ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 II (角川文庫)
- KADOKAWA (2021年12月21日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041122372
作品紹介・あらすじ
推理作家協会の懇親会に参加したラノベ作家・杉浦李奈は、会場で売れっ子の汰柱桃蔵と知り合う。後日、打ち合わせでKADOKAWAを訪れた李奈は、その汰柱が行方不明になっていることを知る。手掛かりとなるのは、1週間後に発売されるという汰柱の書いた単行本。その内容は、実際に起こった女児失踪事件の当事者しか知り得ないものだった。偶然の一致か、それとも……。本を頼りに真相に迫る、ビブリオミステリ!
感想・レビュー・書評
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エクリチュールシリーズの2作目です。
前作は盗作がテーマでしたが、今回は犯罪告発暴露本をめぐる事件ですね。
幼女殺人死体遺棄を題材にした本の出版をめぐり、またしても真相究明のノンフィクション本の以来を受けた李奈が事件解決に奔走する物語。
「水鏡推理」でも下層階に位置する主人公が名推理をして行く物語でしたが、松岡作品の特長なのでしょうか?
今回のキーワードは松本清張の「疑惑」と横溝正史の「悪霊島」そしてルソーの「告白」でしたね。他にも色々の本が登場して、松岡さんの読書家振りには驚きました。創作に忙しいのにどれだけ読み込まれているのか、この作家さんは想像以上に凄いと感心しました。
ラストの部分では、幼子の母への思慕と母の子に対する愛情の場面では、胸をあつくさせられました。
次回作でもビブリオミステリーと李奈の活躍を楽しみにしています。 -
シリーズ2作目。
前作では盗作騒動を扱ったが、今作では告白本について、ラノベの新人作家の杉浦李奈が事件を解決していく。
主人公をラノベの新人作家にしているから、一見今作もラノベと思いがちだが、文章の楽観的な表現とは対照的に描かれている内容は、かなり本格的な推理物。
本音を言えば、何のコネもない新人作家がここまで事件に突っ込めるのか、という突っ込みどころもなくはないが、他の作品にもみられることなので、こことは目を瞑ろう。
今作の凄いところは、出版社が全て実名で登場するところ。
もちろん版元のKADOKAWAが承認を得ているのだろうが、現在の出版業界の裏側なども包み隠さず、描いてくれているのが、本好きには溜まらず、面白い。
1作目を読んだ後は、この後読むのを迷ったが、出版業界の裏側が読めるのであれば、今後も読んでしまいそう… -
2021年12月角川文庫刊。書き下ろし。シリーズ2作目。作家と出版の世界に関わる李奈の推理譚。興味が持続せず、物語世界に入浸れない。残念。
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相変わらず、博識なこと。
やはり最後は怒涛の伏線回収。
音声のトリックは解りましたが、
犯人はわかりませんでした。。。
YOASOBIの紅白(角川武蔵野ミュージアム)の
裏事情には、涙が出ました。
[追記]
作中に出てきた「雨の日には車をみがいて」
本日、本屋に行ったら新装版がハードカバーで出てた‼︎ -
「向かい風のなかでも叡智ある人は、いつも幸せを求める道をたどり、理想の地に至るため、順風に乗るすべを知る」
315頁
この文は、実は本作オリジナルではない。
ルソーの『告白』の一文だ。
悲しい事故を経てなお、という著者からの温かい、救いの言葉なのだと思う。
さて、物語は、クセの強い売れっ子作家、汰柱桃蔵を中心に進んでいく。
彼が出そうとした小説は、実際の事件をもとに書かれたのかと思うほどの、犯人しか知らない事実が書かれていた。
汰柱が罪の告解のために書いたのか。
なぜそれを描こうとしたのか。
杉浦李奈、謎に再び挑む。
本書で考えさせるのは、文章の力強さ、言葉の力、しかし一方で、本が好きだからこそわかる、言葉の、限界。
それを語る母親の姿は辛い。
かつて本を、言葉の力を信じ誰よりもそれを愛したから。
本作を作る出版、編集や、作家の苦労、それからたくさんの名著。
文体を検討するところは興味深い。
それにしても、こんなに知識が豊富な著者の頭はどうなっているんだとおもう。
しかも、既に第三作が決定している。
異様に描くペースが早い!
1人ではないんじゃないか?!
もはや工房?! -
これは唸るしかない傑作なんじゃないだろうか。
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杉浦李奈(すぎうら りな)は23歳の新人ラノベ作家
推理作家協会の懇親会で流行作家 汰柱桃蔵(たばしら とうぞう)と知り合いになる
その汰柱が出版する予定の『告白・女児失踪』に2か月前に発生した女児行方不明事件の当事者しか知り得ない内容が書かれていたことから、事件を取材してノンフィクションを書くことを志願する
作品は偶然に書かれたものなのか、話題づくりのためなのか、汰柱は何を世に問いたかったのか
取材するうちに深まっていく謎、明らかになっていく真実
そして、李奈がたどりついた事件の真相は……
《これはもう本読み垂涎の「読む本棚」である。》──内田剛「解説」より
数々のベストセラーシリーズを持つ松岡圭祐の新シリーズ第2弾は“本好きのための文学ミステリ”、2021年12月刊
取材した事実と人情の機微に触れた推理をもとに李奈が犯人を追いつめていくラスト40ページは名場面
KADOKAWA、講談社、集英社、新潮社、文藝春秋、小学館など実在の出版社が実名で登場、克明に描き出される出版業界の内実は本好きの読者にとってたまらない楽屋ネタばかり
〈文学とともに生きてよかった、李奈は心からそう思った。目に見えない感情を写しとり、執筆と読書を通じ、いつでも人と触れあえる。〉
上質のミステリに李奈の人間的な成長がくわわって、2022年2月発売予定の第3巻がますます楽しみになる -
シリーズ2作目
前作は、本好きの自分にも(好みのジャンルでない引用が多かったので)正直ついていけないところが多かったが、今回は、横溝正史とかあって、少しは退屈しないで済んだ。
それでも前半は、全く展開が読めないチンプンカンプン。謎解きに入ってからは一気読み。これが松岡小説。
まぁ、次巻も読むことになるんだろうなぁ・・・ -
本人は気づいているようで気づいていないが、実は感性が鋭い。
なんだがこういう主人公に出会えるのが読んでて嬉しい。
著者プロフィール
松岡圭祐の作品





