支那扇の女 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041123508

作品紹介・あらすじ

鮮血が飛び散る部屋の中で、血溜りに鼻を押しひしゃげて突っ伏す寝巻姿の女。そして隣の部屋には、額をざくろのように割られ、凄まじい形相をした老婆が死んでいた! 駆けつけた等々力警部と金田一耕助はただちに聞き込みを開始。だが、使用された凶器の意外な捨て場所、さらに70年前、世間を恐怖のどん底に陥れた毒殺事件とのからみが、事件をますます複雑にしていった。謎の因縁話に秘められた斬新なトリック、横溝正史の傑作長編推理。ほかに「女の決闘」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 思わず吸い込まれるような表紙。支那扇の女という絵と過去の毒殺未遂事件から端を発する惨殺事件を描く表題作。また、緑ヶ丘荘の住人が集うパーティーで起きた毒殺未遂事件を描く『女の決闘』も収録!毒づくし!(笑)

    『支那扇の女』
    早朝に路地へ飛び出してきた女・美奈子。彼女の家で発見されたのは夫の先妻の母と女中の死体だった。夢遊病の彼女は自殺未遂を繰り返す。その行動には70年前に起きた毒殺未遂事件の影があった。

    毒殺未遂犯・克子の遠縁である美奈子。その夫はそれを告発した克子の夫・冬彦の遠縁である照三。この因果な巡り合わせ。70年前と現在の事件が重なっていくにつれ、事件の絵の見え方が逆転していく。鮮烈な犯罪描写の中にも伏線を重ね塗りで忍ばせる巧みさ。気づいた瞬間にああー!ってなった(笑)

    『女の決闘』
    緑ヶ丘荘の住人が集うロビンソン夫妻のお別れパーティー。そこに招かれた作家夫妻は先妻とかち合ってしまう。そこで巻き起こる毒殺未遂事件。後妻・多美子に毒を盛ったのは誰なのか。

    緑ヶ丘の人々の顔ぶれが揃ったり、金田一がアメリカ時代に世話になったジャック安永の姿もあって新鮮な話だった。毒を巡る謎に秘められた感情という毒。女の決闘というタイトルは言い得て妙。どちらの妻が毒だったのか。内面の人間描写で対決を静かに描くところが渋い。

  • 住宅街で起こった凄惨な殺人事件にかつての毒殺婦の肖像画が絡んでくる『支那扇の女』と緑ヶ丘のパーティーで起きた事件を描く『女の決闘』の2作を収録。
    『支那扇の女』は読んでいて事件が複雑な方向に転がっていき、最後の神宮外苑での犯人との攻防戦が手に汗握る展開がとても良かった。
    『女の決闘』は短いながらも読み応えがあり、それでいて犯人への手がかりも散りばめられている良作。
    ちなみに『支那扇の女』は横溝がかつて、短編として出しており、その後にガラッと変えた作品のひとつ。改訂前の作品も他社から出版されてるので読み比べても面白いかも。

  • 外国ミステリーのようなトリック。金田一耕助シリーズにしてはお上品だと思いました。

  • 面白いは面白かったが、あまり驚きと高揚感は無かった。2つ目のお話が、最後手紙形式で語られるのは面白かった。

  • いくら死よりも世間的な汚名のほうが復讐効果あるつっても、君やと義母さんがかわいそうだろ…。女の決闘はシンプルで面白かった。

  • 人を追い詰めすぎると痛い目を見るよ、という話。
    『女の決闘』は申し込んだ方の一人相撲でなんか切ない。池松壮亮のドラマはなかなかよく再現してた。しかしミスター藤本、すごい言われようである。

  • 短編「ペルシャ猫を抱く女」と骨子は同じなのに、こうも雰囲気が違う作品になるのかと驚く。「ペルシャ猫〜」はロマンティック。
    「女の決闘」はとても好き。

  • 2022/01/28読了

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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