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本 ・本 (344ページ) / ISBN・EAN: 9784041120064
作品紹介・あらすじ
その悩み、一人で抱え込まずお気軽に無法律へ。
学園祭で賑わう霞山大学の片隅。法学部四年・古城行成が運営する「無料法律相談所」(通称「無法律」)に、経済学部三年の戸賀夏倫が訪れる。彼女が住むアパートでは、過去に女子大生が妊娠中に自殺。最近は、深夜に赤ん坊の泣き声が聞こえ、真っ赤な手形が窓につくなど、奇妙な現象が起きているという。戸賀は「悪意の正体」を探ってほしいと古城に依頼するが……。リベンジポルノ、放火事件、毒親問題、カンニング騒動など、法曹一家に育った「法律マシーン」古城と、「自称助手」戸賀の凸凹コンビが5つの難事件に挑む!
感想・レビュー・書評
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「無法律」は霞山大学法学部の学生で運営される自主ゼミ、いわゆるサークルで、正式名称は「無料法律相談所」。「一人で抱え込まず、お気軽に無法律へ!」という看板を掲げてはいるものの、積極的に相談者を募っているわけでもないため開店休業状態だったのだが……。
無法律部長にしてただ1人の部員である、法学部4回生の古城行成が数々の事件の謎に挑む、連作短編リーガルミステリー。5話からなり、各話間に4つの幕間が挿まれる。
◇
怪しげな装束に身を包んだ連中があちらこちらを徘徊し、ワケのわからぬ看板や飾りつけがある店舗が建ち並ぶ。
まるでこの世の終焉を見るようだが、それもそのはず。目の前に展開されているのは、「終焉祭」と呼ばれる霞山大学学園祭の光景だ。
異世界から逃れるように足早にキャンパス南端の法学部棟を目指した僕は、ようやく2階建ての古びた建物にたどり着き階段を上った。その奥まった一画には変わった名称のゼミ室が並んでいる。
「模擬裁判劇団」「倶楽部労働法」の奥にあるのが「無料法律相談所」通称「無法律」だ。
無法律ゼミ室前の「一人で抱え込まず、お気軽に無法律へ!」と書かれたホワイトボードがなぜか裏返しになっている。不思議に思いつつそのボードを表向きにした僕は「in 終焉祭」と書き足してみた。
でも宣伝を打ったわけでもないので誰も来るまいと思ってドアを開けると、室内で見知らぬ女子学生がくつろいでいた。
( 第1話「六法推理」) ※全5話。
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キャスティングがバッチリでした。
まず主人公の古城行成。無法律の部長にしてたった1人の部員でもある、法学部4回生です。
その行成ですが、父親は判事、母親は弁護士、兄は検事という法曹一家の末っ子で、プレッシャーかかりまくりの境遇にあります。
一応は ( 恐らく ) ハイレベルな国立の霞山大学法学部に進学し優秀な成績も収めてはいるのですが、法曹三者に両親と兄が就いているため、自身の進路が決められないというモラトリアム学生になっています。
将来を見据えることのできない自分の中途半端さをよく知る行成は、法律相談に臨む際には法のみを信奉して判断する「法律マシーン」と化すのですが、そこには欠けているものがあることに本人も薄々気がついているようでした。
次に、行成の相棒として登場するのが戸賀夏倫という経済学部3回生です。入居しているアパートの部屋のトラブルについて、無法律に相談しにきて行成と知り合います。
夏倫は明るく機転が利き、したたかさと義侠心を持ち合わせた女性で、感情表現が苦手な行成とは対照的です。
この行成夏倫ペアが互いに作用し合って第2話以降も事件を解決につなげていくのですが、その過程で行成に欠けているものが夏倫によって補われていくところが、読んでいて楽しかった。
行成は卒業後の進路が拓け、廃部寸前だった無法律は存続が決まりと、物語をハッピーエンドにしてくれた立役者が、この夏倫なのです。
『真夜中法律事務所』の深夜と印藤のような明らかに息のあっていないペアとは違い、ベストバディと言っていい行成夏倫ペア。リードした夏倫に感謝です。 ( 続編ができることが期待できるエンディングだったので、今後の楽しみが増えました。)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
法律一家の次男が大学で無法律相談をし、事件を解決していく。弁護士ではないアマチュアの法律に少し詳しいだけで相談を解決していく。最後は無法律相談の意義を見つけて再始動したので次回作に期待
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鬼★5 キュートな大学生二人が、現代のリアルな社会問題にリーガル視点で切り込む! #六法推理
法学部の大学生である主人公は、無料で法律相談ゼミを開いていた。彼のもとに同大学の女学生が、自宅の怪奇現象について相談に来たのだった。二人は学内で発生する様々な事件を解決するために奔走するが、あくまでも学生の自主ゼミの一環。彼らは依頼者たちを救うことができるのか…
超絶面白いっ 圧倒的に★5
こんな小説を待ってましたよ~ まさに五十嵐先生にこんな感じのを書いてほしかった!
