悪と無垢

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • KADOKAWA (2022年10月28日発売)
3.27
  • (9)
  • (56)
  • (64)
  • (22)
  • (5)
本棚登録 : 729
感想 : 71
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784041120750

作品紹介・あらすじ

「逃げなきゃ。この女のそばにいるのは危険すぎる」
新人作家、汐田聖が目にした不倫妻の独白ブログ。ありきたりな内容だったが、そこに登場する「不倫相手の母親」に感情をかき乱される。美しく、それでいて親しみやすさもある完璧な女性。彼女こそ、聖が長年存在を無視され、苦しめられてきた実の母親だった。ある時は遠い異国で、ある時は港の街で。名前も姿さえも偽りながら、無邪気に他人を次々と不幸に陥れる……。果たして彼女の目的は、そして、聖は理解不能の母にどう向き合うのか?

みんなの感想まとめ

複数の短編が巧みに織りなす物語は、嘘と裏切り、そして人間関係の複雑さを描き出しています。登場人物たちはそれぞれの境遇に苦しみながらも、時に他者の悪意に翻弄され、時に自らの選択によって不幸に陥っていきま...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あなたは、『意味のない噓を吐き続ける』というような人を知っているでしょうか?

    “噓は泥棒の始まり”、そんなことわざがあるようり、噓をつくという行為の先には、泥棒のような犯罪も厭わなくなる、悪いことに対する感覚が麻痺していくことが警告されてもいます。しかし、一方で”噓も方便”ということわざもあります。時と場合によっては、必ずしも真実だけが全てではなく、噓をついた方が良い結果を得られる、この辺りは人間の長い歴史の中で人が習得してきた経験に基づくものでもあるのだと思います。

    私たちが人間社会を生きていく中では、噓というものから無縁に生きていくことはできません。自分がつく噓、誰かにつかれる噓、噓をつきあう中に、人間関係を円滑に回していく絶妙なバランスを見出していく私たち。なかなかに日々を生きていくのも大変です。

    ただ、そんな風に人間関係を円滑に…というような発想とは無縁に一方的に嘘をつき続ける、広い世の中そんな人もこの世には存在するようです。

    “その女は、悪意なく、歌うように噓をつく”

    そんな風に噓の中に生きるその女性。そんな女性は『噓をつく理由がな』くとも、『ついたってなんの得もない噓をつく』中にさまざまな人の人生を狂わせていきます。

    この作品は、そんな女性に関わりをもった人たちが人生を狂わされていくのを見る物語。そんな女性を母親に持ったひとりの小説家が『わたしはもう、噓をたすける人にはなりたくない』という先に『復讐ではなく創造という形で』前に進んでいく様を見る物語。そしてそれは、『逃げなきゃ。この女のそばにいるのは危険すぎる』というそんな女性の生態に読者が震撼する物語です。

