黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2022年6月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (624ページ) / ISBN・EAN: 9784041120583

作品紹介・あらすじ

文字は怖いものだよ。遊びに使っちゃいけない――。江戸は神田にある袋物屋〈三島屋〉は、一風変わった百物語を続けている。これまで聞き手を務めてきた主人の姪“おちか”の嫁入りによって、役目は甘い物好きの次男・富次郎に引き継がれた。三島屋に持ち込まれた謎めいた半天をきっかけに語られたのは、人々を吸い寄せる怪しい屋敷の話だった。読む者の心をとらえて放さない、宮部みゆき流江戸怪談、新章スタート。

みんなの感想まとめ

人間の心の奥底に潜む恐怖と温かさが交錯する物語が展開されます。江戸の袋物屋「三島屋」では、次男・富次郎が新たな聞き手として登場し、彼のもとに持ち込まれた謎の半天をきっかけに、さまざまな怪談が語られます...

感想・レビュー・書評

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  • 三島屋変調百物語も6巻目を数えまして、聞き手は三島屋次男坊富次郎に引き継がれました。「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」まち界隈で催されている娯楽怪談では御座いません。真の怪異を此の儘あの世まで持っていってはいけないと、止むに止まれぬ想いでやっと辿り着いた語り手の渾身の思いを、真摯に受け止めて三島屋白黒の間に置いてゆくという、いわば人助けの取り組みなので御座います。生半可な人物では聴き手は務まりませぬが、新人の富次郎、少しオロオロしたり、迷ったりはしますが、語り終えた方達は一様に穏やかに帰られた御様子なので、まぁ合ってるのでは御座いましょう。

    淫蕩あやかしが登場する「泣きぼくろ」、
    あまりにも理不尽な姑の嫁呪い「姑の墓」、
    流行り病で両親と妻子を亡くした男の東海道中の話「同行二人」、

    助走の中編三つを終えた後に、長編「黒武御神火御殿」のはなしが始まります。ある日、三島屋に古着の半天が届けられます。「黒武」の印を持つ印半天の背には、はんじものの文字が縫い付けられてありました。「あ」「わ」「は」「し」「と」「め」「ち」。富次郎は前の聴き手「おちか」の嫁ぎ先、瓢箪古堂の勘一の所へ持っていきます。勘一は一目見てあることに気が付きますが‥‥

    謎が謎を呼び、やがて語り手がやって来ます。神隠しで連れて行かれた「御殿」で起きる怪異。何故この6人なのか?どうやったら抜け出せるのか?10年前に行って帰ってきた語り手甚三郎の抱える罪と罰。富次郎は、何処に落し所を持ってゆくのか?ストーリテラー宮部みゆき女史の微に入り細に入る江戸庶民を描く筆が、説得力ある展開に持ってゆくので御座います。

    何故怪異が起きるのか?
    宮部みゆき女史は、その全てを明らかにはしません。
    淫蕩ほくろと豆源ご主人の因縁は明らかになりません。
    ひい婆様が何故嫁いびりを始めたのか?
    「あわはしとめち」の具体的な意味はなんなのか?
    武士の堀口様と御神火御殿との因縁は明らかになりません。
    それが「世の中」ってもんです。
    不幸や理不尽は突然やってきます。
    人は、人と人との間の中で、やり過ごし、慰め合うしかできないので御座いましょう。

  • 富次郎ソロデビューにしては容赦ない怖ろしさ。
    怖ろしいけれど、江戸の人たちの温かさに気持ちが熱くなったり涙したりしました。

  • おちかから富次郎にバトンタッチした第1作。
    4話ともなかなかにゾッとする話で富次郎くん大丈夫か??
    「泣きぼくろ」はあまりにも奇怪な話、なんでこんなことが起こるのか。
    「姑の墓」はどうしてこんな不幸がという悔しさありつつ、最後の富次郎の采配にぐっとくる。
    「同行二人」は今にも通じる人生の辛さ、理不尽さと、なんとかそれでも生きていく人の気持ちに胸打たれる。
    そして表題作「黒武御神火御殿」の圧倒的恐怖。最後全てが明らかになるわけではないので余計に不気味。
    富次郎デビューの本作も期待以上に面白かったです!!

