも。その時代に合わせて、幽霊も乗り物を乗り継いでいくというのがシュール。エレベーターの階数を決まった順番に押すって、ホラーでもあるしスパイ映画的でもあるし、解釈によって正反対に変わるよね。

    「違う世界へ行く」というキーワードがパラレルワールドのように紡がれて、今回の怪異と高槻・深町のドラマをなぞりながら進んでいくという作りが面白い。現世でも常世でも、知らない人が差し出した食べ物には気をつけないといけないね。それにしても、異世界転生ものが流行している昨今、交通事故で異世界転生というのはもしかしたら都市伝説の素地になったり──はしないか。

    『沼のヌシ』
    遠山からの依頼で栃木の山中へ向かった高槻たち。目的地の沼にはヌシが棲んでいて、手を出せば祟られるという言い伝えがあるという。工事フェンスに泥、時を同じくして起きた事故。沼のほとりで釣り糸を垂らす老婆の伝承は真実なのか──。

    底が見えない沼という場所自体が異界であり、怪異が発生しやすい場所だと感じた。それは人の心も同様だ。どれだけ覗こうとしても底までは窺い知ることはできない。深町の能力でさえ、本人が真実であると思っていれば、嘘だと見抜くことはできないのだ。真実としてしまった嘘はもはやその人やその場の現実となる。真実よりも強い嘘は存在する。

    それでも、嘘という沼をさらえば真実というヌシはそこにいる。それは自分が気づくよりずっと前から存在していて、心の中で見つけてもらうのを待っているのかもしれない。誰の心にも棲まう本音という名のヌシ。それと敬意をもって対話することこそ、人や場にかけられた呪いを解くことに繋がっていくんだなと思った。

    『人魚の肉』
    人魚の肉が食べられると噂のレストラン。高槻たちは予約を取って潜入してみると、そこにはなんと海野沙絵の姿があった!思いもよらぬ再会に色めき立つ高槻へ、沙絵はレストランの秘密を一緒に探らないかと持ちかける。その場に居合わせたフリーライターの林原とともに、禁忌の肉の正体を追う。

    このタイトルから連想するのはもうこの人しかいない!というわけで再会した沙絵。その前に高槻が深町へと話した八百比丘尼の伝承も面白かった。自称・八百比丘尼なんて八百長比丘尼がいたなんて思わなかった(笑) 人は八百比丘尼のように不老不死ではないのに、やってることは昔から変わらないとは皮肉だなと。

    沙絵の語りから得られるものこそ人魚の肉と言っても過言ではない。異界との境界上に立つ者たちの葛藤。自分は人であるという帰属意識と絆がなければたやすく向こう側へ引かれてしまう。巻数が重なるほどに絆もまた紡がれる。異界の空気が色濃くなってきた中で、このドラマがどう進んでいくのか続きも期待したい。

  • 収録作はいずれもある意味異界へのいざないだなあと思いながら読み終えた。メイン2人も入りかけては戻ってくるので、本当に境界線上にいることがよくわかる。久しぶりだったぶん新鮮な気持ちで読めたので評価は少し甘めだが、冷静に見れば微妙な点もいくつか……特に3話目は動機の背景がいまいち伝わってこなかったので、彼女たちを登場させるためだけに用意した展開のように見えた。

  • ついに夏樹くんが本編にがっつり(要は高槻先生や尚哉に)関わる展開に。
    ますます「偽物」の怪異より「本物」色が強くなっていく本編である。

    三編とも関わる謎は犯罪性のあるもので、前回のように怪異の「本物」がオチになるものはない。
    ただ登場しない訳でもない。
    「人魚」の話があり、かつ夏樹くんが出てくるのだから、あの人の再登場である。
    しかも、あの人の語る話は何一つ尚哉くんの耳には歪みなく通る訳で。
    その衝撃的な内容とともに、嘘でないことにも驚かされた。
    やはり、あの人は「本物」だ。

    人魚のもつ「境界性」
    乗り物の閉鎖性から想像させる、その外の「異界」
    そして、「ヌシ様」の謎に隠された悲しい過去。
    今回も先生の講義を楽しく拝聴しつつ、それでいて軽くは読ませてはくれない、胸にずんっとくる話が印象的だった。
    考えさせられることが多かったというか。
    ただ怪異の謎に迫るだけでなく、大学生が抱える悩みや再開発時の地元民との軋轢など、リアルの世界でも通じる話題も出てきたからだろう。
    本当に奥深い話である。

    一方で、先生の中にいる「もう一人の先生」については、再登場のあの人を持ってしても正体が分からず。
    それでいて登場頻度が上がっているのが不穏。
    これ以上、夏樹くんの絡む案件にはなって欲しくないが、どうなっていくのだろう。
    ますます尚哉くんに頑張ってもらわなくてはいけなくなる気がする。
    彼が更に抱えてしまった能力も、どうやら「本物」のようなので。

  • まるで本当に民俗学の授業を受けてるみたい。
    面白いし勉強にもなる。今回も怪異の原因が人に関わるものがほとんどだった。
    ただ、先生の中に潜むもの、八百比丘尼の存在は本物の怪異としてまた謎が深まったなー
    これからは先生の中にいる正体がどんどん明かされていくのかな。
    そしてそして、澤村先生の他の作品である憧れの作家シリーズであさひと林原が登場!前作は高槻先生が好きな小説が恋人を探して輪廻を繰り返す愛の小説って書いてた記載のみだったけど、今回はがっつり絡みがあって嬉しかった!!吸血鬼先生と高槻先生の存在する世界線よ、、
    どちらも好きなシリーズだからコラボ嬉しい。
    澤村先生の作品には日常に潜む人外がたくさんいて私は大好き〜

  • タイトルでピンときたけど、さえさん出てきました!なかなかグロテスクな物語もこの作品になるとグロさ緩和されてちょうど良いです。

    2022.5.25
    76

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著者プロフィール

神奈川県横浜市出身、在住。2016年に『憧れの作家は人間じゃありませんでした』で第2回角川文庫キャラクター小説大賞《大賞》を満場一致で受賞し、デビュー。同作はシリーズ化され1~3巻を数える。21年夏、「准教授・高槻彰良の推察」シリーズが実写ドラマ化され話題に。キャラクター文芸界再注目の作家。

「2023年 『憧れの作家は人間じゃありませんでした4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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