永遠についての証明 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 56
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041120620

作品紹介・あらすじ

圧倒的「数覚」に恵まれた瞭司の死後、熊沢はその遺書といえる研究ノートを入手するが――冲方丁、辻村深月、森見登美彦絶賛!選考委員の圧倒的評価を勝ち取った、第9回野性時代フロンティア文学賞受賞作!

感想・レビュー・書評

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  • 才能に溢れた数学者たちの苦悩、嫉妬、劣等感、葛藤
    そして孤独…
    それぞれが抱く感情の揺れ動きを繊細に描いた物語

    数学に関して飛び抜けた才能を持つ瞭司は、特別推薦生として大学へ入学する。
    同じく特推生の熊沢や佐那と出会い、初めての友人を得た瞭司は、信頼する恩師と友人たちに囲まれ、数学に没頭し、幸せな青春時代を過ごすのだが…

    あまりにも突出した才能がゆえに壊れていく瞭司。
    それを知りながら離れていく熊沢と佐那。
    その後二人は罪悪感に苦しむ事となる。

    物語後半は辛い場面が多く読むのも苦しいが、印象的な森の中のシーンと光のあるラストに涙が溢れる。
    バラバラになった3人は数学によって再び繋がるのだ。

    深い森と数学の世界を重ね合わせたような描写は、数学の持つ美しさや正しさがくっきりと見えるような気がする。



    先日読んだ「付き添うひと」がとても良かったので、著者のデビュー作である本書を手に取ったのですが、こちらも読んで大正解。
    数学苦手な私でも、全く問題なしです^⁠_⁠^
    嫉妬や劣等感などは、きっと誰もが経験する感情で、心の何処かに“孤独”も同居しているのではないでしょうか。

  • 第9回野生時代フロンティア文学賞受賞作。

    『文身』で知った岩井圭司さんのデビュー作。
    青春小説です。

    数学の天才児、三ツ矢瞭司は特別推薦生として入った大学で同じ数学を学ぶ熊沢勇一や斎藤佐那という同級生と出逢い、論文を筆頭執筆者として発表し、一躍有名になり、すぐに学生から助教授になります。

    しかし、熊沢は大学を離れ、佐那もSEの仕事に就き、瞭司は深い孤独に包まれ、数学にますますのめり込みます。
    天才児ゆえの誰にも理解されない深い孤独です。
    そして、孤独のうちに瞭司は自分の研究を書いたノートを遺して亡くなります。

    ノートは熊沢に託されます。
    熊沢は自分が瞭司を追いつめたと思っています。
    熊沢は瞭司に言います。
    「数学なんかやってなくたっていい。生きているだけでいいんだよ。全人類の何パーセントが数学で食ってると思う?瞭司の人生に数学がなくたって、ちゃんと生きているだけで立派なんだよ」

    すごく淋しい救いのない話なのかと思っていたらラストで熊沢と佐那がちゃんと瞭司を救ってくれました。
    数学の神様はいたのですね。
    涙しました。

  • 初読みの作者さん。フォローしている方のレビューを読んで、数学者たちのお話というのに惹かれて買ってきた。
    数学は得意ではなかったが、今でも新聞に入試の問題が載ったりすると、ちょっと覗いてみたくはなる。

    大学の数学科に特別推薦生として同期で入学した瞭司と熊沢と佐那。主に瞭司と熊沢それぞれの視点で語られる、彼らの過去と現在。
    コラッツ予想にリーマン予想、群論だとかムーンシャインの一般化だとかWikipediaの説明を読んでもさっぱり理解できないが、そんなことは関係なく、面白く読むことが出来る。
    とりわけ、圧倒的な〈数覚〉に恵まれた瞭司の天才ぶりと、それに惹きつけられた熊沢と佐那が共同研究で結びついていく前半は、彼らの幸せな時期の様子が描かれて好ましい。
    一方、それぞれが自分の道を見出しその関係性が崩れていくようになる後半は、そこから引き起こされる瞭司の孤独、その繊細さや脆さも分からないでもないが、アルコールに溺れていくところがかなり苦々しく、破滅型の天才という絵柄は今どきあまり読みたくなかった。
    それでも終章、熊沢が見た景色は瞭司の魂とのつながりを感じさせ、佐那が教えた少年の登場も連綿と続く“知”のつながりを思わせて、素敵な終わり方だったと思った。

