明日の僕に風が吹く (角川文庫)

  • KADOKAWA (2022年9月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784041127612

作品紹介・あらすじ

実家は病院で将来の夢は医師。東京で恵まれた中学校生活を送っていた有人は、学校で注目を集めたある出来事で希望を失い、引きこもり生活を続けていた。彼の行く末を心配した叔父の雅彦は、心機一転、北海道の離島の高校への入学を勧める。「海鳥の楽園」と呼ばれるその島で、たった4人の級友と島民に囲まれる日々。東京での暮らしとは全く違う環境に、有人が戸惑いながらも馴染み始めた頃、残酷な別れが彼を襲い……。未来を失った少年の絶望と再生を描く、感涙必至の青春小説。

感想・レビュー・書評

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  •  中高生におすすめの一冊、発見です!

     川嶋有人。中2で心に傷を負い不登校に。医師である叔父の勧めで、東京から北海道の離島の高校へ。

     そこは、全校生徒5人、朝刊は昼届き、コンビニなし、Wi-Fiなし、まるで流刑地・奈落の底(?)のように思えるのでした。
     けれども島の人たちは、まるごと家族みたいで、叔父の診療所はTVドラマ『Dr.コトー診療所』の一場面を観ているような気になります。
     有人は、誰彼なく話しかけられ、島内の情報伝達力の速さに逃げ場のなさを感じますが、それでも、島の人や自然と関わる中で、認められる経験を通して緊張感がほぐれ、心の中に熱が宿り、少しずつ変容していき、ここは自分の居場所と認識できるようになっていきます。

     ところが、重大な出来事で状況は一変します。何もない島の生活に見えて、物語はいろんな展開が待っていて、飽きさせません。
     最後に有人が立ち直るまでの過程は、手に汗握って応援し、共感する描写になっていると思います。

     「未来に目を向けよ」「動け」というメッセージは、筆者の有人への叱咤激励であり、悩みを抱える読者(特に若者)へのエールに違いありません。

  • 有人(ゆうと)は幼い頃、機内で急病人が発生した際に、医師として名乗り出た叔父の姿に憧れを抱いて、医師になる夢を持っていたが、中二の時に起こったある出来事がきっかけで、引きこもりになってしまう。
    北海道の離島、「海鳥の楽園」と呼ばれる照羽尻(てうじり)島の診療所で働く叔父の勧めで、有人は照羽尻高校を受験し、叔父と二人で暮らし始める。
    家族のように屈託のない態度で接してくれる島民の人たちや、たった4人の級友たちに、しだいに心を開いていく有人だったが、突然の別れが彼を襲う。

    「引きこもり」「離島」そんな言葉から想像される単純なストーリーではなかった。
    高校生が5人しかいなくても、日々の暮らしの中で心動かされることはたくさんあるし、島外からやってきた子も、この島で生まれ育った子も、同じように心に抱えているものがある。
    島での生活が鮮やかに描かれていて、とても読みごたえのある内容だった。
    今までの勝手な思い込みを覆して、有人が再生していく様子に心打たれるし、過去にとらわれて一歩も動けないでいる人に背中を押してくれるような、力強い物語だった。

  • ある出来事がきっかけで不登校、ひきこもりになってしまった少年が、離島への移住をきっかけに同じ高校の仲間や島の人達との触れ合いを通じて、過去のつらい出来事を乗り越え成長していく物語。
    ストーリー的には正直そこまでおもしろいとは思いませんでしたが、非常にメッセージ性は感じるものがありました。
    人からどう思われているかなんて本当のところはわからない、勝手にこう思われているんじゃないかと妄想し傷つき、悪い方へ悪い方へ物事が進んでいく…そういうことって日常生活でもいろいろあるよなと。
    そしてこの本の中で良く出てくる「過去は変えられない」という言葉。過去は変えられないけど、過去をどう思うかは変えられる…良い言葉だなと思いました。
    結局物は考えようなんですよね、ピンチをそのままピンチと捉えるか、逆にチャンスと捉えるか。
    悲劇のヒーローを気取る暇があったら、何でも良いから動いてみる。そんなことを改めて考えさせられた一冊でした。

  • 人生で壁が立ちはだかるときに、どうしたらその壁を越えていけるだろう。
    強い人は、自分の力だけで乗り越えるかもしれない。
    だけど、悩んで苦しんでいるときに、果たしてそんな力は湧いてくるだろうか。