これまで作者は、現代の社会問題を法律目線で切り込んだ重厚な社会派リーガルミステリー、といった作品を出されていました。本作も重厚感がありつつも、身近で新しい社会問題に、キュートな大学生二人が挑むといったライトで暖かな世界観になっています。
現実感のない法律ミステリーではなく、あくまで身近な問題や環境で、法律のなんたるか、何が問題か、どうが解決できるかを正面から突き付けたうえで、ストーリーやキャラクターはポップに展開させて解決策を探る。ありそうで全くない傑作だと思いました。
さらに取り上げる社会問題がリベンジポルノ、顔認識アプリ、毒親との法的関係性など、新しい切り口でのミステリー。まさに今が読み時の作品です。
そして、なんといっても本作は主人公の二人魅力的すぎます。
まだまだ青っぽい学生ながら、法律や人生に関わる強烈な問題に対して真摯に向かう姿が激アツっ
問題解決を進める中、様々な人間関係を背景にいくつもの葛藤に苛まわれます。主人公たちの信念と自らの判断に対する不安の描写がリアルに伝わってきて、彼らの成長の様子が一番の読みどころですね。
もちろん法律や裁判に対しても、意識高く問題提起がされており、さすが弁護士先生の作品。
そして文章も話の構成もお上手ですごく綺麗。法廷遊戯のころと比べると、圧倒的に整っており読みやすい。人が死ぬ現場描写も、たぶんあえて出してないんでしょうね。誰でも手に取って読めると思います。
これはちょっと名作だと思いますよ、そして今後が期待できる一冊でした。超おすすめしますっ -
図書館で目にしてそういえば秋さんが高評価してたなと思って借りてきました
正直ちょっと表紙が軟弱な気がしてあまり期待してなかったんですが、なかなか面白かったです
そりゃあそうよ!
秋さん高評価本舐めんなよ(お前な)
大学の法学部に通う大学生が無料の法律相談を…という設定なんですが
本職の弁護士じゃない、つまりただ法律に詳しい大学生という立ち位置が凄いストーリーに活かされいて良かったです
そしてめちゃめちゃ続編がありそうで
しかも続編はもっと面白くなりそうな感じ
キャラが粒立っていて良かったです-
舐めんなよ、にゃー
読んでくれて、ありがとう~
この作家先生は他の作品も面白いんだけど、
お話のレベルが高次元すぎるので、ちとエン...舐めんなよ、にゃー
読んでくれて、ありがとう~
この作家先生は他の作品も面白いんだけど、
お話のレベルが高次元すぎるので、ちとエンタメ感が欲しかったんですよね~
でもでも本作はエンタメ感もあって大好きなんですっ2023/03/22 -
2023/03/31
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秋さん
ほへ~
むしろエンタメ路線の作家さんだと思ってました
一冊読んだだけじゃわからんですね(そりゃそう)
まずはみんみんおす...秋さん
ほへ~
むしろエンタメ路線の作家さんだと思ってました
一冊読んだだけじゃわからんですね(そりゃそう)
まずはみんみんおすすめの『幻告』とやらを2023/03/31
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五十嵐律人さんローリング4冊目。
今までの作品は全て長編だったが、本作は初の短編。
霞山大学法学部4年で無料法律相談所(略して"無法律")を運営する古城行成と、経済学部3年で自称助手を務める戸賀夏倫のコンビが、各章ごとに起こる難事件を解決していく。
まず、読み始め早々、本作の霞山大学のモデルが東北大学であることが匂う描写がいくつかあり、3章目にあたる『安楽椅子弁護』(大学祭の話)で確信に変わった…!
