最後の晩ごはん 後悔とマカロニグラタン (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 331
感想 : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041119723

作品紹介・あらすじ

「ばんめし屋」の節分。店には病み上がりの李英もやってきて恵方巻を食べるが、李英に頼まれた海里が、彼を伴い朗読の稽古に行ったことから仲違いしてしまう。仲直りのため二人で有馬温泉に行くことになり…

感想・レビュー・書評

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  • 夜だけ営業の定食屋<ばんめし屋>を舞台にしたシリーズ第17作。
    サブタイトルのマカロニって前にも出てきたような…とシリーズ作品を見返すと第8作がマカロニサラダだった。これだけ長いシリーズになると食材がかぶるのも仕方ないか。

    今回のハイライトは二つ。
    海里と後輩・李英の喧嘩(すぐに仲直りするけれど)。
    きっかけは海里も認める通り、李英に対する勝手な嫉妬なのだけれど、気持ちは分かる。
    李英くんは本当に良い子、良い子過ぎるのだ。

    役者としての努力を怠らず、前作では大病を患ってその後遺症で体力が戻らない中でもやれることを必死にやっている。海里の朗読劇の師匠・倉持悠子が認める才能もある。それなのにその努力や才能を鼻に掛けることなく常に謙虚。
    海里の短い売れっ子時代もスキャンダルで芸能界を追われた時も、<ばんめし屋>で働きながら役者への再出発を目指して努力している現在も、海里への態度は全く変わらず先輩として慕い尊敬してくれている。
    役者としての立ち位置も才能の差もまざまざと見せつけられてしまうと、その優等生キャラが海里には眩しいのだ。

    夏神とロイドの気遣いのおかげでなかなか明かせなかった心の内を曝すことが出来た海里と李英。優等生な彼もまたいろんな鬱屈を抱えていたし、短いギスギス期間にはふくれっ面もしていたので少しホッとする。あまりにもいい子過ぎると無理しているんじゃないかと心配してしまうから。

    もう一つは、倉持悠子・繁春夫妻の一人息子で三年前に旅先のグアムで亡くなった拓己の霊。
    ここ最近は幽霊ネタが少なくなりつつあったが、久しぶりに出てきた。だが場所は<ばんめし屋>ではなくて倉持家。眼鏡に戻ったロイドを掛けたらあら不思議、倉持家の食卓に拓己が座っているではないか。
    ここでサブタイトルの意味が分かって来るのだがストレートに『卵焼き』ではなく『マカロニグラタン』にしたのもニクい。

    ロイドにはこういう風景が見えているんだな、と改めて付喪神であったことを認識。イギリスの古い名家の執事のような物言いとは裏腹に好奇心旺盛な姿とのギャップが面白い。最近はタブレットで電子版のコミックを読むのにはまっているようだ。

    夏神も料理の探究は怠らず、海里のことも師匠として見守ってくれている。夏神と悠子、立場も教えも違うけれど二人の師匠がいる海里は幸せ者だ。
    悠子の体調は少し心配だが。
    だがそのことで海里と李英に新たなステージが用意された。次はその話がメインになるのだろうか。
    少しずつ役者の道に近づいている海里が嬉しいような淋しいような。

    『話したい相手とは、話したいと思うたときに話せることが、何よりの幸せですわ』

    海里と李英が二人で泊まった有馬温泉の宿の主人の言葉が印象に残る。

  • 【目次】プロローグ/福と鬼/抱えたもの/それぞれの荷物/苦い卵焼き/まるくおさめる/エピローグ
     シリーズ17作め。
     節分の時期。前半は、海里と李英の話。海里は、体を壊し役者を休業して静養中の後輩・李英から朗読のレッスンを見学したいと頼まれる。師匠で女優の悠子の許可を得て、李英もレッスンに参加。作品の解釈や悠子とのやりとりを通して、海里は李英に嫉妬するが、そんな自分にも腹を立て、二人は仲違いしてしまう。ぎくしゃくする二人を気づかう店長の夏神のはからいで、二人は有馬温泉へ。
     後半は、悠子夫婦と亡き息子をめぐる親子の情愛がテーマ。ロイドが活躍(?)