    挫折して、新しい出会いがあって、生き方を学んで、後悔しない選択を選ぶ勇気を持つ。そして動き続ける。
    簡単なことではないけど、そうやって必死に頑張る人を応援してくれる物語に好感を持ちました。

  • 道下さんは出てくるのだろうなと乾ルカさんならきっとそうなるだろうと思ったら、あのタイミングなのね、というか叔父さんダメだよそんな消え方は叔父さん自身にも天売島にも何一つ幸がないから。叔父さんに裏切られたと思った日から100ページも鬱鬱とするのか、長いって、もっと手売島の鳥たちと天文台と自然の中を感じたかったよ、有人の3年間をたくましくなってと、最初から最後まで何も変わらない、ソリャそうなんだよね、深く根付いた鬱屈と元々の人格と変えられない。変わらなくても動く事で、だね。また一つ勉強になりました

  • 『水底のスピカ』もそうだったけれど、これも友達との距離感をテーマにしたストーリー。近しい人が苦しんでいる時に、リスクを負ってどこまで相手のプライベートな領域に踏み込んでいくかが描かれている。物語としては『銀の匙』のように、都会の学校での生活で失敗を経験した子が、田舎の学校で新しい自分を見つけていくというような話になっている。だけれど、『銀の匙』において主人公が入っていく農業高校は濃密な生き物や自然との関りだけれど、ここでは人口の密集した都会での人々の距離感と、過疎の島での濃密な人と人との関りという対比がより重視されている。
    ラストの叔父との葛藤と乗り越えは、例によって物語をしめるための、ドラマチックな展開の要請という感が否めなかったけれど、読み終わった時の読後感はとても充実したものだったので、良しとする。

  • 2023年、夏フェアの中で紹介されていて、気になって読んだ作品。

    内容は、ざっくりいうと、
    「引きこもりだった少年の復活劇」
    叔父の誘いで北海道の離島の学校に行くことになった主人公、有人(ゆうと)。そこでの出来事や友達との触れ合いのなかから前を向けるようになっていく。

    叔父さんが、診療所内の掃除を有人に頼むシーンがある。これをみて、梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」を思い出した。この話のなかで、おばあちゃんは不登校になったヒロインに役割を与えるのだ。
    役割ってすごく大切なものだと思う。これがないと自分が自分を保っていられない気がする。

    全体的には、離島に旅行に来たような気分が味わえて面白かった。
    序盤で、有人が忘れられない事件?を起こす。それがきっかけで不登校になってしまう。でも、最後は、その事件を乗り越えて前をむく。マイナスなことがプラスに引っくり返される瞬間だ。そのシーンが良かった。
    人生にはマイナスなことばかりだ。でも、これをプラスに引っくり返したとき、人は大きく成長しているのだと思う。
    勇気をもらえる作品で、良かった。

  • 中学のときのある出来事がきっかけで目指していた目標も持てなくなり、家に引きこもって外に出ない生活をするようになった主人公の川嶋有人は、離島で医者をやっている叔父の雅彦の計らいで、北海道の島にある高校に通うようになる。
    離島での仲間との生活や、離島の人々との関わりの中で一度閉ざした心がだんだんと開かれて行く様子がこの小説を通して描かれています。
    高校の同級生や先輩とのやりとり、島に住む家族との交流には人間の温かさがあり、実に高校生らしいなぁと思う場面が多いです。
    島に住む4人の高校生の友人たちもそれぞれ何かしらの事情を抱えていたりする中で、それらをお互いに理解するまでの過程とか、高校生の青春ならではのような場面もあり、読んでいると自分もその離島で暮らしている一員なんじゃないか思ってしまうほどです。
    離島と医師の存在という離島ならではの課題点を軸に据えながら都会から来た主人公がだんだん離島の人々に染まって行く様を青春にのせて描かれているこの小説はあっという間に読み進められると思います。

  • 今のところかなり好きな本です。

    少し前に読んだため、記憶が曖昧な部分もありますが、不登校の男の子がとある島で自分を取り戻して生きるお話だったような…
    葛藤とかそんなのが、伝わる、少し希望も与えてくれる、そんな本だったように思います。

  • 今年(2023年)読んだ163冊目の本ですが、今年一番泣きました。
    主人公は、必ずしも青春小説の主人公として読者に好かれる感じではないので、途中で読むのが嫌になる読者もいるかもしれません。
    それでも私は、物語の終盤、涙が止まりませんでした。

