パイナップルの彼方 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 748
感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041121542

作品紹介・あらすじ

父のコネで都会の信用金庫の人事部に勤める深文は、安定した仕事の中で同性の先輩ともうまく付き合い、恋人との関係も良好で満足していた。居心地いい生活、それはずっと続くと思っていたのに。ある日、1人の女性新人社員が配属されたことで、深文を取り巻くバランスがゆっくり崩されていく。そして起きた、ある小さな出来事を気掛けに深文を取り巻く世界はすっかり瓦解してしまうが……。
すべてがダメになったと思ったら、何もかも捨てて南の島へ飛んでパイナップル工場で働けばいい。決して実現しない、実現させようとも思わない妄想が自分を救ってくれることもある。中毒性があり! 山本文緒の筆致が冴えわたる、誰もが共感できる日常の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 山本文緒さん作品のジャケ買いならぬタイトル借りの一冊。主人公の深文がつき合っている天堂に電話する際に、寮にある1本の電話にかけて呼び出してもらう箇所を読み懐かしく感じた。本作は1992年作だが、スマホもない時代に書かれた内容は30年後の現在にも通じる。
    早世された今となっては、本作のあとがきに添えられた山本さんの言葉の方がぐっと入って来た。
    『今なら分ることが沢山ある。私は何から逃げだしたかったのか。それは、十代の私が漠然と思い描いていた未来から逃げだしたかったのだ。予想どおりの大学に進学し、予想どおりの企業に就職し、予想どおりの相手と結婚して子供を生み、予想どおりに年老いて死んでいく。思ったとおりに物事が進んで行き、一生そこから出られないことを私は恐怖していたように思う』
    『ハワイ、という場所は象徴でしかなく、それはウィーンでも北京でもどこでもよかったのかもしれない。育ってしまった国の、自然と身についてしまった価値観、ちょっと気を抜くと襲ってくる実体のない圧力や、細かくてくだらない、でも守らないと人々から浮いてしまう沢山のルール、そういうものから私は逃れたかったのだと思う』

  • ありがとう山本文緒さん――直木賞作家・山本文緒 角川文庫全作品 | カドブン
    https://kadobun.jp/feature/readings/2wxk1ru8l3eo.html

    パイナップルの彼方へ - ドラマ詳細データ - ◇テレビドラマデータベース◇
    http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-28852

    山本文緒はInstagramを利用しています:「長らく紙版が在庫切れだった『パイナップルの彼方』が文庫新装版という形で1月21日、KADOKAWAから刊行されます(装画・あおのこさん、カバーデザイン・大原由依さん)。 そして綾瀬まるさんが新たに素晴らしい解説を書いてくださいました(既読の方は図書館や書店で解説だけでもご覧にな…」
    https://www.instagram.com/p/CYvfxZrFZVR/

    山本文緒|note
    https://note.com/fumiyama55

    「パイナップルの彼方」 山本 文緒[角川文庫] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322109000579/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      私が「私」であるかぎり――山本文緒『パイナップルの彼方』文庫巻末解説【解説:彩瀬まる】 | カドブン
      https://kadobun.jp/...
      私が「私」であるかぎり――山本文緒『パイナップルの彼方』文庫巻末解説【解説:彩瀬まる】 | カドブン
      https://kadobun.jp/reviews/entry-45207.html
      2022/02/15
  • 山本文緒さん、まだまだ読みたかった。

    携帯がない時代の話なのに、新鮮。
    時代や周りのツールがかわっても、人によって人生や人間関係が壊れたり壊されたり、悩んだり、踏み出したり躊躇したり。
    そこは変わらないんだな。

    女が3人も揃えば、うわべはどんなににこやかでも水面化では蹴り合ってる。
    そしてそこには一因となる男がいる。

    深文も、その同僚や友人達も、登場する女性達が「それぞれの理由で打ちのめされる」(彩瀬まるさんの解説より)のがすごく現実的で、私や今日すれ違っただけのあの女性にも起こるような気がする。

