壺中美人 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041123553

作品紹介・あらすじ

陶器収集で有名な画家が自宅のアトリエで何者かに殺害された。
現場におもむいた金田一耕助は、聞き込みを続けるうちに数日前、テレビで見た“壺中美人”と称する曲芸を思い浮かべる。
なんと発見者のたえは、血にまみれたパレットナイフを握りしめたまま、身体をねじまげ壺の中へ入っていく女の姿を見たというのだ! 
表題作ほか奇妙な廃墟で起きた殺人事件を追う「廃園の鬼」を収めた、愛と裏切りを映し出す、横溝正史の傑作推理。

感想・レビュー・書評

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  • 2022年3月に復刊された作品。中編の表題作と、短編の『廃園の鬼』が収録されている。とにかく表紙のインパクト通りの強烈さを持つ『壺中美人』。次々と襲い来る変態的な愛憎や残虐性、そこに絡みつく人間関係は出口のない迷路のよう。
    『廃園の鬼』はタイトルとは裏腹に哀愁漂う静かな雰囲気で、だからこそ犯人を鬼にさせたのは何だったのかと思い馳せてしまう。


    『壺中美人』(☆3)
    陶器蒐集家の画家がアトリエで殺害された。金田一は犯人の目撃情報から、テレビで見た“壺中美人”という曲芸を思い出す。犯人はなぜか壺の中へ身を隠そうとしていたというのだ。事件に深入りするほどに、壺の中へと固く閉じ込められていくような作品。

    とにかく表紙のインパクトがすごい!壺中美人というキーワードも随所で際立っていて、忘れられない印象を焼き付けてくる。読み終わった後にタイトルを見ると、思わずため息が出てしまう後味が絶妙。事件という壺の中身はのぞいたが最後、愛憎の駆け引き・身勝手な犯行・底知れない残虐性が詰まっている。そこに希望など残されてはいない。

    「ああ、そう、それできょうのご予定は……? なにかお約束がおありですか」
    「いいえ、べつに……警部さん、なにかおもしろいことでもありますか。あったらぼくも仲間に入れてください」
    冒頭の金田一と等々力警部のやり取りが和むだけに、事件解決後の悲壮感や金田一の抱える孤独感がより深まって感じられる。わかってしまうというのは重い荷物を背負うことなのかもしれない。わかってしまえば、それを黙っておくことなどできないのだから。

    『廃園の鬼』(☆4)
    資産家の一人息子が遺した奇妙な廃墟。その近くにあるホテルへと静養に訪れた金田一と橘署長。そこで偶然にも知り合いの加寿子と再会する。しかし、その場所に加寿子のこれまでの夫たちが集められ、場に不穏な空気が漂い出し──。

    現代で例えると、綾辻行人先生の館シリーズのような奇妙な建築物にワクワクさせられる。コンクリートむき出しで、均衡を無視した歪んだ設計。万が一の抜け穴まで完備という代物。ただ、それ以上に奇妙なのは、ホテルに集められた加寿子の夫たち。金田一の名で呼び出された彼ら。これこそまさに不均衡で不可解──近くにある廃墟そのものだ。

    事件を起こしてくれと言わんばかりのシチュエーション。しかも、殺人現場を川越しに目撃するというミステリ鉄板の状況とアリバイ条件。その着地点もまた思いがけないものになっていて面白い。金田一の情を感じつつも、きっとラストまでの展開が見えていたからああいう形にしたんだろうなあ。そう思うと容赦ないとも言える。

  • 中編の表題作と短編の『廃園の鬼』を収録。
    表題作『壺中美人』は、陶芸蒐集家の画家がアトリエで何者かによって殺害され、その真相を金田一耕助が解き明かすというもの。犯人が凶器を持ったまま現場にあった巨大な壺の中に入ってこうとする奇妙な姿が目撃されていたのだが……。
    目撃者と犯人がグルだったため、話がややこしくなるも、ちょっとした違和感から犯人まで辿り着いた金田一耕助の推理力が冴え渡る1作。
    短編の『廃園の鬼』では、精神を病んでしまった男が残した不気味な廃墟で殺人事件が起こる。証拠と思しきものが多く見つかるが、金田一耕助の力を持ってしても解決に至らず迷宮入りへ。
    しかし、最後の数ページで真相に辿り着いた金田一耕助が犯人に当てた手記で真相が明かされる。
    2作とも読み応えたっぷり、横溝正史のエッセンスがふんだんに盛られていて満足できる1冊。

  • (「志那扇の女」昭和32年8月)
    「壺中美人」昭和29年5月
    男女の見分け方はちょっと、うーん・・・だけど

    (「犬神家の一族」)
    「廃園の鬼」T高原

  • ミステリーとしては、犯人が誰でどういう流れだったのかは面白くいつも通りに読めたが、結果的には私とって嫌悪を感じるものであった。戦争時代だと、野蛮的なのが横行していて、無理矢理に犯されるというのは当たり前だったのかもしれないが、やはりそういう自分の欲望を突き通し、相手の意思関係なく自分の思うがままにしようとする行為は嫌悪する。戦争は秩序や正常さが失われる。人の心が貧しくなる。

  • ドラマにできないエログロ・アングラがテーマの横溝は大変良い。『壺中美人』は誰もが公にできない秘密を抱えていて、複雑かつ陰湿に絡み合う。
    『廃園の鬼』は、見逃してくれるけど知らないふりはしてくれない金田一先生。

  • 表題作は何度読み返したか分からないくらい読んでる作品。凄く好き。事件のキーパーソン・楊華嬢が気になるというか好きというか…
    「廃園の鬼」も好きなんだけど、印象が薄い。何で??

  • 2022/04/08読了

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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