八犬伝 下 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2022年11月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784041123447

作品紹介・あらすじ

遥か昔の怨念から里見家を救うため、不思議な宿縁に導かれ、世に現れた八犬士。ここに彼らは出揃った。関東管領・扇谷定正を前に、一大決戦が今始まる――。二十八年の歳月を経て、作家・馬琴は息子の死や自身の失明に直面しつつも懸命に物語を紡ぐ。そして虚実二つの世界はついに融合を迎え、感動のクライマックスへ。馬琴の最高傑作『南総里見八犬伝』を、壮大な構想で現代に蘇らせた、鬼才・山田風太郎による不朽の名作。

感想・レビュー・書評

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  • 「虚の世界(南総里見八犬伝の物語世界)」と「実の世界(馬琴の生きている現実世界)」のパートが交互に描かれている、入れ子構造の小説。

    八犬伝のパートはダイジェストになっているけど、読みやすくて面白い。八犬伝の原文とか、現代語訳に抵抗がある人におすすめできる。
    馬琴のことについてはほとんど知らなかったから、どんなふうに八犬伝が書かれたのか執筆背景がわかって楽しかった。全体的にすごく読み応えがある!

    大学のころ読んだ南総里見八犬伝。(読んだといってもところどころだけでしたが・・・)
    やっぱり勧善懲悪は良い!すごく清々しい!
    荘助と現八がお気に入り。かっこいい!

    上巻の方は、犬士が活躍する「虚の世界」パートのほうが圧倒的に魅力的で、「実の世界」が邪魔に感じるくらい・・・
    でも、下巻になると馬琴の人生に影がさしてきて、【“虚”とは何なのか】【“実”とは何なのか】についてが浮き上がってくる。だんだん「実の世界」の面白さも増して、ちゃんと山田風太郎の『八犬伝』そのものに引き込まれた感じがした。

    長いけど引用。
    「これといった罪も悪も犯さないのに、何らかのかたちで苦しみつづけている人々は無数にある。むしろそれこそが人間の実の世界の大半といっていいのではないか。
    「だから、正義が悪とたたかい、正義が悪に勝つ過程をえがいてこそ小説の存在意義があるのだ」
    馬琴はこのとき、地獄極楽の観念を創造した宗教者と同じ存在になっていた。
    「だから……架空事であっても、私は正義の物語をかくのだ。だから私は、伝奇小説によって、まちがった実の世界の集積――歴史を正すのだ!」」

    生きているこの世(実)は理不尽でつらいことだらけ。
    それなら小説の中だけでも、因果応報、勧善懲悪を描いたって良いじゃないか。この考えはすごく納得。
    とても面白かった!読み終わってしまったのが残念!


    「南北よきけ、人間の実とやらをかいて何になる。そんなものは、まわりの世界を見ておればすむことではないか?」

  • 少し前に愉しんだ映画の原案であると知って手にした小説で、大変愉しく読み進めていた。上下巻の下巻だ。頁を繰る手が停められなくなって、大変な勢いで読了に至った。そして深い余韻に浸る感だ。
    本作は「創作そのもの」と「創作に打ち込む人の物語」とが螺旋状に組合さるような感じだ。「創作そのもの」が「虚」であり、「創作に打ち込む人の物語」が「実」である。
    本作で「虚」ということになっているのが、よく知られる「八犬伝」の物語であり、「実」ということになっているのが、その「八犬伝」を28年間にも亘って綴り続けた滝沢馬琴(「曲亭馬琴」の号でも知られ、本作中でも「曲亭」と呼ばれている場面が在る。)の物語である。滝沢馬琴が「八犬伝」を綴っていた期間は、彼の後半生そのものである。最晩年の、他界してしまう少し前に長大な「八犬伝」は完結を迎えたのだ。
    本作は一貫して「虚」の部分と「実」の部分とが交互に出て来る。滝沢馬琴が友人等に「八犬伝」の構想を語って聴かせているという内容が「虚」で、そして滝沢馬琴の人生の様子の「実」なのである。これが最終盤は本作の物語全般のエピローグのように「虚実冥合」という章になって行く。「虚実冥合」という章は、視力を失ってしまう最晩年の滝沢馬琴が、口述筆記で「八犬伝」を完成させて行く様、その口述筆記という方法で綴られているあらましということになって行く。
    下巻に至ると、「実」の部分が深くなって行く感じだ。滝沢馬琴は老いて行くのだが、他方に病弱な息子が在り、息子が先立ってしまうというような展開が在る。そして滝沢馬琴の数少ない友人として登場する、葛飾北斎や渡辺崋山(息子と知り合って親しくなるが、家を訪ねている中で滝沢馬琴とも友人と言い得る間柄になった。)とのやり取りで「人生の“虚”と“実”」というようなことが語らわれる場面が在る。
    或いは、本作は「日本の長篇ファンタジーの元祖」であるかのような「八犬伝」のあらましを紹介しながら、それを産出した作家である滝沢馬琴の人生や創作に打ち込む様と、「人生の“虚”と“実”」というようなことが真の主題なのかもしれない。「人生の“虚”と“実”」というようなことに関する「葛飾北斎の観方」と対になる「滝沢馬琴の観方」が在り、両者の何れとも少し違う「渡辺崋山の観方」が在る。「そして本作を御読みの、そこの方は如何か?」という訳である。
    更に「虚実冥合」という終章は、先立ってしまった滝沢馬琴の息子の妻であった路の物語、また路が視力を失った滝沢馬琴の活動を手伝おうとする経過、滝沢馬琴の路を観る目線とその変化というような物語で、この章だけでも読み応えが在ると思う。
    「日本の長篇ファンタジーの元祖」であるかのような「八犬伝」そのものを現代の小説としてアレンジして創るということに留まらない、「あの物語を創った作家の熱い想いとその人生を描き、螺旋状の構成にしてみたことで、本作は非常に余韻が深い作品になったと思う。
    大変に愉しんだ映画が契機で、なかなかに素敵な小説に出会って、凄く善かったと思っている。