    山本文緒さんは、私達の作家さんだなと改めて実感した。

  • やっぱり山本文緒さんの小説が大好きだと再認識した一冊。
    “毎日、現実から逃げたいと思っていても、実際に逃げ出したりはしない。”山本文緒さんの小説は、ある1人の女性の日常を覗いている気持ちになれる。その女性が、まるで自分なんじゃないかと思うくらい同じ悩みを抱えているので感情移入がしやすい。
    今回も途中苦しくなったり、ニヤニヤしたり、かと思えば泣いたり。最後は温かい気持ちで読み終える事ができた。

    彩瀬まるさんの解説の文も好きだなあ。
    『どうしてか、この方の物語はとてもとても苦いーというか、その苦さが大切なものとして書かれている気がする。楽しくて苦い。苦いから、少し怖い。』
    『性分を乗り越えて意思を伝えあうには、適切なタイミングと、配慮と、勇気が必要だ。だからこそ、誰かと心が通うことは奇跡なのだ。』

  • 世渡りのため誰もが身に纏う鎧、時にはその鎧をことなく外す、でもその器用さを持たない人も多いのではとのあとがき…

    ドロドロの人間模様が続くなら辛いな、と序盤思いつつ引き込まれた物語、最後は主人公の深文を応援しながら一気に読了、好きな一冊に。

  • 20代前半の悩めるどこにでもいそうな女子たちの、浮き沈みの激しい心と生活が丁寧に描かれた作品。
    ちょっと昔に書かれた話だから、いまの時代とは違うところが多いけど、それがまたいい味を出してるのよ。
    なかなか電話が繋がらなくてもどかしいとか、ワープロ使ってるとか、四大卒女子がちょっと珍しい感じとか。

    23~4歳の深文は、自分のキャラを理解してて、彼氏にどう甘えていいかわからない。かわいい発言はキャラじゃないけど、泣きたいときだってある。でも、そういう時に限って頼ろうとする相手はみんなトラブルを抱えてる。
    深文の先輩サユリさんと、後輩日比野とのやりとりが好き。どっちもいそうなんだよぁ。一見大人しくて淡々としてるサユリさんみたいな人が地雷系なのは、いつの時代も変わらないかもしれない。傍から見てる分にはおもしろい。深文の気持ちがわかるけど、痛い目見ることになるとは誰も思わなんだ、、、笑

    最後に深文がハワイに行って終わるのはなんか嫌だなぁと思ってたら、まさかの展開で、これもまた好き。

  • スマホを持たない時代の話は
    久しぶりに読んだから新鮮だった。

    自分のスマホに会社のスマホって、
    囚われすぎてる今。
    簡単に連絡がつかない生活も悪くないなぁ。

  • 「自転しながら公転する」が良かったので、無性に山本作品が読みたくなり再読しました。
    20年以上前に読んでいるのに、ストーリー
    をほとんど覚えていないことにびっくりでした。
    信用金庫という地味な職場の普通のOLの主人公の職場の先輩や後輩、友人や恋人とのお話です。
    難しい先輩ともうまくやっていた平穏な職場に新人の女の子が配属されたところから、何かが変わり始めて、主人公がトラブルに巻き込まれていきます。
    女の嫉妬は怖いと改めて実感しました。
    主人公を陥れようと、不正を上司に告げ口する後輩に本気で腹がたちました。
    やっはり山本さんは普通の女の子や人を書くのが本当にうまいてす。

  • 毎日、現実から逃げたいと思っていても、実際に逃げ出したりはしない。平成初期の頃を設定していて、仕事や結婚等悩みが尽きない3人の女性の話。 わかりすぎてヒリヒリしました。

  • 山本文緒さんは自転しながら公転するを読んだ後の2冊目です。
    この本を書かれたのは1992年、一昔前のOLの話だけど、現代の同世代が読んでも共感出来る内容。やっぱり山本文緒さんは裏切らない。読んでて苦しくなるくらいリアルに嫌なことが起こるが、現実的で好きかもしれない。
    話も短く2.3時間で読めるため、仕事でちょっと嫌なことがあった人におすすめ。

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著者プロフィール

1987年に『プレミアム・プールの日々』で少女小説家としてデビュー。1992年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般の小説へと方向性をシフト。1999年『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞。2001年『プラナリア』で第24回直木賞を受賞。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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