  •  「中・高生の苦手な教科第1位は数学!」聞き覚えのある残念なフレーズです。
     実は私、学生時代は数学が嫌いではありませんでした(自慢かよ!)。ズボラな私には、暗記事項が少なく、様々な考え方があって、時間をかけて解法を見出す数学に、パズル的な面白さを感じていたのかもしれません。

     本書は、数学が好きな人・苦手な人へでも、自信をもっておすすめできる一冊です。
     内容を端的に言うと「天才数学者の孤独・苦悩・葛藤」の恐ろしさと悲劇、「真理を追求する生き方」の崇高さを扱った物語ということになるでしょう。
     数学者たちの物語ですが、描かれているのは、友情、恋愛、羨望、嫉妬、劣等感…。そして、一つのことをどこまでも追求するには、多少の何らかの犠牲が伴うこと。これらは誰もが経験しうる苦悩だと思います。
     主人公の「問題を解くことに挫折はない」という言葉は、数学に限らず、様々な困難を抱える現代社会の打開策模索に、相通じる気がします。
     こういう世界は分からないし、分かりたくもないという読者の方もいるでしょうが、私にはいたく響きました。年の瀬の足音がやってくる師走を目前にして、思わぬ掘り出し物に出会った感覚です。

     天才数学者と言えば、東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」や小川洋子さんの「博士の愛した数式」を思い浮かべますが、また違った感動をもらいました。
     また興味の虫が騒ぎ出し、王城夕紀さんの「青の数学」、川添愛さんの「数の女王」も読んでみたくなってきました。
     ヤバい! また積読本が貯まる!

  • 数学というのは‥
    雲を、雪を、そして森までを式で表せるのか!

    そういう世界を見られるというのは、とても興奮する、きっと幸福な世界なのだろう

    ひとがその天才的な能力を持つとき、世渡りの術とか、生活力とかいう この世を生きていく力を併せ持てない事が多いのかも知れない

    その結果の孤独 嫉妬もされるだろう

    数学の(真理というのか)本質は、すでにずーっと
    この世に存在しており、それをいかにみつけるか、完璧に式に表すか、という事らしい

    今まで見えていなかった、新たな世界を発見するのが天才
    そして天才の持つ能力を、その発見した事を
    とてつもない能力であり 発見であると理解して世に広める能力を持つ人々がいて

    そんな数学の世界を生きる 数学者たちのものがたり

  • 大好きな時代小説家 今村翔吾さんが、
    同期、意識している作家と語られていたのがきっかけで。
    初めて手に取りました。

    数学の天才(神童)とも言うべき三ツ矢瞭司。
    幼少期から友達と同じ感覚や会話ができず、
    隔たりや孤独を感じていた。
    彼を癒していたのは
    無数の自然のなかに存在する数字、数学たち。

    彼の才能を見出した教師は大学へ導き、
    そこで彼はかけがえない友達と出会う。

    ここまでは良かったです。

    ただ、圧倒的な光や才能を前にすると、
    周囲の人間にも大きな影響をあたえ、
    時には嫉妬や執着、暗い影をも惹きつけてしまう。

    とても孤独で冷たくて、
    掴んでいたものが時間と共にこぼれ落ちていく。
    読んでいてとても悲しくて胸が苦しくて。

    雪の中、振り返りひとり佇む少年(青年)の表紙が。
    読後に見返すととても切ない気持ちになります。

    バリバリ文系の私は数学に関わる本を読めるか
    とても不安でしたが、
    まったく問題ありませんでした。

    むしろ「蜜蜂と遠雷」や「鋼と羊の森」のような
    音楽をテーマに描いている世界観と似ていました。

    また素敵な作家さんを知れたことに感謝です。

  • 圧倒的な才能の前で自分にないものであったり、自分が昔諦めた道を猛進する人を妬み否定する気持ちは自分でも抱いてしまうだろうなと感じました。
    また、数学は高校になってから正に社会で使わないからと勝手に決めつけ苦手になってしまいましたが、世界の真理を表す学問であることは社会人になってから理解することが出来ました。

