- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041120019
作品紹介・あらすじ
絵師を目指し、安房から江戸に出て十年。菱川吉兵衛は、吉原と芝居小屋という「二大悪所」に入り浸る自堕落な日々を過ごしていた。
狩野探幽への弟子入りを門前払いされたものの、その面目なさから郷里の縫箔屋の跡を継ぐ決心もできずにいたのだ。
そんな中、ひょんなことから吉原の女たちの小袖に刺繍を施すことに。福良雀と笹の葉、波千鳥、吉祥文様の宝珠、玩具の手毬や扇子に草花。
さまざまな美しい意匠を縫い付けながら、吉兵衛は、未来の見えない辛い日々の中でも懸命に明るく生きようとする彼女たちの心の温もりに励まされ、再び筆を執ることと決意する。
だが、ある日突然巻き起こった大火に吉原と江戸の街が飲み込まれ……。江戸の人々の暮らしを見つめ続けた菱川師宣こと吉兵衛が本当に描きたかったものとは?
浮世絵の祖の生涯を描く、人情と愛に満ちた波瀾万丈の浮世絵師小説。
感想・レビュー・書評
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浮世絵師・菱川師宣のお話。菱川師宣という名前と、『見返り美人図』は知っていましたが、そもそも”浮世絵の祖”と言われることや、狩野派のような”菱川一門”を形成していたことも知らなかったので、とても興味深く読めました。江戸と上方の出版事情の違いや、名もなき絵師と名のある絵師の違いも語られていて面白かったです。何より、吉兵衛が絵師として大成していく中でかつて憎んだ狩野派と同じように、自らの工房を硬直したものにしてしまっていたのが皮肉といいますか…それに気づかせたおさわさんは素晴らしいと思います。
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吉原の遊び人から成り上がった江戸一番の絵師。菱川師宣。時代を写し取り、浮世絵の祖となった男の波瀾万丈の生涯。
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一代で名を成した人はほとんど子供に継がせたがる。
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浮世絵師である菱川師宣がどう生まれ、絵師として覚醒したのかを描く半生記。それまで絵画というのは京都にお手本があり、古くから伝わる画法を頑なに守ることに価値があった。故に、将軍お抱えの狩野派のみが絵師として認められるという世の中であり、個人が画才を生かして活躍するということはなかった。そこに登場したのが菱川師宣であり、吉原と芝居小屋という「江戸の二悪」と呼ばれた最も俗っぽい場所で、男女の交わりを生き生きと描き、「狩野は古を、菱川は今を描く」と言われ絶頂を迎える。その菱川が晩年行ったことは、息子を後継者として育てることであったが、これは菱川が最も嫌う「型の模倣」であったことは皮肉。最晩年にそれに気づき、その後は静かな余生を送ったという。最後は綺麗にまとまり過ぎているきらいもあるが、その存在自体が面白く、菱川師宣の浮世絵、改めて楽しみたい。
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「吾妻おもかげ』by 梶よう子
菱川師宣(もろのぶ)
江戸前期、浮世絵を確立し「浮世絵の祖」と言われた絵師の若手から晩年までの物語。
千葉県南房総の縫箔師の息子として生まれながらも後継になることを拒み、江戸で絵師になると言って家を出る。
実家からの仕送りで吉原、芝居小屋で放蕩を繰り返す。
辛い憂き世を浮き世として過ごそえとする遊女達に触れ、当時の狩野派などの古い権威的な絵師とは無縁を絵を描き始める。
下積みの鬱積を重ねながら新しいアイデアで従来の狩野派などとは一線を画す新しい浮世絵を確立。とここまでは順調な話。
最後の最後、大きくなった菱川派を維持していくために知らず陥ってしまっていた自らの権威との葛藤が面白い。
それにしても吉原の女性達、太夫や女将達の”男っぶり”が気持ちいい。あっぱれ!
そこが胸に残る。
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浮世絵の父のような菱川師宣。
元和4年(1618年)月日不詳 - 元禄7年6月4日(1694年7月25日))
まだまだ生まれたての江戸の町で
師宣はどんな人生をおくったのか。
前半の人生にやや力点がおかれていきいき描かれている。
絵が売れだしてからの師宣は
あんなに嫌っていた狩野派と同じ道を進みそうになる。
人とは何とも愚かなものである。
吉原のお姉さんたちも辛い状況の中でも粋で
やっぱり絵師者小説は好き!
著者プロフィール
梶よう子の作品






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