  • やはり『風太郎八犬伝』最高! 歌舞伎舞台の奈落で、馬琴と鶴屋南北が対峙するシーン、虚実論争の面白いこと面白いこと。「虚の世界」の方は、やはり次々と犬士が現れてくる上巻と比べるとやや落ちるものの、犬江親兵衛再登場のシーンの驚きや親兵衛のキャラクターが楽しいてたまらん。そして馬琴の完全主義の凄まじさよ!登場人物の人生構築、物語の緻密な構成、伏線回収の執念! 登場人物たちの善悪の清算。よくぞそこまで丹念に描けることよ。 逃げる扇谷定正を追う犬山道節の足を止めさせた河鯉父子のかごを取り巻く青い炎の正体が分かったところで「うひゃあ!」言うたわw そして最終、語る盲目の馬琴と懸命に筆記するお路の姿に落涙。

  • はぁ、ものすごいものを読んだ。

    今、胸の中に何かが次々と湧き出していて、破裂せんばかりの風船さながら胸がパンッパンに膨れ上がっているのに、この感情を表現できない。これは、なんと言うのだろう、充足感? いやどんな言葉にも当てはまらない。言葉が陳腐すぎて狭すぎて、どの言葉にも収まらない。

    下巻でも、「虚の世界」と「実の世界」が交互に進んでいくのですが、最後の章で両世界が冥合いたします。鬼気迫るラストは、これは作中で使われている言葉ですが、まさしく〈神秘荘厳〉としか言えません。なんと苦しい人生か。

    馬琴さんの墓前で、お疲れさまでしたと何時間でも手を合わせたい、そんな気持ちです。絶対滝沢家の人間にはなりたくないけど。そして、「南総里見八犬伝」と馬琴さんの人生を、こんな壮大な物語に仕立ててくれた山田風太郎さんに、深く感謝いたします。

    最後に、八犬士を出現順に並べておきます。
    第一の犬士、犬塚信乃、「孝」の珠、
    第二の犬士、犬川荘助、「義」の珠、
    第三の犬士、犬山道節、「忠」の珠、
    第四の犬士、犬飼現八、「信」の珠、
    第五の犬士、犬田小文吾、「悌」の珠、
    第六の犬士、犬江親兵衛、「仁」の珠、
    第七の犬士、犬村大角、「礼」の珠、
    第八の犬士、犬坂毛野、「智」の珠。

    本作を読んでわかったけど、「八犬傳」を原文で読破するのはやっぱり大変そうだなぁ……。

  • 最後のお路さんの頑張りで完結できて良かったですよねぇ。

    親兵衛か可愛いくて1番無敵な犬士な気がする。

    実際の八犬伝を読むのは難しそうだけど、虚と実の世界という構成で読みやすかった。

  • 解説を読ませてもらった結果、普通の一読者は八犬伝はなんとなくわかっていればいいと思うことにした。
    馬琴さん、ごめんなさい。

    た滝沢馬琴さんのことはほぼ名前しか存じあげないレベルの知識だった。
    学生時代、テストのために覚えた単語のみたいな感じの滝沢馬琴さんなのだか、ちゃんと生きていた人として認識できて、とても興味深かった。

    映画も見てみよう。

  • 親兵衛の活躍に、心躍りソーロー。

  • 最後がびみょかった

  • 虚構である『八犬伝』パートと現実である『著者の生活覗き見』パートを行ったり来たりする構成で、どちらも読み応えある。
    けど、『八犬伝』パートも『著者の生活覗き見』パートも最後が駆け足で、無理やり風呂敷畳んだ感があって、読了後はちょっと物足りなかった。

    これ読んだ後に漫画の「THE八犬伝」を読みたくなった。

  • 下巻は、馬琴の八犬伝後半が失速したのに相まって、上巻より面白みが減退した。実の世界の話が主となり、馬琴の生涯後半にスポットを当てたもの。お路の変貌ぶりには驚嘆。あの境遇にありながら、どうして口述筆記ができたものか。その逞しさに感服した。

