- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041127407
作品紹介・あらすじ
私は、愛する我が子と、警察組織を壊した……。
日本全国を震撼させた〈五日市小学校通り魔事件〉。33歳の男が運動会中の児童の列を襲い、教師・保護者を含む19人を殺傷したのだ。男は犯行後に自殺。被疑者死亡のために事件の全容解明が困難を極める中、犯人がいわゆる引きこもりであったこと、父親がA県警察本部の管理職警察官であることなどが次第に明らかになる。男の父である管理職警察官もまた、事件直後に遺書を残して自死。部下の自決を防げなかった警務部長の由香里は、責任感から独自捜査を始め、やがてこの無差別通り魔事件に些細ながらも数々の矛盾があることに気づく。果たして男の動機とは? そして、数多の矛盾の裏に隠された驚くべき陰謀とは? すべてを知る最大の手掛かりは、現場近くに残された一冊の文庫本にあった――。
感想・レビュー・書評
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以前から気になっていた著者の作品。
小学校で起きた無差別大量殺人事件をベースに、引きこもりや、組織の功罪について問いかける様な内容となっている。
著者はいわゆる「キャリア」だった。
経歴から見るに、おそらく30代で退職しているのではないか…加えて、女性かなという気もしたが、そこはあまり作品には関係のないことだ。
さて、本筋。
隠された真実、読み飛ばしていたパーツには「やられた」と思った。
真実のうち、一部は予想できたが、こんな終わり方になるとは。
肝心の人々がほとんど口を開けず終わるのは、謎解きとしては難しくなる。
そしてこの結末。
納得はできない。真実も責任も果たさぬまま、隠されたままで終わるなどと。
せめて虚構の世界だけは、もっとスッキリさせてほしい、罪を償ってほしい。
最後に出てきた官房長はとにかく嫌なやつで、癖もアクも強すぎる。
こんなに気持ち悪い人間を描く必要があったのか、というくらい腹立たしい。
私の様なヒラ社員ではわからないほどのやり取り。
次への布石かと思う様なトンデモ人事。
次の物語もあるのだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「独特な味わい」が在る物語であると思った…
前代未聞という感の異常な事件を巡って、県警幹部が事の真相を解き明かそうとするような物語で、少し夢中になってしまう。
本作の冒頭部、少し長い序章が在り、作中の出来事のカギを握ることになる劇中人物達の描写が在る。
この序章に、「執筆活動」と称して昼夜逆転な様子で引き篭もっている男と、その父親という人物が出て来る。加えて何人かなのだが、彼らが作中の事案のカギとなって行くのだ。
本編に入ると“事件”が発生してしまう。運動会を開催中であった小学校に刃物を手にした者が乱入し、教員や児童、居合わせた警察官等を殺傷してしまう。十数人の被害者が生じるというとんでもない事態となった。
事件が生じたA県は、各都道府県警の中では「平均的な規模」と呼ぶべき警察組織を有している。2500名程度の警察官が居て、数名のキャリアが居る。本部長は国土交通省から出向中という人物であった。警務部長は警察庁の女性キャリアであった。一般的には、現場から昇任する警察官といては最上位になる刑事部長が県警の「ナンバー2」のように視られるのだが、部内での職権や格付けとしては警務部長が上位に相当し、キャリアの警務部長は“社長”たる本部長に対して“副社長”というような地位に在ることとなる。また、本部長が“警察一家”の外の者である関係上、警務部長への部内の期待は大きいという状況であった。
本作の主要視点人物は、この女性キャリアの警務部長である佐々木由香里警視正である。
「小学校に刃物を持った者が乱入して十数人の死傷者」という事態で、警察部内もかなり騒然とする。警察部内の人事を司る警務部として気になったのは、小学校の事件の現場で自殺してしまったという被疑者の父親が県警に勤務しているという事であった。そして当該の人物は、警視への昇任試験を敢えて受けずに警部に留まっていて、もう少しで定年退職なのだという。そういう“事情”が酷く気になった。
そんなことも気になった他方、事件が起こった小学校が在る地域を管轄する警察署に設けられた捜査本部での、刑事部による活動の状況が、佐々木警務部長の目線で「少し不自然?」と見受けられる状況に気付かされた。
こうして佐々木警務部長は、県警に赴任した頃に出逢った元警務部付の部下であった所轄署の課長を協力者に、独自に事件の真相、「前代未聞な事態の現場で何が在った?」を解き明かそうと奔走することになる。
本当に何やら「独特…」な味わいだ。「“そういうこと”にしておく」とか「“そういうこと”になってしまう」という流れに「本当か?本当は??」と切り込むが、それで何が明らかになり、そして如何なるのだろう?そんな物語だ。
何か…「痛快」ということでもない、少し独特な読後感で、微妙な余韻が残る作品だった… -
A県の小学校で起きた前代未聞の無差別大量殺人。犯行後、犯人の男は居合わせた警官から奪った拳銃で自殺する。現役警官である男の父もまた、直後に自死。県警本部は混乱の坩堝【るつぼ】と化した。謎多きこの事件の解明に乗り出したキャリア女警の由香里は、捜査の末、驚きの真実を見つける。ベテラン警察官達の矜持と保身、組織の理不尽と世間の無情、引きこもりとその家族の実情――数々の問題提起を孕んだ社会派警察ミステリー。
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★4.5
えーーーっ!作者が元警察キャリアだったのに、こんな作品書くの?だってさぁ、警察の闇じゃん。一応、事件の真相は描かれたけど、解決はしていないし、警察の闇の深さが描かれただけじゃん。全然ハッピーにならないじゃん。こんな作品、あってよいの??びっくりだわ。 -
面白かった。
…が、後半、長かった。 -
『娯楽』★★★★☆ 8
【詩情】★★★★☆ 12
【整合】★★★★★ 15
『意外』★★★★☆ 8
「人物」★★★☆☆ 3
「可読」★★★☆☆ 3
「作家」★★★★★ 5
【尖鋭】★★★★☆ 12
『奥行』★★★★☆ 8
『印象』★★★★☆ 8
《総合》82 A-
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古野まほろの作品





