そして誰も死ななかった (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 173
感想 : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041121627

作品紹介・あらすじ

覆面作家・天城菖蒲から、絶海の孤島に建つ天城館に招待された五人の推理作家。やがて作家たちは次々と奇怪を死を遂げ、そして誰もいなくなったとき、本当の「事件」の幕が開く。特殊設定ミステリの真骨頂!

感想・レビュー・書評

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  • 小説家五人が正体不明の覆面作家 天城菖蒲に招待され辿り着いたある孤島「条島」。島という隔離された舞台といい、離のアトリエの存在と言い、異文化の薄気味悪さと言い、ゴテゴテの「何かが起きそう」な雰囲気がプンプンする。
    そして、白井智之らしからぬ作品説明のまともさ。王道のクローズドサークルとしか思えない説明だ。帯にも【絶海の孤島×五人の推理作家×奇怪な連続殺人】とある。
    更に言えば、タイトルもクリスティのアレのオマージュ匂わせる如何にも推理小説な命名ときた。
    これがどれくらいまともなのか著者を知らない方の為にわかりやすく説明すると、
    「人間の顔は食べずらい」
    「お前の彼女は二階で茹で死に」
    「少女を殺す100の方法」
    「死体の汁を啜れ」
    これが今までのパワーワードが過ぎる著者の作品タイトルである。暗黒書物愛好仲間(一方的)の奏悟さんやヒボさんがヨダレを垂らしてくれそうなネーミングセンスだ。
    比べて本書、「そして誰も死ななかった」
    ......ほら、まともであろう。なんなら直接解釈すると誰も死なない事に安心感すら感じてしまうぞ。

    だが、ページを開けば出るわ出るわの白井節。

    個人的には少数民族 奔拇族の文化と、主人公 大亦牛汁のデビュー作(?)「奔拇島の惨劇」が非常に興味深かった。悪魔の仮面「ザビマスク」、邪霊の贄となる「ザビ人形」。理解し難い独特な異文化に自身の鼻息が荒くなるのを感じた。

    そして、牛汁の奔拇島の惨劇の内容は、後に現実に起きた奔拇族の集団失踪と酷似していた。彼は未来を予知していたのだろうか。
    ....だが読者は知っている。彼にそんな力は無い、ただのスネ夫だと。
    ーーーーーーーーーーーーーーー

    話は孤島の五人の小説家に戻るが、勿論 大亦牛汁もその中の一人だ。
    「何かが起きそう」なピッタリの雰囲気を裏切ること無く、一夜にしてしっかり「何かは起こる」
    お待ちかねのジェイソンタイムである。
    襲われた牛汁が最後に見た禍々しい犯人の容貌。あの無数の目を持った姿は....ザビマスクだった。そして被害者の傍で同じ要領で「殺されている」のはザビ人形である。
    こうして、一夜にして小説家五人は皆、命を落とした。

    そして誰もいなくなった時に本当の「事件」が始まるーーーーー。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    結論から言うととても面白かった。
    慣れとは恐ろしい物で、ぶっ飛んだプロットを当たり前の様に受け入れている自分が他人事程度に心配にはなったが、展開のテンポの良さが心地好いので細かい事は脇道に置いておける有り難仕様。
    「誰もいなくなった」はずの犯人探しにて様々な推理が展開されるが、どの推理もあからさまに矛盾を織り交ぜてくるので読者として大変楽しむことが出来た。
    如何せん、ベースが狂っているので真っ当な推理はするだけ脳内が暴発する原因となるのでオススメはしないが、この決して居心地の良くない世界観に身を委ねても後悔はしないはず。一種の疑似体験として現実との乖離を楽しんで貰いたい。

    今回は五人と繋がる晴夏の存在や奔拇族のその後、「水をくれ」の真意等、回収しきれていない事柄が多く感じるので燃焼効率は悪かったが世界観は十分に堪能できた。

    私に学は無いが、著者の作品は文学というよりアート的な感覚が強い。素人発言丸出しだが、グロテスクを美として表現するのに「絵」はよく使われているように感じている。
    著者の作品を読んでいると稀に、場面場面で切り取られた静止画が脳内で浮かぶ事がある。ドス黒い赤色中心の決して気持ちの良い絵ではないはずなのだが、そこにどこか美しさを感じてしまうのはやはり私が俗悪マンだからなのだろうか...。