    『私には心の底から信用できる人間がいない。日記にすらほんとうの気持が書けない』というのは主人公のユリ。『乗る予定だった飛行機が霧のため欠航となり、次の便は十三時間後と告げられた』ユリは、『三年経ったいまでも、あれは何だったのだろうと不思議に思う』中に、『恥も悔いもさらけ出して、書いてみよう』と思い『彼に出会ったのは三年前、台風迫る初秋の午後だった…』と、キーボードを打ち始めました。『夢か現か、生きているのか死んでいるのか』と、『街をさまよい歩いてい』たユリは、『イタリアンレストラン』へと入りました。『世に正常とされる範囲から自分がどんどん外れていく』のを感じるユリは、『尻の辺りがぬるぬるすることに気づ』き『左手で触れてみる。血がつ』きました。『よりによって白いスカートを穿いている日に。羽織るものは持っていない』と焦る中、『何気なくキッチンの方に顔を向けたそのとき、彼が私の人生に現れ』ました。『尖った眼。猛々しい骨相の顔』、『動物的な、突き刺してくるような眼差し』に『身動きが取れなくなった』ユリに、『どうかされましたか』と訊いてくれた彼。エプロンを巻いてくれ、化粧室へと連れて行ってくれた彼は『僕のうちすぐそこなんで』と声をかけてくれ、後に続いたユリは、彼の部屋『五〇四号室』へと入ります。『真崎浩之と名乗った彼』は『バスルーム』まで使わせてくれました。『用意されたタオルが白ではなく紺色』だったりと何かと気を使ってくれる真崎。場面は変わり、電話の音に目を覚ましたユリは、夫からの電話を受けます。電話の向こうで『嫁迎えに来させたんで』という声を訊くユリは、『寝息を立てる郁也』にメモ書きをして出かけます。そんな一方で『真崎はいま何をしているのだろう』と思うユリは、『私を傷つけるのが上手な人だ』という母から逃れるように夫と結婚した日のことも思います。しかし、ある夜、『こめかみを拳で殴られた』ことから始まった『夫の暴力』。『笑えるのは、郁也といるときだけだった』という日々を送るユリ。そんなユリは、『気がつくと真崎のことを考えている』という感情に囚われていきます。そして、『洗濯したハーフパンツと菓子折を持って、イタリアンレストランを訪れた』ユリは、真崎を見つけます。『真崎を発見した瞬間、悦びが脳内でスパークした』というユリの『真崎なしでは生きていけなくなった』という日々の先にまさかの真実が顔を出す、衝撃の物語が描かれていきます…という短編〈奈落の踊り場〉。絶妙な短編タイトルが主人公・ユリの危うい日常を描き出す、この作品世界に読者を引き摺り込んでいく好編でした。

    “ある時は遠い異国で、ある時は港の街で。名前も姿さえも偽りながら、無邪気に他人を次々と不幸に陥れる…。果たして彼女の目的は、そして、聖は理解不能の母にどう向き合うのか?”、なんともイヤミス感がぷんぷんする内容紹介がとても気になるこの作品。プロローグと五つの短編が連作短編を構成する中に物語が展開していきます。そんな物語は、インパクト最大級の冒頭から始まります。

    『クリスマスの朝、ひとりの女が死んだ。自宅の廊下で息絶えていた。あれだけのことをしてきたにしては、あっけない最期だった』。

    クリスマスという一年の中でも最も華やかさが似合うそんな日に、『ひとりの女が死んだ』という事実を突きつける物語が語るのは、内容紹介に登場した”理解不能な母”、英利子の死です。そこに続く五つの短編は、そんな英利子が”無邪気に、優雅に、意味もなく、他人を不幸に陥れ”ていく様が描かれていきます。五つの短編の主人公はそれぞれに異なります。まずは、そんな各短編の内容を見てみたいと思います。

    ・〈奈落の踊り場〉: 『私には心の底から信用できる人間がいない』という主人公のユリは、『彼に出会ったのは三年前、台風迫る初秋の午後だった』という時のことを文字にしていきます。レストランでスカートに血を滲ませたユリは、真崎浩之という男性と出会います。『夫の暴力』に苦しむ中に、真崎に魅かれていくユリ…。

    ・〈馬鹿馬鹿しい安寧〉: 異国の地で親しくする英利子にボーンという運転手を紹介されたのは主人公の若菜。現地の言葉がわからない若菜にボーンの言葉を通訳してくれる英利子は、夫が『可愛い女の子とつきあってたみたい』と話していると告げます。英利子経由で『女の細い腰に手を回』す夫の姿を目にした若菜は…。

    ・〈戯れ〉: ホームセンターで女の子の万引き現場に出会した主人公の翔太は、春口花音と名乗る少女と関わりを持つようになります。そんな翔太は、母と妹と共に暴力を振るう父親から逃げ隠れの日々を過ごしていました。一方で、母親が交通事故にあったという花音と行動する中に彼女の本名は、エミリという名前だと知った翔太…。

    ・〈カゲトモ〉: 『中学時代の旧友である秋尾と偶然再会した』のは主人公の治美。そんな治美は中学時代を振り返ります。あることがきっかけでクラスの『誰も私と口をきいてくれなく』なったという治美は英利子を助けたことでグループに入れてもらえました。そして、『私たちは陰友(かげとも)』という関係になった二人でしたが…。