(東北大学で学祭実行委員をやっていたので、作中出てきたプレハブ、協賛の話、パンフレット作り…全てが懐かしの記憶であり、それらが五十嵐さんの作品の中で事件の土台として描かれていることが、個人的にはとてつもない幸福です)
各章の事件発生から解決までの流れがテンポ良く、古城と夏倫の二人の掛け合いもサラッとしていて小気味良い。法の知識に強い古城と地頭の良さ&勘の鋭さを備えた夏倫、魅力溢れるコンビで、『法廷遊戯』が映画化なら、こちらはドラマ化されそうな予感…。
また、見開き2ページの幕間(古城によって語られる家族の話や進路の悩み等)が、物語に彩りと厚みを加えていて、とても良かった。
短編なので、長編苦手という方には、是非お勧めしたい作品。本作から五十嵐さんのミステリー作品の魅力に触れて欲しいなぁ…と思います! -
「法律っておもしろい!」と思った。
「自分の持つ知識で人の手助けをする、善意は無限に溢れ出ないからだんだん心がすり減るけど、無法律は知識で人の手助けができる。」と戸賀ちゃんが古城君に話すくだりが、ものすごく納得した。
霞山大学法学部四年生の古城行成。無料法律相談所、通称無法律という自主ゼミに属している。相談に来た経済学部所属の戸賀夏倫の持ち込んだ問題を解決したことをご縁に戸賀ちゃんはいつの間にか助手となり、次々に問題を解決していく、名コンビになった。
父は裁判官、母は弁護士、兄は検事の法律一家にあり行成君は、何を志すのかも気になり見届けたい気持ちがいっぱい。
続きが読みたいです
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法学部の片隅にあるサークル「無料法律相談所」の唯一の部員古城行成と、法律相談(というか住んでいる事故物件!で起きる心霊問題)に訪れた事をきっかけとして押しかけ助手になった経済学部の戸賀夏倫が協力して舞い込んできた問題を解決する短編集。法律面からアプローチする古城と心理面から突き崩す戸賀のコンビが噛み合っていないようで噛み合ってくるのがいい感じ。学生からの法律相談だけど放火とかリベンジポルノとか毒親との縁切りとか結構重い内容だし、法律の限界も見せつけられるし闇に葬られるラストもある。でも今迄と較べると法律の説明とかが読みやすいし法律一家の古城の進路も気になるし戸賀の背景も気になるしで続編希望。ありそうなラストだったけどどうだろう。
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ホームズ役の女の子ががなんか掴みどころのない軽い性格みたいに感じられて、もうちょい両親との関係性とか性格的な肉付けが欲しかったかな。もしかしたら次作にでそういうところも明かすつもりなのかもしれないけれど。法律の具体的な事例(親が子供のお金を盗っても法律上無罪とか)がトリビアみたいで楽しく読めた。
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本作は短編集で、かつ学生の無料法律相談を題材にしているというあまり見たことのない作品だったので、
結構面白くかつサクサク読み進められました。
ただ、学生のやっていることのわりにはトラブルに対してえらく深いところまで首を突っ込みすぎている感があって、その辺がちょっとマイナスになってしまっていましたね。
著者プロフィール
五十嵐律人の作品





