永遠についての証明 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.25
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本棚登録 : 217
感想 : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041120620

作品紹介・あらすじ

圧倒的「数覚」に恵まれた瞭司の死後、熊沢はその遺書といえる研究ノートを入手するが――冲方丁、辻村深月、森見登美彦絶賛!選考委員の圧倒的評価を勝ち取った、第9回野性時代フロンティア文学賞受賞作!

感想・レビュー・書評

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  • 第9回野生時代フロンティア文学賞受賞作。

    『文身』で知った岩井圭司さんのデビュー作。
    青春小説です。

    数学の天才児、三ツ矢瞭司は特別推薦生として入った大学で同じ数学を学ぶ熊沢勇一や斎藤佐那という同級生と出逢い、論文を筆頭執筆者として発表し、一躍有名になり、すぐに学生から助教授になります。

    しかし、熊沢は大学を離れ、佐那もSEの仕事に就き、瞭司は深い孤独に包まれ、数学にますますのめり込みます。
    天才児ゆえの誰にも理解されない深い孤独です。
    そして、孤独のうちに瞭司は自分の研究を書いたノートを遺して亡くなります。

    ノートは熊沢に託されます。
    熊沢は自分が瞭司を追いつめたと思っています。
    熊沢は瞭司に言います。
    「数学なんかやってなくたっていい。生きているだけでいいんだよ。全人類の何パーセントが数学で食ってると思う?瞭司の人生に数学がなくたって、ちゃんと生きているだけで立派なんだよ」

    すごく淋しい救いのない話なのかと思っていたらラストで熊沢と佐那がちゃんと瞭司を救ってくれました。
    数学の神様はいたのですね。
    涙しました。

  • ❇︎
    永遠についての証明/岩井圭也

    数学で突出した才能を持った三ツ矢瞭司は
    数学が視える数覚をもつ。

    興味の対象が数学だけで、友人もいなかった瞭司は、
    小沼教授と出会い初めて同じように数学について
    話し合える人がいたと知る。

    小沼教授に誘われて大学に入った瞭司は
    同じ数学好きの熊沢勇一と斎藤佐那と出会い、
    初めて居場所と友達を得た。

    ずば抜けた才能と感性を持つ瞭司だったが、
    恩師が去ったことをきっかけに、友達とは
    距離が生まれ一変していく。

    絶対的才能と類い稀な数覚を持った瞭司は
    孤独と数学への執着の中、若くして死んでしまう。

    瞭司が残した遺品、ミツヤノートには
    数学の歴史を覆す証明が残されていた。

    瞭司の死に罪悪感を持つ、熊沢勇一が瞭司の
    意志を解き明かせるのか。





  • 何気なく手に取った一目惚れのような本だが、もの凄いものを読んだ感覚。

    最初から惹きこまれ、途中はとても辛かった。

    2度のクライマックスに嗚咽が止まらなかった。
    胸を打たれる物凄い本だった。

  • 第9回野生時代フロンティア文学賞受賞作。『夏の陰』で出会った岩井圭也、『文身』『水よ踊れ』『竜血の山』と追いかけてきてようやくデビュー作を読んだ。いやこれがデビュー作って、そりゃすごい。
    岩井小説は人の心の暗いところ、ヒトとヒトの間に生まれるネガティブなもの、そして、「天才」といわれる人の異質さをまっすぐ突き続けるというイメージがあったのだけどなるほどデビュー作から全て芽生えていたわけだ。
    数学、というものすごく身近でありながらものすごく複雑で遠い世界に愛されたヒトを静かに冷たく、そして深く描ききっている。
    伊与原新で理系小説に目覚めた人たちには全力でおススメ。
    簡単に一言で、圧倒的な「数覚」を持つが故の苦悩、と表現するにはあまりにも残酷で美しい世界。
    凡人には想像もできない世界が見える彼らの、凡人には見える世界との折り合いの付け方の苦しさよ。
    数学苦手、数字見ると頭が痛くなる、という純粋文系の自分にも見えた気がする美しい世界。
    そしてラストの光。そう、世界は全てフラクタルでできているのだよ。

  • 暸司が辛すぎる。
    数学者が皆、僚司みたいな人であるわけないし、むしろそういないタイプなんだろうけど、なんなく数学者ってこんな感じなのかなと思ってしまった。
    熊沢の暸司に対する尊敬の気持ちも嫉ましい気持ちもわかる気がする。
    きっと自分が熊沢でも、暸司に対して優しくすることは難しかっただろう。
    暸司があーなった1番の原因は平賀のような気がする。平賀は暸司のような天才は嫌いなんだろなぁ、自分とは相反するみたい感じで。
    平賀がもう少し違うタイプの教授だったら、結果は変わったんだろうなぁ。