    ・〈きみに親はいない〉: 『わたしが小説の新人賞をとったのは、晶大とつきあいはじめて間もない、二十九歳の春だった』というのは主人公の聖(ひじり)。そんな聖は、『母の噓は違う。意味のない噓を吐き続ける』と思う中に生きていました。本名を出さず、写真も載せなかったのに『おめでとう!』と母・英利子から電話を受けた聖はすぐに番号を変えます。しかし…。

    五つの短編は、内容紹介にうたわれる通り、”ある時は遠い異国で、ある時は港の街で”と、神出鬼没的に現れる英利子が陰の主人公のごとく登場します。しかし、これが正直なところかなりわかりづらく、全体像を掴むのになかなかに四苦八苦しました。サラッと匂わされる繋がりがあまりにサラッとしすぎていて掴みきれないところがあるように個人的には感じました。ということで、これから読まれる方に幾つかのキーワードをお伝えしたいと思います。ネタバレではなくて、意識すべき言葉という言い方がわかりやすいかと思います。

    ・『左手に歯形みたいな傷のある女』
    ・『ティッシュに包まれた一対のピアス』
    ・『五〇四号室』
    ・『傘谷弓って知ってる?』
    ・『Mというウォーターサーバーレンタル会社の広告に、四人家族が写っていた』
    ・『港町』

    これらに類した言葉が登場したら、その時の登場人物と背景を意識しておくと、あっ!という瞬間が訪れていくと思います。しかし、それでも読者は間違いなくモヤモヤ感に包まれた鬱屈とした読書を強いられるはずです。なぜなら、その種明かし、全体像を見事に繋げてくれるのが最終章〈きみに親はいない〉までなされないからです。恐らくこの章で一気にモヤモヤを晴らそうという構成なのだと思いますが、そのある意味でのスッキリ感を味わうためにもキーワードは意識された方が最終的に楽しめると思います。

    そんなこの作品ですが、イヤミス的気分に読者を陥れるのが、英利子という人物の存在です。

    『逃げなきゃ。この女のそばにいるのは危険すぎる』。

    そんな風にも言われる英利子という人物。短編が変わって視点の主が変わろうと英利子視点になることはなく、一貫して不気味な存在として描かれていきます。

    『人は平然と噓をつく』。

    そんな言葉をどう感じるかはその人の今までの人生経験にもよると思いますが、人が噓をつく時、それは、多くの場合、その嘘によって自らに何らかの利点があると思われるからそうするのだと思います。しかし、

    『英利子には噓をつく理由がない。ついたってなんの得もない噓をつく人がいるだろうか』。

    というように英利子の噓には、損得勘定で測れないものがあります。『噓の幸せ、真実の不幸』というように、理由や理屈ではなく、『噓をつく』という行為の結果論の先を求めて噓をつき続ける英利子という女性。そして、そんな彼女と出会ってしまったがために、人生を変えられていく人たちの存在が描かれていくこの作品。。

    『母の噓は違う。意味のない噓を吐き続ける、それがわたしの母だった』。

    そんな母親を持つ最終章で主人公を務める聖が思う母親という存在。600冊以上の小説ばかりを読んできた私ですが、母親のことをこんな風に強烈な表現で定義する作品は初めてです。『噓をつく』という行為の中に読者も騙される瞬間を見る読書、なかなかに強烈な作品だと思いました。

    『あれだけのことをしてきたにしては、あっけない最期だった』。

    そんなひとりの女の死を冒頭に描くこの作品。そこには、”その女は、悪意なく、歌うように噓をつく”という陰の主人公とも言える英利子と、そんな彼女に翻弄された人たちの生き様が描かれていました。近寄りたくないと本に目を伏せたくなるような荒んだ暮らしの描写に嫌悪感が抜けなくなるこの作品。英利子がつく噓に読者もはめられていくのを感じるこの作品。

    全てが解き明かされる結末に、それでも『意味のない噓を吐き続ける』英利子という人物がどこまでも謎めいていくのを感じた、そんな作品でした。

  • 「奈落の踊り場」
    夫のDVに追われるユリはイタリアンレストランで働く真崎と知り合い恋に落ちます。
    真崎はユリに「遠くに行くことになったらついてきて」そして、ユリの子どもの郁也と三人で暮らそうといいます。
    しかし、真崎は実は妻帯者であることに気づき、いくら探してもみつからなくなってしまいます。
    なんか、これ一編でも怪談みたいな話だと思いました。

