湯殿山麓呪い村 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
2.20
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本棚登録 : 33
感想 : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041120705

作品紹介・あらすじ

「語らざるべし、聞かざるべし」。大手レトルト食品メーカーの社長、淡路剛造が自宅の浴室で何者かに殺害された。殺害前、彼の自宅前では怪しげな遍路の姿が目撃されており、剛造の娘の婚約者の元には、幽海上人の生まれ変わりを名乗る謎の男から剛造が過去に起こした罪を裁くという怪電話がかかってきていた。彼が犯した罪とは何なのか。事件を追ううち、彼の故郷の村で起きたある母娘の失踪事件、更には湯殿山麓の寺の奇妙な戒律が浮かび上がる――。角川小説賞受賞の本格推理小説。

感想・レビュー・書評

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  • 1980年。伝記要素があり、映画化された有名作品らしいので読んでみたが、個人的な好みとしてもミステリとしてもどうなのかと思った。

    ・これは単に私の思い違いだが、このタイトルなのに8割程度のことが東京で起こり、最後にやっと村に赴く。村の描写がほとんどなくがっかりした。
    ・密室状態で20㎝四方の小窓だけが空いていた風呂での撲殺は、「子どもが小窓から入った」という真相。読者を舐めていると思った。そもそも犯人にとって密室にする必要もないのだが。
    ・怪しい行者姿の老人が、二度、逃げ場のない道から消失した件については、「一方の目撃者が嘘をついていた」という真相。読者を舐めている。
    ・33年前の惨劇が、「戦時中、村を頼ってきた母娘を村八分にし、さらに御三家の男達でレイプし、死体を遺棄した」というもので、胸糞過ぎる。しかもうち1人は僧侶。
    ・御三家の男のうち零落した男が、過去を反省してこの事件の黒幕となるのだが、どう考えてもあまり反省していない。どちらかというと私怨。
    ・御三家の男たちは、自分たちが犯して殺した母娘にとって息子・兄にあたる人物の子どもを、それぞれ自分の子どもとして育てているのだが、うち2人は「親が彼だと知らずに」「偶然」育てている。それが呪いなのかもしれないが、偶然はさすがにやめてほしい。
    ・住職がいつの間にか別人に入れ替わって読経していたトリックがあるが、入れ替わった人物は別に僧侶ではないので、読経できたり、弟子が聞いて別人だと見抜けなかったのが不自然すぎる。
    ・最後に、バイク事故で3人の子ども(容疑者2人を含む)が死ぬ胸糞展開。

    おもしろ所としては、33年前の事件だけでなく、150年前に無理やり餓死(即身仏)させられた僧侶の事件を絡め、伝記・歴史要素を出しているところだろうが、150年前の件は今回の連続殺人と全く関係がない。
    「呪い村」「無理やり即身仏にさせられた僧侶」などの怖い要素がせっかくあるにもかかわらず、大半の事件が東京で起きていることもあり、全くホラー的な怖さがない。胸糞悪い過去の事件ばかりが明かされ、それについてしっかりした批判もないまま話が続くため、読後感が非常に悪かった。

  • オカルトめいたミイラの発掘に過去の怨念が纏わるおどろおどろしいミステリー。
    普通に事件を検証していくとたどり着く真犯人なのだが、誰もがまさかと外してしまうところが盲点。犯人と犯行動機が判明してもスッキリとせず、逆に残る後味の悪さがいつまでも苦々しい。
    “種を火種にする”というこれ以上ない怨みの晴らし方の厭らしさとその結果が招く不幸の重さに只々どんより。
    「語るなかれ、聞くなかれ」と百年以上秘められた幽海上人の無念の因果や血筋をもっと事件に絡めて復讐のホラー色を強めたら、お楽しみ度も上がったかもなぁ。

    かなり昔に観た映画はストーリー破綻していたので心配だったが、原作はちゃんと探偵が機能していて一安心。

  • 主文は後回し。

    まずは、許せないレベルのこと。
    ●ある章のタイトルがあからさまな大ヒントになっている。目次で犯人の見当がついてしまうのだ。「わからないだろう」と読者を侮っている感じもあり、腹立たしい。
    ●会話の中で、超有名な名作推理小説(本感想の筆者は未読)の犯人をバラしている。それも、作品のタイトルと犯人の名前をモロに書く形で。ひどすぎる。
    この2つ、推理小説作家として万死に値する行為ではないか。

    続いて、何とか許せるけど滅茶苦茶気になったこと。
    ●表現や文章の繋がりに違和感があり、作者の日本語力を疑わざるを得ない。そのため、読み進むにつれ作品に対する期待や敬意を失っていく。
    ●説明に蛇足が散見されて冗長、しかもオーバーステイトメント気味で変にリキんで空回りしてる感じ。また、カッコつけた表現がことごとく「余計な情報」に見えていちいちイラッとするのは、自分が狭量なのか、表現がハマッてないのか。
     クライマックスに差し掛かっても、寺社やその立地に関する情報等を都度都度放り込んで、テンポを落とす。
     また、ある章では、長めの説明ゼリフの中にカッコ書きで説明を挿入する荒業が見られた。「説明、説(説明)明。説明!」。こんなの他で見たことない。御作法としていかがなものか。
    ●大上段に振りかぶったタイトルの割に、オカルト風味が薄い。やはりそこは、大先輩・横溝正史や大後輩(笑)・京極夏彦など、ハッタリ上手(※褒め言葉です)の諸作と比較して、弱さを感じる。
    ●主人公がクイズ王、という設定は全く活きてない。雑学・蘊蓄キャラにしたいなら、京極堂のように蘊蓄で頁を埋め尽くすくらいアピールしないと。ところが蘊蓄のほとんどは登場人物ではなく語り手が語ってしまう。また、主人公のキャラ付けとして、所々に挿し込まれる大食エピソードも、早送りしたくなる。

    物語の基本設計は、無理はあれど受け入れられなくはない。ヒントが易しすぎて簡単に犯人の見当がついてしまうのも許しますよ、そこだけがミステリの魅力ではないので。その上で、以下の結論に至った。

    主文:本作を星1つの刑に処す。

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著者プロフィール

1931年大阪府生まれ。1949年『二十密室の謎』でデビュー。77年、『わが懐旧的探偵作家論』で日本推理作家協会賞を受賞。日本推理作家協会理事長、日本文芸作家協会、日本ペンクラブ理事などを歴任。83年からはエンターテインメント小説作法教室で講義し、多くの作家を育成。怪奇幻想小説や謎解き小説、伝奇ミステリーを多数執筆し、おもな作品に『獅子』『ボウリング殺人事件』『推理文壇戦後史』などがある。99年没。

「2021年 『湯殿山麓呪い村』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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