    兎に角、人に胸を張ってお勧めする事ができない四天王作家のうちの一人である事は揺るがない事実だろう。(褒めています)

    • ほん3さん
      さっそくのお返事、ありがとうございます( ◠‿◠ )
      彼の世界観がお好きとは。自分と同じです。クセになりますね。

      「人間に向いてない」でも...
      さっそくのお返事、ありがとうございます( ◠‿◠ )
      彼の世界観がお好きとは。自分と同じです。クセになりますね。

      「人間に向いてない」でも白井さん独特の世界が繰り広げられていました。
      レビューを楽しみにしていますね(^_−)−☆
      2022/06/28
    • NORAxxさん
      クセになります(*^^*)神経毒の様な回り方をするので連続で立ち向かえる作家さんではありませんが...(笑)

      およ?「人間に向いてない」も...
      クセになります(*^^*)神経毒の様な回り方をするので連続で立ち向かえる作家さんではありませんが...(笑)

      およ?「人間に向いてない」も白井智之の作品なのですか??どうやら紛らわしいタイミングで話を振ってしまいましたね、申し訳ないです( ´•ω•` )
      何にせよ、「人間に向いてない」これから楽しめる事がとても嬉しいです!こちらこそありがとうございます☆
      2022/06/29
    • ほん3さん
      ごめんなさい。勘違いです。
      白井さん作品ではありませんでした(°▽°)
      ボケています。
      ごめんなさい。勘違いです。
      白井さん作品ではありませんでした(°▽°)
      ボケています。
      2022/06/29
  • 奇想天外の発想力に顎が外れるっ エログロ&特殊設定&本格ミステリーの傑作 #そして誰も死ななかった

    推理小説作家たちが孤島に招待された。到着しても誰もおらず、帰りの燃料もなく、閉じ込められた状態。そして予想通り殺人事件が発生するが、このお話は殺されてしまってからが始まりで…

    なんじゃこれっ

    孤島ものをよくもまぁこんな設定で、ここまで緻密に組み立てましたね。白井智之さんの作風は知ってましたが、想像以上でした。正直すげぇ。ホント、日本にはいろんなミステリー作家がたくさんいて、多種多様な作品が読めて幸せです。

    かなりコメディ&バカっぽくお話は進み、若干舐めてたんですが、中盤から一気に本格ミステリーの展開に。トリックも謎解きもめちゃくちゃ緻密にも関わらず、破天荒な展開もあって、ミステリー好きにはたまらないですね。
    多少俗悪っぽい描写はありますが、エンターテイメント性にも富んでおり、面白く読み進められます。

    また登場人物も魅力的で、読者のツボが分かってらっしゃる。
    変態のおっさん、エロ&切れ者の若い女性、医者、デブでオタク、子分肌。
    こんな面々を絡ませたら、面白いに決まってる。最高っすね。

    本作はバランスがもう少し良かったらなーという印象。
    いろんな要素&二転三転する展開&謎解き部分が流石についていくのが大変で、ミステリーファンでないとなかなか楽しめないかなー。逆にミステリーに目が肥えてる人であれば、めっちゃ楽しめると思います。

    方丈貴恵さんの孤島の来訪者にもぶっ飛びましたが、本作にもぶっ飛びました。読み応えのあるミステリーを枯渇している人には、超絶おすすめですっ

  • タイトルと背表紙の文章からは予想できないグロさだった。
    映像化したらすごそう。

  • はあグロ〜って言うのが正直な読後の感想。
    でもめっちゃくちゃ好き。
    ミステリとしてもだし、エロとしても、
    グロとしても最高だった。
    本当に予測不能だし前代未聞だし
    愛の力()って本当にすげーと思いました。

  • 死人が甦る事を前提とした状況の特殊ミステリ。
    トンデモミステリは好きなんだけど、作品全体のバランスは大切だなぁと思った作品。

    死者発見→甦る→推理→別の人物が甦る→新たな推理……の繰り返し。
    はまればワクワクしたんだろうけど、披露される推理がいまひとつピンと来なかった。
    瓶を飲むために舌を切って~、水死体は腐敗ガスで浴槽内を上下するから~、他にもたくさん。
    披露される推理の論点・要点が、どうでもいいよ……で終わっちゃう感じ。
    クジラ爆発とかネタとしては大好きなんだけど、読んだ感想としては「いやそれは……うーん……」で終わっちゃう感じ。