    「馬鹿馬鹿しい安寧」
    これは恋愛系ミステリーかと思いました。
    若菜は海外で暮らし、ボーンという運転手と英利子から夫の不貞を聞かされ、自分もナットという青年と浮気をします。
    夫とナットが鉢合わせたり、ナットといるとき、スリに合った若菜を助けてくれるのはいつも英利子でしたが…。
    本当はすべてが違っていたのです。

    「戯れ」
    中一の僕が万引きした女の子と出会う話。

    「カゲトモ」
    もの凄い嘘つきの女性が出てくる話。
    ここまでするかという嘘。
    そういう女性と親友になった女性。

    「きみに親はいない」
    すべての話がつながる最終話。
    英利子の娘の聖が小説家になって登場します。


    普通の短編集だと思って読んでいたら、最終話でやっと連作短編集だったことに気づきました。
    全然、意味のわからなかったプロローグを全部読んでから再読すると怖い話だということはわかりました。
    ジャンルとしてはサスペンスでしょうか?

    • まことさん
      さてさてさん♪

      『空をこえて七星のかなた』の間違えでした。m(_ _)m
      さてさてさん♪

      『空をこえて七星のかなた』の間違えでした。m(_ _)m
      2023/01/26
    • さてさてさん
      まことさん、そうですよね。ブックリストもいろんなコメントのやり取りの場所に向いていると思います。
      私、村山早紀さん好きなんですよね。一時期...
      まことさん、そうですよね。ブックリストもいろんなコメントのやり取りの場所に向いていると思います。
      私、村山早紀さん好きなんですよね。一時期、もう村山さんの作品があれば他はいらない!と思った時代もあったくらいです。
      加納さんのこの作品は一章と二章が全くの別物で二章まで読んだ方だけが感動に浸れます。でも、他の方のレビューを見ていくと一章の途中でギブアップという方もいて、もったいないなと。いろんな作品ありますね。原田マハさん、次読むのは今年の夏レビュー分だと思いますが、まだたくさん残っているので何にしようか迷います。
      2023/01/26
    • まことさん
      さてさてさん♪
      村山早紀さんは、私がTwitterでフォローしていただいたのでお礼のDMを送って、「実はファンタジーが苦手なんです」と言っ...
      さてさてさん♪
      村山早紀さんは、私がTwitterでフォローしていただいたのでお礼のDMを送って、「実はファンタジーが苦手なんです」と言ったら返信して下さって『桜風堂ものがたり』をお勧めしてくださったんです。『百貨の魔法』は、私の大好きな百貨店が出てくるせいか凄く好きな作品でした。加納朋子さんは私も機会があれば、他の作品も読んでみたいです。原田マハさんは何を読んでもはずれは少ないと思います。しいていえば恋愛系はちょっと…という感じだったかな。…と話は尽きないのですがこの辺で。
      2023/01/27
  • 全く嘘を感じさせない女が 時間と場所と相手を変えながら 悪意ある嘘を連ねていく。
    信頼させられた人に裏切られていく連作短編。

    「奈落の踊り場」
    実家実母に不満を抱えて 築いた家庭は望む形にならない。そんな人妻の隙間に近づく優しく若い男。その男の後ろには あの女。
    「馬鹿馬鹿しい安寧」
    不安な異国、夫の赴任先。信頼し切っていた友人に根底から騙される人妻。手挽かれたように異国の男と堕ちていく。友人はあの女。
    “嘘の幸せ” “真実の不幸” 全くよ。
    「戯れ」
    母親の失踪に連れられた港町。中学生男子は 母親を支えて生きているつもりでいた。父親を恨みながら。あの女は自分の子さえ嘘で導く。
    「カゲトモ」
    学生時代 計算され尽くした嘘で弱みを握るあの女。嘘は厳密。カゲトモという名の友情の嘘。
    「きみには親はいない」
    がんばれ息子。
    濃密な嘘と悪意の一人の女の生涯。
    息をするように嘘をつく女に息が詰まる。


