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本 ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784041120736
作品紹介・あらすじ
壇ノ浦の戦いで九死に一生を得て寂光院に隠棲した建礼門院。彼女のもとに突然、後白河法皇が姿を見せる。平家に対する裏切りに一切の罪悪も感じない様に恐怖と憤りを覚える侍女に対し、驚くほど冷静な女院。彼女は何を思うのか。平家滅亡後を描く表題作の他、義経追討に名を挙げた男の顛末を描いた「土佐房昌俊」、「頼朝の死」など全6作を収録。鎌倉時代の権力の座を巡る複雑な人間模様と渦巻く陰謀に切り込んだ傑作歴史小説。
感想・レビュー・書評
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頼朝の死の真相や実朝暗殺の内幕などがミステリータッチで描かれ、気軽に読める6編。44年前の作品ながら、歴史ものなので古臭さも全く感じません。永井路子さんならではの視点で、女心の怖さもしっかり教えてもらいました。
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鎌倉時代に生きた建礼門院、頼朝や北条政子などが登場するが、全て第三者の脇役の目線で描かれている。
表題作の『寂光院残照」…数年前に大原を訪れたが、今でも山に囲まれ人里離れた感じがした。建礼門院の過酷な人生を思うと胸が張り裂けそうになるが、激動の中で彼女を支えて来たものは、無関心と無感覚だったと。確かにそうでないと生きては行けなかっただろう。
「頼朝の死」も興味深かった。頼朝の時代も、今の時代も、中傷とデマの世界は変わらないのかもしれない。 -
短編集。
「右京局小夜がたり」
「土佐房昌俊」
「寂光院残照」
「ばくちしてこそ歩くなれ」
「頼朝の死」
「后ふたたび」
「頼朝の死」では、政子と義時、三浦義村の嘘と真実を巡って、「噂って何だろう。ほんとの事って何だろう。私たちにその見分けがつくのかしら」と思う小雪の言葉が、この作品全体をうまく表しているように思う。
複雑に入り組んだ人間関係の、どこを切り取るかで見える景色が違うのは当然で。
この短編集では、敢えて周縁の人物、特にお側仕えの者を通して語らせることによって、うやむやにしながらも「彼らにしか知り得ない」ような真実みを残して読ませてくれる。
表題作「寂光院残照」では、感情を表にしない徳子の代わりに、後白河院へ物を申す阿波内侍の構図。
けれど、語らない徳子の本心はどこにあるのか。
いや、そもそも本心といえるものがあるのか。
寂光院に移った後の徳子は、どこか悟ったような気丈さで読むことが多かったけれど、この、囚われたままでいるような、諦めているような徳子像が印象に残った。 -
タイトルの話が一番好き。悲劇の女性、建礼門院が後白河法皇に精神的に復讐しているような怖さがあった。
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鎌倉時代の権力の座を争う者たちを書いた短編集。面白かった。戦国時代に興味を持ったのは永井さんの小説がきっかけだったことを思い出した。策略、陰謀が渦巻く時代の小説はやっぱり面白い。「頼朝の死」に登場する北条政子と義時と主人公の対面シーン。主人公が言う通り怖い。不気味さが伝わってきて怖い。色々逸話が残されている北条政子だが実際はどんな女性だったのだろう。俄然興味がわいてしまった。
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鎌倉は大好きな場所で鎌倉にまつわる歴史も大好き。
源頼朝や義経、後白河法皇、建礼門院、土佐房昌俊はじめ彼らにまつわる人々からみた権力の世界や駆け引きの様子がとてもおもしろいです。
題名にもなっているお話、寂光院に隠棲した建礼門院と後白河法皇とのやりとりが目に浮かぶようでじわっときました。
駆け引きや裏切り、人間模様、権力、人の心はいつの時代もおそろしい。 -
壇ノ浦で助けられて寂光院で余生を送った建礼門院のもとに後白河院が訪ねたという大原御幸。永井路子さんは杉本苑子さんとの対談本で大原御幸はなかったわよ、わはははと言っていた。無かったと言いつつどんな話を書いたのだろうと興味があった。
現実にはなかったと思いながら、もしそうだったら、どんな言葉を交わしただろうかと永井路子さんらしい話だと思った。無関心と無感覚な建礼門院は理解できるような気がした。
その他、実朝の御台所の乳母の視点で実朝落命までが描かれた右京局小夜がたりなど全6作の短編集。
頼朝の死では、いかにして噂が出来上がるか、真実かどうかはどちらでもよく、真実であって欲しいと思う人があると噂は生まれ、真実であって欲しいと思う人が多いほど、多くの人に伝えられていく。
まさに永井路子さんの「悪霊烈伝」に書かれてあることがそのままに小説になっていて面白い。
中傷とデマを永井路子さんらしく少し皮肉って書かれているが、中世だけの話ではなく、現代にもちょっとした隙間にデマが入り込むことを言われているのだろう。
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6篇の短編集。
●右京局小夜がたり…源実朝の御台所の乳母の視点からの語り。京都から鎌倉入りした乳母の実朝に対する視線がシビアで、実朝好きとしては読んでいて辛いが、こういう解釈があってもおかしくないか…
●土佐房昌俊…まさかの土佐房が主人公!義経と弁慶も出てきます。
●寂光院残照…建礼門院のもとへ後白河法皇が訪れて…。信西の娘の視点からの語り。←阿波の内侍(藤原信西の娘)のことか?
●ばくちこそ歩くなかれ…僧侶の賭けとは?義時晩年にかけての物語。主人公・尊長 は一条能保の子(母は不明)、彼の異母兄は一条信能(母は遊女)、異母弟の一条実雅(母は藤原有恒の娘)は伊賀の変での将軍候補&妻は北条義時の娘。※このあたりの関係を理解して読むともっと面白いと思う。
●頼朝の死…タイトルの通り
●后ふたたび…藤原頼長の養女・多子と周囲の公卿たちの攻防 -
大河の影響で40年くらい前のものを再販。永井さんの作品は読みやすいです。どのお話も脇役語りになっていて、感情移入はしづらいけど知らない人物がフィーチャーされていて面白い。表題の寂光院は他のもので読んだせいか既読感あった。いやこちらの方が古いのだけど。もう少し切り込んだ建礼門院を読んでみたい。
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短編集。鎌倉幕府の中枢近くに位置した4人の人物を取り上げている。それぞれの人物像をうまく作り上げている。
この時代のメインでない人物の小説はなかなかなく、読み応えある。
著者プロフィール
永井路子の作品