  • 久しぶりに小説。
    職場の短い昼休みに細切れに読むにはぴったりで、「ああ、時間切れ」と思いつつ結末を翌日までどきどきしながら持ち越すのが楽しみ。というわけで1週間かけてもまだ読み終わっていない。この感覚にすっかりはまってしまって、土日はあえて本を開かないようにして感想を書いている。

    甘いもの好きの「小旦那」富次郎が聞き手を引き継いでから紹介された語り手たちの物語がまとめられている。

    宮部みゆきさんの小説は安定の面白さなので、これ以上は内容にふれないつもりだけれど一つだけ。

    この小説、読むときにはお気に入りの和菓子とお茶を準備してから味わうといいと思う。

    できれば語り手たちがお菓子をつまむタイミングでいっしょに食べると尚良いかも。

  • ☆4.8
    宮部みゆき氏のもしかしたら、最高傑作と云えるシリーズになるのかもしれない。
    「火車」が宮部氏の作品を知るきっかけでした。
    この作品には度肝を抜かれ、直後財前さんの2時間ドラマで、観てまた震えた。
    本作は、実に緻密に作り込まれたものかたりで、油断をしていると、これが伏線だったのと思うことが多い。
    隠れキリシタンの大名のものかたりなのだが、ここに述べられている宗教観は日本人の私にはなかなか理解に苦しむ。深い考え方の数々に、改めて、読み返すことがあるだろうと思う。

  • 重厚感のある一冊。
    聞き手が移り変わり新しい舞台になってからのお話。

    これまで通りに一話完結。
    なのだが、今回はは表題作「黒武御神火御殿」がとても壮大で先が読めず、読み手を夢中にさせるすごいお話でした。このお話だけで一冊になっていても十分満足できそうです。

  • 三島屋変調百物語の6巻
    タイトルの黒武御神火御殿てなんぞや?と思ってたら
    ラストに1番びっくり。
    久々これでもか!ってくらいのゾクゾクする内容だったので
    暑く寝苦しい時に寒さを感じるかも。

  • こちらの作品は、三島屋変調百物語の主人公おちかさんから主人公が富次郎さんへと引き継がれたものです。

    代替わりや主人公が変わったりすると、あ〜もうちょい足りないなぁとか、前の人のが良かったなんて思うものですが、流石は宮部みゆきさん。

    今回の主人公富次郎さん、まだまだキャラが前面には出ていなくて、ざ、三島屋!聞き上手!にはなってはいませんが、そこが初々しくて、よろしいです。

    これからがもっと楽しみ。
    富次郎さんの個性がもっともっと前面に出てくれたら嬉しいです。

    あ〜面白かった!

  • 呪いにしろあやかしの類にしろ、そのせいで一家のものが次々と取り殺され、破滅し、離散する話は重苦しい。前巻にもそんな一つ話があったが、今回も「泣きぼくろ」、「姑の墓」とそんな話が続いて気が滅入る。表題作長編も圧巻の恐怖と迫力で、唯一「同行二人」ののっぺらぼう幽霊が愛嬌があるように感じられるくらい。怪談が重苦しいのは当たり前と言えば当たり前なのだが。民俗学者小松和彦の解説も良い。

  • 三島屋変調百物語シリーズ六冊目。

    「姑の墓」が・・・ここまで障りがあるのかと恐ろしかった。
    「同行二人」は切なかった。

     「黒武御神火御殿」が320ページ。これだけで1冊でも良いくらい。気持ち悪くて不可思議で面白かった。

    第二十八話「泣きぼくろ」
    →再会した友が語り始める一家離散の恐ろしい運命。

    第二十九話「姑の墓」
    →とある家の女たちだけが〈絶景の丘〉に登ってはならない理由。

    第三十話「同行二人」
    →妻子を失った走り飛脚が道中めぐりあう怪異。

    第三十一話「黒武御神火御殿」
    →異形の屋敷に迷い込んだ者たちを待つ運命。

  • こちらも読み応えありました。
    第三話「同行二人」がなんだか胸に残って、涙が止まらず…。家族を亡くした男の思いに胸が締め付けられました。

  • 前作から怪談の聞き手がおちかから富次郎へと変わり、新スタートを切った三島屋シリーズの六作目。聞き手こそ変わってもシリーズの醍醐味である怪談の恐ろしさや語り手たちの人生が浮かび上がる話っぷりは相変わらずでした。

    今回語られる怪談は4編。美少女だったおちかから青年の富次郎に聞き手が変わり、持ち込まれる話も種類が変わります。
    特に男性の持ち込む話が男のプライドが関わったり、内容的に女の子に話しにくいものもあり、おちか時代とはまた違った雰囲気を感じられて面白かった。聞き手が変わるということは語り手の変化にも表れるのか、と思わず感心しました。

    そしてまだまだ新米の聞き手である富次郎の、頼りないながらも一生懸命なところもよかった。おちかの場合終盤は経験値を積みすぎて、熟練の聞きっぷりを披露していたけど、富次郎の場合は相手の話に引き込まれるあまり、恐ろしさを感じてしまう場面もちらほら。富次郎が「おちかはすごかったんだ」と改めて気づく場面も描かれるけど、自分もまさにそんな感じに。