    でも最終的に披露される斉加年犯人の真相は面白かった。
    途中の推理もこのくらいにまとまってれば良かったのになぁというのは贅沢か。

  • テン・リトル・インディアン型とも言うべきこのミステリフォーマットで白井さんお得意の推理合戦が繰り広げられてくのさすがとしか言えない。着手のきっかけ何。
    またまたナンセンスでシュールな状況の連続。
    悪趣味で非道徳的だけどなんか楽しくなっちゃうエンタメ感。

    推理の一つ一つが何気にタイトル元のオマージュっぽくなってたり、非道徳な物理トリック(死体を利用したやつ)を多用してたりで読み味がブレないようになってて良い。徹底して悪趣味な味付け。
    トンデモというよりゲテモノですね。
    提供も早くて助かる。(?)

  • いくつかの点が気になり、読後、すっきりしない部分がある。

    一つ目は「晴夏に固執している斉加年の行動」についてだ。斉加年はひどく晴夏に固執していることは首が断ち切られても条島まで泳いでいこうとする表現からもよく分かる。牛男はこれを蟾蜍が死んでなお蝿を食べることになぞらえているが、なぜここまで斉加年は晴夏の人生の全てを知りたいと考えたのだろうか。斉加年の回想中に「もしあのとき、晴夏のすべてを知り、そのうえで彼女を受け入れることが出来ていたら。」とあることから、晴夏の死は自分の無知から来ているものなのだと思っていることは分かる。だが、なぜ晴夏の死以降も永遠と知ることに囚われているのだろうか。

    斉加年が本当に晴夏のことを知ることに興味があったとするのであれば、性的関係がない人間、つまり死ぬかもしれない人間を殺すだろうか。もっと単純に拉致して仮面をつけた状態で尋問するというだけで十分だったのではないだろうか。斉加年は医者になれるだけの頭脳を持っているのだから、この結論に至らないと考えるは少し不自然なように感じる。

    また、もし小説家らが招待を受け入れなかった場合は斉加年はどうしていたのだろうか。性的関係を持つのは推理小説作家以外にも存在しうるがそれについては知りたいと思わないのだろうか。そもそもどれだけ知っても全てを知ることなんて当然できないわけなのだが、斉加年はなぜそんなことを考え、行動し続けているのだろうか。異常者だからといわれたらそれまでなのだが、腑に落ちない。この作者の背景を考えると、多少この設定も受け入れられる部分はあるが、それを考慮しても医者としてやっていったり、このトリックを考える明晰さの割には、斉加年の行動は理解できない。

    次に、「この寄生虫に感染すると、死に際に水を求めるようになる」点についてだ。これについては単純に何かを見落としているだけなのかもしれないが、よく分かっていない。

  • 特殊な設定上での推理の論理性への真面目さが徹底されていることが、あまりない読み味の面白さだと思う

  • タイトルに偽り無し。想像の斜め上に気持ちよく話が進んでいく。、

  • 内容としてもう少し深いところまで書いてなかったのが残念な作品でした。
    民族が結局なんで死んだのかというのも
    無理やり感があったのと
    寄生虫も死んだ後水をくれという理由
    その辺が全く記載が最後までなく
    離島でのストーリーも面白かったが
    突拍子がない感じが否めなかった

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著者プロフィール

1990年、千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。『人間の顔は食べづらい』が第34回横溝正史ミステリ大賞の最終候補作となり、同作で2014年にデビュー。『東京結合人間』が第69回日本推理作家協会賞候補、『おやすみ人面瘡』が第17回本格ミステリ大賞候補となる。『名探偵のはらわた』は「2021本格ミステリ・ベスト10」で第3位。他の著作に『少女を殺す100の方法』『お前の彼女は二階で茹で死に』『そして誰も死ななかった』『ミステリー・オーバードーズ』『死体の汁を啜れ』がある。衝撃的な作品で読者の度肝を抜く、気鋭の本格ミステリ作家。

「2022年 『お前の彼女は二階で茹で死に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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