    不登校の人の再生の物語としては、「かがみの孤城」、「西の魔女が死んだ」、「雲を紡ぐ」など名作がありますが、本作はそれらに肩を並べる作品だと思いました。

  • やっぱ読書は良いね

    なんでもそうだ。手元からなくなってわかる。そして、良かったもの、大切なものはたいていなくなる。せいぜい惜しめと、己の価値を主張するかのように。

  • Amazonの紹介より
    北海道の離島を舞台に、未来を失った少年の再生と成長を描く感動作。
    実家は病院で将来の夢は医師。東京で恵まれた中学校生活を送っていた有人は、学校で注目を集めたある出来事で希望を失い、引きこもり生活を続けていた。彼の行く末を心配した叔父の雅彦は、心機一転、北海道の離島の高校への入学を勧める。「海鳥の楽園」と呼ばれるその島で、たった4人の級友と島民に囲まれる日々。東京での暮らしとは全く違う環境に、有人が戸惑いながらも馴染み始めた頃、残酷な別れが彼を襲い……。未来を失った少年の絶望と再生を描く、感涙必至の青春小説。



    引きこもりだった主人公が離島に来たことによって、段々と心の成長が見られて、残酷な別れや真実といったビターな部分もありましたが、ジーンときてしまいました。

    時折、心に響く主人公へのメッセージが良く、自分にも響きました。

    また、離島での医師問題も触れられていて、そういった問題にも考えさせられました。

  • 自分が目標にしていたものに手が届かないかもしれないとき、孤独で不安であきらめたくなる。
    でもいつか自分を取り戻して動き出せる日がくるよと励まされるようなそんなお話。
    読み返したくなる。

  • あることをきっかけに学校に通えなくなり、引きこもっていた主人公。東京から離れ、北海道の離島で暮らすことになり、そこでの叔父との暮らしや学校での時間、島の人々と関わっていく中で、主人公の気持ちに変化が起こる。

    今作に限らず、乾ルカさんが作中に描く思春期の少年少女が、とてもリアルで好きだ。読んでいてむず痒くなるくらい、解像度の高い瞬間がいくつもある。

  • 大人子どもみんなのいろんな気持ちが入り交じって、目頭が何回も熱くなりました。

    「過去をどう思うかってのは変えられるよな、今の自分で」
    どんな過去があったとしても、その事実は変えられない。その過去をどう思うかによっては変えられる。そう思えるまでの有人の離島生活。めっちゃ青春!って感じではないが青春を感じながら、生き方について考えさせられました。

    北海道のうまい海鮮が食べたい!!!

  • 甘さや弱さから脱却するのって多分想像以上に難しい。人間ってよっぽどできた人間でないと逃げてしまうものだと思う(逃げが悪いかどうかは置いておいて)
    そのなかで主人公がそこを乗り越えようとしたこと、それに周りが協力したことが本当にすごいと思う。多分これから先も彼は逃げるだろうし、嫌なことがあったら崩れると思う。人間の本質ってあんまりすぐには変わらないだろうし。でも、一度乗り越えた経験は味方をするんだろうって思う。
    一つ気になったのは道下さんがどうしてあんなことを言ったのか。あまりにも一方的で理解できなかった。お礼だけを言おうと思ってたなかで、気に入らない発言があったからってああも態度を帰るものだろうか。言い分も一切わからなかった。そもそも何で主人公があの日のことで責められてるのかもあんまりしっくり来なかったし…

  • 川嶋有人
    引きこもり。出席日数不足で高等部には進めなかった。叔父の勧めで、北海道の離島・照羽尻島の高校に進学する。

    川嶋雅彦
    叔父。父とは十歳近く歳が離れている。研修医として福井の大学病院へ赴任するまで、同じ食卓を囲んでいた。北海道の離島の診療所に赴任している。

    幸子
    伯母。

    和人
    有人の二つ年上の兄。筑駒。両親が卒業した医大に進学。

    加奈
    幸子の娘。


    医者。


    医者。

    上原
    有人のクラスメイト。女子の中でも華やかでトップのカーストに君臨する。

    道下麗奈
    前歯に矯正器具が装着されている。夏休み明けに転入してきた。ニューヨークからの帰国子女。アレルギーを発症し言語障害が残った。

    野呂
    野呂旅館の奥さん。

    野呂涼
    野呂の娘。有人が島に来るフェリーで会った。照羽尻高校二年生。

    田宮
    島の配送業者。副業で観光客に案内をしている。

    斎藤誠
    高校の新入生。照羽尻島で生まれ育った子。申し分のない上背に筋肉を感じさせる体躯、短髪は、まるでエリートスポーツ選手を思わせる。

    東村桃花
    高校の新入生。札幌から来た子。

    桐生
    雅彦の診療所の看護師。六十代半ばの女性。照羽尻島出身。独身。後茂内町内で下宿しながら高校へ通い、看護専門学校で看護師の資格を取った。ずっと旭川市内の総合病院に勤務していた。六十歳で退職し、のんびり余生を送るつもりで島に帰ってきた。