    「固く握られた手に彼女の本心が閉じ込められているようだった。」

  • ❇︎
    永遠についての証明/岩井圭也

    数学で突出した才能を持った三ツ矢瞭司は
    数学が視える数覚をもつ。

    興味の対象が数学だけで、友人もいなかった瞭司は、
    小沼教授と出会い初めて同じように数学について
    話し合える人がいたと知る。

    小沼教授に誘われて大学に入った瞭司は
    同じ数学好きの熊沢勇一と斎藤佐那と出会い、
    初めて居場所と友達を得た。

    ずば抜けた才能と感性を持つ瞭司だったが、
    恩師が去ったことをきっかけに、友達とは
    距離が生まれ一変していく。

    絶対的才能と類い稀な数覚を持った瞭司は
    孤独と数学への執着の中、若くして死んでしまう。

    瞭司が残した遺品、ミツヤノートには
    数学の歴史を覆す証明が残されていた。

    瞭司の死に罪悪感を持つ、熊沢勇一が瞭司の
    意志を解き明かせるのか。





  • 数学の才に恵まれるが故に誰からも理解されない瞭司。大学の数学科で同じく特別推薦生である熊沢と佐那に出会い、彼らと友情を築きながら感性で数学の真理を追う瞭司は、その才能から周りとの関係を歪ませていく。
    才能を持つからこそ周りの嫉妬や僻みにさらされ、次第に孤独になっていく様子が哀しいし、妬む側の気持ちの方がより理解できるからなおのこと辛い。
    数学のせいでばらばらになった彼らだったが、結局数学で繋がっていたのだと気付いた時には涙が溢れた。

  • 瞭司にとって、小沼は初めて瞭司と数学の世界を共有してくれた人で、孤独から連れ出してくれた人。そこからクマと佐那の出会って、瞭司の世界はその研究室で完結し初めて満たされていた。

    多くの人が、それまでの人生で別れと出会いを繰り返し経験してきたとしても、誰とも理解しあえなかった瞭司が生まれて初めて世界を共有できた人たちと離れるだなんて、受け入れられるなんて考えられなかったのだと思う。クマとの関係がこじれてしまったのも、クマだけが悪かったわけでもなく誰も悪くなかった。

    クマにとって、圧倒的な才能の塊である瞭司の存在は折り合いをつけてこられたにせよ、嫉妬は必ずあったわけで。そんなときに平賀の「正しさ」によって、瞭司の数学のセンスが、そこまでのものでなかったのだとどこか安堵し見下す感覚が芽生えてしまったのも、責められない。
    けど、瞭司は自分だけが見えていた世界を共有したくて、純粋にクマと検討したくてクマの部屋に行く様も本当にせつない。その時のクマにはクマの事情や忙しさもあって、瞭司の話に耳を傾けることすらできず、結局、昔のように一緒に検討することはできずに瞭司とは一生の別れとなる。

    ムーンシャインの一般化は僕だけでやったのではないという瞭司の言葉は本当にその通りで、クマと佐那それぞれが自分の数覚をもとに役割を果たして完成させたもの。
    この頃が一番幸せだったかもしれないけれど、理論の中に生き続ける瞭司とそれを繋いでいくクマたちの最後は、後悔もあるけれど前に進めていて救われた。

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著者プロフィール

いわい・けいや 小説家。1987年生まれ。北海道大学大学院農学院修了。2018年『永遠についての証明』で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞(KADOKAWAより刊行)。著書に『文身』(祥伝社)、『水よ踊れ』(新潮社)、『この夜が明ければ』(双葉社)などがある。

「2021年 『人と数学のあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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