    しかし富次郎の聞きっぷりは、熟練したおちかとはまた違う良さがあります。頼りないからこそ、一生懸命聞き手に寄り添おうとする富次郎の優しさが、怪談話の恐ろしさや救いのなさ、哀しさに光をもたらす。

    特に二話目「姑の墓」の過去に縛られ幻覚を見てしまう語り手に対しての、富次郎の一生懸命な姿勢は自分の心を強く打ちました。こういう優しさがあるから、宮部さんの時代物はやめられない。

    四話目の表題作「黒武御神火御殿」は、シリーズの中でも上位にはいる読みごたえ抜群の作品でした。これだけで他の3話をあわせたページ数を軽く超えてくる長編ですが、そのすごみはページ数だけにあらず。

    今回は語り手はなかなか姿を現さず、いわくありげなはんてんが三島屋に持ち込まれます。そのはんてんはなにやら幕府から禁じられた禁制の宗教とかかわりがある様子。
    そしてついにやってきた語り手は、40手前くらいの年齢にかかわらず髪はほとんど真っ白。大やけどのあとにくわえ指の先も欠けていて……
    そして男は神隠しによって導かれた怪しげな屋敷の話を語り始めます。

    これまでのシリーズとは一味違った謎めいた導入と危険な雰囲気にまず引き込まれます。そして実際に話が始まると洋風のホラーゲームや脱出ゲームの要素を、時代小説や史実の中に組み込んだかのような、新しい感覚の時代小説+ホラーを感じました。

    化け物の描写、一人ずつ死んでいく屋敷の犠牲者たち。宮部さんだからこそ描ける物語の凄み。それにどんどん引き込まれていきます。

    そして屋敷の真実が明らかになるとともに、人の黒々とした心情の恐ろしさや、理不尽さに心を痛めてしまう。でもただ怖くて残酷なだけでもなく語り手たちの生きようとする姿や、誰かを助けようとする姿にも心を打たれます。

    そしてなぜはんてんを持ち込まれたのか、その心理の微妙さ、複雑さにも思わずため息をついてしまいます。シリーズの中でもかなり突飛な話で、そのイマジネーションにも脱帽しましたが、それをあたかも本当に起こったかのように描く描写力、そして人間の心理も置き去りにしない視点の鋭さはさすがとしか言いようがありません。

    三島屋シリーズも宮部さんもまだまだ進化し続けていることをここにきて改めて感じる一作でした。

  • 語って語り捨て、聞いて聞き捨て
    宮部みゆきの江戸怪談 新章スタート!

    待ってました〜\(//∇//)\

    三島屋の次男…冨次郎編です。
    まだまだ頼りないです。
    それは冨次郎が一番分かってます。
    ちょっとお気楽、そして怖がり。
    優しい冨次郎のキャラで新章始まりました。

    全四話…そして分厚い( ̄▽ ̄)
    宮部みゆきの本はこの厚みが嬉しい笑

    前章おちかは辛い過去もあって、怪談話以外も全体的にシリアスな雰囲気が漂ってました。
    新章は優しい感じ?また違った良さがある。

    宮部みゆきが二作続けて読めて大満足(≧∇≦)

  • 主人の姪“おちか”から次男“富次郎”に聞き手が引き継がれたシリーズ6冊目。
    表題作を含め4篇収録。
    「泣きぼくろ」「姑の墓」はしっかり怪談。「同行二人」で少しだけほっこりして「黒武御神火御殿」で畳み掛ける怪談集。→

    「姑の墓」が怖かった。このシリーズはどうしようもない怖いことが普通に描かれるんだけど(時代的にそういうものなんだろうな)この話、マジでどうしようもない悪が描かれていてめちゃくちゃ怖い。防ぎようがないんよ。
    「黒武御神火御殿」は、短編というよりしっかりとした中編。→

    おちかちゃんが一巻で巻き込まれた事件とはまた違うんだけど、これも不思議。この展開を読ませる宮部みゆき氏の筆力はすごい。ボリュームが半端ない。聞き手が変わったぞ、と読者が再確認できるようなお話。

    ほんと、宮部さんの文章は読みやすくて好きだなぁ。

  • オーディブルにて。
    おちかから富次郎に聞き手が変わり、お手並み拝見といったところ。
    表題作はまるでゲームの中のよう。理不尽に囚われモンスターと戦って脱出を試みる。これまでのぞっとするような恐ろしさとは違い、大味で、あまり好みではなかった。