  • 今回もめちゃめちゃ青春しててとても良かった、、

    芸術は自分の腕前がどれくらいかっていう可視化が出来ないから、人の言葉にすごく左右されて、それで自分を見失いそうになるのめちゃくちゃ分かる。

    「話したい相手とは話したいと思ったときに話せることが、何よりの幸せ」の言葉がすごく胸に刺さった。

    海里と李英のふたりの舞台早く観たいな!

  • ちょっと変わったお客さんが来る「ばんめし屋」のシリーズ、第17弾。
    タイトルの意味は、ずいぶん後の方で腑に落ちる。
    グラタンのしょっぱさの中に、栗とかさつま芋とか、ちょっと甘いものが入っていると、驚きがあって美味しいですよね。

    前回は、海里の2.5次元ミュージカルの頃からの後輩で、コツコツと努力の人だった、里中李英が思わぬ挫折を味わうお話だった。
    運命の悪戯で、二人が再び同じラインに立った、という感じがした。
    そのせいだろうか・・・
    お互いに胸の奥に抱いていたモヤモヤがついに爆発?
    真逆でありながらどこか似ている二人ならでは、相手に対する賞賛の気持ちと引け目がぐるぐる追いかけっこしてしまう。

    しかし、喧嘩をしても、相手ととことん話し合えるのは幸せなことなのだ。
    後悔が残らないよう、大切な人との会話を今、惜しんではならない。

    海里ってこういう性格だったんだ!?
    ということが、ひじょーーー!!に、よく分かった回でもあった。
    そして自分でも分かっているらしい。
    固い絆で結ばれた、永遠の先輩後輩で、ライバルで、嫉妬の対象でもある、五十嵐海里と、里中李英が、100年続きますように。

    そして、夏神さんが相変わらずおかんであり、ロイドが相変わらず優しい爺やであった。

  • ロイドがいなければ成り立たない。
    夏神や海里の人生だけのことではなく
    この付喪神に救われているとあらためて感じた。

    このシリーズはどのような終幕を迎えるのだろう。
    楽しみでもあるが寂しくもある。その時を迎えるのは いっそ私がこの世からいなくなってからにしてほしい(笑)

  • そう言えば大切な人を失った者達の集まりなんですよね『最後の晩ごはん』。
    でもやっぱり若い人が亡くなるのはツライ…しかも結構えげつない亡くなり方をしていてホント辛い…と思いながら読みました今巻。
    ああでも最後は毎回ちゃんとほっこり笑えて終われるので読後感は良いです。
    ちゃんと話せる時に話しておかないと、後悔は先に立ちませんね本当に。

  • 李英くんがちゃんと生きてる〜ってホッとしたのもつかの間の仲違いに、夏神さんやロイドと共にヤキモキしてしまった。
    二人の朗読の二人舞台、楽しみだわ(^^)
    で、その引き金(?)の朗読師匠の悠子さんの息子が今回の幽霊さん。なんと、ばんめし屋のカウンターでなく、出張先の悠子さんの自宅!ロイドの力もマシマシだわね(笑)
    話し合いができることの幸せを自覚しながら生きねば!
    あ、ちょくちょく話題になった、兄夫婦の今後(と海里のおじさんぶり!?)も楽しみ。
    あ〜。寒くなったから、マカロニグラタン、食べたくなったよ。

  • 花火をタップしつつ読んだ。今回も面白かったなあ。まさか悠子さんもここまで掘り下げるとはさすが。最後のシーンはもちろん半泣きで読みました

    面白かったー!

  • 海里の素直さが凄いと思う。自分の情けなく嫌な心の動きを素直に言葉にして、さらに謝れる所が本当に素敵。皆が優しくて暖かかくて心和む話です。

  • 有馬温泉はちと唐突だった感が。
    卵焼きと親子愛については、ジンとくる。
    日々の積み重ねの中のありきたりな料理が一番ささるよね。

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著者プロフィール

作家。監察医。講談社ホワイトハート「人買奇談」にてデビュー。代表作は「鬼籍通覧」シリーズ、「奇談」シリーズ(講談社)、「最後の晩ごはん」(KADOKAWA)、「時をかける眼鏡」(集英社)など多数。

「2022年 『妖魔と下僕の契約条件 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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