  • 2月にして今年のベストワンになりそうなほど素晴らしい作品だった。2018年の作品らしいが岩井圭也さんの他の本も読んでみたくなった。

  • 一気読み。天才の頭の中の感覚、周囲の人の心情、転落していく過程、すごくリアルだけど、同時にファンタスティックにも感じて読むのをやめられなくなった。この世界の真理を追求するあまりに世界から断絶していくという皮肉さを感じる。切ない、、

  • あの研究所のすきま風が入ってくる私のデスクは、
    いつまでも私の心の、原風景であり続けるだろう。

    懐かしささえ感じるような"居なかった世界"の中で、
    自分の感覚が溶け込んでいき、引きずり込まれて、
    霧散していく。
    相性の良い小説にはそんな自分と向き合う何かがあるように思う。

    対話していても噛み合わない感覚、
    楽しさを伝えきれずにその過程を伝えることすらもどかしいような、
    それを文章に落とし込み、まるで読者がそれを自ら気がついたかのように
    感じさせる流れも情景も全てが文章の中に溶け込んでいる。

    読んで良かった、と思った。

    今の私にとっては、読んでいる本と繋がりを考えながら読んでしまった一冊でもある。
    韓国哲学を人で繋がり、追う本を読んでいるが、それは森で言葉に出来ない何かを追っていた彼は花潭のそれに似た思考にも思える。
    重ねて心の収まる言葉を数式に変えたかのようにさえ思う。

    さらに宇宙物理と数学とを研究する研究所の研究者の本を読んでいる。
    その影響で物理と数学の隔てられた壁が溶け合う未来を描いてしまう。それは物理側からのアプローチで描かれているから、そう思うのだろうか。
    現在の学会がどうなっているのかは内側にいない私には分からないことではあるけれども。
    それでも証明に言葉が使われるのならば、その言葉が数学の分野だけではないような会話がそこで交わされていれば良いなと思う想像ができる。

    加えて、音楽について科学の面から語る本も。
    最近、哲学を使って言葉と内面との関係性を考えながら読んだ本がある。
    それぞれに私の中で残った欠片が繋がりあうようで。

    そのどれもが繋がり、ひとつの見つからない答えに向かい、
    その答えが自分のどこかにあるのに、言葉にして証明することが出来ない。
    そんな感覚と似ている。

    すべてを書くのは陳腐で、けれども日記のように個人的でありながらも、
    拡がりは誰かと共有したくなるような、矛盾。

    それらと共通するように、彼の感覚をなぞり、弾けるところまでが、
    全て、予定調和だ。
    けれど、物語はストーリーだけが全てではなく、
    その語られる言葉にさえ、作者の込めた思いや経験が内包されていると思うと、
    見方は変わる。

    この小説は自分への鏡だ。
    そう思うことすら、おこがましいとしても。

  • 仕事の休み時間に読んでいて、休み時間が終わって本を閉じて仕事に戻る時、本の中にまだ思考が取り残されていて、現実の方がフィクションであるかのような感覚が久々にあった。
    かけ足な過去とスローな現在の話が交互に繰り返され、だんだんとその距離が近づいて交わる、言葉で過去と現在の距離が縮んでいく構成がとても美しかった。
    数学的な知識はないので、数学者が読んだらどうなのだろう??と気になったりもする。
    辛い方向へ収束するのが分かっていたので、文字を追うのが辛い部分もあった。だが結末は不思議と悲壮感はなかった。過去と現在の後悔や焦燥感、機微に触れることのできる作品だった。

  • 非業の死を遂げた天才と、彼の遺志を継いで証明を完成させる秀才と、彼らの周りの人達とが関わり合いながらも時に離れ、時に響き合う美しい物語でした。

    全編を通して描写力が素晴らしく高く、数学が門外漢の私でも集中して読み続けることができました。

    終盤に差し込まれるかつての仲間たちと連れ立って歩くシーンで、死んだ彼ともう意思疎通をしたくてもできないことを実感したときに、彼が死んだことを理解したシーンでは思わずため息と共に本を一度閉じてしまいました。読者である私もその時に彼の死を実感したからかも知れません。

    今まで多くの物語を読んできたわけではありませんが、間違いなく本作はこれまでのベストに入りますし、これからもベストであり続けると確信しています。

    この作品に出会えて本当によかった。また何年か経って、改めて読んだときにどんな風に読めるだろうかと今から楽しみです。

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著者プロフィール

(いわい・けいや)1987年生まれ。大阪府出身。北海道大学大学院農学院修了。2018年「永遠についての証明」で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞。その他の著書に『夏の陰』『プリズン・ドクター』『文身』がある。

「2022年 『最後の鑑定人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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