幽霊座 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 92
感想 : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041127773

作品紹介・あらすじ

人気随一の若手歌舞伎俳優が失踪、17年後の追善興行で、またしても殺人事件が……。梨園にわだかまる因習と確執、激しい親子の愛憎の中に謎が隠されていた! 表題作に「鴉」「トランプ台の首」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 『幽霊座』(☆3)
    人気歌舞伎俳優・鶴之助が舞台上から消えた事件。それから17年が経ち、彼が失踪した狂言「鯉つかみ」を追善興行することに。役者が揃った舞台で巻き起こる惨劇を、金田一耕助は止められるのか?!

    いまや古朽ちた劇場となった稲妻座。そこで巻き起こった過去と現在の事件。過去の事件では何も解決できなかった金田一が見せる炎のような思考。それが古びた劇場というロケーションと相まって、読者すら舞台に没入させる演出になっている。座席でひたすら考える金田一の姿は絵になるし、切実さが伝わる。

    華やかな幕を一枚めくれば、秘密や愛憎が渦巻く奈落が広がっている。見ない方がいい舞台裏はあるものだ。しかし、金田一はかつての友・鶴之助のためにも謎へと挑む。一座を繋ぐ言葉にならない絆も、そこに繋がれた鎖の如き悪意も、どちらも人間が演じたものだというのが悲しい。

    『鴉』(☆3.5)
    静養のために岡山を訪れた金田一。磯川警部へ挨拶しに行くと、ある湯治場へ一緒に行こうと誘われる。そこの主である蓮池家では3年前に孫娘の婿が忽然と消えたという。3年後に戻るという書置きを残して──。

    金田一が静養に訪れているのに、過去の事件を推理させるために「格好の場所があるから」といわくつきの湯治場へ案内する磯川警部が鬼(笑) 金田一もついていっちゃうところが可愛い。密室だという神殿から消失した男。その歴史は繰り返され、今度は男が消えた上に死体が現れる!

    お彦さまという神様を祀る家に、その使いである鴉。意味深に現れる鴉の痕跡。黒い翼と獰猛な目で獲物を狙っている「鴉」は誰なのか。人々の思惑が絡み合ってもつれる描写はさすが。読み終わってみると、神様って何なんだろうなと空虚感にも襲われる。月並みだけど、人間が一番怖いよね。

    『トランプ台上の首』(☆3)
    開いた窓から見えた部屋に置かれた女の首。トランプ台の上に置かれ、胴体は消えていた。身元を隠すために首を切るならまだしも、見せつけるように首だけ置いた犯人の意図とは?!被害者・牧野アケミのシャッフルされたカードのように目まぐるしい人間関係に隠された秘密とは──。

    川を舟で漕いで、水上生活者におかずを売る宇之助の話から開幕。そんな職業があるんだ!とほのぼのしていたところに生首ですよ!とにかくインパクトがすごい。顔のない死体はミステリでよくあるパターンだけど、顔しかない死体というのは不可解で推理欲をそそるよね。

    そこに乱れた色欲の人間の渦が入り込み、事件はより複雑さを増していく。しかし、入り組んだものになるほど、犯人が残す手がかりも多くなる。トリックは強引だけど、伏線もあるのでギリギリセーフかな?それにしても、金田一は活躍するものの事後報告すぎて、魅せ場としての描写が薄いのが残念。

  • 他の方の本読んでから久しぶりの横溝正史だったので、ああ、これぞ!と思いながら幽霊座を読みました。様々な人物に妖しいを匂わせながらも、そっちの人そう絡むとちょっとびっくり。狂気は遺伝するのね。

  • ★3.3くらい
    表題作ではないけれど、トランプ台上の首が面白かった。

  • 入れ替わり3編。入れ替わりっていうのはどうしてこうもわくわくするんだろうか。

  • 「幽霊座」は短編なのに、色々盛り沢山で面白い。全体的に漂う妖しい雰囲気もいい。
    「鴉」、「トランプ台上の首」も好き。

  • 2022/05/28読了

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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