コープス・ハント (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 171
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041122495

作品紹介・あらすじ

美貌の猟奇殺人鬼による連続殺人事件が発生。事件の真相を追う休職中の女刑事と、「遺体探し」の冒険に出る少年たち、二つの物語が交錯する時、予測不能の真実が浮かび上がる。驚愕必至の冒険ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 展開が早くて読みやすかった。
    連続殺人鬼浅沼が死刑判決を言い渡された裁判の場で突然1件の殺人について否認した。『自分は殺していない。 真犯人は自分が殺して思い出の場 所に埋めた』と。

    美貌の殺人鬼の告白に日本中で遺体探しが盛り上がる。
    そんな中事件発生時より浅沼の犯行ではないと疑いを持っていた刑事の望美は、たった一人真犯人を突き止めようと捜査を始める。一方、不登校の中学生YouTuber宗太は、ネット友達に誘われて遺体探しの旅に出かける……とまさに著者の思惑通りに読み進めていたけれど、終盤2つのストーリーが思わぬ形で結びつき『そういうことだったのね…』と驚きながらも納得してしまった。


    ミステリーではあるけれど、親が子どもに与える影響について考えさせる話だった。浅沼聖悟を連続殺人鬼にしたものは何だったのか。聖悟を無菌状態で育てようとした母親なのか、それとも母親の異常な子育てを免罪符にし自らの欲望を果たそうとした聖悟生来の気質なのか。

    最後までその答えはあかされなかったけれど、人が成長する過程では、綺麗なものばかり見ていても綺麗な人間にはならないんだと思った。幼少期からいいことも悪いことも見て経験して、成功したり失敗したりしながら生きていくことには意味があるのだと思った。


  • 下村敦史『コープス・ハント』角川文庫。

    『コープス』とは「死体(corpse)」という意味なので、タイトルの『コープス・ハント』は「死体狩り」という意味か。

    ミステリー小説。終盤の怒濤の展開から明らかにされる真相に読者は大きく二つのことで、見事に騙されていたことに気付く。一つは作者により、もう一つは連続殺人の浅沼聖悟によって……

    相変わらず最後まで面白く読ませる技量は素晴らしい。しかし、結末には少ししっくり来ないところがあるのも事実だ。

    虐待される子供、異常に純粋培養され過ぎた子供。将来を決定するのは自身のはずが、歪んだ心は……

    ミステリー小説にもしばしばユーチューバーが登場するようになった。そういう時代なのか。

    8人の女性を殺害したとして死刑判決を受けた猟奇殺人鬼の浅沼聖悟は、8件のうち1件は自分の犯行ではなく、その犯行の真犯人を殺害し、思い出の場所に遺体を隠したと主張する。当初から浅沼とは違う真犯人が居るのではないかと事件に疑問を抱いていた休職中の刑事、折笠望美は真相解明に乗り出す。

    一方、引きこもり中学生の福本宗太はネット動画配信仲間のにしやんに誘われ、にしやんの知り合いのセイと3人で死体捜しに出掛ける。

    やがて、折笠刑事により明らかにされる事件の真相……

    本体価格740円
    ★★★★

  • 本作品の社会に向けている方向性については共感が持てる!

    毒親、暴力的・性的嗜好が強い漫画、過剰な人権派、振りかざされる見識の狭い正義・・・

    中庸の徳と言う言葉が示すとおり何方かに全フリでは無く、何でも程よく出来る事と、完璧と潔癖を他者に求めない余裕が欲しいと私は思います。


    8人の主婦を殺害し死刑判決を受けた殺人鬼が【7件は自分の犯行で1件は別な奴の犯行!更にその犯人の一人は既に殺して埋めてます】なんて言い出した!
    SNSやYouTubeでは真犯人の遺体捜しが大盛り上がり!

    休職中の女性刑事が事件の真相を追うA面と死体探しの動画を撮影する少年YouTuber達のB面の物語が交互に展開される!!!



    少年YouTuber達のパートは正に現代のスタンドバイミー!