  • 10月映画
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac.lib.setsunan.ac.jp/iwjs0021op2/BB50376595

  • 虚と実の融合、凄い。参ったなこれは。新たに文庫本3冊購入。

  • 虚の世界と実の世界を融合させた秀作だと思います。文化の花である江戸時代に生きた奇才の凄さを感じることのできる作品でした。

  • 虚の部分、八犬伝の散らばっていた点(エピソード)が一つ一つ繋がっていくのは、気持ちよかった。

  • 映画もそれなりに面白かったけど、比べたらやはり原作の方が素晴らしかった。もっとやりたい事が明確だった。「シン馬琴伝」ですね。馬琴と八犬伝に対し、調べて得た知見と独自の解釈を読者に伝えたく、それを面白くする為に考案したのが虚実を並列する語り口であり、最後、虚実冥合とするあたりが見事としか言いようがなかった。

  • 山田風太郎の『八犬伝』の下巻。
    虚と実が入り交じる作りが面白い作品だが、上巻とは打って変わって下巻では実の部分が面白くなっていく。
    実の部分というのは滝沢馬琴の生活の方である。
    数年毎にプラっと訪れる葛飾北斎に『南総里見八犬伝』のプロットを語ったり、そんなオジサン二人がおしゃべりばかりしている様を眺めて激しく愚痴る滝沢馬琴の妻のお百がいたり、そんなお百と馬琴の子どもで医者になった宗伯、そして宗伯の妻のお路などの生活が記されていく。
    特に面白くなるのが宗伯が亡くなり、馬琴の眼が見えなくなってからだ。
    『南総里見八犬伝』をついに語ることが出来なくなってから、馬琴はお路に執筆の手助けを頼む。しかし、お路はひらがな以外は学んだことがないため、漢字の作りを一から教えることになる。
    馬琴とお路の執念で『南総里見八犬伝』は記されていく。
    この実の部分が面白くなっていく。
    逆に虚の部分は物語が一段落してしまったこともあって、親兵衛登場あたりからはそこまで惹かれなくなっていく。
    そしたら解説で、親兵衛登場あたりまでが『里見八犬伝』のピークだと記されていて、なるほどなあと思った。それも踏まえて虚と実が入り交じる作風にしてあるんだろう、と感じた。

  • 「あれは絵になる。」
    葛飾北斎が馬琴とお路の執筆作業を見て発する言葉。映画でも印象に残ったが小説でも印象に残る。
    日本のif小説、異世界もの、架空戦記、SF小説、幻想小説において、筆頭と言える作品を物語だけでなく、書き上げた滝沢馬琴とは如何なる人物かを教えてくれた。歴史上の人物としてではなく、作家人間滝沢馬琴の生涯物語と言える。
    戯作本としての八犬伝を楽しめ、滝沢馬琴の人生小説としても楽しめるおいしい作品である。
    映画化により本作を知って初めて読むが、世に知られた忍法帖シリーズとは違う山田風太郎の世界が存分に堪能できた。
    映画も小説もまた見なおしたくなる作品。

  • 犬士たちの話も涙ものだが、馬琴の家族の最後が切ない。

  • 武士の矜持にこだわっていた馬琴の息子との関係は、過干渉の毒親タイプと最初は感じてたけど、そんな一言で言えるもんじゃなかった。もっと複雑で暖かみもあるものだったと感じた。息子との死別を体験する年老いていく馬琴・・・。

    八犬伝は、嫁のお路の口実筆記で完成したものと知り、その努力に思いをはせる。

    だけど、原作は、今の眼で見たら、もっと血沸き肉躍るものになったはずって思える作品なのかな。やたら古風な言葉遣いの親兵衛の怪童というべき大活躍が楽しいのだが。それぞれのキャラが立ってるから、改変したくなるお話なのかも。

  • 戯作者・馬琴の壮絶な人生が明らかになった実の世界。特に白内障によって隻眼となったうえに、残る一眼にも侵食した後の、漢字を知らない亡き息子の妻・お路の凄まじいまでの気力に感動した。そのおかげで八犬伝は未完の大作とならずに済んだ。まあ、馬琴の微に入り細を穿つ文章は冗長だ。しかし、完成したからこそ今に伝わったとも思える。そして、著者はその冗長さを排して、読者に八犬伝の面白さを伝えてくれた。終盤の幼犬士・犬江親兵衛の活躍は、まさに桃太郎のような微笑ましい一篇に仕上がっていた。

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著者プロフィール

山田 風太郎(やまだ・ふうたろう):一九二二年兵庫県生まれ。『甲賀忍法帖』『くノ一忍法帖』などで忍法帖ブームを巻き起こす。『眼中の悪魔』及び『虚像淫楽』で探偵作家クラブ賞(現日本推理作家協会賞)短編賞受賞。九七年菊池寛賞を受賞。『警視庁草紙』『戦中派不戦日記』『戦中派虫けら日記』などの日記文学、『人間臨終図巻』ほか著書多数。二〇〇一年没。


「2025年 『東海道綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山田風太郎の作品

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