- 本 ・本
- / ISBN・EAN: 9784041125786
作品紹介・あらすじ
●突如現れた宇宙船から、次々地球に降り立った神は、みすぼらしい姿でこう言った。「わしらは神じゃ。この世界を創造した労に報いると思って、食べものを少し分けてくれんかの」。神文明は老年期に入り、宇宙船の生態環境は著しく悪化。神は地球で暮らすことを望んでいた。国連事務総長はこの老神たちを扶養するのは人類の責任だと認め、二十億柱の神は、十五億の家庭に受け入れられることに。しかし、ほどなく両者の蜜月は終わりを告げた――。「老神介護」
●神文明が去って3年。地球で、もっとも裕福な13人がプロの殺し屋を雇ってまで殺したいのは、もっとも貧しい3人だった。社会的資産液化委員会から人類文明救済を依頼された殺し屋は、兄文明球からやってきた男から、別の地球で起こった驚愕の事態を訊かされる。「人類扶養」
●蟻と恐竜、二つの世界の共存関係は2000年以上続いてきた。恐竜世界の複雑なシステムは、蟻連邦によって支えられていたが、蟻世界は恐竜世界に核兵器廃棄を要求、拒絶されるとすべての蟻はストライキに突入した。「白亜紀往事」
●僕が休暇を取る条件は、眼を連れていくことだと主任は言った。デイスプレイに映る眼の主は、若い女の子。ステーションにいる彼女の眼を連れて、僕は草原に旅行に出かけた。宇宙で働く人は、もうひと組の眼を地球に残し、地球で本物の休暇を過ごす人を通して仮想体験ができるのだ。「彼女の眼を連れて」
●74年の人口冬眠から目覚めた時、地球環境は一変していた。資源の枯渇がもたらす経済的衰退を逃れようと、「南極裏庭化構想」が立案され実行された結果、深刻な事態が起こっていたのだ。「地球大砲」
感想・レビュー・書評
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中国のSF作家である劉慈欣による短編集です。
『老神介護』と『扶養人類』、『彼女の眼を連れて』と『地球大砲』はそれぞれ姉妹編で、『白亜紀往事』は単一作品となります。
『老神介護』
人類を創造した神文明との遭遇が描かれますが、何千年も生きる個体となった神たちと文明は老いてしまい…。
『扶養人類』
神文明が創造した他の人類文明との遭遇が描かれますが、彼らの来訪理由に衝撃を受けました。
『白亜紀往事』
恐竜文明と蟻文明の共存共栄する時代、科学者タイプの恐竜と技術者タイプの蟻に軋轢が生じ…。
『彼女の眼を連れて』
地球の自然を満喫できない他者のために感覚を伝えられる装置を用いて一緒に旅行を楽しむ時代、上司からある女性をお供にするよう指示されるのですが…。
『地球大砲』
持病を治すために冬眠装置で未来へ、しかし蘇生されたのは予定より先の未来で病気は克服しても家族は既に他界していて…。
全て地球規模の世界観で描かれていますが、宇宙を舞台にした同著者の『三体』シリーズに引けを取らず凄まじいものがありました。
濃厚なSFを楽しむことができる一冊です。 -
1999年から2005年に発表された老神介護、扶養人類、白亜紀往時、彼女の眼を連れて、地球大砲、の5つの短編を2022年9月角川書店から刊行。流浪地球と本作と2冊同時刊行。老神介護と扶養人類、彼女の眼を連れてと地球大砲のそれぞれが繋がるところが面白い。いずれも楽しいアイデアのお話です。
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劉慈欣
連続で読んだので、満腹状態です。
三体と比べて、物理、科学用語について
つまり、〜のようなものだ、、みたいな
表現が少ないので、理解出来ないところも多く
ストーリーだけ追っていきました
円も、流浪地球もこれも
短編それぞれ、もしかしたらそんな世界が
あるかも、あったかも、そうなっていってるかも
みたいに感じてすごいと思います
読めばそう感じるけど、自分でそれを
想像できるかと言うとできない
読み通して感じたことは
宇宙も、地球も、人類も、
全ての生き物や、量子や
もっと未知の物質含めて
あらゆることが、不確かで
当たり前にいま、ここにいることが
恐ろしくなる
でも、ここで、今という時を生きていくしかない
自分の小ささに悲しみ
それでも今生きていることを
有り難いと思い生きていくしかない -
『三体』を既読の方ならきっと劉慈欣に対する期待値は相当なものだと思っている(個人的にはかなり高い)が、この短編集はその期待値に十分応えるものだった。
老後の神々の面倒を見る奇想天外な物語「老神介護」
地球の兄文明の貧富の差の真実と占領を描く「扶養人類」
白亜紀の恐竜と蟻の文明の発展と滅亡「白亜紀往事」
地層航海士の女性と宇宙装備エンジニアの男性の切ない物語「彼女の眼を連れて」
地球トンネルを巡る世界と家族の物語「地球大砲」
「老神介護」と「扶養人類」は続きの話になっていて、ちょっと面白くほっこりする話かと思っていたら、なかなかに冷酷な話だった。
「彼女の眼を連れて」の真相が明らかになった場面では愕然として切ない気持ちになった。せめて美しい光景が届くことを祈るしかない。
読後の満足感のままに『流浪地球』にも期待しよう。 -
相変わらず発想がユニーク!
劉慈欣の世界を伝える訳も自然で、上手い。
以下、ネタバレ注意です。
表題作「老神介護」では、人間の創造主であり、卓抜した文明機構を持つ神々が、終の棲家として地球に降り立つ所から始まる。
しかし、その数、二十億柱。
全ての家庭が、老いた神様を養わなくてはならないとなったら……というお話。
この話の中では、神様の扶養代として交換される技術は、まだ地球の科学力では遠く理解出来ないものとして扱われる。
その後「扶養人類」によって、先に神文明に近づいた兄地球の貧困者たちが殺到する。
格差が極端に開ききってしまった社会。
地球が誰かの所有物になんて、とは思うものの、ごく少数が富を手中にし、他は皆貧しい中で暮らさなくてはならない、という構造も虚構と言えるのか。
一方の弟地球ではサンデルさん的、ノブレス・オブリージュが発動する。
けれど、また、ここにも歪さを感じるんだなぁ。
どのように生きるかという意志の自由がありながら、人は身体がある以上縛られずにもいられない。
「彼女の眼を連れて」「地球大砲」も、面白い。
宇宙エレベーターならぬ、地球内トンネル。
ブラジルの人元気ですかー?は、那覇なら可能みたいだが、まぁ要するにそれが実現するという話。
出来上がったはいいけれど、大量の投資が過ぎて、通行価格の高騰がすさまじいこと。
また、南極大陸の環境汚染によって、そもそも人類の文明レベルを下げなければならない事態になってしまうということ。
この辺り、技術に対する人間の欲におけるミス(原罪みたい)を絡ませてくるのが楽しい。
しかし、実際、私たちは「後退」を選択肢に入れることなんて、出来るんだろうか?
まぁ、環境保持を、ある種の理性の進歩と捉えられるんだから、出来るのかな。
荒唐無稽と思いつつも、人間の姿という小説の肝については、なんだか考えさせられる。 -
短編でも壮大な雰囲気が味わえる。5篇の短編週だけど、大きく2つと3つの続きものとしても読むことができる。突飛な設定でもサラッと納得して読めてしまう、科学的知識をベースにした想像力がすばらしい。
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