    図書館にある一木さん、これで終わり。
    何作か読んで感じるのは、連なる作品の中で登場人物が 多少設定を変えて現れてくる感じ。同じ環境の人物のパラレルのような。厳しいと家庭環境で育つ厳しさとそこからの逞しさ。
    次作が楽しみです。

    • 1Q84O1さん
      今日、図書館に行ってこれ見かけました^_^
      借りてませんが…w
      『全部ゆるせたらいいのに』があれば借りてみようと思いましたが、残念ながら置い...
      今日、図書館に行ってこれ見かけました^_^
      借りてませんが…w
      『全部ゆるせたらいいのに』があれば借りてみようと思いましたが、残念ながら置いてなかったです…
      2024/04/23
    • おびのりさん
      元々作品が少ないのかしら。私もこれで全部。
      元々作品が少ないのかしら。私もこれで全部。
      2024/04/23
    • 1Q84O1さん
      そうかもしれませんね
      うちの図書館もあるのは4、5冊でした
      そうかもしれませんね
      うちの図書館もあるのは4、5冊でした
      2024/04/23
  • 英利子がとにかく怖すぎる。
    完全に狂ってるとしか言い様がないのだけど、体裁を整えるのがうまいから、彼女の嘘を見抜ける人がいない。
    こんな人に会ったこともないし、この先も会いたくない…。
    ずっと不穏で嫌な気分のままだったけど、短編がどんどん繋がっていくのに引っ張られて、一気読みしてしまった。

  • 一木けいさんトークイベント&サイン会
    https://www.taiseido.co.jp/event20221102.html

    HOME | q-ta
    https://www.q-ta.com/home

    「悪と無垢」 一木 けい[文芸書] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322108000254/

  • Na図書館本

    大嘘つきな、何が真実なのか分からなくなる女性に翻弄された人たちを描く。
    ずーーっと嫌な感じが続く一冊。


  • プロローグ
    奈落の踊り場
    馬鹿馬鹿しい安寧
    戯れ
    カゲトモ
    きみに親はいない
    全6話

    読み始め『嘘』『復讐』『平凡な日常の
    隙間に滑り込んだ魔』『転落』などがテーマ
    かと思いましたが、一話一話読み進むに従って
    次第に印象が変わるので、そこが面白いと言えば
    面白いし、軸がブレて感じられ何がメインテーマ
    だったか分かりづらいと言えば分かりずらくも
    ありました。

    異常に支配欲が強く、恐ろしいほど
    人を操ることに長け、息をつくように
    嘘を吐く狂気的なマニピュレータによって
    容易く操られ、人生を狂わされた人たちが
    翻弄されたり、支配から逃れるために必死で
    足掻いたり、奈落に落ちて絶望したりする
    様を描いた物語……でしょうか。

  • こんな母親に育てられたら…こんな友達がいたら…こんなご近所さんがいたら…想像するだけでゾッとする。
    不穏な空気がじわじわと広がり、恐怖で鳥肌が立つ。嘘にまみれた人生、嘘で自分を偽り、嘘で他人を陥れる。嘘、嘘、また嘘…
    次の行動が予測不可能な人格破綻者。
    嘘で固められた自分、本当の自分が見えなくなるほど。でもきっと、彼女はそんなことを考えることさえないほど、嘘がその身に染み付いているのだろう…そう、幼少時代から…

  • 一番好きなのは奈落の踊り場。読みやすい文章で物語に入り込めて時間があっという間に感じた。

    読むだけで浮かび上がる情景と足りない空白を埋めようと想像させるそのバランスが私の好みだった。


    「愛想笑いに疲弊する頬は、真崎の部屋にいたときとは筋肉の使い方が違った」

    表現の仕方や一つのアクションに対して自然なアプローチで情報を説明するのがスマートに感じる。

    次に好きなのは馬鹿馬鹿しい安寧
    最初の主人公より愚かさを感じるのに何故かイライラせず読める。

    この二つの作品は不倫特有のヒリヒリ感とハラハラ感、理性的に考えて決断すればリスクを冒さなくて済むのにそうしない人間の非合理的なところが垣間見れて楽しい。この人の作品もっと読みたいと興奮しながら読んだけどそのほかの作品はどんどん私の中では減速していった。

