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本 ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784041123546
作品紹介・あらすじ
弓の収集家として名高い考古学者の古館博士が、三人の若者を招き弓遊びに興じていた。見事的を射た者を、愛娘早苗の婿とするというのだ。
だが、その直後、競技に参加した若者の死体が発見される。浴室の中でシャワーを浴び続ける男の胸部には、白塗りの矢が射ちこまれていた……。
解決不能と思われた密室トリックを名探偵・金田一耕助が解き明かす。
一風変わった隣人の嫌疑に挑む「蝙蝠と蛞蝓」を併録したファン必読の小説集。
感想・レビュー・書評
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自分の娘の婿選びに無理難題を仕掛ける資産家で変人の父、それに群がるいけすかない青年達、溺愛されすぎた美しい娘。ユリシーズを下敷きにした物語とのことですが、よく仕掛けるなぁ。でも容疑者を全員集めてのアリバイ確認はいかに昭和40年代の警察でもやらないのでは?40年代でも羽織袴の金田一探偵のリアリズムを維持するためには背景のリアリティーが大事だと思うのだけど。
美女に群がる男っていうのも昭和的単細胞エネルギーに満ち溢れていて元気になる!という単純な話かと思って読んでいると・・・ねじれてはいるけれども深い愛情の物語でした。
それにしても頑健な肉体を持ち野生味溢れながら考古学博士でもある古舘博士の異常な愛情は、その後失われてしまった時代の一つの象徴かもしれません。生き方って時代が現れますね。自分の価値観や生き方もその時代に縛られた滑稽で奇妙なものとうつるのだと思い知らされます。謙虚に生きていこう。
この作品の他に「蝙蝠と蛞蝓」という短編が収められていますが、こちらの方が面白い。戦後間もない超インフレに悩まされる貧乏学生から嫌われた金田一耕助が「蝙蝠」とあだ名されて・・・こんな短い作品にその時代風俗 と異常心理をユーモラスに凝縮した逸品。傑作です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
時代柄なんだろうけど、出てくる男たちが不快。
それ以外はテンポよく読めた。
なんだか“ママ”の立場が切なく感じた。
短編の『蛞蝓と蝙蝠』の方は主人公の青年のあだ名センスにクスリとした。 -
表題作と『蝙蝠と蛞蝓』(人面瘡にも収録)の二作品が併録されたミステリ小説集。二作品とも読みやすく、それでいてミステリとしても抜かりがない一冊となっている。
『死神の矢』
弓の収集家として名高い考古学者・古館博士。金田一耕助は娘の早苗の婿選びに立ち会うことに。弓矢でハートのクイーンを射抜いた者を婿とする。奇抜な婿選びに面食らう一同。しかし、その後に婿候補の一人が閉ざされた浴室で死体となって発見されて──。胸には彼が射たはずの白い矢が突き刺さっていた!
那須与一を思わせる奇妙な婿選びに端を発した殺人事件。シンプルな事件のように見えて、先へ進むほどに違和感が積み上がる。状況が明らかになるにつれ、事件に奥行きが出てきて別の見え方になっていくのが面白い。やはり横溝先生は愛憎を描くのが上手いなと。事件に幕を下ろし、新たなドラマの幕を上げるような人情味あふれる金田一の推理も見どころ。
「きみ、きみ、八木君、なにも怖いことないよ。もう死んでるんだからね。生きてる人間のほうがよっぽど怖いよ」
金田一のこの言葉が好き。生きてる人間の邪悪さ。誰が本当の「悪」だったのか。正義と悪の狭間に揺れ動く人間の心は、矢では射抜けないのかもしれない。
『蝙蝠と蛞蝓』
湯浅順平が住むアパートの隣室へ引っ越してきた蝙蝠のような男・金田一耕助。順平は日頃の鬱憤を晴らすため、裏手に住む蛞蝓女と呼んで観察しているお繁を殺し、その罪を蝙蝠男・金田一へと着せる空想小説を書いた。すると、なぜかその空想は現実のものとなり、しかもその罪は順平に着せられてしまう。不可解な事件の謎やいかに。
タイトルからじめじめした話かと思いきや、展開もオチもユーモラス。サクッと読める短編で好き。殺人の罪を金田一に着せようとする悪趣味な内容の空想小説は、順平の心理が軽妙に描かれていて滑稽なコントのように読める。その壮大なフリからのラストはあまりの痛快さに声を出して笑ってしまった。30ページほどなのに、ミステリとしてのロジックもしっかり組まれていて無駄がない。 -
昔の時代の王道ミステリーという感じで、今読むと懐かしく感じられます。私的には短編の「蝙蝠と蛞蝓」が、金田一耕助の登場のさせ方が変わっていて面白かったです。
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2022/03/13読了
著者プロフィール
横溝正史の作品





