- 本 ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041127445
作品紹介・あらすじ
全ては「死者の日記」から始まった。これは“怪異”か、或いは“事件”か。
選考委員、激賞!令和初の大賞受賞作!
「恐怖と謎がしっかりと絡んでいる。ミステリ&ホラー大賞にふさわしい」――有栖川有栖氏
「謎への引きこみ方が見事。読了後は心地よい酩酊感に襲われました」――辻村深月氏
信州で暮らす久喜雄司に起きた二つの出来事。ひとつは久喜家代々の墓石が、何者かによって破壊されたこと。もうひとつは、死者の日記が届いたことだった。久喜家に届けられた日記は、太平洋戦争末期に戦死した雄司の大伯父・久喜貞市の遺品で、そこには異様なほどの生への執着が記されていた。そして日記が届いた日を境に、久喜家の周辺では不可解な出来事が起こり始める。貞市と共に従軍し戦後復員した藤村の家の消失、日記を発見した新聞記者の狂乱、雄司の祖父・保の失踪。さらに日記には、誰も書いた覚えのない文章が出現していた。「ヒクイドリヲクウ ビミナリ」雄司は妻の夕里子とともに超常現象に造詣のある北斗総一郎に頼ることにするが……。 ミステリ&ホラーが見事に融合した新鋭、衝撃のデビュー作。
感想・レビュー・書評
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ものすごく奇妙な読書体験でした。
どっちかというとホラーよりかはSFな気がする。でも、読者をしっかり恐怖に陥れてくる。そりゃ大賞受賞するよな、と思った。これがデビュー作とか、期待大やん!読んで良かった!是非考察しながら読んで欲しい。でも、パラレルワールドとか、非現実的な物語が苦手な人は合わないかも?
物語は全十日間、起きている時間と、夢を見ている時間に分けられる。
大伯父の墓が荒らされた所から物語が始まるのだが、そこから不可解な現象が起き始める。怨念的なものが作用しているのか、もしくは誰かのイタズラか、主人公たちは原因を探っていく。
【中盤までのネタバレ注意】
この本を読む上で重要なカギを握るのが夢の存在だ。全十日間に夢を見る描写があり、これがまた読者を混乱させる要因でもある。
主人公の身の回りに起きていることに関係する悪夢を見る。悪夢は様々な形となって主人公を襲う。起きている時も悲惨で残酷な現実に押しつぶされそうになるのに、夢の中も安心はない。
だが、読み進めていくうちに、読者側に対して曖昧な伏線を残す。そしてこれが考察するヒントとなり、読み進める手が止まらないほどの面白さを引き起こしている。
主人公は勿論、夢から覚める。悪夢の中に少しだけだが事件を紐解くヒントが隠されていた。だが、主人公は目覚めると夢の内容を忘れてしまう。ここが凄くもどかしい。
【ラストまでのネタバレ注意】
ラストはとても衝撃的だった。こんなに怖い締め方は知らない。
物語でちょくちょく出てくる千弥子という人がいるが、ここがどうもわからなかった。もう少し掘り下げて欲しかったなぁ。
現実世界ではなくて別世界の話なのか、主人公は問題を解決出来たのか多くは語られなかったが、私はあることに気づいてしまいましたよ!