  • ずっと不穏。終始べたつくように纏わり付く不快感。読みながら思い出す過去に出会い引っ掻き回したあの女。
    私は何のためにこれを読んでいるのか、何?何かの苦行??でも、何故か頁を捲ってしまう。
    読み終わって残ったのは、よりいっそうの嫌悪感。
    怖い。怖い。

  • サイコパスな女性を中心に、運命を狂わされていく人たちがオムニバス形式でつづられていく。実際にいそうな気もして、怖さを感じた。

  • 連作短編となっており、それぞれが最終的に繋がって真相が明らかになっていくのだが…。一体なぜその女は躊躇なく嘘をつくのだろう。不可解だし、それ以上に嫌悪感で一杯になるのに、続きが気になって一気に読んだ。

  • 息を吐くように嘘をつく母。どれだけ彼女に振り回される続けてきたか。関わるすべての人を不幸にしていく母。いつになっても母は母なのだ。

    最終編にすべて集約されるが、そこまでの話が入り組みすぎて…私には難しすぎました。最近こういうのが多いなぁ、私の脳が劣化したんだろう、歳だな。

  • キャラクター小説には成り切れていない。実際にいる表と裏がある人を煮詰めたような悪女だが全くチャーミングではなく、単に不快。人間関係が強引なところも散見されたのが残念。設定は面白いと思うのだが。

  • 今回もまんまと翻弄された。
    第一章から止まらなくなる流れ。でも読み終わるとさらに深まっている謎。
    こんなに整理するために読み直したの久々。

    時系列はバラバラながら「英利子」とのそれぞれの出会い、受けた恩恵、予期せぬ無関係そうに思える出来事。
    章を重ねるたびにそれらが密接に繋がっていることを理解し、表と裏から覗いているような感覚。理解する喜びとさらに深まっていく困惑がごちゃ混ぜになって、格別な体験だった。

    全体的な大きな流れだけではなく、各章の欲望と悲哀、人間の不気味さ、明らかになり切らないちょっとした疑問点など、それぞれの読み応えも抜群だった。
    また著者らしい、常識や大多数の意見を背にした正義観から、あぶれてしまう人たちを掬い取る文章はやはり胸がすくものがあった。

    ”悪気がないことはわかっていた。あるのは使命感。想像力の欠如した的外れの。”

    そして、各章の轍を辿っていく最終章。
    それまでずっと、もういないことにされていた英利子の長女・聖の視点でできる限りの収斂を迎える。
    深く関わった登場人物で唯一、英利子に錯覚を抱かなかった聖は、抗い、逃げながらも創作を通じて母に対峙していく。
    でもここで新たに「そんな母親の傍らで、娘のために積極的な行動を起こさなかった父親」は果たして無罪なのか、という疑問が出てくる。
    個人的には母娘の話で終わるんだろうなと思っていたから、新たに父の存在まで出てくると一読では処理できない情報と感情になってしまった。
    それは聖が生涯かけて解いていく命題でもあるし、最後の文章が納得と諦めの気持ちを持って、全てを代弁していると思う。

    ”こことここの辻褄が合わないと思うんですが。
    その指摘を見たときは笑ってしまった。今見ても可笑しい。何度でも笑える。
    事実を記すと辻褄が合わない。不可解で無秩序。それがわたしの育った家だった。”

  • 初めて一木さんを読んだ時の衝撃が忘れられない。当時から背後には暗い冷たいものはあったんだろうけれど、あの、ページを読み進めたい!と思わせる躍動感というか胸をえぐられる感じが…やっぱり乏しい。小説家としては、上手くなっているのかもしれないけれど。個人的にはすごく、寂しい気持ちになる。
    特に今回は、最初2つを読んで、不倫の話か、もうやめよ…となり、ただレビューを見たら最後には繋がるというので期待を持ち直して最後まで読んだ。最後まで読むと、えぐみとか、薄ら寒さ、心地悪さをちょっとした言動も含め巧く描いているのだけれど…
    あの、次のページを読みたい!!ってなる感じが最初の本からどんどん減っていってしまっているな…というのが個人的な感想です。なんだろう、残酷冷淡な環境の中での希望というか、縋るものというか、そこにすごく光があって、心が揺さぶられたんだよね。今回はそれが“書く”ということだったと思うんだけれど、それにしてはそこに焦点があてられるのが遅いし、繋がるのが遅いし、あまりそこに“光”が感じられない…。
    でも、また次の作品も追ってみたい読んでみたいです。

