六法推理

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 97
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041120064

作品紹介・あらすじ

法曹一家に育ち、血も涙もない法律マシーンと呼ばれる古城行成は、大学で無料の法律相談所を運営している。今日も「押しかけ助手」の戸賀夏倫とともに、リベンジポルノや放火事件などあらゆる難問に挑むが……。

感想・レビュー・書評

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  •  「無法律」は霞山大学法学部の学生で運営される自主ゼミ、いわゆるサークルで、正式名称は「無料法律相談所」。「一人で抱え込まず、お気軽に無法律へ!」という看板を掲げてはいるものの、積極的に相談者を募っているわけでもないため開店休業状態だったのだが……。

     無法律部長にしてただ1人の部員、法学部4回生の古城行成が数々の事件の謎に挑む、連作短編リーガルミステリー。5話からなり、各話間に4つの幕間が挿まれる。
             ◇
     怪しげな装束に身を包んだ連中があちらこちらを徘徊し、ワケのわからぬ看板や飾りつけがある店舗が建ち並ぶ。
     まるでこの世の終焉を見るようだが、それもそのはず。目の前に展開されているのは「終焉祭」と呼ばれる霞山大学学園祭の光景だ。

     異世界から逃れるように足早にキャンバス南端の法学部棟を目指した僕は、ようやく2階建ての古びた建物にたどり着き階段を上った。その奥まった一画には変わった名称のゼミ室が並んでいる。
     「模擬裁判劇団」「倶楽部労働法」の奥にあるのが「無料法律相談所」通称「無法律」だ。
    「一人で抱え込まず、お気軽に無法律へ!」と書かれたホワイトボードがなぜか裏返しになっている。そのボードを表向きにした僕は「in 終焉祭」と書き加えてみた。
     でも宣伝を打ったわけでもないので誰も来るまいと思いつつドアを開けると、室内で見知らぬ女子学生がくつろいでいた。
            ( 第1話「六法推理」)

         * * * * *

     キャスティングがバッチリでした。

     まず主人公の古城行成。無法律の部長にしてたった1人の部員でもある、法学部4回生です。
     その行成ですが、父親は判事、母親は弁護士、兄は検事という法律家一家の末っ子で、プレッシャーかかりまくりの境遇にあります。
     一応は(恐らく)ハイレベルな国立の霞山大学法学部に進学し優秀な成績も収めてはいるのですが、法曹三者に両親と兄が就いているため、自身の進路が決められないというモラトリアム学生になっています。

     自分のそんな中途半端さをよく知る行成は、法律相談に臨む際には法のみを信奉して判断する「法律マシーン」と化すのですが、そこには欠けているものがあることに本人も薄々気がついているようでした。

     次に、行成の相棒として登場する戸賀夏倫という経済学部3回生。入居しているアパートの部屋のトラブルについて、無法律に相談しにきて行成と知り合います。
     夏倫は明るく機転が利き、したたかさと義侠心を持ち合わせた女性で、感情表現が苦手な行成とは対照的です。

     この行成夏倫ペアが互いに作用し合って第2話以降も事件を解決につなげていくのですが、その過程で行成に欠けているものが夏倫によって補われていくところが、読んでいて楽しかった。

     行成は卒業後の進路が拓け、廃部寸前だった無法律は存続が決まりと、物語をハッピーエンドにしてくれた立役者は、この夏倫です。
     『真夜中法律事務所』の深夜と印藤のような明らかに息のあっていないペアとは違い、ベストバディと言っていい行成夏倫ペア。リードした夏倫に感謝です。 ( 続編ができることが期待できるエンディングだったので、今後の楽しみが増えました。)

  • 法律が分からなくても楽しかったです。なるほどなぁと為になる場面もありました。

  • なかなか面白かった。五十嵐さんの本は単純に「へぇ〜」と思えるような法律知識が豊富で楽しめる。もう少し大きな事件を扱うミステリーかと思っていたら、短編がいくつかあり、それがのちのち繋がっていくような構成だった。しかも、それは無法律っていう特殊な設定も相まって、あくまで大学内で完結する、私の中では「小さな」事件の連なりだつた。その点で言うと想定外ではあったけど、普通に楽しめたという感想。終わり方が自分的に好きだったし、続編があったら読もうかな、って感じ。

  • 法廷遊戯の著者によるまたまた法律に関する推理小説。5篇の短編が最後につながって真相がわかるが、全体的にあまり盛り上がりがなく、単調な感じだった。次に期待しわう。

  • 法学部四年の古城が、持ち込まれる法律問題を解決する無料法律相談。解決策にイマイチを感じるところもあったが、○

  • 普通の推理物とはちょっと変わった切り口があったりしたから展開が読めなかったのが面白かった

  • どの話も、現代社会の問題を取り上げながらミステリーとしてうまく創られてると感じた。ただ、戸賀ちゃんのキャラがちょっとうざい。それは作者の狙い目とは思うが・・・

  •  未熟さが魅力になっている。
     これまでと比べると、 それがあんまりドロドロしていないので良い。
      

  • 「法律っておもしろい!」と思った。
    「自分の持つ知識で人の手助けをする、善意は無限に溢れ出ないからだんだん心がすり減るけど、無法律は知識で人の手助けができる。」と戸賀ちゃんが古城君に話すくだりが、ものすごく納得した。
    霞山大学法学部四年生の古城行成。無料法律相談所、通称無法律という自主ゼミに属している。相談に来た経済学部所属の戸賀夏倫の持ち込んだ問題を解決したことをご縁に戸賀ちゃんはいつの間にか助手となり、次々に問題を解決していく、名コンビになった。
    父は裁判官、母は弁護士、兄は検事の法律一家にあり行成君は、何を志すのかも気になり見届けたい気持ちがいっぱい。
    続きが読みたいです




  • リーガルミステリー?主役の法学部生が間違った推理をしたり、助手でヒロインの経済学部生が最初はウザいけど頭はキレるし良いアクセントになっていて(暴走もしちゃうけど…

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著者プロフィール

1990年岩手県生まれ。東北大学法学部卒業、同大学法科大学院修了。弁護士(ベリーベスト法律事務所、第一東京弁護士会)。本書で第62回メフィスト賞を受賞し、デビュー。他の著書に、『不可逆少年』『原因において自由な物語』『六法推理』『幻告』がある。

「2023年 『法廷遊戯』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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