起きている時から夢を見る時に変わる時は必ず、● このマークが付けられていますよね。ラストはヒクイドリの顔をした貞市を追い詰めました。そのあとに●があるんです。つまり、起きている時の物語は追い詰めた所で終了しているのです。そして夢パートに移る。夕里子と新婚旅行に行くのは主人公ではなく、北斗。しかも笑っている。とても不気味な終わり方です。でも、夢の中ということは、夢オチになるのではないのでしょうか。違うかもしれないけど(汗)
結局、起きている時の結末が明瞭としていないから、単純に夢オチでよかったねとも言えないのが怖い要素。
夕里子の結婚相手は主人公ではなく北斗、という夢を見るのも、「夕里子が無事なら私はどうなっても良い」という考え方から来たのか、北斗に焼かれた夕里子の悲惨な姿を見た主人公がトラウマとなって生み出したのか………うーんよくわからない!みんなの考察教えて!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どのようなオチに進んでいくのか、全然分からないまま読み進んでいった。
今、自分が読んでいるのはホラーなのか、ミステリーなのか、SFなのか。
ハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか。
先が気になって、ページをめくる手が止まらない。
角川ホラー文庫で出版されているが、ホラー要素はさほど強くないように感じた。ただ、読後の今も、自分はどんな小説を読んでいたのか分からないような、奇妙な読書体験だった。 -
どちらに進むのか分からないまま読み始めて、凄い勢いで最後まで連れていかれたな。
全部読み終わってから、あれそういうことだったのか…と読み返したくなる。 -
2020年の第四十回 横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作だそうで!
ジャンル分けが何とも難しい、ホラーでミステリでSFでラブストーリーで、色んなことが起こる!
本の残りページが減っていくにつれ、結末がどうなってしまうのかと、じっとり嫌な冷や汗が出てくる。
脳がふいに奇妙な話を求めてきた時にオススメの一冊! -
和風SFホラー&ミステリーサスペンス。まぜそばのような新感覚ホラーで、これは人を選びそう。
まず表紙とタイトルが非常に印象的で目を引く。ここで植え付けられた"ヒクイドリ"の印象が、後に物語を読み進めるにあたり役立ってくる。日本人が気味悪いと感じる要素がこれでもかと盛り込まれており、熱帯雨林のような陰湿さも読者を世界観に引き摺り込んでくる。教科書には載らないし想像をしたこともないが、ありえたかもしれない歴史から伸びた枝が分枝していくような感覚。しかし締めが少し物足りなかったような…著者のこれからに期待したい。 -
いやー。
怖い、怖い。
とは思いつつ読む手は止まらず。
寝る間も惜しんで一晩でイッキ読みしてしまいました。
これがデビュー作とは今後の作品も楽しみですね! -
読後すぐの感想が「なかなかにえげつないホラーを読んでしまった」でした。
物語は、第二次世界大戦中、パプアニューギニアで戦死した主人公の大叔父の手帳が、主人公を含む遺族家族の元に戻ってくるところから始まる。
その手帳の、大叔父が書き記した内容を読んだ時、彼らの運命がどんどんおかしくなっていく……。
その違和感がないようで、じわじわと手帳を読んだ彼らの運命をむしばみ、狂わせていく様々な現象は、生々しく描写されるラバウル戦線の熱帯の気温や血生臭さ、現実の真夏の描写と相まって、息苦しさを伴うじわりとした恐怖があった。
人は大事なものを"守る"ため、"手に入れる"ためには何でもするのか。
それが狂気となると、どうなるのか。
細かく書くとネタバレにすぐ当たるので伏せるが、戦中だろうが現代だろうが、人の"欲求"が、悪い方向へ追い詰められ、煮詰まり焦げ付いた末路を見たような、読んでいる最中の気味の悪さがものすごい(褒めている)。
加えて、ミステリーの観点では最初からの伏線や展開がスムーズで、最初から読み直したくなる構成になっているのが面白い。
話を急展開させるある人物の登場には、やや唐突感を感じるも、それを小さなものにするほどに、物語が濃密だった。
タイトルも中盤まで、ホラー要素の一つでしかないのかと思わせながら、後半からの急展開とタイトルの意味には唸らせられた。
ホラーは得意ではないジャンルなので、沢山読んでいる方ではないが、それでも「新しい」と思う作品でした。
ホラー好き……より強い恐怖(刺激)を求めている人にはちょっと物足りないかもと感じましたがホラー苦手な(でも読む)私にはちょうど良いぐらいのホラーでした。
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