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本 ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784041121542
作品紹介・あらすじ
父のコネで都会の信用金庫の人事部に勤める深文は、安定した仕事の中で同性の先輩ともうまく付き合い、恋人との関係も良好で満足していた。居心地いい生活、それはずっと続くと思っていたのに。ある日、1人の女性新人社員が配属されたことで、周囲のバランスがゆっくり崩されていく。そして起きた、ある小さな出来事を気掛けに世界はすっかり瓦解の一途をたどる……。
すべてがダメになったと思ったら、何もかも捨てて南の島へ飛んでパイナップル工場で働けばいい。そんな決して実現しない妄想が「私」を救ってくれることもある。中毒性があり! 山本文緒の筆致が冴えわたる、誰もが共感できる「私」の物語。(解説:彩瀬まる)
感想・レビュー・書評
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山本文緒さん作品のジャケ買いならぬタイトル借りの一冊。主人公の深文がつき合っている天堂に電話する際に、寮にある1本の電話にかけて呼び出してもらう箇所を読み懐かしく感じた。本作は1992年作だが、スマホもない時代に書かれた内容は30年後の現在にも通じる。
早世された今となっては、本作のあとがきに添えられた山本さんの言葉の方がぐっと入って来た。
『今なら分ることが沢山ある。私は何から逃げだしたかったのか。それは、十代の私が漠然と思い描いていた未来から逃げだしたかったのだ。予想どおりの大学に進学し、予想どおりの企業に就職し、予想どおりの相手と結婚して子供を生み、予想どおりに年老いて死んでいく。思ったとおりに物事が進んで行き、一生そこから出られないことを私は恐怖していたように思う』
『ハワイ、という場所は象徴でしかなく、それはウィーンでも北京でもどこでもよかったのかもしれない。育ってしまった国の、自然と身についてしまった価値観、ちょっと気を抜くと襲ってくる実体のない圧力や、細かくてくだらない、でも守らないと人々から浮いてしまう沢山のルール、そういうものから私は逃れたかったのだと思う』詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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私が「私」であるかぎり――山本文緒『パイナップルの彼方』文庫巻末解説【解説:彩瀬まる】 | カドブン
https://kadobun.jp/...私が「私」であるかぎり――山本文緒『パイナップルの彼方』文庫巻末解説【解説:彩瀬まる】 | カドブン
https://kadobun.jp/reviews/entry-45207.html2022/02/15
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やっぱり山本文緒さんの小説が大好きだと再認識した一冊。
“毎日、現実から逃げたいと思っていても、実際に逃げ出したりはしない。”山本文緒さんの小説は、ある1人の女性の日常を覗いている気持ちになれる。その女性が、まるで自分なんじゃないかと思うくらい同じ悩みを抱えているので感情移入がしやすい。
今回も途中苦しくなったり、ニヤニヤしたり、かと思えば泣いたり。最後は温かい気持ちで読み終える事ができた。
彩瀬まるさんの解説の文も好きだなあ。
『どうしてか、この方の物語はとてもとても苦いーというか、その苦さが大切なものとして書かれている気がする。楽しくて苦い。苦いから、少し怖い。』
『性分を乗り越えて意思を伝えあうには、適切なタイミングと、配慮と、勇気が必要だ。だからこそ、誰かと心が通うことは奇跡なのだ。』
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山本文緒さん、まだまだ読みたかった。
携帯がない時代の話なのに、新鮮。
時代や周りのツールがかわっても、人によって人生や人間関係が壊れたり壊されたり、悩んだり、踏み出したり躊躇したり。
そこは変わらないんだな。
女が3人も揃えば、うわべはどんなににこやかでも水面化では蹴り合ってる。
そしてそこには一因となる男がいる。
深文も、その同僚や友人達も、登場する女性達が「それぞれの理由で打ちのめされる」(彩瀬まるさんの解説より)のがすごく現実的で、私や今日すれ違っただけのあの女性にも起こるような気がする。
山本文緒さんは、私達の作家さんだなと改めて実感した。 -
山本文緒さんらしさが余すことなく出ていた。
深文さんの心の揺れ動き、人への接し方、当たり方、すごく共感する部分がある反面、そこは違うよ、上手くやらなくちゃ!とツッコミたくなる場面も多々あり。この何とも言えないもどかしさ?が絶妙な表現で描かれてて引き込まれる。
すごく才能のある作家さん。恋愛派生系?の本はこの人の右に出る人はいないんじゃないかな。新作を読むことが出来ないのが悲しい。 -
世渡りのため誰もが身に纏う鎧、時にはその鎧をことなく外す、でもその器用さを持たない人も多いのではとのあとがき…
ドロドロの人間模様が続くなら辛いな、と序盤思いつつ引き込まれた物語、最後は主人公の深文を応援しながら一気に読了、好きな一冊に。 -
心の動きの描写が、分かる!の連続。だからこそ、「なんでそこもう少し上手く流せないかな」って思ってしまうのが辛い。わたしも客観視したらこういうことの連続なんだろうな…。深文の生活感が非常にリアルで一気読み。
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スマホを持たない時代の話は
久しぶりに読んだから新鮮だった。
自分のスマホに会社のスマホって、
囚われすぎてる今。
簡単に連絡がつかない生活も悪くないなぁ。
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