彼女が知らない隣人たち

  • KADOKAWA
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本棚登録 : 338
感想 : 32
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041121573

作品紹介・あらすじ

主婦の咏子は、高校生の息子と小学生の娘、夫と平凡に暮らしていた。ある夕方、駅近くの商業施設で爆発事件を目撃。駅を使う息子が気になり電話をかけるが、「これはテロだ」と興奮して語る様子に違和感を覚え……。

感想・レビュー・書評

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  • 地方都市で起こった連続爆発事件が発端となり、三上咏子が勤めるパート先の海外技能実習生が、犯人扱いをされ一般市民から暴力を受ける。
    その頃、高校生の息子の反抗的な態度や夫との関係も不穏な雰囲気が…。

    そこから物語は展開していくのだが、スッと頭に入ってくる自然な感じに少々戸惑った。

    これは、どこにでもあるような、いやあって普通だと思えるような出来事のように感じて、少し怖くなったのだ。
    そう感じるということは、とても生きにくい世の中になったということだと改めて思い知る。

    家族のすべてを分かり合える、というのはほとんどないのではないか…と思うと哀しくなる。
    他人との繋がりだともっとわかりにくいものだと思う。
    どのくらい信頼できる人が、身近にいますか⁇と問われているような気がした。

  • ◆平穏な日常 綻びを機に… [評]吉田伸子(書評家)
    <書評>『彼女が知らない隣人たち』あさのあつこ 著:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/181504?rct=shohyo

    どこまでなら「他人事」なのか。心の境界線を見直す衝撃作!——あさのあつこ『彼女が知らない隣人たち』レビュー【評者:藤田香織】 | カドブン
    https://kadobun.jp/reviews/entry-45937.html

    「彼女が知らない隣人たち」 あさの あつこ[文芸書] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322109000582/

  • 坂を登り切ると、街の半分が一望できた。

     そんな街で、夫と高校生の息子、小学生の娘と暮らす主婦の咏子。裁縫工場でパートとして働いている。パート先にはベトナム人の技能実習生が数人いて、その子たちの指導もしている。

     コロナ禍のピリピリした空気の中、駅前のビルで爆破事件が起きる。そこから見えてきた、今まで気づかなかった自分の周りの人たち。息子はこんなにイライラしてるの?パート先のベトナム人の子たちを庇ったら、なぜ忖度しろと言われるの?まさに、今の時代に見ていなかった現実に目を向けなければいけない事態が身近に迫ってきていることを感じさせる。

     しんぶん赤旗で連載していたというこの物語。今、ほんとうにここに、ありそうな話で、まさに私たちが明日にでも直面しそう。いや、もうこの中にいるのかもしれない。

  • 掲載紙が「しんぶん赤旗」ということで、納得の物語。在留外国人へのヘイトの根っこがよく見える。ヒロインは自身の両親を反面教師として家庭を守ろうとしている。そして、自分が受けた仕打ちを思い出して、公平公正であろうとするのは好感が持てるが、反面、夫は……

    パート主婦も外国人研修生も雇用の調整弁であり、楯突かない範囲で「尊重するふり」をする企業人たる男性陣。そして自分の「権威」(だと思ってるもの)が脅かされるや、一転攻撃に出る。矛先は弱者に向かう。

    弱者が弱者を攻撃する負の連鎖。みっともない。でも怖い。集団ヒステリーを止める術はなかなかないし、良識ある人の声は誠実であるがゆえに大きくはない(怒鳴らない)から。冷静になると負けることが、きちんと考えると自分が間違っていることがわかっているから、彼らの声は大きい。

    ヘイトに血道をあげる人が、どこぞの独裁政治を嘲笑しているのは謎だ。

  • 自分は幸せなのだ、と自身に言い聞かせるのは既に現状に疑問を抱き始めているのか?
    職場で外国の方と働く事になった時、同じ仲間として
    向き合えるかどうか。
    皆が同じ方向を向けるならときっとヘイトの要素は減らせるはずである。
    知る事は第一歩。
    立ち向かわないまでもせめて顔を上げて前を向きたい。

  • 今まで読んだあさのさんの話とはちょっと違うな…と思いながら読みました。
    何かわからない…根拠はないけどザワザワして落ち着かない。何かを確かめたいけど何を?というところからどんどん核心に迫っていく感じに引き込まれていき、一気読みしてしまいました。
    日本人の正義感や闇の部分、色んな面が描かれていると思います。

  • ずいぶん昔にバッテリーを読んだ。その時
    の爽やかな青春小説のイメージで読んでいたが内容は重なった。 だが、現実の社会である問題なのは確か。表紙をめくると黒い紙が。この本のイメージ。

  • 最後におおおおーう!そこかい!という。

  • 誰が一番いい人なんだろ?僕だったらどの人になれるだろう/なるのかな?なんとも考えさせられるお話でした。

  • Amazonの紹介より
    地方都市で暮らす三上咏子は、縫製工場でパートとして働きながら、高校生の翔琉と小学生の紗希、夫の丈史と平凡な毎日を送っていた。ある日の夕方、駅近くの商業施設から白い煙が上がるのを目撃。近くの塾に通う息子が気になり電話を掛けるが、「誰かが爆弾を仕掛けたテロだ」と興奮して語る様子に違和感を覚える。翌日、今度は市立図書館でも同様の事件が発生。いったいなぜこの町で、こんなことが? 咏子は今まで気にも留めなかった、周囲の異変に気がついていく……。


    あさのさんの作品というと、「バッテリー」や「THE MANZAI」など比較的、若者を主人公とした物語が印象的ですが、今回はどこにでもいそうな主婦が主人公ということで、珍しい印象がありました。
    ただ、今までのあさの作品の原点がここに詰まっているなと思いました。

    序盤で発生する爆発事件ですが、特にその事件を解決していくミステリーではありません。
    近くで起きた爆発事件によって、それまで他人事だと思っていた出来事が、「もしかして息子が・・」といった私事へと変化していく主婦の精神状態を描いた作品です。
    一つの小さな疑惑から、じわりじわりと迫る精神状態が印象的でした。

    側から見たら、大したことない出来事でも、当人にとっては大きな出来事です。その気持ちは共感できましたし、他の登場人物の気持ちもわかるなと思いました。

    爆発事件だけでなく、外国人労働や非正規問題など差別の問題にも触れられています。爆発事件をきっかけに浮かび上がる共生社会の難しさに胸が刺さりました。
    同じ人間なのに「何か」が違うだけで差別されることに強い違和感を感じましたし、人間性が問われるなと思いました。

    間違いは間違いと奔走する咏子の姿が逞しくもありました。一方では、考えすぎな一面もありましたが、咏子の色んな問題に直面する心の揺れ動きが丁寧に描かれていました。

    「何か」が違うという面では、他のあさの作品にもそれが込められているなと思いました。
    どこか違う人と別のどこか違う人が、出会うことによって、新たな魅力を引き出す。
    その根源が、この作品には色々散りばめられている印象もあって、あさのさんの原点なのかなとも思ってしまいました。

    結末として、爆発事件は大したことはないのですが、咏子の家族の秘密が明らかになります。
    なぜ、そういった発言をしたのか?
    息子は息子で、しっかりと生きていたんだと思いましたし、見直しました。

    ただ、夫の方は・・・。それぞれの気持ちもわかりますが、その気持ちを他人にぶつけることが、いかに影響を与えるのかわかってほしいなと思いました。

    今後の家族が再生できることを願いたいです。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『星に祈る(仮) おいち不思議がたり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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