  • プロローグから、読者は一気に小説世界に引き込まれる。
    本章に入ると、猟奇殺人者の告白に、女性刑事が真相を究明せんと捜査を開始する。それを妨害しようと、闇の勢力が彼女の前に立ちはだかる。その戦いは、女性版ダイ・ハードか。
    一方、3人のユーチューバーが「遺体探し」に出かける(現代の出来事に、ユーチューバーの存在は欠かせないようで、テレビドラマでもしばしば登場する)。
    本書では、彼らの行動は途中まで、青春小説かのよう。
    著者は、女性刑事とユーチューバーたちとのそれぞれの行動を交互に描写する。しかしここに、著者の巧みな仕掛けがあろうとは。
    山岳小説、冒険小説、医療小説等々作品ごとに分野を変える著者が、また新しい領域を開いたようだ。

  • 初作家さん!!!いや〜初っ端から怖った。久しぶりに心臓バクバクしながら読んでました笑

    2つのストーリーが1つになったとき、なるほどそういうことか!ってなりました(;☉_☉) YouTuberやSNS関連の話題が出てきて現代っぽくておもしろさも増しました。
    あとセイの親が毒親すぎてドン引きでした、、、

  • あらすじ
     ユーチューバーで不登校中学生の宗太は、人気ユーチューバーのにしやんに誘われて、千葉の森へ遺体を探しに行く。同行するのは、同じくユーチューバーのセイ。正義感溢れる動画が人気だ。
     刑事望美は、連続殺人犯浅沼聖悟の判決を聞いていた。彼は既婚女性ばかりを狙って犯行。しかし、一件の犯行だけは否定し、別の者たちのしわざだという。さらにそのうちの一人を思い出の場所に埋めたという。望美は捜査班の中で唯一別件を主張し、休職に追い込まれていた。

     初めて読む作者。面白かったー。作中にあった、「スタンド・バイ・ミー」なの?と思って読んでいたら、まさかの刑事望美パートとのつながり。後半からさらにスピーディーに読み進めた。他の作品も読む。

  • 最初、ミステリーにありそうなベタな犯罪から始まったので、読むのを止めようかと思いつつも、読み進めると、スタンドバイミーっぽくなってきて、何だかワクワクしてきた。
    でも、思いもよらぬ展開になり、犯人は彼だったのか〜と、ミステリー小説を堪能できた。

    しかし、内容的には、とても重く、
    毒親、ひきこもり、SNSでの誹謗中傷や偏見等、、、。

    最後に、命を救われた宗太が、にしやんの祖母と話し、きちんとにしやんの想いを理解できたところに救いがあった。

  • 先に似たような叙述トリックものをよんでしまっていたせいかそれと比較して荒削りに感じてしまいました。
    また、猫を弱らせていって…という話がネットに転がっている有名なサイコパス診断の内容そのままなのが気になってしまいました…。
    物語自体はそこそこ面白く(特に女性刑事視点が)スラスラと読み進められたのですが最後の最後で毒親や漫画・アニメが犯罪に与える影響について説教臭い内容が長々と書かれていたのに少しげんなりしてしまいました。

  • 異常殺人者による発言により、世間のトレンドは死体探しに。

    YouTuber達による死体探しと、主人公刑事の望による捜査が行われる…

    それぞれの話はテンポ良く進む。
    最後の仕掛けも面白いとは思ったが、この作者の他の作品も知ってるだけにもう一捻り欲しかったというのが正直なところ。

  • 202203/結末や展開でうーんと思う箇所もあるんだけど、設定の独創的な面白さと途中でやめられない巧みなリーダビリティは今作もさすが下村敦史だった。

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著者プロフィール

1981年、京都府生まれ。2014年に『闇に香る噓』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2014年」国内部門2位、「このミステリーがすごい! 2015年版」国内編3位と高い評価を受ける。著書に『生還者』『難民調査官』『真実の檻』『失踪者』『告白の余白』『緑の窓口 樹木トラブル解決します』『サハラの薔薇』『法の雨』『黙過』『同姓同名』『ヴィクトリアン・ホテル』『悲願花』『白医』『刑事の慟哭』『アルテミスの涙』『絶声』『情熱の砂を踏む女』『コープス・ハント』『ロスト・スピーシーズ』などがある。

「2023年 『ガウディの遺言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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