迷宮の扉 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 87
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041126127

作品紹介・あらすじ

金田一耕助の行く所、必ず事件あり。三浦半島巡りを楽しんでいた金田一は、嵐に遭い、竜神館という屋敷へ逃げこんだ。直後、一発の銃声と共に背中を撃たれた男が土間に倒れこんできた。殺された男は、毎年この屋敷の主、東海林日奈児少年の誕生日に、カードを届け、ケーキを切りにくる男だった。莫大な財産をめぐる人々の葛藤をテーマに、完璧なトリックと緻密な構成で描く傑作本格推理、ほか二篇。

感想・レビュー・書評

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  • 金田一耕助が立ち寄った竜神館なる館で発生した殺人事件。それは莫大な遺産を巡る愛憎劇の前触れに過ぎなかった!中学生雑誌に連載された表題作と、他2編のジュニア向け短編が収録された作品集。

    『迷宮の扉』
    金田一が暴風雨から逃れるために訪ねた竜神館。そこで館の主・日奈児(ひなこ)の誕生日、ケーキにナイフを入れるためだけに訪れる男が銃殺された。金田一は莫大な遺産相続を巡る連続殺人へと巻き込まれていく──。

    偶然に訪ねた館で遭遇した殺人から、世界も謎もどんどん広がっていく展開に読む手が止まらない。遺産相続争いに愛憎が絡みついていく描写はさすが。中学生雑誌に連載されたということで、ジュブナイルではなくミステリ色強めの仕上がり。最後の最後まで気が抜けない悲劇の連続から目が離せない。

    展開はスピード感たっぷりでスリリング!その反面、終盤が慌ただしく進み、この伏線は回収されたっけ?となる場面も。あと、犯人以上にとある人物がおぞましく、ラストはそれでいいの?!とツッコまざるを得ない。人の心こそ広大な迷宮だわ…。その扉を開けて入っても幸せになるとは限らない。

    『片耳の男』
    医学生・宇佐美慎介が偶然に助けた少女・鮎沢由美子。片耳が欠けているチンドン屋の男は、鮎沢兄妹のもとへ毎年8月17日に届くある物を奪おうとしていたらしく──。

    18ページほどの短編ながら、ミステリもドラマも読後感がいい作品。父が事故死した日から毎年送られてくるプレゼントに「おとぎ話の贈り物」と名付けてたのがロマンチック。不気味なチンドン屋に遭遇するシーンから始まるのは横溝先生らしいつかみだよね。金田一は登場しないけれど、慎介がいい味を出してくれてて好き。

    『動かぬ時計』
    山野眉子が小学生のころから、毎年5月15日に送られてくるプレゼント。その中でも特に、金の時計を大切にしていた。ある時、その時計が動かなくなってしまい、修理しようと試みた眉子だったが──。

    こちらも14ページという短編。しかも同じように贈り物をテーマにした作品になっている。母がいない眉子の境遇、そこに届く贈り物、父との日々を描くドラマに、ミステリをほんのちょっぴり隠し味にしたストーリー。

  • 遊びに来たのに事件に遭い、分かっていたのにやっぱり死ぬ。圧倒的な防御率の低さ。金田一先生はこうでなくちゃ!
    『迷宮の扉』愛し合えない家族とは、こんなに冷酷で恐ろしいものか。

  • 2022/08/01読了

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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