    森内
    医療事務員。

    八木陽樹
    二年。

    斎藤至
    誠の兄。パティシエになると啖呵を切って、札幌の専門学校に行った。

    柏木道大
    医大の学生。研究テーマの話しを聞きに来る。医学部卒業後、博士課程基礎医学コースに在籍中。


    実習担当の先生。

    石川
    歴史担当の先生。

    赤羽
    北辰新聞社社会部。照羽尻高校に取材に来た。

    後藤夫妻
    照羽尻高校の寮の管理人。

    星澤
    雅彦の後に来た医者。

    海老原
    誠の父とタラ漁の船団を組む島の漁師の一人。三十代後半で独身。

    小西
    天文マニアの観光客。

  • 不登校の少年が前を向くまでの話。
    全体としていい話だけど、細かく違和感が。
    親が医者とはいえ中学生が、意識のない人をみて気道確保できる時点ですごい。エピペンがわからないなんて、当たり前じゃない?医者じゃないだからエピペンを打たなかったからって有人は失敗はしてない。両親が間違ってるって言うのも変。有人が気道確保をして救命してることを、医者だからこそ褒めるべきでしょ。事後になぜ先生から労いの言葉がないの?クラスメイト達は自分のことは棚に上げて、随分意地悪。イジメってこんな感じで始まるのかな?ちょっとよくわからない。でも自分が動き出せない状況で、なんとか救おうとしている人に対して不快感って出るもの?理解できない。
    叔父さんの論文を読んだ後の有人の反応もよくわからない。中2病?叔父さんが島の人々に不快感を覚えていたとしてもそれが叔父さんへの信頼を失うようなこと?自分が症例として載ってることに不快感はあるかもしれないけど、治療対象だったなんてってショックを受けるようなこと?よくわからない。こういうふうに考える癖があるから引きこもりになったのかな?
    でもいい話でした。
    島を過剰に評価する自分を自己欺瞞だなんて思わず、東京の叔母さん達とは考え方が違うって思えればいいのにね。難しいけど、他人の評価軸じゃなく、自分の評価軸で生きられるといいよね。

  • 将来は医者を目指す主人公。ある日中学校での事件をきっかけに引きこもってしまいます。憧れていた医者の叔父の勧めで北海道の離島の高校へ進学することに。離島での生活が心を溶かしていきますが・・・

  • 将来の夢は医者だった。けれどある日を境に希望を失い、家に引きこもるようになる。そんな有人を部屋から出したのは、離島で医者をしている有人の叔父だった。

    9割イライラする感じだった……有人のこの、無自覚の万能感?とでもいうのか、自分への過度な評価、それ故に現実にぶち当たった時の脆さ、あげくに世の中のこと全部悟ったような自己正当化のお上手さ……悩み苦しむ人間の姿は好きなんだけど頑張るが故に悩み苦しむ姿が好きなのであってこういうのはちょっと……元の学校でもその場の空気とか周りの様子とか見ずに知識ひけらかしてドヤってて周りに辟易されてるところあったんだろうな〜って……いじめは良くないけどこれが果たして理不尽ないじめだったかと言うと、うーーーーん………だから柏木さんがハッキリ言ってくれたのが良かったね。そう。そういう人間です有人は。

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著者プロフィール

乾ルカ
一九七〇年北海道生まれ。二〇〇六年、「夏光」でオール讀物新人賞を受賞。一〇年『あの日にかえりたい』で直木賞候補、『メグル』で大藪春彦賞候補。映像化された『てふてふ荘へようこそ』ほか、『向かい風で飛べ!』『龍神の子どもたち』など著書多数。8作家による競作プロジェクト「螺旋」では昭和前期を担当し『コイコワレ』を執筆。近著の青春群像劇『おまえなんかに会いたくない』『水底のスピカ』が話題となる。

「2022年 『コイコワレ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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