  • 「三島屋変調百物語」のシリーズはどこまで読んだのか?忘れてしまっていた‘ぼんくら‘な私が久しぶりに本屋の棚で最新刊を見つけた。昨年文庫化したシリーズの6冊目。

    何だか分厚い文庫本になっていたが、宮部さんの「江戸もの」ならスラスラ読めるだろう。と、楽観的に手に取ったのであった。基本的には通勤電車の中で読んでいるが、実際に読めるのは片道25分ぐらいだろう。一日約50分。一週間(5日)で約4時間強。読み始めて一週間、ようやく読み終えた。

    今回の本は、本の題名が読めなかった。「黒武御神火御殿」。おそらく読んでいる内にわかるのだろう、と読み始めた。

    過去に読んだシリーズと主人公が変わっている。「おちか」は嫁に行ってしまい三島屋の次男「富次郎」が主人公に。主人公が変わるとストーリー展開も異なってくるのだろうか?と思ったが、テイストは変わらず。同じシリーズの中で新しい展開というのも珍しい企画だな。などと思いながら読み進めて行った。

    ストーリーの背景は変わらず、でも、おちかと富次郎との人物設定の違いや話の聞き方等の違いから紡ぎだされるストーリーはそれぞれに人間味があふれている。

    物語の多様な背景や登場人物、情景の細やかな描写、飽きさせないストーリー展開、何をとってもこの作品は深くて重かった。今日の帰りの電車の中で、ようやく最終クライマックスを迎えた。

    全て読み終わり、本書の題名が完全に読めるようになり、意味も理解できた。解説も読んで主人公の交代の背景も理解出来た。そして、シリーズの5作目を読んでいなかった事が明らかになってしまった。早く読みたいものです。





  • おちかちゃんから、聞き手を引き継いだ富次郎さんの章が始まりました。

    富次郎さんの始まりにしては、とてもハードな内容でした。読んでいてとても怖かったし、逃げ場もなくどんどん恐怖が大きくなり疲労困憊な気分でしたが、最後は、富次郎さんの人柄に救われた気がします。

    すっかり富次郎さんのファンになりましたが、正しくは「宮部みゆき」さんが大好きということです!
    すいすいと頭に入ってきて、人物、景色、情景が眼に見えるようです。

    これからも楽しみです。

  • 文庫が2か月前に出てたの知らずに今頃読了。おちかさんからの引継ぎの経緯をすっかり忘れてたけど直ぐに入り込めるのが三島屋シリーズ。
    4編目の表題作はよくこんな設定を考えるなぁと今更ながら感心してしまった。
    怖い屋敷というと「あんじゅう」を思い出したけど凄みが違う。
    他の3編も結構怖いし三島屋シリーズってこんな怖かったっけ?という印象。
    今までおちかさんのお陰で印象が和らいでいたのかも。新たな聞き手の富次郎さんは柔和なぼんぼんだから変化は無いと思ってたけれど、本編にもあったように口入屋の灯庵老人のレベルアップ宣言のせいかな。。。

  • うっは…表題作、凄まじかった。
    ゾワゾワが止まらない。
    息をするのも忘れそうなほど恐ろしいのに、とびきり面白くて心臓がずっとドキドキしてる。
    てか、富次郎編になった途端、語り手の話が全体的に強烈になってないか??
    「もしや今まで手加減してました?」と疑ってしまうぐらいには迫力のある第六巻でした。
    第一話の『泣きぼくろ』を読んで納得したんだけど、おちか相手だと語れない類の話って結構あるなと。
    今回富次郎が新たな聞き役になったことで、もっといろんな物語が読めるようになるって事だよねえ。
    そう思ったら続きを早く読みたくなった。

  • 三島屋怪談語りの百物語、第6作。聞き手が三島屋次男坊の富次郎に変わり、話し手もやや通俗・老獪な人々に?
    4編収録。中でも表題作は300ページ超とスケールも大きく、謎も妖もたっぷりのハラハラドキドキ読み応え十分な大作でした。
    また、「同行二人」は悲しく寂しい背景があるにも関わらず、飄々とした力強さが感じられる良作でした。
    短編も中編も、高いレベルを維持し続ける宮部先生はやはりすごい。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ・みゆき):一九六〇年東京都生まれ。八七年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。『火車』で山本周五郎賞、『理由』で直木三十五賞、『名もなき毒』で吉川英治文学賞、ほか多数の文学賞を受賞。『霊験お初捕物控』『ぼんくら』『三島屋変調百物語』シリーズ、『きたきた捕物帖』シリーズなど著書多数。


「2025年 『東海道綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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