  • これまでの一木さんの作風とは一線を画す不穏な内容だった。
    プロローグを除き5篇からなる連作で、最初の2篇はどちらも同じような“不倫もの”でげんなりした。が、3作目から様子が変わり、遠回しに書かれているものの正体に気付く。5作目まで読み終え、改めてプロローグを読む。大きく息を吐いたが、結局のところ理解したとは言い難い。
    病的な人なのか、モダンホラーに出てくるような超自然な存在なのか。どちらとも取れるが、おそらく前者だろう。人の行いは、時としてホラーより恐ろしい。

  • まず 連作短編小説であると途中から分かるが最後まで読み切っても腑に落ちない点が多く難解で暗い
     読後感が良くない


     この本を読む限りでは『悪』と『無垢』は反対ではなく 同時に存在し 同時にそれぞれを高め合う危険なペアである

    ◯「奈落の踊り場」
     『優しさって口だけで済むからね』と父に言わしめた
    ユリのひとときの恋(不倫)
    「無垢」が故に不倫したユリは 自分を追い詰めるよりも 嘘つきと分かった浩二の中にも何か本当があったのだと信じ込ませ自分を納得させたいという「悪」が漂う一編


    ◯馬鹿馬鹿しい安寧
      浩二の母 英利子の登場
    はなから この人ぜったいちゃんと通訳してないよね!感満載であやしかった
    「安寧」って意外と馬鹿馬鹿しさの頭上にありがちなのかも…って思った


    ◯戯れ
     松田さんって 英利子だよね?
    名前を偽って 各地に姿を現すんだから英利子って時間を持て余しすぎだと思う
    「暇」って 人を「悪」に向かわせる力が強く働くって何かに書いてあったことを思い出す


    ◯カゲトモ
     中学生時代の英利子の話
     
    『平和な悩みだね、と秋尾は肩を揺らした。
     この世は平和な悩みで溢れている。でもそれは世界が平和ということではなくて、平和じゃない悩みは簡単には口に出せないだけかもしれない。』


    『どうしても現実から目を背けたいとき、大人には酒や娯楽や思い出がある。けれどあのときの私には英利子の
    メモしかなかった。』
    (本文より)

    思春期ならではの 友情の危うさがまざまざと感じられる一編

     そうそう 黙っててやる代わりに言うこときけって英利子に言われて誓約書まで書かされた 秋尾のしていたことってなんだったんだろう?
    私 ちゃんと読みとれてなかったのかな?
    気になる!


    ◯きみに親はいない
     全部の章が繋がって 納得いくはずのラスト一編だと期待したが…不穏なまま終わった…
    プロローグでは思わせぶりだった英利子の再来も 結局
    なかったし…
    ねえねえ これでは著者の一木さん!
    「無垢」な読者に「悪」い読後感を与えちゃいます…と思った
    読み取れきれなかった私の読解力が「悪」でしょうか…
     

  • 息をするように嘘をつく女と、彼女の嘘によって奈落に突き落とされ血を吐くような人生を歩いている「被害者」たちの物語。
    理解も納得もできない必然性のない嘘と、嘘をつくための相手を見つけだす天性の才を持つ女。
    一読目に持つ細胞レベルの嫌悪感から、二読目三読目と重ねるごとに変化していく彼女への気持ちに戸惑う。
    「嘘」をつく意味。「嘘」をつかれる理由。自分の中のナニかがあぶりだされる恐怖を堪能。

  • 結局母は何を目的に嘘をつきまくってきたのか理解できなかった。

全66件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1979年福岡県生まれ。東京都立大学卒。2016年「西国疾走少女」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。2018年、受賞作を収録した『1ミリの後悔もない、はずがない』(新潮文庫)でデビュー。他の著書に『愛を知らない』『全部ゆるせたらいいのに』『9月9日9時9分』がある。

「2022年 『悪と無垢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

一木けいの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×